事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ライラの冒険 / 黄金の羅針盤」 The Golden Compass

2008-03-24 | 洋画

Thegoldencompassp 「あー面白かった」
え?満足そうに隣の席でため息をつく娘に、父親としてはうれしいものの、すれっからしの映画野郎としてはちょっと意外。

 世界観は確かに魅力的。“わたしたちの世界とは少しだけ違う世界”では、人間の魂は動物の姿となって実在し、分身として帯同する。オトナになるとどんな動物か確定するが、子どものうちは変化をくり返す。ダイモンと呼ばれるその魂は、宿主と痛みを共有する……ね、いい感じでしょう?登場人物たちのまわりを、鳥だの猿だのうさぎだのが常にウロウロしている絵は魅力的だ。

 ところが、だ。どうにもドラマがワクワクさせてくれない。
否応なしに教会をイメージさせる神学者たちが、学究の徒であるライラの叔父の命を狙い、同時に人間とダイモンの切り離し実験のためにこどもたちを拉致する。彼らの救出に向かうライラに、よろい熊や魔女が加勢し……ストーリーもいい感じなのに。

 画面も派手。魔女の大群が飛翔するシーンや、よろい熊(西部劇のように、やさぐれて酒場で下働きをしているのが笑える)の王位継承をめぐる決闘など、なかなかの迫力だ。

 キャスティングもすばらしい。どうやったらこんな美しい身体を維持できるのかとため息がでるニコール・キッドマン(怖いぐらいに碧い眼だったことを再確認)や、ダニエル・クレイグとエヴァ・グリーンの「カジノ・ロワイヤル」コンビの再現もうれしい。特に魔女役のエヴァは前作を上回る美しさ。

……ここまで好条件がそろっていながら、どうして弾まないかなあ。おそらくは、カネはかかっているものの、撮影に十分な時間がとれず、有機的にドラマを熟成することができなかったからではないだろうか。たとえばキッドマン(日本語版吹替女優が誰か、見ている途中で気づいたらえらい)、クレイグ、グリーンの三人が、いやそれどころかどの組み合わせも同じ画面にいるシーンが皆無なのだ。つまり“共演”していないのである。おまけに、第二作につながるニコール・キッドマンがライラを追いかけるエンディングにおいて、彼女の顔は一瞬たりとも映らない。要するにスタンドインを使用したことがバレバレ。これでは監督も(「アバウト・ア・ボーイ」ではいいところを見せたのに)しどころがなかったろう。ぜいたくな撮影が許されなかった、窮屈で空虚な大作といったところか。

Gc_grvbnnr_serafina さて、色々といちゃもんをつけさせてもらったけど、どうして日本で「十二国記」を実写で映画化しようという話にならないのだろう。麒麟によって選ばれる王、というコンセプトはライラの“ダイモン”以上に魅力的だと思うのだが。

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