関電不正 原発マネーの闇を暴け (2019年9月28日 中日新聞)

2019-09-28 09:49:20 | 桜ヶ丘9条の会
関電不正 原発マネーの闇を暴け 
2019/9/28 中日新聞
 原発の立地対策にと、電力会社が地元に流した資金が、当の電力会社のトップのもとへ還流されていたという。本はといえば電気料金か。にわかには、信じ難い事件である。原発マネーの闇は深い。
 菅原一秀経済産業相のコメントを待つまでもなく「事実なら言語道断」の事件である。
 関西電力の八木誠会長、岩根茂樹社長らが、関電高浜原発が立地する福井県高浜町の元助役(故人)から二〇一八年までの七年間に総額約三億二千万円を受け取っていたことが金沢国税局の税務調査などで明らかになった。
 関電から高浜町内の建設会社に支払われた原発関連の工事費の一部が、「顔役」と呼ばれる元町助役の仲介で、還流されていたという。元助役には工事受注に絡む多額の手数料が渡っていたとみられている。電力会社から地域に流れた「原発マネー」が、巡り巡って電力会社の経営トップのもとへ-。ならば前代未聞の不祥事だ。
 原発を引き受けてくれた自治体には、電源三法交付金など巨額の原発マネーが流れ込み、「ハコモノ」づくりに注ぎ込まれ、多くの利権を生んできた。
 歳入の大部分を原発マネーに依存してきた自治体では、財政のゆがみのもとにもなってきた。
 今回、関電トップに還流されたとみられる資金も、本はといえば、恐らく電気料金だ。
 福島の事故以前、発電量の五割以上を原発に依存してきた関電は「原発停止で発電コストがかさむ」と言い、値上げをちらつかせながら「早期再稼働が必要だ」と訴えてきた。
 3・11後、再稼働した原発は計九基。このうち四基が関電の原発だ。今年四月、原子力規制委員会が、期限までにテロ対策を完了できない原発の停止を求める方針を打ち出した。その時も「電気料金を値上げする事態もある」と、幹部が不満を漏らしていた。
 経営者個人に還流される資金があれば、電気料金の維持や値下げに回すべきなのだ。
 地元住民のみならず、電力消費者に対しても重大な背信行為である。
 八木会長は三年前まで、原発推進の旗振り役である電気事業連合会の会長だった。原発そのものに対する不信も一層深まった。
 事態はもはや、社内調査の域にはない。国税、そして検察当局は速やかに摘発のメスを入れ、原発マネーによる底知れぬ汚染の闇を暴くべきである。






「原発の盟主」深い闇 関電の20人に金品 (2019年9月28日 中日新聞)

2019-09-28 09:28:42 | 桜ヶ丘9条の会
「原発の盟主」深い闇 関電20人に金品 
2019/9/28 中日新聞

 関西電力の会長ら二十人が、高浜原発を抱える福井県高浜町元助役から総額三億二千万円相当の金品を受領していたことが判明した。資金の出元は関電から関連工事を受注していた建設会社とみられ、「原発マネー」の還流も疑われる。表面化した電力会社と立地自治体側の後ろ暗い関係。東京電力福島第一原発事故で大きく損なわれた原子力政策への国民の信頼は一層低下しかねず、各地の原発再稼働にも影響が出る可能性がある。

■配慮

 「そのような認識はない。対価的行為もなく、工事の発注も社内ルールに基づいて適切に実施した」
 二十七日午前、大阪市北区の関西電力本店で開かれた臨時記者会見で、岩根茂樹社長は謝罪する一方、資金還流や不正の認識を強く否定した。
 金品を渡した人物との関係について「支障が出ると、原子力の運営に悪影響が出るのではと思った」などと繰り返し言及した岩根社長。地元で「陰の権力者」とも呼ばれた元助役の故森山栄治氏への配慮をうかがわせた。
 これに対し、森山氏をよく知る高浜町の男性の証言は岩根社長の説明とは異なる。「金品提供は何十年も前からやっていた」と指摘。森山氏は同時に地元建設会社に高浜原発での仕事を発注するよう求めていたという。

■共存

 原発事業を円滑に進めたい電力会社と、経済効果を期待する地元側の“共存”関係が垣間見える今回の問題。原発事故で今も全町避難が続く福島県双葉町の伊沢史朗町長は「他の立地自治体でも同じ構図があると思われるのは遺憾だ」と怒りをにじませる。
 第一原発は1号機が運転を開始した一九七一年から事故までの約四十年間、雇用や税収などで地元に経済効果をもたらしてきた。「事故前は、町が原発と共生するという感覚はあったかもしれない」と認めるが、「本来、われわれはお礼される側だ」。関電側に金品を提供していた森山氏のケースは異様に映るという。
 関電は他に美浜原発、大飯原発(いずれも福井県)を持つ。これらの原発について、関電は同様の事案は現時点で把握していないと説明。詳しい調査をするかどうかは「今後の検討」とした。

■不信

 原発事故で賠償などの対応に追われる東電に代わり、関電は電力業界の盟主として存在感を高め、岩根社長は電気事業連合会の会長も務める。原発への世論の風当たりが根強い中、再稼働に望みをつなぐ業界内で「停滞する原子力政策を前に進め、業界を引っ張っていくリーダー」(大手電力関係者)としての期待を一身に背負ってきた。
 それだけに、業界のみならず再稼働を進めたい政府にとっても今回の問題の衝撃は大きい。経済産業省は二十七日午前、関電幹部を急きょ呼び付け事情聴取。菅原一秀経産相も「ゆゆしき事態だ」と語気を強めた。
 ある政府関係者は「ここまで不透明な関係が、原発事故を経た今も続いていたと明るみに出たダメージは計り知れない」と指摘。「再稼働のために金をばらまいていたならまだ理屈は付くが、電力会社側が逆にもらっていたなんて」と憤る。
 原発を持つ電力会社関係者は吐き捨てるように言った。「国民の不信感がさらに高まるのは間違いない。原発事故後、信頼回復に向けて努力してきたことが水の泡だ」