ビューッという音とともに、頭よりはるか高い位置の枝にブドウ弾がバラバラと降りそそいで、ファーカーを夢から覚ました。困った砲撃手が行き当たりばったりに、最後の一発を放り込んだのだ。跳ね起きたファーカーは、岸の斜面を駆け上がり、森に飛びこんだ。
一日中、天を移動する太陽の位置で進むべき道を探りながら、ファーカーは歩き続けた。行けども行けども森に果てがないように思われる。出口はどこにも見当たらず、木こりの踏み分け道さえないのだ。自分が住むところに、これほど未開の領域があろうとは思いもよらなかった。この新発見には、どこかしら薄気味悪いところがあった。
日が暮れると、すっかり疲れ果て、足は痛み、空腹は耐えがたかった。妻や子供たちのことを思うと、はやる気持ちが募る。とうとう、自分が知っている間違いのない道に続いていく道を発見した。街中の大通りのように広くて真っ直ぐに伸びていたが、人が通った様子がない。畑が広がっているわけでもない、どこかに家があるわけでもない。人が住んでいることを知らせる犬の鳴き声すらしなかった。木々の黒い幹が、道の両側に続いていく壁を作り、遠近法の練習で描く線図のように、地平線上の一点へと収束していた。木の間から見上げると、頭上には、見たこともない、大きな金色の星が輝いていて、奇妙な星座を作っていた。あの星の並び方には、秘密で禍々しい意味がこめられているにちがいない、とファーカーは思った。両側に広がる森からは、おびただしい不思議なざわめきが聞こえ、そのなかに混じって、一回、二回、そうしてもう一回、知らない言葉でささやく声が、はっきりと耳に届いた。
首が痛むので、手で触れてみると、ひどく腫れている。ロープが擦った傷が、首のまわりに黒い輪のようについているのだ。目も充血している。閉じることができないのだった。舌は渇きで膨れ上がり、歯の間から舌を出して、冷たい空気にさらして熱を冷まそうとした。人が通ったことのないこの道には、芝生のカーペットが、なんと柔らかに敷かれているのだろう。足の下の道を、もはや感じることができなくなっていた。
苦痛にも関わらず、どうやらファーカーは歩きながら眠っているようだった。いま見えているのは、別の情景だった。――おそらく、ただ幻覚症状からちょっと覚めただけだったのだろう。ファーカーが立っているのは、自分の家の門の前だった。なにもかもが、家を出たときのまま、朝日を浴びて、きらきらと輝き美しい。一晩中、歩き続けていたにちがいない。門を押して開け、広く白い小径を歩いていくと、ひるがえる女の服が見えた。妻だった。みずみずしく、穏やかで、優しげなたたずまいで、ヴェランダの階段を下りて、こちらへやってくる。一番下の段で立ち止まった。言葉にならないほどの喜びに満ちた笑みを浮かべ、較べるものがないほどの気品と威厳を備えて、待っている。ああ、なんと美しいのだろう。両手を差し伸べて、駆け寄った。妻を抱きしめようとした、その瞬間、首の後部に息が止まるほどの打撃を感じた。目も眩むような白い閃光が、大砲の衝撃のような音とともに、あたり一面を燃え立たせた――そののち、一切が闇と静寂に包まれた。
ペイトン・ファーカーは死んだ。首の折れたその死体は、アウル・クリーク鉄橋の横木の下で、左右にゆっくりと揺れていた。
(明日はこの作品と作者のビアスについて、ちょっと書きます)
***
―編集済―
一日中、天を移動する太陽の位置で進むべき道を探りながら、ファーカーは歩き続けた。行けども行けども森に果てがないように思われる。出口はどこにも見当たらず、木こりの踏み分け道さえないのだ。自分が住むところに、これほど未開の領域があろうとは思いもよらなかった。この新発見には、どこかしら薄気味悪いところがあった。
日が暮れると、すっかり疲れ果て、足は痛み、空腹は耐えがたかった。妻や子供たちのことを思うと、はやる気持ちが募る。とうとう、自分が知っている間違いのない道に続いていく道を発見した。街中の大通りのように広くて真っ直ぐに伸びていたが、人が通った様子がない。畑が広がっているわけでもない、どこかに家があるわけでもない。人が住んでいることを知らせる犬の鳴き声すらしなかった。木々の黒い幹が、道の両側に続いていく壁を作り、遠近法の練習で描く線図のように、地平線上の一点へと収束していた。木の間から見上げると、頭上には、見たこともない、大きな金色の星が輝いていて、奇妙な星座を作っていた。あの星の並び方には、秘密で禍々しい意味がこめられているにちがいない、とファーカーは思った。両側に広がる森からは、おびただしい不思議なざわめきが聞こえ、そのなかに混じって、一回、二回、そうしてもう一回、知らない言葉でささやく声が、はっきりと耳に届いた。
首が痛むので、手で触れてみると、ひどく腫れている。ロープが擦った傷が、首のまわりに黒い輪のようについているのだ。目も充血している。閉じることができないのだった。舌は渇きで膨れ上がり、歯の間から舌を出して、冷たい空気にさらして熱を冷まそうとした。人が通ったことのないこの道には、芝生のカーペットが、なんと柔らかに敷かれているのだろう。足の下の道を、もはや感じることができなくなっていた。
苦痛にも関わらず、どうやらファーカーは歩きながら眠っているようだった。いま見えているのは、別の情景だった。――おそらく、ただ幻覚症状からちょっと覚めただけだったのだろう。ファーカーが立っているのは、自分の家の門の前だった。なにもかもが、家を出たときのまま、朝日を浴びて、きらきらと輝き美しい。一晩中、歩き続けていたにちがいない。門を押して開け、広く白い小径を歩いていくと、ひるがえる女の服が見えた。妻だった。みずみずしく、穏やかで、優しげなたたずまいで、ヴェランダの階段を下りて、こちらへやってくる。一番下の段で立ち止まった。言葉にならないほどの喜びに満ちた笑みを浮かべ、較べるものがないほどの気品と威厳を備えて、待っている。ああ、なんと美しいのだろう。両手を差し伸べて、駆け寄った。妻を抱きしめようとした、その瞬間、首の後部に息が止まるほどの打撃を感じた。目も眩むような白い閃光が、大砲の衝撃のような音とともに、あたり一面を燃え立たせた――そののち、一切が闇と静寂に包まれた。
ペイトン・ファーカーは死んだ。首の折れたその死体は、アウル・クリーク鉄橋の横木の下で、左右にゆっくりと揺れていた。
The End
(明日はこの作品と作者のビアスについて、ちょっと書きます)
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―編集済―
えーっと、pod? さやエンドウ (?_?)......なんちゃって、ココ流してネ。
なにやら、みっふぃちゃんには似合わない愚痴。
まぁ、こう毎日暑くて休みなしじゃ、悶悶も遣る方なしかいねぇ。(ココも流してネ)
最近、フィットネスクラブで3回体験して¥3150とか
結構お手軽にスポット利用できたりするですよ。
ストレス抜きにちょっと泳いでくるといいですよ。
私は今そんなところでよく泳いでます。
んじゃ。(はげましているつもりだけど、ちょっと下手かも)
朝、まずかったナー、と思って消しに来たら、コメントがついてた(笑)。←これ、嫌みとかそんなんじゃありません。そう言っていただいたお気持ちは、ありがたく受け取らせていただきました。ほんと、どうもありがとうございました。
泳ぐのも、いいかもしれませんね。
泳ぐの、好きなんです。
体調さえ悪くなかったら、1kmくらい平気で泳いじゃう。
今度、行ってみよう。
i-podじゃなくてもいいんですけど、携帯音楽プレーヤー、ひとつ買おうと思ってるんです(ほら、物欲番長が登場した)。
これまで電車のなかでは本を読んでることが多くて、miniディスク用のウォークマン(いつの時代だ……)以来、そういうのを持ってなかったんですけど、最近ちょっと電車の中でも何か聴きたいなーと。
わたしは室内楽を集中して聴く時期、オペラばっかり聴いてる時期、ジャズっぽい時期、なんて、時期ごとにそのジャンルを集中して聴きたい感じなんですね。
で、いまは、プログレっつか、そんな感じ。
ロックって音量あげて聴くと、相当いろんな音が聞こえてくるんです。普段聴いてるときは、落としている細かい音を、ヘッドフォン使って、できるだけ拾って聴きたい。
ほんと、全然ちがうんです。立体感、つか、奥行き、つか、とにかくまったく別のものになってしまう。
だからできれば音質のいいものがほしい。
人が休んでいる間も、せっせと働いてるんですから(笑)そのぐらい散財しても、バチは当たらないかな、と。
というわけで、コストパフォーマンスの高い、携帯音楽プレーヤーを求めて、あっちこっちのぞいてるんです。
i-pod使ってる人とか、パナソニックのメモリー・オーディオ・プレーヤーもいいよ、とか、何かありましたら教えてください。
いや、ヨドバシのポイントも、けっこう溜まってきたし(笑)。
> 泳ぐの、好きなんです。
水泳は全身運動でいいそうです。軽く1kmですか、やりますね。私もクロールでゆっくりならゴーグルに水が溜まるまで泳げますよ。
でも前に姿勢の本で知ったんだけど、クロールは姿勢を歪めるんだって。基本的には、幼少時からよほどの頻度で続けたらの話しだけどね。
片側だけで息継ぎする、あの左右均衡を欠く運動がいけないらしい。これはクロールに限ったことではなく、鞄を持つ手や噛み合せなんかにも言えることで、常に負荷が左右同程度にかかるように配慮してあげると好ましいんだって。
そうと知ってから、クロールで泳ぐときは右に顔をあげたら、その次は左にあげて息継ぎするようにとフォーム改善を試みたんだけど、なぜか今までしなかった側での息継ぎが上手くできない。左右の動きを逆転させればいいだけと、頭で考えれば考えるほどに動きはぎこちなくなって、あっぷあっぷで溺れてます。
考えてみれば、書道、楽器、ダンスなど多くの習い事は、
思ったとおりに体が動かないから、習い事なんですね。
頭でわかっていても、実際にその通りに動かせるようになるまでにはすごい隔たりがあるんだって、あらためて気付かされました。
ってことで「なんでも左右バランスよく」が大切だそうです。鞄を持つ手は決めないこと、ほら、そこの書見台もたまには反対に持ってきて、左前もときには右前に……ってそれは違うか。
> ヘッドフォン使って、できるだけ拾って聴きたい。
そうそう、ホラー映画とかね、
ヘッドフォンで観ると臨場感が全然違うんですよ。人気のないところで突然ガターン!と音がして「ミャ~」と猫がないて「なんだ、びっくりした」って脅かすだけの『そんな手もう飽き飽きだよ』って言いたくなるシーンが、ヘッドフォンだと、最初のガターン!で、びくっ~となってもう固まってます。
ヘッドフォンで全然変わるってのは、ホラー映画にも言えることですね。
> だからできれば音質のいいものがほしい。
メモリー64Mが標準だった頃にRio600が私のMP3プレイヤー初代機で、2年ほど前に買ったCREATIVE DMPLX200(256M)の二代目が今も現役です。
で、詳しくはないけど思いついたところを書くと、
本体の音質ってのはそこそこのメーカーなら似たり寄ったりでしょう、多分。音質に投資するなら本体よりイヤホンじゃないでしょうか。
おすすめは、ソニーMDR-EX71SL 密閉型インナーイヤーレシーバー
http://www.yodobashi.com/enjoy/more/i/cat_1045_35770387_36173527/6853715.html
発売は2003/03ですがマイナーチェンジを繰り返して、今は相当洗練されてます。最初に買ったこれを、コードが断線気味になる寿命まで使って、その次も迷わず同じものを買いました。
ちょっと高いけど価値ありです。それに、枕を頭に横向きに寝て耳が痛くならないヘッドホンはこれだけでしょう。長時間装着も苦にならないし。
> いや、ヨドバシのポイントも、けっこう溜まってきたし(笑)。
ダメですね、(-_-メ)
あのポイントは溜めるものじゃないですよ。毎回「あれば使用で」と言うべきものです。ニノミヤNICEカードのポイント、総額幾ら分が露と消えたことか。
私なんか2個買い物があるときは、わざわざ2回にレジを分けて買うほどです。もちろん、高いほうを先に買って、と抜かりなく。
すぐに息があがってしまう。
だから泳ぐのは、もっぱら平泳ぎのほうです。ゆったりと水にのっていけば、相当距離はかせげます。ちょうどジョギングする感じかもしれません。
>考えてみれば、書道、楽器、ダンスなど多くの習い事は、
>思ったとおりに体が動かないから、習い事なんですね。
確かに、頭で理解するのと、身体が動けるようになるのはちがいますよね。
身体が自然と動いていく、そこまで行くための基礎訓練だし、たいていの人はそこでいやになっちゃう。
最近、なんだかんだ毎日聴いているDream Theatreのマイク・ポートノイ、この人のドラムってすごいんだけど、ほんと、自由自在に叩いてます。天翔ける、って感じ。音そのものは重い(鈍重って意味では全然ない)、どれだけ早く叩いてもズシッとくる、重量感のある音なのだけれど。
理想なんですよね。そこまで行くのが。
頭で考えるでしょ、身体を動かそうとするでしょ、なかなかそのふたつが一緒にならない。
思うように身体を動かせるまでが、ひと訓練だし、思う=身体が動く、が一体となるまでが、さらにひと訓練、って感じがする。そこまで行くと、思うことは身体が動くことだし、身体が動くことは思うことなんだな、って思います。
ヘッドフォンも、ポートノイ(こう書いちゃうと、フィリップ・ロスの『ポートノイの不満』っていうすごい小説を思い出しちゃうんだけど)の音を、できるだけ細かく聴きたい、っていうのもあるんですよね。
おすすめのヘッドフォン、教えてくださって、どうもありがとうございました。
耳がけ式は、メガネかけてるときはちょっと耳、痛くなっちゃうんですよね。
型番書いていって、試聴させてもらってこようと思います。
確かにヘッドフォン、良いのを選ぶのが必要かもしれません。
書き込み、いつもありがとう。