陰陽師的日常

読みながら歩き、歩きながら読む

サイト更新しました

2008-09-25 22:57:33 | weblog
先日までここで連載していたサキの短編集三つを「サキ・コレクション vol.5」としてサイトにアップしました。更新情報も書きました。
昨日ちょっと間に合わなかったので、少し時間をとってゆっくり書くことができました。
またお暇なときにでのぞいてみてください。
http://f59.aaa.livedoor.jp/~walkinon/index.html

さて、今回は「狼たち」というくくりでサキの短篇を選んでみた。

狼というと、ヨーロッパの昔話や童話では、人や動物を食い殺そうとする飢えた獣として描かれるが、アメリカ・インディアンでは、なんと狼が世界の創造主なのである。
 そのインディアン説話によると、或る日、いたずら者ウィサガトキャクが巨大な穴熊を罠にかけるために小川を堰きとめるダムを造ったという。夕暮れどきになって穴熊が近づくと、いたずら者は待ちかまえていた。ところが麝香鼠がいたずら者をかじったので、彼は穴熊を見失ってしまった。翌日、いたずら者はダムを撤去した。すると他の穴熊たちが復讐せんものと水を溢れ流したので、しまいには全土が水中に没して、どこにも大地はなくなった。二週間のあいだ水嵩は増しつづけた。あの麝香鼠は水の深さを測るために跳びこみ、そのまま溺れてしまった。一羽の渡り鴉が偵察に飛び立ったが、陸地は発見できなかった。とうとうウィサガトキャクは狼に助けを求めた。狼は苔の球をくわえて筏のふちを走り回った。苔の球はやがて大きくなり、その上に陸地が形成された。狼がそれを降ろすと、すべての動物がこぞって踊り回り、強力な呪文を唱和した。こうして大地は次第に大きくなり、筏の上にまで拡がった。それでも大地は大きくなるのをやめず、遂には全世界が出来あがったのである。
(アンソニー・マーカタンテ『空想動物園 神話・伝説・寓話の中の動物たち』中村保男訳 法政大学出版局)

なんとなくこの創世神話は、ノアの箱船に出てくる洪水を思わせないでもないのだが(水嵩が増し続けた間、ほかの動物はどうしていたのだろう?)、ここでは狼は地球を創造した「創造主」なのである。

アメリカ・インディアンは狼に特別な地位を与えていたのだ。それはおそらく彼らが狩猟民であったことと関係があるはずだ。獲物を狩る狼は、同じ狩猟者である彼らの理想であったのかもしれない。

さて、日本語のオオカミは「大神」から来ているのだという。つまり、日本でも狼というのは聖なるものであったのだ。

このように見ていくと、狼のことを残忍な殺戮者とみなすのは、地域的な見方であったことがわかる。そのヨーロッパでさえも、ローマ建国の祖、ロームルスとレムルスは雌狼に育てられたことを考えると、時代的な見方であるともいえるのだ。

わたしたちの漠然と抱いている狼のイメージは、ヨーロッパの比較的新しい時代のイメージである。本になった「三匹の子豚」や「狼と七匹のこやぎ」などの昔話やお伽噺で築き上げられたものなのだ。

一方、日本には狼を祀った神社もあるというし、日本の伝説・昔話で狼はどんな扱いを受けているのだろうか。日本の昔話でも有名なものがあれば、西洋的な狼イメージに対抗できるようにも思うのだが。

また調べてみることにして、もしご存じの方がいらっしゃったら、教えてください。

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