高浜原発再稼働 信頼を結べぬままに(2016年1月30日中日新聞)

2016-01-30 09:19:23 | 桜ヶ丘9条の会
高浜原発再稼働 信頼を結べぬままに 

2016/1/30 中日新聞
 絶対の安全などないという。だとすれば、大切なのは「信頼」だ。その信頼を結べぬままの関西電力高浜原発(福井県)再稼働。何をそんなに急ぐのか。

 何度でも繰り返す。

 原子力規制委員会をはじめ、誰も安全だとは言っていない。安全を保証するものはいない。

 万一の事故が起きても、原状回復はおろか、満足な補償ができる力は国にもない。ほとんど無責任体制のまま、立地する自治体だけの同意を免罪符のようにして、原発が再稼働されていく。

 これではまるで、無保険の自動車が人混みの中を高速で突っ走るようなものではないか。

お隣さんは口出すな

 あれから間もなく五年になる。福島の尊い教訓が、あまりにも軽視されてはいないだろうか。

 今月二十五日、滋賀県と関電の間で、高浜原発に関する安全協定が締結された。

 滋賀県は、原発が集中立地する福井県に隣接し、高浜原発の三十キロ圏内に一部が入る。

 福島の事故のあと、原発三十キロ圏内には避難計画の策定が義務付けられた。それほど危険な所にあるということだ。

 滋賀県の嘉田由紀子前知事は3・11後、原発事故の被害を受ける地域は原発の地元であるという「被害地元」という考え方を提唱した。

 ところが、結ばれた協定の中身は、異常時の通報や、核燃料や放射性廃棄物輸送の際の連絡義務が中心で、原発再稼働の事前協議に加わる「同意権」は含まれない。

 新増設など重要な変更を事前に説明する義務もない。

 三十キロ圏内にかかる高島市なども、当事者扱いされてはおらず、通報内容などをその都度県に聞くしかない。

ちゃんと避難できるのか

 「安全」とは名ばかりの形式的な“通過儀礼”にとどまった。

 京都府は滋賀県より一足早く、昨年二月、同様の協定を結んだが、全国でただ一つ、原発から県境を越えた五キロ圏内、最短三キロという舞鶴市さえ、再稼働に関しては、沈黙を強いられる。

 高浜原発で重大事故が起きた場合の住民避難計画は昨年末、政府に了承されている。

 高浜原発では今月十一日から三日間、関電社員らが重大事故を想定した対応訓練を実施した。しかし、住民参加の広域的な避難訓練をしないまま、原子炉が起動する。順序が違う。ぶっつけ本番でうまくいくとは思えない。

 たとえば、京都市では六万五千人を受け入れる。府内では二千台以上のバスが必要になる。混乱は必至である。そもそもバスが確保できるのか。

 はじめに再稼働ありき。政府も含め、ハードルを可能な限り下げたうえでの再稼働なのである。

 福島では、福島第一原発から三十キロを超える飯舘村の一部が、いまだ帰還困難区域のままだ。

 事故発生直後には、屋内退避の指示が出た二十~三十キロ圏の病院の入院患者や福祉施設の入所者の移送の際に死者が出た。容体が重くて動かせず、圏内に取り残された患者も多かった。

 原発事故の被害は広域に及ぶ-。私たちは十分思い知らされたはずである。若狭の“原発銀座”で重大事故が発生すれば、日本海の強風にあおられて、その影響は福島以上に遠く、広く、拡散する恐れがあるという。

 被害地元の声に耳をふさぐということは、福島の教訓を踏みにじることにならないか。

 そして安全神話が復活し、悲劇を再び招く恐れが増さないか。

 “無責任”あるいは“先送り”は、ほかにもある。

 使用済み核燃料を保管する高浜原発の燃料プールは、すでに約七割が埋まっている。

 最終処分場選定のめどは立っていない。

 関電は二〇三〇年に、福井県外で中間貯蔵施設を稼働させると言っている。

 しかし、本紙の全国調査では、中間貯蔵施設の受け入れを前向きに検討すると答えた知事は一人もいない。やがてあふれ出す核のごみをどうするか。

安全はまた二の次か

 高浜原発3号機では、核兵器に転用可能なプルトニウムを核廃棄物から取り出して使うプルサーマル発電を実施する。

 リサイクル計画が頓挫する中、すでにあるプルトニウムを減らすところを米国に示したいという国の事情もある。

 プルサーマル発電では、原子炉を停止させる制御棒が効きにくくなるという。安全性の検討が尽くされているとは言い難い。

 何度でも繰り返す。

 電力会社の台所事情と政府の思惑が最優先の再稼働。住民にとっては「危険」と言うしかない。

河川に有害物質 米軍も原因特定に協力を(2016年1月20日琉球新報)

2016-01-23 10:32:37 | 桜ヶ丘9条の会
<社説>河川に有害物質 米軍も原因特定に協力を
2016年1月20日 琉球新報

 環境汚染があった場合、即座に発生源を突き止めて汚染を止める必要がある。民間地域なら迅速に対応できるが、米軍基地ではそうもいかない。この状況は何としても改善しなければならない。
 水道水の水源でもある比謝川(嘉手納町など)などから、国内では輸入や使用が原則禁止されている有機フッ素化合物「PFOS(ピーフォス)」が検出された。
 ピーフォスは航空機燃料や洗浄剤などに含まれる。嘉手納基地の排水が流入した後、濃度が大きく跳ね上がっていることからすれば、嘉手納基地が汚染源である可能性は極めて高いといえよう。

 調査した県企業局は「発生源は嘉手納基地の可能性が高く、実態が明らかになれば使用の中止を申し入れる」としている。発生源を特定し、再発を防止するためには立ち入り調査も必要だ。
 ピーフォスは反復投与した動物実験で、死に至ることが確認された有害物質である。直ちに健康被害はないとしても、飲料水として日々使用する県民が不安を抱くのも当然だ。一日も早い問題解決を求めたい。
 事は米軍関係者にも関わる問題である。米軍は積極的に情報を開示し、原因特定に協力すべきだ。発生源が基地排水なら直ちに改善してもらいたい。そのためにも県が立ち入り調査を申請した場合、即座に認めることを求めたい。
 昨年9月に日米地位協定の「環境補足協定」が発効した。それによれば、日本側が基地内への立ち入りを申請できるのは、環境事故について米側が日本側に通報することが前提条件である。しかも米軍の運用を妨げないなどと米側が判断した場合に限って、立ち入りやサンプル採取による調査は認められる。
 米軍が汚染源とは特定されていないケースでも立ち入り調査ができなければ、不十分である。今回のケースを米側が環境補足協定の対象にするかを注視し、問題点をあらためて浮き彫りにし、実効性ある改正へとつなげたい。
 ピーフォス濃度の国内基準を設ける必要がある。国内の自然環境下での検出値は水1リットル当たり0・07~24ナノグラムに対し、大工廻川(沖縄市)では最大1320ナノグラムである。現に高濃度で検出されている以上、関係機関の環境保全意識を高めるためにも基準設定を急ぎたい。

政治とカネ 甘利氏は疑問に答えよ(2016年1月22日東京新聞)

2016-01-22 10:41:32 | 桜ヶ丘9条の会
政治とカネ 甘利氏は疑問に答えよ

2016年1月22日東京新聞


 またか、というのが率直な思いだ。現職閣僚に関わる「政治とカネ」の問題が報じられた。事実なら政治への信頼を著しく損ねる。甘利明経済再生担当相は、国民の率直な疑問に答えるべきだ。
 甘利氏の「政治とカネ」の問題を報じたのは、きのう発売された週刊文春である。
 記事によると、千葉県の建設会社が、県道工事をめぐり独立行政法人都市再生機構(UR)とトラブルになったことから、建設会社の総務担当者が二〇一三年五月に甘利氏の事務所に相談。URから補償金を得られたため、八月に謝礼として甘利氏の公設秘書に五百万円を渡した。
 総務担当者らはその後、十一月に、甘利氏に大臣室で直接、五十万円を謝礼として渡した。さらにURと新たなトラブルが起きたため、一四年二月、内容を説明した上で甘利氏に再び五十万円を渡した、という。
 甘利氏はきのうの参院決算委員会で、野党側の追及に対し「その会社の社長一行が大臣室を表敬訪問したのは事実だが、何をしたのか記憶が曖昧なところもある」「事務所に(業者が)来たことは覚えているが事実関係、記憶をたどっている」などと答えた。
 自身の金銭受領の話である。本当に記憶にないのだろうか。
 受領が事実なら、大臣室での五十万円は政治資金収支報告書への記載はない。寄付を受け取りながら意図的に記載しなかったとしたら、政治資金規正法違反に問われる可能性もある。甘利氏は事実関係を説明すべきであり、国会には追及の責務がある。
 甘利氏は安倍晋三首相を支える政権の中心メンバーで環太平洋連携協定(TPP)も担当する重要閣僚だ。「政治とカネ」の問題を抱えたままでは内閣全体の信頼性も揺らぐ。一六年度予算案審議への影響も避けられない。首相には任命責任もある。いずれ進退を判断せざるを得ないだろう。
 ただ、仮に閣僚や議員を辞めることがあっても、それで幕引きは許されない。甘利氏は政治倫理審査会など国会の場で、進んで説明責任を果たすべきだ。
 法に反する疑いがあるのなら、もちろん司法の出番である。
 秘書による口利きが今も日常的に行われているとしたら驚きだ。カネで政治をゆがめることがあっては断じてならない。甘利氏だけではなく、政治に関わる者全員が姿勢を問われている。いま一度、襟を正すべきである。


首相「改憲」発言 改正ありきは慎まねば(2016年1月21日中日新聞)

2016-01-21 10:35:20 | 桜ヶ丘9条の会
首相「改憲」発言 改正ありきは慎まねば 

2016/1/21中日新聞
 安倍晋三首相が夏の参院選で憲法改正を争点に掲げる方針を鮮明にしたが、どの部分の改正が必要か必ずしも明確ではない。国民の命運を左右する憲法である。改正ありきの姿勢は厳に慎むべきだ。

 首相は四日、恒例の年頭記者会見で「憲法改正はこれまで同様、参院選でしっかりと訴えていく。その中で国民的な議論を深めていきたい」と述べ、十日放送のNHK討論番組では「未来に向かって責任感の強い人たちと三分の二を構成したい」と語った。

 夏の参院選では憲法改正を重要争点に掲げ、与党と、おおさか維新の会など改正に前向きな「改憲派」と合わせて、改正の発議に必要な三分の二以上の議席を確保したいとの考えを示したものだ。

 憲法改正は一九五五年の自民党結党以来の党是だ。衆参両院で三分の二以上の議席を得て改正に道を開きたいのは、自民党総裁を兼ねる首相としては当然なのかもしれない。衆院では与党が三分の二以上を確保し続けており、夏の参院選こそ好機と考えたのだろう。

 現行憲法は改正手続きを条文で定めており、一般論で言えば、改正自体は否定されていない。

 しかし、今、改正しなければ国民の暮らしが脅かされるような条文がどこにあるというのか。

 首相自身も具体的な改正項目について「国会や国民的な議論と理解の深まりの中でおのずと定まってくる」と述べるにとどめる。改正自体が目的化してはいないか。

 自民党内で浮上しているのが、大規模災害や外国からの武力攻撃発生時の政治空白を避けるための緊急事態条項の追加だ。国民に根強い反発がある戦力放棄の九条改正ではなく、理解を得やすいとされる緊急事態条項を改正の出発点にしたいとの思いがあるようだ。

 とはいえ自民党がまとめた改正草案は、緊急事態の宣言時に、国会議員任期の延長に加え、内閣が法律と同じ効力を持つ政令を制定できることや、一時的な私権制限を認めることを盛り込んでいる。

 憲法は主権者たる国民が権力を律するためにある。いくら非常時とはいえ国会から立法権を奪ったり、基本的人権を侵害する憲法を認めるわけにはいかない。

 与党内では衆参同日選の可能性も取り沙汰されるが、その間「緊急事態」が起これば、国権の最高機関たる国会が機能しなくなる恐れがある。改憲派は、だからこそ改正が必要だと言いたいのだろうが、国民のことを考えるなら、そもそも同日選は理屈に合わない。

辺野古新基地建設を許さない闘いに連帯する自由法曹団声明(2016年1月16日)

2016-01-19 16:42:31 | 桜ヶ丘9条の会
声明
辺野古沿岸に米軍新基地建設を許さない沖縄の闘いは今重要な局面を迎えている。
2004年4月に始まった現地での反対運動は今年で12年目を迎え2014年7月に 始まったキャンプ・シュワブのゲート前での連日の座り込み闘争海上での建設阻止闘争は 1年6ヶ月目を迎えようとしている。この闘いは多くの県民の支持を受け今や島ぐるみの 闘いに発展している。
我々は今日の沖縄における米軍基地問題の根源は戦後米軍が「銃剣とブルトーザー」に 象徴されるように不法かつ強制的に土地を取り上げ米軍基地を建設したことにあるとの翁 長雄志沖縄県知事の指摘に全面的に賛同する。我々はこれに加えて戦前の天皇制の下で国 体護持を図るために悲惨な沖縄での地上戦を選択した国策さらに敗戦後サンフランシスコ 講和条約により沖縄を米軍施政権下に置いた国策にあることを指摘せざるを得ない。
このような沖縄県民に背負わされた苦悩と負担は本来1972年の日本国憲法の下への 復帰の際に日本政府の責任において清算され被害と負担の救済・回復がなされなければな らなかった。しかるに復帰後も日米安保条約の適用を根拠として米軍基地は存続されそれ どころか沖縄への米軍基地集中がなされた。その結果沖縄の苦難の歴史は解消されず現在 も続いている。辺野古新基地建設はその苦難の歴史を将来においても固定化するものと言 わざるをえない。
そのような状況に抗して沖縄県民が島ぐるみで新基地建設を許さない闘いに立ち上がっ ていることに対して我々は改めて心から敬意を表するとともに連帯して闘うこと表明す る。我々が沖縄の闘いで学ぶべき点は多いがその最大の特徴は県民の運動と自治体とが一 体となって進められている点にある。新基地建設に反対する民意を受けて就任した翁長知 事は「あらゆる手段を駆使して」新基地建設を許さない姿勢を明確に打ち出しそれを実践 している。
翁長知事が新基地建設の阻止辺野古沿岸海域の豊かな自然環境を守るために仲井真前知 事が行った埋立承認を取消したことに対し民意を代表する知事の正当な決断として高く評 価する。国は埋立承認取消処分の無効を主張して代執行訴訟を提起し現在福岡高等裁判所 那覇支部において係争中であるが我々は知事の応訴を全面的に支援すると同時に埋立承認 取消処分に対する国の対応は審査請求等を含めて政治的観点からの法的制度の濫用と評価 し得るものであり強くこれに抗議する。さらに我々は沖縄基地問題の本質として日米同盟 の要請があること安倍政権の戦争する国づくりと一体のものであることを看過してはなら ない。
我々は民主的な弁護士が結集する全国的弁護士団体として今回沖縄で常任幹事会を開催 した機会に改めて沖縄県民の闘いと県知事の取り組みを支援することを表明するものであ る。
2016年1月16日
自由法曹団・沖縄拡大常任幹事会