関電中間施設、候補地本命が「ノー」(2015年12月30日中日新聞)

2015-12-30 15:59:25 | 桜ヶ丘9条の会
関電中間施設、候補地本命が「ノー」 

2015/12/30 紙面から


 関西電力高浜原発(福井県高浜町)は、来年一月にも再稼働する見通しだが、一方で将来の見通しがまったく立たないのが再稼働後に増える使用済み核燃料の行く先だ。福井県外に中間貯蔵施設をつくる関電の計画は、候補地とみられた京都府内の自治体から「ノー」を突きつけられ、のっけから暗礁に乗り上げた。一連の騒動を振り返ると、政府や電力各社が進める原発回帰路線の危うさがあらためて見えてくる。

■発端

 騒動は、十一月の国と電力各社の会合で、関電の八木誠社長が「五年ほどで、福井県外で中間貯蔵施設の場所を決め、十五年ほどで操業を始める」と話したことがきっかけ。

 高浜原発3、4号機が再稼働すると、使用済み核燃料の保管プールは七、八年で満杯になる。県外に使用済み核燃料を移す考えを強調することで、一月下旬に予定する高浜再稼働への県の了承を取り付ける思惑があったとみられる。

 だが、八木社長の発言は思わぬ波紋を広げた。

 中間貯蔵施設の条件に、関電はかねて「港がある」「関電の所有地」を挙げていたため、真っ先に本命視されたのが、京都府宮津市の「宮津エネルギー研究所」の敷地だった。実態は火力発電所だが、十年以上、停止していて、高浜原発から約二十キロと近く港もある。

 日本三景の一つ「天橋立(あまのはしだて)」がある宮津市は観光が収入源。井上正嗣市長はすぐに建設反対を表明し、十二月には市議会が高浜再稼働反対の意見書を可決した。

 関電の火力発電所がある京都府舞鶴市も、多々見良三市長が中間貯蔵施設の断固拒否を表明した。

 最後は、京都府の山田啓二知事も「府内での設置は認めない」と言明する事態に。八木社長は十一日に急きょ知事に会い、「市民に不安や心配をかけたことをおわびしたい。地元の同意がない限りは、建設しない」と約束させられた。

 大阪や兵庫、和歌山の三府県にも海に面した関電の土地はある。三府県とも「賛否は現段階で言えない」とするが、話が持ち上がれば、猛反発は必至だ。

■白紙

 使用済み核燃料の行き先がないのは、関電に限ったことではない。

 再稼働に向け、原子力規制委員会に新規制基準による審査を申請した十六原発のうち、プールの60%超が埋まっているのは十一原発ある。動き始めれば、十年たたないうちに、大半のプールが満杯になる。

 例外的に東京電力と日本原子力発電(原電)は、青森県むつ市に貯蔵施設を建設中。ただし、この施設も新基準による審査中だ。

 中部電力も浜岡原発(静岡県)敷地内に貯蔵施設を計画中だが、東日本大震災を機に耐震性を見直した結果、補強が必要と分かり、容量は当初の七百トンから四百トンに減った。完成したとしても、五年分ほどで九割が埋まる。

 九州電力は玄海原発(佐賀県)のプール内の核燃料の隙間を狭くし詰め込もうとするが、危険性は増す。計画は二〇一〇年に出されたが、規制委は否定的で審査にも入っていない。

 仮に各社が中間貯蔵施設を用意できたとしても、一時しのぎにしかならない。使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルは実質的に破綻しており、最終処分場も白紙の状態だ。原発を再稼働させれば「トイレなきマンション」との批判がある原発政策の矛盾は膨らむばかりだ。

 (東京社会部・荒井六貴)

消える?「政権批判」 萎縮するテレビ局(中日新聞2015年12月26日)

2015-12-29 09:18:26 | 桜ヶ丘9条の会
消える?「政権批判」 萎縮するテレビ局 

2015/12/26 中日新聞朝刊

 テレビ朝日系の報道番組「報道ステーション」のメーンキャスター古舘伊知郎さんが来春降板する。番組では、コメンテーターとして出演した元経済産業省官僚の古賀茂明さんが安倍政権を批判したところ、局幹部が自民党から事情聴取される一幕があった。TBS系の報道番組「NEWS23」でもアンカーの岸井成格(しげただ)さんが右派勢力から攻撃された。メディア支配を強める安倍政権と、自粛・萎縮する各局という構図が強まっている。

 古舘さんは二十四日の記者会見で古賀さんの問題の影響を問われると、「全くない。ただ、番組の中でいざこざが起きたことは大変残念だった」と語った。

 古賀さんは三月二十七日の放送中、テレ朝会長らの意向で「今日が最後(の出演)」と発言。「官房長官をはじめ官邸の皆さんからバッシング(攻撃)を受けてきた」と続けると、古舘さんが「降ろされたというのは違う」と反論した。

 菅義偉官房長官は即座に「事実無根」と否定。自民党の情報通信戦略調査会が四月、テレ朝の専務を党本部に呼びつける騒動に発展した。

 古賀氏は本紙取材に「私が一月の放送で『I am not ABE』と言った直後、官邸から番組に抗議のメールが来た。私の降板が正式に決まったのは、その一、二週間後」と明かす。

 古舘さんの降板との関連性はどうか。古賀さんは「官邸の意向を受けた局幹部が昨年来、古舘さんを含め番組全体に、政権批判や反原発を抑えるように圧力をかけたと聞く。古舘さんは降板発表の際、『不自由だった』と言ったが、あまりの窮屈さに嫌気がさしたのだろう」と推察する。

 報道ステーションとともに、首相シンパから目を付けられたのが「NEWS23」である。

 アンカーの岸井さんは、安保法案の参院採決をめぐる与野党の攻防が佳境を迎えていた九月十六日の放送で「メディアとしても(安保法案の)廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」と踏み込んだ。

 すると任意団体「放送法遵守(じゅんしゅ)を求める視聴者の会」が産経新聞の十一月十四日付朝刊と読売新聞の十五日付朝刊に「一方的な意見を断定的に視聴者に押し付けることは放送法に明らかに抵触する」と指弾する意見広告を掲載した。

 同会の呼び掛け人には右派論客らが名を連ねる。事務局長で文芸評論家の小川栄太郎さんは自らを「安倍さんの応援団」と認めた上で「NEWS23は大半の時間を『安保法案に反対』の報道に使った上、岸井さんはアンカーの立場を逸脱した発言をした。テレビは多角的な観点で報じるべきだ」と主張した。

 これに対し、経済評論家の佐高信さんは「言論人が意見広告を金で買って、異論を封じ込めようとするのはおかしい」とけん制する。「現政権は批判を受け入れ、より良い政治につなげるという視点に欠ける。批判は許さないという度量の狭さが、テレビ報道の窮屈さにつながっている」

 岸井さんをめぐっては、来年三月末の降板説が一部で報道された。TBS広報部は「番組の制作過程についてはお答えしていません」と否定も肯定もしない。

 もう一つ忘れてはならないのが、NHKの報道番組「クローズアップ現代」の去就である。

 安倍政権との因縁は昨年七月の放送にさかのぼる。菅官房長官をスタジオに呼んだ際、キャスターの国谷裕子さんが「(集団的自衛権の行使容認という)憲法解釈変更の違和感をどう払拭(ふっしょく)するのか」と問うと、菅氏が「どの国でも一国で平和を守れる時代じゃない」と気色ばんだ。

 同番組のやらせ問題では、国谷さんが四月の放送で謝罪。その後、自民党の情報通信戦略調査会は、テレ朝の専務と同じ日にNHK副会長を事情聴取した。現在、国谷さんの降板説や放送時間変更説が飛び交う。

 また、ジャーナリストの青木理(おさむ)さんが、日本テレビ系の情報番組「ミヤネ屋」で政権批判を口にしていたが、十月に降ろされた。青木さんは「十年前なら普通の体制や政権に対する批判が、あたかも極端な主張であるように受け取られている」と嘆く。

 「以前はニュースステーション(報道ステーションの前身)に久米宏さん、ニュース23に筑紫哲也さんがいて、辛辣(しんらつ)に政権を批判していた。それと比べれば古舘さん、岸井さんの論調は穏やか。こんな人まで標的にされるのかと驚く」

 政治からメディアへの圧力は昔から存在するが、安倍政権のやり方は露骨だ。昨年の衆院選前、自民党は在京キー各局に「公平中立な報道」を求める文書を突きつけた。安保法案反対の声が高まると、六月の自民党若手議員の勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい」との圧力発言が飛び出した。

 放送業界の第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」は十一月、「クローズアップ現代」のやらせ問題を批判する一方で、自民党の圧力発言や、NHK、テレ朝への事情聴取を「政権党による圧力そのもの」と非難。テレビ局に対しても「干渉や圧力に対する毅然(きぜん)とした態度を堅持できなければ、放送の自由も自律も侵食され、やがては失われる」と発奮を促した。

 このままではテレビから「政権批判」が消えてしまわないか。服部孝章・立教大名誉教授(メディア法)は「政権の顔色をうかがう『忖度(そんたく)ジャーナリズム』は、もはや国民の代弁者たり得ない」と厳しい視線を向ける。

 大石泰彦・青山学院大教授(メディア法)は「今の政権には改憲という大目標がある。この高いハードルを越えるには、まず来年の参院選で勝たなければならない。そのために安倍政権は障害となるメディアを本気で殺しに来ていると見た方がいい。日テレとフジは手なずけたので、次の標的はNHK、テレ朝、TBSだ」と警鐘を鳴らす。

 元NHKプロデューサーの永田浩三・武蔵大教授(メディア社会学)も行く末を心配する。「報道番組のキャスターは、フリーな立場で自分の意見を述べることが持ち味。彼らに政権批判を許さないのは異常なことだ。テレビから政権批判が消えれば、日本はもう民主主義国家ではない」

 (池田悌一、三沢典丈)

「司法の責任どこへ」高浜異議審に住民怒り(2015年12月25日中日新聞)

2015-12-25 10:06:21 | 桜ヶ丘9条の会
「司法の責任どこへ」 高浜異議審に住民怒り 

2015/12/25 中日新聞朝刊


 「司法の責任はどこに」-。二十四日、福井地裁が関西電力高浜原発3、4号機の再稼働にゴーサインを出した。住民側が再稼働阻止へ最後の希望を託した司法のとりでが崩れ、裁判所前に詰め掛けた人々を、ため息と怒りが包んだ。関電の主張を全面的に認めた林潤裁判長への恨み節も漏れた。

 午後二時すぎ。地裁前で待つ人々の前に「司法の責任どこへ!」などと書かれた垂れ幕を掲げた人たちが飛び出してきた。

 信じられない。まさか…。申立人の今大地晴美さん(65)は幕を手にそんなことを思っていた。

 裁判所前には三百人ほどが朗報を待っていた。神戸市の無職、中井忠さん(72)は言葉を失ったといい、「司法は自ら裁くことを放棄した」と話した。

 その後、福井市の県国際交流会館で開かれた住民側の記者会見では、三人の裁判官への不満が相次いだ。

 異議審が始まった五月、林裁判長は「耳目を集める事件なので慎重にやらせてもらう」と宣言。早く審理を終わらせたがる関電を制し、双方によるプレゼンテーションを実施した。両者ともに自由に意見を述べさせるため、記録に残さずに発言させた。

 「何のためのプレゼンだったのか、と思わざるを得ない」「関電に厳しい質問をしていたが、今となっては助け舟を出していたようにさえ思える」。弁護士から厳しい言葉が飛ぶ。

 申立人の一人、松本なみほさん(41)は「裁判官は国策に押し切られた。でも電力が自由化されたら、電力会社を選べる。選挙という手段もある」と今後も戦い続けることを誓っていた。

 一方、原発から経済的な恩恵を受けている地元では喜びの声も。福井県高浜町の野瀬豊町長は二十四日夕、町役場で取材に応じ「結果が出てほっとしている」と述べた。決定については「新規制基準が妥当かが論点だったのだと思うが、観念的な部分を外した冷静な判断だと評価したい」とした。

 同町で焼き肉店を営む八木幸夫さん(70)は「決定が覆るだろうという予想はあったが、実際にそうなりほっとしている」と安心した表情。十三カ月に一度の原発の定期検査で町外から訪れる千人を超す作業員は飲食店や旅館の経営を支える重要な存在だ。「高浜町だけの話ではなく、避難の計画とか原発の問題は関西圏も含めてのことだと思うので、安全第一で再稼働を進めてほしい」と話した。

◆他原発再稼働へ関電は難題も 美浜3号機老朽化

 関西電力高浜原発3、4号機の再稼働を福井地裁が認めたことで、関電は他の原発の再稼働も急ぐ構えだが、難題が立ちはだかる。

 福井県の西川一誠知事が再稼働に同意した前日の二十一日、関電は二十五日に核燃料を原子炉に入れることを原子力規制委員会に届けた。計画通り来年一月下旬に再稼働にこぎつけたい考えだ。再稼働すれば関電の原発が動くのは大飯3、4号機が定期検査入りした二〇一三年九月以来。

 関電が急ぐのは再稼働を経営再建の起爆剤にしたいからだ。一五年三月期まで四期連続の赤字に陥り、二度にわたり電気料金を値上げした経緯がある。高浜3、4号機が再稼働すれば一カ月当たり百二十億円収益を押し上げる。

 この波に乗って新規制基準審査の終盤まで来ている大飯3、4号機も再稼働に持ち込みたいが、簡単にはいきそうにない。

 四十年超えの運転を目指す美浜3号機は新規制基準の審査に加え老朽化対策に特化した別の審査も必要。稼働から四十年を迎える来年十二月前に審査を通過しないと廃炉になる。このため、規制委は美浜の審査に人員を集中し、大飯を後回しにする方針を提示。それでも関電は「バランス良い審査を」と譲らなかった。

 一カ月の収支に与える影響は美浜3号機で六十億円、大飯3、4号機で百七十億円。収支だけを考えれば美浜をあきらめる選択肢もある。だが、八木誠社長は十月の定例会見で「美浜は加圧水型原子炉発祥の地」と説明。仮に廃炉になれば「立地町との信頼関係の観点で大きな影響が出る。他の立地町への影響もある」と苦悩をにじませている。

 (塚田真裕)


高浜再稼働認める、一転「新基準に合理性」 福井地裁 

2015/12/25 朝刊

 福井地裁(林潤裁判長)は二十四日、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を差し止めた四月の仮処分決定を取り消した。関電の異議を認めた。二基の地元同意の手続きは既に完了しており、来年一月下旬にも再稼働する。住民側はこの決定を不服として二十五日、名古屋高裁金沢支部に抗告する。

◆仮処分取り消し

 林裁判長は、原子力規制委員会の新規制基準について四月決定から一転「合理性がある」と判断した。四月決定で問題とされた基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の策定方法などにも不備はないとした。

 その上で、高浜原発の基準地震動に関し「極めて厳しく想定されており、信頼に足る」などと支持した。各施設の耐震安全性についても「基準地震動に対して余裕を持っている」とする関電の主張を採用した。

 さらに、住民側が主張した津波や土砂災害の危険性に関しても関電の対策を「合理的」と評価。炉心溶融が起きた後の対応などについては「安全性に欠ける点があるとはいえない」として、「判断するまでもない」と退けた。こうしたことから「住民らの人格権が侵される具体的危険があるとはいえない」と結論づけた。

 仮処分は昨年十二月、福井や京都など四府県の住民九人が求めた。福井地裁の当時の樋口英明裁判長(名古屋家裁に異動)は四月、関電の想定を超える揺れの地震で炉心が損傷する危険があるとして、再稼働を認めない決定を出し、関電が異議を申し立てていた。

 二基は二月に新規制基準に適合。今月三日に高浜町の野瀬豊町長が、二十二日には西川一誠知事が再稼働に同意した。関電は3号機は来年一月下旬、4号機は二月下旬の再稼働を目指している。

 福井地裁は二十四日、住民側が関電大飯原発3、4号機(同県おおい町)の運転差し止めを求めた仮処分の申し立てについても「規制委の審査が続いており、再稼働が差し迫っているとはいえない」として却下した。大飯原発は規制委の適合審査中で、住民側は名古屋高裁金沢支部に即時抗告するか、審査に適合した段階で再び仮処分を申し立てるかを検討する。

◆「福島」学んだのか

 <解説>

 福井地裁の異議審決定は原子力規制委員会の新規制基準の合理性を認め、原発の再稼働を進める政府方針を後押しした。四月の仮処分決定が果たした行政に対するチェック機能は後退し、憲法が定める「司法権の独立」も揺らぎかねない。

 決定は「過酷事故が起こる可能性が否定されるものではない」と言いながら、住民側の不安とは向き合っていない。関電と規制委に最新の科学技術を反映し「高いレベルの安全性を目指す努力」を求めはしたが、これは両者に責任を転嫁したにすぎない。

 最新の科学技術に照らすだけなら、裁判官は専門家である規制委の判断を追認するしかない。東京電力福島第一原発事故を経験した裁判官に求められるのは、科学技術では明らかになっていない部分を見通し、現在の基準の合理性を判断する姿勢だ。

 憲法七六条は「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」と定める。地元同意の手続きが一気に進む中で出した判断は、住民側弁護団が言うように「再稼働の日程に配慮した」と疑われかねない。

 国民の過半数が原発の再稼働に反対する一方で、政府と電力会社、地元自治体が一体となった原発回帰の動きが加速する。司法は福島原発事故から何を学んだのか。国民の不安の声に耳を傾けない限り、その存在意義は失われていくだろう。

 (福井報道部・高橋雅人)


安保法「違憲」集団訴訟へ 人格権侵害などを主張 弁護士ら来春に(2015年12月22日東京新聞)

2015-12-22 08:34:54 | 桜ヶ丘9条の会
安保法「違憲」集団提訴へ 人格権侵害などを主張 弁護士ら来春に

2015年12月22日 東京新聞朝刊


 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法は憲法九条に違反するとして、弁護士有志でつくる「安保法制違憲訴訟の会」が二十一日、同法が施行される来年三月ごろをめどに、集団的自衛権の行使の差し止めと、同法成立で受けた精神的苦痛に対する慰謝料などを求める国家賠償請求訴訟を全国の地裁に起こすことを明らかにした。
 違憲訴訟の会は九月に結成され、提訴の準備を進めてきた。現在のメンバーは約三百人で、裁判官出身の弁護士もいる。この日、共同代表の伊藤真弁護士らが東京都内で会見し、今後、原告の募集や、安保関連法に反対する憲法学者との連携も進める方針を示した。
 訴訟では、安保関連法の制定により憲法で保障された平和的生存権を侵害されたと訴えるほか、他国からの攻撃やテロの危険性が高まるため人格権を侵害されると主張する。各地で弁護団を結成し、東京、大阪、名古屋など高裁のある全国八地裁には、差し止め訴訟と賠償請求訴訟を起こすという。
 会見で伊藤弁護士は「立憲主義と国民主権の回復のため違憲の安保関連法を発動させず廃止させる」と意気込んだ。共同代表の寺井一弘弁護士は「一見して明白かつ重大な憲法違反の安保関連法を、極めて強引な採決で成立させた政府の責任を司法の場で明らかにしたい」と話した。
 安保関連法が今年九月に成立して以降、東京地裁では少なくとも五件の無効確認などを求める訴訟が起こされたが、「具体的な権利侵害がない」などと、原告の訴えを却下する門前払いの判決が相次いでいる。
 共同代表で元名古屋高裁裁判長の田村洋三弁護士は「私たちが起こす裁判は、権利が侵害されたことを前提に差し止めなどを求めるもので、これまでの裁判とは訴える内容が違う。司法が判断できるし、すべき事項だ」と強調した。


「思いやり予算」多額は日本だけ/78年度62億→現在7000億超(12月17日ライブドアニュース)

2015-12-17 12:09:55 | 桜ヶ丘9条の会
思いやり予算」多額支援は日本だけ/78年度 62億円➔現在 年7000億円超


2015年12月17日 ライブドアニュース(しんぶん赤旗より)

 「(戦争法成立などの)安全保障環境の変化の下で『見直し』の好機だ」。10月26日、財務省が設置した財政制度等審議会分科会の会合では、在日米軍「思いやり予算」の削減に向けて、こうした意見が交わされていました。

 1978年度、基地従業員の給与の一部(62億円)を負担する形で始まった思いやり予算(在日米軍駐留経費負担)は、日米安保条約上の根拠もないまま90年代後半には年3000億円近くまで膨張。費目も基地従業員の基本給、米兵の娯楽施設や家族住宅、水光熱費、さらに戦闘用の滑走路など拡大していきます。

 その後、金額は漸減していきますが、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をはじめとした在日米軍再編経費などが加わり、在日米軍関係経費の総額は現在、年7000億円を超えました。

 これに加え、9月19日に安倍政権・与党が強行した戦争法の成立で、“日本の軍事分担が増したので、せめて『思いやり予算』を減額させてほしい”―。これが財政審の卑屈な要求でした。ところが、この要求ですら米側に突っぱねられて屈服。減額どころか、今後5年間にわたり増額を受け入れてしまったのです。

 米国の同盟国でこれだけの財政支援をしている国は日本以外にありません。これでは、日本本土や沖縄への米軍駐留の戦略的な意義が失われても、「日本がカネを負担してくれる」というそれだけの理由で米軍は居座り続けるでしょう。

 安倍政権は戦争法によって、米国が海外で起こす戦争に、いつでも、どこでも、どんな戦争でも参戦・支援することを可能にするとともに、沖縄県民の民意を踏みにじって新基地建設を強行しようとしています。その上さらに、日米地位協定上、日本が支払う義務のない「思いやり予算」も増額する―。安倍政権の視線が国民ではなく、米側に向いていることをはっきりと示しました。

 (山田英明)

しんぶん赤旗