第3回「源泉徴収」はこちら。
いったいどうして年末調整などというサラリーマンにとってステキな制度(皮肉)が導入されたのか。話はそこから始まる。
敗戦直後、世間では闇取引が横行し、すさまじい勢いでインフレが進行していた。ために申告による納税は悲惨な状況となり、税務署員が払底していたことも手伝って、何らかの措置が必要とされることとなった。
そこで1947年の所得税法の改正の際に、こっそりと、しかし後の日本の税制を特徴づける重要な制度【年末調整】が登場した。
この制度は、年収5万円(現在は2000万円)以下の給与所得者の確定申告を省略して、源泉徴収してきた所得税と、本来の所得税額との過不足を、雇用主(源泉徴収義務者)が年末に調整しなければならない、とするもの。
徴税当局としては、あてにならない申告納税よりも【迅速】【確実】そして【安価】に税収を確保できるというメリットがあったわけ。
迅速、確実……そりゃそうだ。給与が支払われるたびに、所得税は自動的に差し引かれ、ほとんど何の疑問もなく税務署の金庫に納められるのだから。
安価……この徴税制度のコストの安さは特筆に値する。なにしろ、本来徴税の主体者である国の事務のほとんどすべてを事業者に無償でやらせているのだ。企業が負担している源泉徴収の費用は、年間2,500億円におよぶという試算もあるくらい。サラリーマン一人あたり約5,000円である。懇切丁寧な説明会を何度開いてもバチは当たらないというわけだ。大企業の総務課は11月からの約一ヶ月間をこの事務に集中しなければならないし、わたしたち山形県職員にしても、給与システムを年末調整に反映させるためにものすごいコストをかけてソフトを作成し、おかげで複雑化したシステムのために事務職員が頭を悩ましている。
このすばらしき年末調整は、二つの大きな問題点をかかえている。
ひとつには、自分のプライバシーをこの制度のために会社にさらさざるをえないということ。家族情報や、住宅を建てるためにいくら借金をしたか、どんな保険に加入していて受取人は誰なのかにいたるまで、会社(→わたしたちの場合は山形県)に申告しなければ税控除も受けることができない。
端的なのが廃止の方向に動き始めた配偶者特別控除。その年の収入額を不確定なままに予測し、ある意味バクチのように申告している。こんなもんどう考えても確定申告のエリアなのだが、それでもむりくりに年末調整のなかに入っている。
つまり、日本のマジョリティであるサラリーマンには、どうあっても確定申告をしてもらいたくないという意図がミエミエ。
その理由は、二つ目の問題点のなかにある……
【つづきは次号最終回「トリック」で】
02年12月13日付情宣さかた裏版より。
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