第4回「年末調整」はこちら。
年末調整の二つ目の問題点。そしてこの国の税制にひそむ最大のトリックは【ほとんどのサラリーマンは所得税について直接に対峙する機会がない】ことだ。
源泉徴収→年末調整という流れのなかで、住宅を建てた翌年か、医療費がよほどかさむか、あるいは年収2000万円を超えるかでもしないかぎり(残念ながら山形県の教職員にはこんなうらやましい人はめったに存在しない)日本のサラリーマンはまず確定申告をすることはない。e-Taxを知っている人は圧倒的に少数だろう。
というのも、給与所得控除の号でお知らせしたように、こいつが思いっきり甘く設定されているため、アメリカのように領収書集めに奔走する手間もいらず、おまけに精算事務も雇用主が代行して行ってくれているからだ。こんな国は他にない。
だからほとんどのサラリーマンにとって税金のために行うアクションは、11月に保険料の証明書を申告書の裏に貼っつけることと、扶養控除の申告書とともにちょこちょこっと記入することぐらいになってしまった。
その結果どうなったか。
この、のんきなサラリーマンたちが、税金を《自分のこと》として考えなくなってしまったのである。そんなことはない、と反論されるかもしれない。それではあなたは、今年どれくらいの所得税を払ったか、すぐに言うことが出来るだろうか。身を切る思いで自分の財布から税金を払っているならともかく、なかなかそうはいかないでしょう?ここに、源泉徴収という罠が存在するわけだ。
納税者としての意識が民主主義の根幹だと言われていることからもわかるように、自分のことではない税金の使途に、はたして本気になれるものだろうか。サラリーマンが、御しやすいサイレント・マジョリティだと為政者にナメられる要素がまさにこれ。
消費税が導入されたときの大騒ぎを思い起こしてほしい。本気で税と向き合えば、決してサイレントでいられるわけがないのだ。すくなくとも、1月に配布される源泉徴収票は熟読してほしい。給与所得者としてのすべての情報が凝縮されたあの紙っきれからは、あなたが払った税額とともに、様々なことが読みとれるはずだから。
02年12月24日付情宣さかた裏版より。