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事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「昭和の劇」 その3~仁義なき戦い

2008-02-02 | 本と雑誌

Jinnginakitatakai01 前号繰越。「仁義なき戦い」(昭和48年 東映)
深作欣二監督 笠原和夫脚本 飯干晃一原作

 われながら単純だと思うけれど、「昭和の劇」を読み終えてから、とりあえず笠原和夫脚本の映画をビデオ屋に走って何本か借りて続けざまに観ることにした。一発目の「仁義なき戦い」では、最初観たときにはよく理解できなかった広島やくざ抗争が(事実、笠原も「どっちがどっちに殴り込んでいるかわからなくなって(笑)」観客にはわかりづらいだろう、しかしそれでもかまわなかったと述懐している)、詳細な解説を読んだこともあってアウトラインをつかむことができた。要するに戦後のどさくさに紛れてのし上がった新興やくざたちが、山口組との確執のなかでどう消長していくか、だったのだ。呉や広島の市民は「ああ、あれが山村さん(劇中では山守)の組ね」なんて感じで観ていたろうし、全国のその『業界』の方々にとっては、こりゃ最高の映画だったろう。それにしても恐ろしいほどの迫力。深作とのコンビが最強だったことがよく感得できた。

 この映画は当時のベストテンに入ったり、それなりの評価を得たわけだけれど、それまでのやくざ映画は文字通り日陰の存在で、評論家はほとんど誰も相手にしていなかった。教条的左翼である猪俣勝人など、「(高倉健や東映の連中の)顔が次第にその筋の人間に似てきて」不快だったと映画史に記述していたぐらい。しかしこの流れを変えたのはなんと三島由紀夫

Soutyoutobaku  【私は、『総長賭博』を見た。そして甚だ感心した。これは何の誇張もなしに「名画」だと思った。(略)何という絶対的肯定の中にギリギリに仕組まれた悲劇であろう。しかも、その悲劇は何とすみずみまで、あたかも古典劇のように、人間的真実に叶っていることだろう】

こうしてやくざ映画評価の機運がもりあがっているあたりで、自分の金で映画館に通い始めたのが酒田の某高校生だったというわけ。そりゃ、熱中もするわな。

 しかし現実としてのやくざの有り様は、これがなかなかにハードなもののようで……

-刑務所に入ると、おかまを掘られるわけですね。掘るのが《カッパ》で、掘られるのが《アンコ》。
笠原:そうです。僕は「仁義なき戦い」で美能幸三(映画では菅原文太が演じた広能)さんに取材したんですけど、美能さんも刑務所でアンコを掘っていたわけですよ。
-それでアンコというのは、結局、カッパの鉄砲玉になって人を殺しに行くようになるということですけど。
笠原:だから美能さんも、今はどうか知りませんけど、大阪、東京に男を二、三人囲っているわけですよ。それで美能さんが電話一本で指令を出せば、その男は鉄砲玉となってフッ飛んでいくと言うんですよ。(略)だから刑務所を出たあと、おそらくそういう人たちも最初は女を買いに行ったんでしょう。だけども、できない。できないできないという自分のコンプレックスみたいなものを抱えて、結局、男になりたいということで昔の兄貴分に頼みに行く……
-博奕をやる人はインポだと言いますね。
笠原:ええ、博奕をやるからインポになるのか、インポだから博奕をやるのかわからないけれども。
-博奕をやる時には、覚醒剤を打って……。
笠原:ええ。どうしたって博奕をやってれば覚醒剤を打つようになるんですよ。それで陶酔していくでしょ。あれはエクスタシーなんですよね。だから、有名なやくざの親分というのは、博奕は一切、若い時からやっていないんです。「勃たなくなる」と。

……あああこの世界にはやはり入ってはいけない。“実録”以上の部分がここには。そして避けて通れない問題だったのに結局描けなかったのは……
笠原:やくざというのは、突きつめれば被差別民朝鮮人が多いんですよね。例えば、山口組にしても六割は朝鮮人と被差別民なんです。
-それは否定できないらしい。
笠原:それでおもしろいのは、被差別出身のやくざというのは、同じ出身ということで団結することがあるんですよ。で、最終的には組が何を言おうと、そっちの方を大事にするんですね。
-朝鮮人の場合、横に団結するというのはないわけですか?
笠原:それは、ない。だって金にならないんだもの。被差別の場合は、同和対策ということで金が出るんだから。

……ふう。もうキリがない。しかしこの本の一番の危うさは、《天皇》の部分にある。以下次号

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