PART11「澪つくし」はこちら。
「はね駒(こんま)」は、ミスマガジンとしてグラビアデビューした斉藤由貴が飛躍したドラマ。わたしも少年マガジンで彼女を拝見しましたが、絶句するほど可愛かった。そりゃもうほんとに可愛かった。連続テレビ小説に起用される前に、すでに「スケバン刑事」で主演していたし、「卒業」でヒットをとばしてもいた。
でもわたしにとって彼女は完璧に映画女優だった。特にデビュー作「雪の断章 情熱」のすばらしさときたら!
この映画は、佐々木丸美の、今でいうライトノベルが原作(なんてことだ。いま創元推理文庫でイチオシされているのはこの本です!書店へ急げ)。
でも、脚本の田中陽造と監督の相米慎二がまったく違ったタイプの作品に仕上げた。孤児の斉藤由貴と、彼女を庇護する青年たち(榎木孝明と世良公則)。そこで殺人事件が起こって……
例によって過剰に歌が挿入され、異様な長回しがさく裂し、天真爛漫で美しい斉藤由貴の、その美しさと無垢が悲劇を生むストーリーに説得力を与えている。相米慎二は少女を撮らせたら天下一品でしたから。
そんなにすばらしい映画ならあらためて特集すればいいようなものだけれど、DVDがどこにもないんですよね。ディスカスにも存在しない。製作はキティ。権利関係でもめているのかなあ。
斉藤由貴はその後、敬虔なモルモン教徒のイメージを裏切るように尾崎豊などとスキャンダルに。いっそこの路線で行ってくれればとも思ったけれど、一般人との結婚を機に、家庭を優先する生活に入ってしまった。
「吾輩は主婦である」などを見ればわかるように、彼女は日本の芸能界において数少ない本格的なコメディエンヌなのだ。ああもったいない。
あ、「はね駒」の話でしたね。それまで、やくざか刑事の役しかやっていなかったイメージの小林稔侍が父親役でお茶の間に一気に浸透。だけでなく、このドラマは夫役に渡辺謙、母が樹木希林、初恋の人に沢田研二など、オールスターキャストが用意されている。視聴率も高く、成功作。だからこそ、斉藤由貴には別の道を歩んでほしかったなあ……以下次号。