関電中間施設、候補地本命が「ノー」
2015/12/30 紙面から
関西電力高浜原発(福井県高浜町)は、来年一月にも再稼働する見通しだが、一方で将来の見通しがまったく立たないのが再稼働後に増える使用済み核燃料の行く先だ。福井県外に中間貯蔵施設をつくる関電の計画は、候補地とみられた京都府内の自治体から「ノー」を突きつけられ、のっけから暗礁に乗り上げた。一連の騒動を振り返ると、政府や電力各社が進める原発回帰路線の危うさがあらためて見えてくる。
■発端
騒動は、十一月の国と電力各社の会合で、関電の八木誠社長が「五年ほどで、福井県外で中間貯蔵施設の場所を決め、十五年ほどで操業を始める」と話したことがきっかけ。
高浜原発3、4号機が再稼働すると、使用済み核燃料の保管プールは七、八年で満杯になる。県外に使用済み核燃料を移す考えを強調することで、一月下旬に予定する高浜再稼働への県の了承を取り付ける思惑があったとみられる。
だが、八木社長の発言は思わぬ波紋を広げた。
中間貯蔵施設の条件に、関電はかねて「港がある」「関電の所有地」を挙げていたため、真っ先に本命視されたのが、京都府宮津市の「宮津エネルギー研究所」の敷地だった。実態は火力発電所だが、十年以上、停止していて、高浜原発から約二十キロと近く港もある。
日本三景の一つ「天橋立(あまのはしだて)」がある宮津市は観光が収入源。井上正嗣市長はすぐに建設反対を表明し、十二月には市議会が高浜再稼働反対の意見書を可決した。
関電の火力発電所がある京都府舞鶴市も、多々見良三市長が中間貯蔵施設の断固拒否を表明した。
最後は、京都府の山田啓二知事も「府内での設置は認めない」と言明する事態に。八木社長は十一日に急きょ知事に会い、「市民に不安や心配をかけたことをおわびしたい。地元の同意がない限りは、建設しない」と約束させられた。
大阪や兵庫、和歌山の三府県にも海に面した関電の土地はある。三府県とも「賛否は現段階で言えない」とするが、話が持ち上がれば、猛反発は必至だ。
■白紙
使用済み核燃料の行き先がないのは、関電に限ったことではない。
再稼働に向け、原子力規制委員会に新規制基準による審査を申請した十六原発のうち、プールの60%超が埋まっているのは十一原発ある。動き始めれば、十年たたないうちに、大半のプールが満杯になる。
例外的に東京電力と日本原子力発電(原電)は、青森県むつ市に貯蔵施設を建設中。ただし、この施設も新基準による審査中だ。
中部電力も浜岡原発(静岡県)敷地内に貯蔵施設を計画中だが、東日本大震災を機に耐震性を見直した結果、補強が必要と分かり、容量は当初の七百トンから四百トンに減った。完成したとしても、五年分ほどで九割が埋まる。
九州電力は玄海原発(佐賀県)のプール内の核燃料の隙間を狭くし詰め込もうとするが、危険性は増す。計画は二〇一〇年に出されたが、規制委は否定的で審査にも入っていない。
仮に各社が中間貯蔵施設を用意できたとしても、一時しのぎにしかならない。使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルは実質的に破綻しており、最終処分場も白紙の状態だ。原発を再稼働させれば「トイレなきマンション」との批判がある原発政策の矛盾は膨らむばかりだ。
(東京社会部・荒井六貴)
2015/12/30 紙面から
関西電力高浜原発(福井県高浜町)は、来年一月にも再稼働する見通しだが、一方で将来の見通しがまったく立たないのが再稼働後に増える使用済み核燃料の行く先だ。福井県外に中間貯蔵施設をつくる関電の計画は、候補地とみられた京都府内の自治体から「ノー」を突きつけられ、のっけから暗礁に乗り上げた。一連の騒動を振り返ると、政府や電力各社が進める原発回帰路線の危うさがあらためて見えてくる。
■発端
騒動は、十一月の国と電力各社の会合で、関電の八木誠社長が「五年ほどで、福井県外で中間貯蔵施設の場所を決め、十五年ほどで操業を始める」と話したことがきっかけ。
高浜原発3、4号機が再稼働すると、使用済み核燃料の保管プールは七、八年で満杯になる。県外に使用済み核燃料を移す考えを強調することで、一月下旬に予定する高浜再稼働への県の了承を取り付ける思惑があったとみられる。
だが、八木社長の発言は思わぬ波紋を広げた。
中間貯蔵施設の条件に、関電はかねて「港がある」「関電の所有地」を挙げていたため、真っ先に本命視されたのが、京都府宮津市の「宮津エネルギー研究所」の敷地だった。実態は火力発電所だが、十年以上、停止していて、高浜原発から約二十キロと近く港もある。
日本三景の一つ「天橋立(あまのはしだて)」がある宮津市は観光が収入源。井上正嗣市長はすぐに建設反対を表明し、十二月には市議会が高浜再稼働反対の意見書を可決した。
関電の火力発電所がある京都府舞鶴市も、多々見良三市長が中間貯蔵施設の断固拒否を表明した。
最後は、京都府の山田啓二知事も「府内での設置は認めない」と言明する事態に。八木社長は十一日に急きょ知事に会い、「市民に不安や心配をかけたことをおわびしたい。地元の同意がない限りは、建設しない」と約束させられた。
大阪や兵庫、和歌山の三府県にも海に面した関電の土地はある。三府県とも「賛否は現段階で言えない」とするが、話が持ち上がれば、猛反発は必至だ。
■白紙
使用済み核燃料の行き先がないのは、関電に限ったことではない。
再稼働に向け、原子力規制委員会に新規制基準による審査を申請した十六原発のうち、プールの60%超が埋まっているのは十一原発ある。動き始めれば、十年たたないうちに、大半のプールが満杯になる。
例外的に東京電力と日本原子力発電(原電)は、青森県むつ市に貯蔵施設を建設中。ただし、この施設も新基準による審査中だ。
中部電力も浜岡原発(静岡県)敷地内に貯蔵施設を計画中だが、東日本大震災を機に耐震性を見直した結果、補強が必要と分かり、容量は当初の七百トンから四百トンに減った。完成したとしても、五年分ほどで九割が埋まる。
九州電力は玄海原発(佐賀県)のプール内の核燃料の隙間を狭くし詰め込もうとするが、危険性は増す。計画は二〇一〇年に出されたが、規制委は否定的で審査にも入っていない。
仮に各社が中間貯蔵施設を用意できたとしても、一時しのぎにしかならない。使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルは実質的に破綻しており、最終処分場も白紙の状態だ。原発を再稼働させれば「トイレなきマンション」との批判がある原発政策の矛盾は膨らむばかりだ。
(東京社会部・荒井六貴)