法律家6団体による「憲法違反の共謀罪創設に強く反対する共同声明」

2017-02-28 18:38:27 | 桜ヶ丘9条の会
憲法違反の共謀罪創設に強く反対する共同声明

2017年2月27日

共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会
社会文化法律センター     代表理事 宮 里 邦 雄
自由法曹団            団長 荒 井 新 二
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 原   和 良
日本国際法律家協会        会長 大 熊 政 一
日本民主法律家協会       理事長 森   英 樹
日本労働弁護団          会長 徳 住 賢 治

 安倍政権は,過去3度世論の強い批判により廃案となった共謀罪法案を,「テロ等準備罪」と呼ぶなどの粉飾を施し,4たび国会に提出しようとしているが,私たち法律家は,以下の理由により,同法案の国会提出に強く反対する。

共謀罪は,「犯罪についての話し合い」があったとみなされただけで,独立の犯罪の成立を認め,処罰しようとするものであり,国家刑罰権の著しい強化を狙うものである。
国家刑罰権は,国家権力が強制的に国民の生命・自由を奪うものであるから,努めて謙抑的に行使されねばならず,また,何が犯罪であり何が犯罪でないかが法律により明確に定められなければならない(罪刑法定主義)。このような近代刑法の大原則に基づき,我が国の刑事法体系では,犯罪は既遂処罰を原則とし,例外的に一部の犯罪について未遂や予備を処罰対象とし,意思や内心は処罰の対象としていない(行為原則・侵害原則)。ところが共謀罪は,予備にも達しない,極めてあいまいな「話し合い」があったと国家権力が認めた時点で犯罪が成立し,そのあと何もしなくても、仮に犯罪を断念したとしても処罰の対象とする点で,恣意的な権力行使を著しく容易にし,市民の内心の自由,正当な言論・表現を侵害し,適正手続原則に違反する危険が極めて高い。したがって、共謀罪法案は憲法19条,21条,31条に違反する法案である。
政府は,提出を検討中の法案は,話し合いだけでなく「準備行為」も要件とし,処罰対象を「組織的犯罪集団」に限るから一般市民は対象とならないなどと弁明してきた。しかし,過去の国会答弁では銀行でお金を下すという何ら危険でない行為も「準備行為」にあたるとし(2006年),先日法務省は,もともと正当な活動をしていたと認められる団体も,その目的が「犯罪を実行することにある団体」に一変したと認められる場合には「組織的犯罪集団」に当たるとの見解を公表した(2月16日)。すなわち,初めて「座り込みをしよう」と話し合った市民団体は,それだけで組織的威力業務妨害罪を目的とする組織的犯罪集団とみなされる可能性がある。さらに言えば,提出される法案では,2人以上が話し合いをしただけで「集団」とされる可能性も高い。
まさに一般市民の活動が狙い撃ちされる危険が極めて高い法案である。

 政府は,共謀罪法案は「テロ防止」目的の法案であり,「テロ防止」を目的とする国際組織犯罪防止条約を批准するために共謀罪を成立させることが不可欠であるなどと述べるが,これは二重三重に国民を騙すものである。
 まず国際組織犯罪防止条約は「テロ防止」目的の条約ではない。同条約は,「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため」(5条)のマフィアなどの越境的犯罪集団の犯罪を防止するための条約である。そのことは,国連の立法ガイドで「目標が純粋に非物質的利益にあるテロリストグループや暴動グループは原則として組織的な犯罪集団に含まれない」と明記されていることからも明らかである(26項)。
 また,共謀罪を創設しなくても同条約は批准できる。同条約中には長期4年以上の犯罪についての共謀罪又は参加罪の立法を義務付けているかのような文言があるが,国連の立法ガイドは「共謀罪や参加罪などの法的概念を持たない国においては,これらの概念を強制することなく,組織的犯罪集団に対する実効的な措置をとることも条約上認められる」(51項)と明記しているのである。
 そもそも我が国は,ハイジャック防止条約,シージャック防止条約等,テロ防止のための国連の主要13条約をすでに批准して国内法化も完了しており,これらに加え「テロ」を検挙・処罰するための法律も多数整備されており,「テロ防止」のためには現行法で十分である。また,「テロ」は単独で行われる場合もあるが,共謀罪は単独犯には適用できない。「テロ」と無縁の多くの犯罪について共謀罪を制定するという的外れの対策で,「テロ防止」ができると考えることの方が危険である。
 市民の「テロ」に対する不安に便乗して共謀罪成立を強行することは許されるものではない。

 政府はこれまで,長期4年以上のあらゆる犯罪(676と言われている)についての共謀罪を創設しなければ条約を批准できないとしてきたが,国民の強い批判を受け,対象犯罪を277とする方針をとったと伝えられている。
 しかし対象犯罪を277に絞っても,これだけの数の犯罪について当局が2人以上の「話し合い」とわずかな「準備行為」があると認めれば関係者を一網打尽にできる共謀罪の危険性は、戦前に猛威を振るった治安維持法をはるかに上回るものである。また,長期4年以上の全犯罪を対象としなくても条約の批准が可能だというならば,政府のこれまでの議論の前提は崩れており,共謀罪を成立させなくても国内法は整備済みであるとして、条約を批准できるはずである。
 政府の説明は完全に破綻している。それにもかかわらず政府が共謀罪の成立に固執する目的は,「テロ防止」や「条約の批准」以外の,市民の監視,市民運動などの弾圧にあるとしか考えられない。

 2016年5月,刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立し,盗聴法(通信傍受法)の対象犯罪の大幅な拡大と手続の緩和,他人の犯罪を証言することにより自己の犯罪を免れることができる司法取引の導入など,捜査権限が格段に拡大強化された。
 共謀罪の犯罪構成要件は「話し合い」であるから,電話やメールなどによる「話し合い」を立証しなければ強制捜査も公判維持も不可能である。従って,仮に共謀罪が成立したならば,情報収集目的で市民を監視する警察活動がますます強化され,その中で別件盗聴も行われ,盗聴法の対象犯罪に共謀罪を含める法改正や,部屋に盗聴器を仕掛ける「会話傍受」の法制化も企てられるであろう。現に法務大臣は,共謀罪を通信傍受の対象とすることは将来の検討課題だと認めている。司法取引・密告により「共謀」を立証することも行われるようになり,共謀罪の冤罪事件が大量に発生する危険性も現実味を帯びている。
 4度目の共謀罪法案について,政府は過去3度の法案より要件を厳格にするなどと言うが,新設され強化された捜査手段とあいまって,むしろ過去の法案よりも人権侵害の危険性は飛躍的に高まっている。

 戦争への道を突き進み,憲法9条の改悪を企む安倍政権は,これに対抗する巨大な市民・野党の共同の運動が生まれたことに脅威を感じ,運動の弾圧を狙い,批准予定の国連条約が目的としていない「テロ防止」など嘘に嘘を重ねて共謀罪を強行に成立させようとしている。共謀罪はまさに現代の治安維持法である。この認識の下に,私たち法律家は広範な市民と手を携え,共謀罪の成立を阻む闘いに全力を尽くす決意である。

原発処理費、40兆円に拡大 国民の負担重く(2017年2月26日中日新聞)

2017-02-26 10:12:50 | 桜ヶ丘9条の会
原発処理費、40兆円に拡大 本紙集計、国民負担重く 

2017/2/26 中日新聞

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から間もなく六年。福島第一をはじめとする廃炉や使用済み燃料再利用など原発の後始末にかかる費用が膨張している。本紙が政府推計や予算資料を集計したところ国内の原発処理の経費は最低四十兆円に上ることが判明。原発のある自治体への補助金などの税金投入も一九七〇年代半ばから二〇一五年度までに十七兆円に達した。すでに国民が税などで負担した分を除き、増大する費用は電気代や税で国民が支払わねばならず、家計の重荷も増している。

 四十兆円は国民一人当たり三十二万円に上る。原子炉や核燃料処理費がかさむのは危険な核物質を処理する必要があるため。自治体補助金も「迷惑料」の色彩が強い。原発の建設・運営費も事故後は安全規制強化で世界的に上昇している。

 政府は福島事故処理費を一三年時点で十一兆円と推計したが、被害の深刻さが判明するにつれ、二十一兆五千億円と倍増。本来は東電が負担すべきものだが政府は原則を曲げ、電気代上乗せなど国民負担の割合を広げている。

 被災者への賠償金は、新電力会社の利用者も含め全国民の電気代に転嫁され、福島原発廃炉費も東電管内では電気代負担となる方向だ。除染も一部地域について一七年度から税金投入(初年度三百億円)する。

 一兆円を投入しながら廃止が決まった高速増殖炉「もんじゅ」については、廃炉費用や別の実験炉「常陽」の稼働費用を足し合わせると計一兆六千億円になる見通し。政府は昨年末にもんじゅ後継機の研究継続を決定しており、税金投入はさらに膨らむ方向だ。

 青森県の再処理工場などもんじゅ以外の核燃料サイクル事業にも本紙集計では税金などで十兆円が費やされた。核燃料全般の最終処分場の建設費も三兆七千億円の政府見込みを上回る公算だ。

 福島第一以外の廃炉費用(予定より廃止を早める原発の廃炉費を除く)は、二兆九千億円になると政府が推計している。

 自治体への補助金も電気代に上乗せする電源開発促進税が主な財源。多くの原発が非稼働の現在も約千四百億円(一五年度)が予算計上されている。

 大島堅一立命館大教授によると一キロワット時当たりの原発の発電費は安全対策強化で上昇した原発建設費も算入すると一七・四円となり、水力(政府試算一一・〇円)を六割、液化天然ガス火力(同一三・七円)を三割上回る。原発を進める理由に費用の安さを挙げてきた政府の説明根拠も問われている。


戦争は兵士の心も破壊 旧日本軍のPTSD8000人分の日誌が存在(中日新聞2017年2月24日)

2017-02-24 18:44:12 | 桜ヶ丘9条の会
戦争は兵士の心も破壊 旧日本軍のPTSD8000人分の日誌が存在 

2017/2/24 中日新聞

 第2次大戦中、戦場で精神を病んだ兵士を専門に収容した病院があった。千葉県市川市にあった国府台(こうのだい)陸軍病院だ。当時の医師たちは軍令に逆らい、患者の診療記録をひそかに残していた。安全保障関連法により、自衛隊に危険な任務が加わった今、戦争による「心の破壊」は遠い過去の悲劇ではない。先人の遺志を受け継ぐ研究者たちは、この貴重な診療記録で、旧日本軍兵士の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の分析に心血を注いでいる。

◆病床の記録を継承

 千葉県の九十九里浜に近い浅井病院(東金市)。敷地内のプレハブ小屋にざっと千冊の「病床日誌」がある。

 第一次大戦中、旧日本軍は兵士の精神障害の原因を本人の精神的弱さと決め付け、存在を隠してきた。重火器が登場すると、砲火による強烈な爆風が脳に損傷を与える「砲弾ショック」という外因性の病だと信じていた。第二次大戦では戦場で精神を病む兵士がさらに増え、陸軍はついにこの病を「戦時神経症」と位置付けた。一九三八年、国府台陸軍病院を専門院に指定した。

 浅井病院の初代院長の故浅井利勇(としお)氏は国府台陸軍病院の精神科医だった。生前の浅井氏が残した著書「うずもれた大戦の犠牲者」によれば、第二次大戦中の全期間を通じて勤め上げたのは、病院長の諏訪敬三郎氏と浅井氏だけだった。

 四五年に終戦を迎え、国府台陸軍病院にも全資料の焼却命令が下った。しかし、医師らは約八千人分の患者の「病床日誌」をドラム缶に詰め、中庭に埋めた。浅井氏は著書で「貴重な資料を焼却するにしのびず」と残している。この病床日誌は五一年に掘り出され、下総精神医療センター(千葉市)に保管された。

 浅井氏は終戦後まもなく浅井病院を開院した。七〇年代に入り、国府台陸軍病院の病床日誌の整理に着手。医療センターから原本をトラックに載せて自院まで運び、全てを二部ずつ複写し、退院日順、病名別にとじた。現在、プレハブ小屋に眠るのは、その資料だ。

 研究に約十五年の歳月をかけ、浅井氏は九三年に著書を自費出版した。浅井病院の長沼吉宣秘書課長は「『多くの人に知ってもらいたい』と全国の大学や公立図書館に送付する作業を手伝った。浅井先生は『誰かがまとめて発表しないと、患者がかわいそうだ』と言っていた」と振り返る。浅井氏は著書で「多くの将、兵の患者さんの思いがしみじみと感ずる貴重なこのあかしを、真実を、残しておきたい」と述懐している。

◆住民銃殺の悪夢 敵や銃声の幻聴

 これらの病床日誌は、兵士の氏名や生年月日、出身地、前職、病の原因分析や医師との会話、本人の手記などからなる。上官のしごきや戦闘での恐怖、罪悪感…二十代の青年たちの破壊された心の傷が克明につづられている。

 三重県出身で、前職が農業だった兵士は中国北部の討伐作戦で右足に被弾し、心を病んだ。敵が迫る声や銃声などの幻聴、頭痛にいつまでも苦しんだ。長野県出身で十九歳で発病した兵士は手記を残した。「早ク中隊ニカエリタイ ミナサンハオレガヨンデモ シジヲシテクレナイ カナシイ ミミガスコシモキコヘナイ アタマノワカラナイノガカナシイ」

 山形県で郵便局員だった兵士は、医師に打ち明けた。「河北省ニ居タ時隣接部隊ガ苦戦シ自分ラガ応援ニ行ッタ/隣接部隊ノ兵ガ沢山(たくさん)死ンデイタ/ソノ時部隊長ノ命令デ附近(ふきん)ノ住民ヲ七人殺シタ/銃殺シタ」。不眠となり、風呂でも廊下でも誰かが襲ってくるという強迫観念におびえ続けた。

 戦後七十年がたち、自衛隊が再び戦闘地域へ派遣されるようになった。旧日本兵の苦悩を繰り返させまいと、浅井氏の研究を引き継いだ人々がいる。国府台陸軍病院の病床日誌を研究し「日本帝国陸軍と精神障害兵士」(不二出版)を記した埼玉大の名誉教授の清水寛氏と細渕富夫教授だ。

 細渕氏は言う。「空襲や原爆の被害は外傷で悲惨さを目の当たりにする。しかし、外見は普通でも、戦争で心が傷ついた兵士はひた隠しにされ、ほとんど語られてこなかった。だからこそ、この貴重な資料を残す意味がある」

 第二次大戦で戦時神経症を患った元兵士は、今もいる。厚生労働省によると、二〇一五年度に戦傷病者特別援護法(戦特法)に基づいて国から医療費の給付を受けたのは百九十七人で、うち精神疾患は十一人だった。

 清水氏は二〇〇〇年代、生存する患者九人を訪ねた。「ある患者は新兵訓練として中国人を殺害したことが、ずっとトラウマ(心的外傷)になっていた」。研究の原点はシベリア抑留から戻り、精神を病んだ父親だ。「道端の馬フンを拾ってきて『ひろし、ロスケのパンだ、食べろ』と言った。自分の名前も家族も分からないのに、最晩年は夜中に跳び起き『ソ連軍が来るから逃げろ』と叫んだ」。清水氏は語気を強めた。「殺し殺されの体験をすると人生で二度苦しむ。一度目はその直後、二度目は死ぬ間際だ。心に深く刻まれた恐怖が弱った体によみがえる」

◆自衛官の調査急務

 政府は一五年、インド洋のテロ対策に伴う補給活動やイラクの人道復興支援活動に派遣された自衛官のうち五十六人が自殺したと公表した。清水氏は警告する。「一人自殺者がいれば十人の精神障害者がいるというのが僕の実感だ。自衛隊で、おびただしい精神障害者がつくられようとしている。政府はいち早く自衛官の精神障害の実態を調べ公表するべきだ。これは八十歳を超えた私の遺言だと思ってほしい」

 (沢田千秋)

地震想定、過小評価の恐れ 大飯3、4号機「適合」(2017年2月23日中日新聞)

2017-02-23 13:11:30 | 桜ヶ丘9条の会
地震想定、過小評価の恐れ 大飯3、4号機「適合」 

2017/2/23 中日新聞

 原子力規制委員会が二十二日に新規制基準への適合を事実上、認めた関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)は、二〇一四年に福井地裁で運転差し止めを命じられ、控訴審で係争中だ。地震の想定を巡って専門家から疑問が出されており、今後も論争は続く。関電の安全管理に対する地元の不信感も高まっており、再稼働は容易ではない。

■「楽観的見通し」

 「特に問題があるとは考えていない」。規制委の田中俊一委員長は審査書案を了承した会合後の会見で、想定する地震の強さは十分に厳しく設定されているとの認識を強調した。

 関電は、大飯原発に近い三つの活断層が連動した場合、揺れの強さを示す数値を八五六ガルと想定している。ところが審査に当たった元規制委員長代理の島崎邦彦東大名誉教授が、昨年四月の熊本地震後に待ったをかけた。

 島崎氏が熊本地震の揺れの実測値などを分析したところ、関電や規制委が採用する「入倉・三宅式」という計算式では、地震の規模を小さく見積もってしまうというのだ。大飯原発での揺れを別の式で計算すると、関電の想定を大幅に上回る一五五〇ガル程度になる可能性が出てきた。

 規制庁は別の式を用いると断層の設定に無理が生じるとして採用しなかったが、島崎氏は「計算をどう評価するかが違っている」と語り、議論は平行線のまま。昨年七月にあった島崎氏との面談後の会見で、田中委員長は「絶対的に入倉・三宅式が良いと判断しているわけではない」としつつ、「変えるという根拠が納得できるものではない」と話した。

 今回、規制委は疑念を払拭(ふっしょく)することなく、想定は妥当だと判断した。だが、島崎氏は名古屋高裁金沢支部で続く控訴審でも「最も重要な証人」(内藤正之裁判長)と位置付けられ、四月には法廷で証言する予定。福井地裁判決が「想定を超える地震が到来しないというのは根拠のない楽観的見通し」と断じたように、盤石とはほど遠い規制委の判断は司法の場で覆る可能性も残されている。

■「安心できない」

 再稼働へ向け、規制委というハードルを越えた関電だが、今後、地元の信頼を得られるかという高い壁が立ちはだかる。

 「ある意味で論外。当然の自覚が欠如しているのではないか」。今月八日、高浜原発(福井県高浜町)で起きた大型クレーン倒壊事故の原因報告に訪れた関電の豊松秀己副社長に、同県の藤田穣副知事は異例の厳しい言葉を浴びせた。

 事故は、元請け業者が暴風警報の確認を怠り、作業終了後にクレーンを折りたたむといった強風対策を取らなかったために起きた。関電も元請けに警報を伝えていなかった。

 集中立地する福井県内の原発では、審査を申請済みの七基すべてが適合となる。

 訴訟の住民側代表、中嶌哲演さん(74)=同県小浜市=は「今は規制委に寸分の期待もしていない。第二のフクシマが福井で起きかねず、決して安心できない」と語る。

 (福井支社報道部・中崎裕、松尾博史)

 <大飯原発の想定地震問題> 関西電力は北側にあるFO-A、FO-B、南東側の熊川の3断層が連動する前提で、断層の長さなどから「入倉・三宅式」という計算式で地震の規模を算出し、揺れの強さを決めた。規模の求め方には複数の計算式があり、熊本地震後に複数の地震学者から、断層の傾きや測定の不確実さにより入倉・三宅式は過小評価になる恐れが指摘されている。

PK0日報開示 「戦闘」認め、撤収検討を(中日新聞2017年2月10日)

2017-02-10 18:58:26 | 桜ヶ丘9条の会
PKO日報開示 「戦闘」認め、撤収検討を 

2017/2/10 中日新聞
 「戦闘」を「武力衝突」と言い換えても、南スーダンの首都ジュバが、緊迫した状況であることは隠しようがない。PKO五原則に基づいて、派遣されている陸上自衛隊の撤収を検討すべきである。

 自衛隊部隊が国連平和維持活動(PKO)のために派遣された南スーダンの緊迫した治安状況が伝わってくる。防衛省が昨年七月十一、十二両日の部隊の日報などを開示した。ジュバでは当時、大規模衝突が発生し、二百七十人以上の死者が出ていた。

 日報には、大統領派と反政府勢力の「戦闘が生起した」ことや自衛隊宿営地近くでの「激しい銃撃戦」などが記されている。

 紛争当事者間で停戦合意が成立していることを自衛隊派遣の前提とするPKO五原則の要件を満たしているとは言い難い状況だ。

 にもかかわらず、稲田朋美防衛相は「法的な意味における戦闘行為ではない」と答弁した。自衛隊派遣継続のための詭弁(きべん)ではないか。

 日報の開示に至る経緯も不可解だ。日報は昨年九月に情報公開請求され、当初、廃棄済みを理由に不開示とされていた。その後、範囲を広げて再調査したところ、電子データが見つかったとして、一部を黒塗りした状態で開示した。

 この間、政府は十月、自衛隊部隊の派遣期間延長を閣議決定し、十一月以降は派遣部隊に、安全保障関連法に基づいて「駆け付け警護」と「宿営地の共同防衛」の任務が追加された。

 当時、国会ではPKO部隊の派遣延長や駆け付け警護任務などの付与の是非が議論になっていた。

 この日報が遅滞なく開示され、南スーダンの厳しい状況が明らかになっていたら、撤収を求める意見は強まっていただろう。自衛隊派遣の延長を認め、安保法に基づく新任務を付与できただろうか。

 稲田氏は「隠蔽(いんぺい)ではない」とするが、派遣継続のために意図的に隠したと疑われても仕方がない。

 加えて、防衛省・自衛隊が日報の存在を把握した後、稲田氏に一カ月間報告しなかったことも明らかになった。シビリアンコントロール(文民統制)を脅かす深刻な事態である。徹底的に調査し、国会に報告すべきだ。

 安倍晋三首相は自衛隊員に死傷者などの犠牲が出た場合、首相辞任の覚悟を持たなければいけないと語ったが、より重要なことは死傷者を出さないために何をすべきかである。南スーダンはPKO五原則を満たしていない。直ちに撤収を検討すべきである。