「ハッピーアイスクリーム」という言葉を知っていますか?
話をしていて、偶然、相手と同じ言葉を言いかけてしまうことがある。
「このあいだ……」
たいてい気がついたところで、気まずくなってお互い言葉をやめてしまう。
そこで言うのが
「ハッピーアイスクリーム!」
すっかりそんな言葉など忘れていたのだが、『しぐさの民俗学 ―呪術的世界と心性』を読んでいたら出てきたので、ああそういえばそんなことを聞いたことがある、と思い出したのだった。
小学校五年のときに転校した先の学校で聞いたのだ。なんでそんなことを言うのか、言っている子にも聞いたように思うのだが、おそらくだれもそんなことは知らなかったのだろう。意識してできることではない、偶然を頼りにするしかないことだから、それほど何度も聞いたわけではなかったろう。それでもなんでアイスクリームなんだろう、なんでハッピーとつけるんだろう、アメリカやイギリスから来たんだろうか、と考えていたような気がする。
本によると、言葉のヴァリエーションはいろいろあるのだが、そういうときに一種のおまじないのように何かを言うことは、かなり前から行われていたらしい。それが70年代に少女マンガで取り上げられて、広まった側面もあったようだ。
本には1976年10月号の『プチマーガレット』に掲載された岩館真理子の「初恋時代」というマンガの一場面が掲載されている。
この言葉が広く知られるようになったのは、マンガによるもの、と言って良さそうだ。
人と言葉が重なったとき、そのまま言い続けられる人はいないだろう。
いまのわたしのまわりでは、「あっ、ハモった」のような言い方をすることが多いかもしれない。ともかく、一瞬言葉を切って、何となく気まずくなるのを避けることができるような言葉を探すのだ。
どうやら「同時に同じことを言い始める」というのは、「忌まれる」ことらしい。それもどうやら日本でだけではなく、諸外国でもあるようだ。
こういう経験はわたしは直接に見たり聞いたりした経験はないのだが、なんとなくその雰囲気もわかるような気がする。同じ言葉を同時に口にしたことに気がついて、はっと緊張して、その緊張を解くために、緊張解除の一種の儀式的なあそびがなされるのだろう。
「ハッピーアイスクリーム」と先に行った方がおごってもらえる、というのも、少しでも早く緊張を解除する、という目的があるのだ。
いまはこんなとき何というのだろう。どんなしぐさをするんだろう。
何かご存じの方がいらっしゃったら、教えてください。
話をしていて、偶然、相手と同じ言葉を言いかけてしまうことがある。
「このあいだ……」
たいてい気がついたところで、気まずくなってお互い言葉をやめてしまう。
そこで言うのが
「ハッピーアイスクリーム!」
すっかりそんな言葉など忘れていたのだが、『しぐさの民俗学 ―呪術的世界と心性』を読んでいたら出てきたので、ああそういえばそんなことを聞いたことがある、と思い出したのだった。
小学校五年のときに転校した先の学校で聞いたのだ。なんでそんなことを言うのか、言っている子にも聞いたように思うのだが、おそらくだれもそんなことは知らなかったのだろう。意識してできることではない、偶然を頼りにするしかないことだから、それほど何度も聞いたわけではなかったろう。それでもなんでアイスクリームなんだろう、なんでハッピーとつけるんだろう、アメリカやイギリスから来たんだろうか、と考えていたような気がする。
本によると、言葉のヴァリエーションはいろいろあるのだが、そういうときに一種のおまじないのように何かを言うことは、かなり前から行われていたらしい。それが70年代に少女マンガで取り上げられて、広まった側面もあったようだ。
本には1976年10月号の『プチマーガレット』に掲載された岩館真理子の「初恋時代」というマンガの一場面が掲載されている。
「いまはやってるのよ、これ。ふたりが同時におんなじことばをいっちゃったとき、ハッピーアイスクリームって先にいったほうが勝ちなの」
「いえなかったほうは」
「アイスクリームをおごるのでーす」
この言葉が広く知られるようになったのは、マンガによるもの、と言って良さそうだ。
人と言葉が重なったとき、そのまま言い続けられる人はいないだろう。
いまのわたしのまわりでは、「あっ、ハモった」のような言い方をすることが多いかもしれない。ともかく、一瞬言葉を切って、何となく気まずくなるのを避けることができるような言葉を探すのだ。
どうやら「同時に同じことを言い始める」というのは、「忌まれる」ことらしい。それもどうやら日本でだけではなく、諸外国でもあるようだ。
サハ(旧称ヤクート)からの留学生男女ふたりと大学の食堂へ行ったときのことである。たまたまふたりが同時に同じ言葉を口にする場面に遭遇した。そのとき女性のほうがすばやく相手の髪の毛をつかみ、早口でなにやら口走った。わたしが説明を求めると、こんな答えが返ってきた。ふたりが同時に同じ言葉を口にしたとき、どちらか早いほうが相手の髪の毛をつかんで「わたしの幸せ、いつくるの?」と尋ねる。相手は、「今日の晩」とか、「明日の晩」とか適当に答える。するといいことがあるというのだ。これを聞き、わたしは忘れていた幼い日の遊びを思い出した。わたしの故郷岐阜市では女の子たちの間で盛んにこれとよく似たことが行われていた。同時に同じ言葉を口にすると、相手の頭の上に手をのせ、その手を素早く自分の頭の上に移動して、「知恵もらった!」と叫ぶ。早い者勝ちなので先をあらそったのを覚えている。なにしろ相手に遅れをとると知恵を取られて頭の中がからっぽになるような、いやな気分に襲われるので、結構真剣だった。
こういう経験はわたしは直接に見たり聞いたりした経験はないのだが、なんとなくその雰囲気もわかるような気がする。同じ言葉を同時に口にしたことに気がついて、はっと緊張して、その緊張を解くために、緊張解除の一種の儀式的なあそびがなされるのだろう。
「ハッピーアイスクリーム」と先に行った方がおごってもらえる、というのも、少しでも早く緊張を解除する、という目的があるのだ。
いまはこんなとき何というのだろう。どんなしぐさをするんだろう。
何かご存じの方がいらっしゃったら、教えてください。
ハッピーアイスクリームの話は聞いたことありませんでした。面白いですね。
返事を書くのが遅くなってごめんなさい。
フラナリー・オコナーをやっていらっしゃるんですね。
フラナリー・オコナーは "Good Country People" か、"A Good Man Is Hard to Find" のどちらかを訳そうと思っていたんですが、どちらを訳すにせよなかなか体力が入りそうで、ちょっと二の足を踏んでいます。
オコナー自身が自著を語った『秘儀と習俗』のなかで、「善良な田舎の人びと」の義肢が奪われることを、作者自身も最後の最後まで知らなかった、と書いているのですが、「何も信じていない」とあとになって言う聖書のセールスマンがそれを奪っていくんですよね。
おそらくそれが「陵辱」の一種のメタファーだろうとは思うんですが、よくわからないんです。
博士号を取った=勉強することで「世界」をわかったつもりでいるハルガと、紋切り型のフレーズで世間を切りとって「単純」に見ているホープウェル夫人(娘にも「ジョイ」というとってもわかりやすい名前をつけたけれど、娘の方は親元を離れるとすぐに「ハルガ」と改名したのでした。
そうして、世間と二種類のやりかたでつきあっている、つまり、一種類の世界しか知らない先のふたりにくらべて、影と光の両方の部分を知っているミセス・フリーマン、彼女はこの言葉からもわかるように、それほど遠くない祖先に解放奴隷を持つ人です。ホープウェル夫人は、自分が人種偏見を持っていないことを示すために、フリーマン夫婦を雇っている。
そこに「聖書売り」の流れ者が来る。
もうアメリカ文学では、定番ともいえるパターンです。スタインベックの「菊」も同じ構造ですよね。「聖書売り」は、何も信じていない、と言うことで、逆に紋切り型のとらえかたをしているホープウェル夫人よりも真剣に信仰の問題をとらえている、ともいえる。
そうして、"A Good Man Is Hard to Find" と同じように、そういう人物が「暴力」という役割を受け持つ。
やっぱり彼が義肢を奪うのは、ハルガが持っている「脚」なんて、まやかしにすぎない、と暴力的に真実に直面させるため?
何か、そんなふうに解釈すると、ひどく底の浅いものになってしまうような気がして。
また授業を受けてCocoさんが考えられたことを聞かせてください。
「ハッピーアイスクリーム」おもしろいでしょ。
本を読んでて、それまで忘れていた光景が、ぱっと浮かんできたんです。
そういうのに地域性はあるのか、じゃんけんの前に「最初はグー」とつけるのがいつのまにか全国的に普及したようには普及しなかったんだけど、それはどうしてなのか、とか、いろいろ考えるとおもしろいなあ、なんて。
そのうち、何かで使いたいと思っています(笑)。
書きこみありがとうございました。
またお話聞かせてくださいね。
正しいハッピーアイスクリームを初めて知りました。
「円盤」の方、いつもたのしく拝見しています。
>ぼくの地元では、先に「ハッピーアイスクリーム」を言ったやつが、相手をひっぱたいてよい、という殺伐としたローカルルールだったんですけれど。
もしかしたら男の子ヴァージョンってやつかもしれません。
だけど鬼気迫るものがありますね(笑)。
「○×※△■」(同時に何かを言いかける)
一瞬の間。
「ハッピーアイスクリーム」
バキッ。
「このヤロー、やりやがったな」
バキッ、ドカッ。
「ハッピーアイスクリームだろうが!」
ドスッ、バキッ。
こんな展開が予想されます。
ふたりの仲が深まること請け合い!
知ってる人がいて良かったです。
聞かせてくださってありがとうございました。