第2回「クロヨン」はこちら。
前号で給与所得者には意外に多額な必要経費が認められていることをお知らせした。衣料品(背広、Yシャツ、体育教師ならジャージ系も含まれるだろうか)、身回品(靴、カバン、時計)、クリーニング・理容代、文具、新聞・書籍、交際費……よほどの高コスト教職員でも、その必要経費が20%をこえることはまずない。
それでも、これだけの控除が認められているのはなぜだろう。
ここに、源泉徴収と年末調整がからんだ、日本の税制の特異な点がひそんでいる。
12月の給与で、所得税が大幅にかえってきたり、逆にとんでもなく取られてしまうことから職員の一喜一憂があるわけだけれど、これは以下の事情による。
サラリーマンの給与は、概算された所得税額を天引きされたうえで支給されている。これが源泉徴収という制度だ。そして企業などの勤務先(わたしたちの場合は山形県→結果的に学校事務職員がそれにあたる)による国の徴税事務代行によって確定された所得税の年額が求められ、その年の最後の給与で調整される。これが年末調整。
乱暴な言い方をすれば、「仮払い」をしてきた(源泉徴収)所得税を支払者が「精算」してあげる(年末調整)システム。
だから12月の給与の手取りが多かった場合、税金を多く支払いすぎていたのだから本来は怒らなければならないのだ。ま、気持ちはわかりますが。
では、この給与所得からの源泉徴収という制度はどのようにして始まったのだろう。
日本に所得税が創設されたのが1887(明治20)年。やがて法制化され、1899(明治32)年に初めて源泉徴収という仕組みが登場する。このときは、利子所得への導入だった。それが給与所得への源泉徴収が導入されたのは1940(昭和15)年。その目的は、時期的なことを考えてもお分かりのように戦費調達である。モデルになったのはナチス・ドイツの方法論だった。
どうして源泉徴収が戦費調達に都合がよかったかというと、この制度の特徴を考えればすぐに理解できるはず。
・支払者が所得支払いの際に税金を天引き徴収する
・天引きされるために納税上の苦痛が少ない
・国家の権力によって強制的に徴収されるという感じが少ない
・原則として申告などの手続きを要しない
・徴税費が比較的少なくてすむ
そろそろどうして源泉徴収を組合の情宣で問題にしているか、察しのいい人はわかってきたでしょう。おまけに、この源泉徴収を補完する意味でまことに洗練されたシステム、年末調整が導入されるのである。
【次号PARTⅣは、もちろん年末調整を特集】
02年12月3日付情宣さかた裏版より
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