巨大ITへの視線険しく グーグルに米独禁法調査
2019/9/11 中日新聞
インターネット上で検索やメール、地図を無料で提供する見返りに、集めた個人情報を使い巨額の広告料を稼ぐビジネスモデルを編み出した米IT大手グーグルに向けられる視線が一段と厳しくなってきた。米国の連邦政府に続いて、五十の州・地域が九日、独禁法調査の開始を表明。テキサス州のパクストン司法長官は「多くの消費者はネットが無料と信じているが、そうではない」と“代償”に警鐘を鳴らす。
◆圧倒的シェア
二〇一九年の米国のデジタル広告市場を見ると、グーグル、会員制交流サイト大手フェイスブック、ネット通販大手アマゾン・コムの上位三社のシェアは七割近く。トップのグーグルの売上高は四百八十億ドル(約五兆一千五百億円)に上る見通しだ。
消費者はグーグルのサービスを原則として無料で利用できるが、事業者の寡占が進めば競争が滞る。広告料が不当につり上げられ製品価格に転嫁されることになれば、結果的に消費者が不利益を被りかねない。
◆待った
州レベルの司法当局が巨大IT企業の市場支配に「待った」をかけるのは初めてではない。
一九九八年にはマイクロソフトが圧倒的なシェアを持つ基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」とネット閲覧ソフトを抱き合わせ販売し、他社の販売に影響を与えたとして司法省と二十一の州・地域が提訴。最終的にはマイクロソフトが技術情報を競合他社に一部開示することなどで和解した。
グーグルに対する調査は始まったばかりで、提訴に至るかどうかは見通せない。調査を主導するパクストン長官は、目的は提訴でなく事実関係の確認だと強調する。
◆日本も注視
ネット検索でグーグルの寡占が進んでいる状況は日本も同じ。市場シェアは、同社が検索エンジンを提供するヤフーと合計で95%超と独占に近い。かつて自社開発をしていたヤフーも莫大(ばくだい)な投資が必要なことから「検索市場で今更競り合うつもりはない」(幹部)。
日本の公正取引委員会も独禁法の観点から監視の目を強める。強い立場の乱用は「国内の新規参入の芽を摘みかねない」(与党議員)ためだ。
ただ行政処分には時間がかかる上、海外に拠点を置くIT大手が「調査に積極的に協力するかどうか不透明」(公取委関係者)との課題もある。
このため政府は独禁法を補完する手だてとして巨大IT大手に取引条件の開示を促す法案を来年の通常国会に提出することを目指している。
(ニューヨーク、東京・共同)