陰陽師的日常

読みながら歩き、歩きながら読む

あなたのなかの「子供」―描かれた子供たち 4.

2007-01-29 22:15:30 | 
4.恐ろしい子供

もちろん子供の中には純真無垢な子供たちばかりではない。恐ろしい子供たちも登場する。

P.D.ジェイムズの『人類の子供たち』の舞台が幕を開くのは、2021年年。この日、地球で誕生した最後の赤ん坊が、誕生してから二十五年後、パブのケンカ騒ぎに巻きこまれて死ぬ。

この世界では、理由は定かではないけれど、人類は生殖能力を失ってしまう。1995年生まれの子供を最後に、子供はただのひとりも生まれなくなってしまったのだ。
この1995年生まれの子供たちはオメガと呼ばれている。彼らほど研究調査し尽くされ、激しい感情の対象になり、大切に甘やかされた年代もいないだろう。彼らはわれわれ人類救済の希望、望みだった。…
今二十五歳の青年になった男子は、強く逞しく、個性的で知的、まるで若い神々のように端正で美しい。同時に残酷で傲慢、粗暴な者が多い・これは世界中のオメガに共通して見られる性質だ。夜間、田舎道を来るまで走り回り、不注意な旅行者を待ち伏せて襲撃する〈隈取り族〉のグループもオメガたちだという噂だ。
P.D.ジェイムズ『人類の子供たち』(青木久恵訳 早川書房)


「人類の子供たち」オメガは、まるで『時計仕掛けのオレンジ』の登場人物たちのように、狼藉を働くものたちもいる。ほかの世代にとっては、理解不能な「子供たち」なのである。

作品に登場するオメガたちは、実際の子供というにはずいぶん薹が立っているが、ドリス・レッシングの『破壊者ベンの誕生』には、こんな奇妙な子供が誕生する。

60年代のイギリスの自由奔放な空気の中で、古風で保守的なディヴィッドとハリエットはアウトサイダーとしてお互いひかれてゆく。そうして、堅実な家庭を築き、つぎつぎと四人の子供を授かる。元気でかわいい子供たち。
ところが五番目に生まれたベンだけは、様子が異なっていた。
彼女はベンに高い高いをしてやった。彼は身をよじり、もがき、あばれ、独特の泣き声をあげたが、それは唸り声とも吠え声ともつかぬもので、そのうち怒りのあまり、彼は――普通のむずかる赤ん坊のように、赤くならないで――黄色がかった白い色に変わっていった。
ドリス・レッシング『破壊者ベンの誕生』(上田和夫訳 新潮文庫)

ベンは成長しても両親や兄や姉と心を通わすこともできない。わずかな言葉しかしゃべらず、読むことも書くこともできない。ところが十一歳になっておちこぼればかりが集まる学校に進んでから様子が変わっていくのだ。

(変なところで終わってしまいましたが、明日はここから最後にいきます)


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