奨学金取り立て被害救え 保証人は半額返済義務なのに全額請求 ( 2022年10月22日 中日新聞)

2022-10-24 19:57:45 | 桜ヶ丘9条の会

奨学金取り立て被害救え 保証人は半額返済義務なのに全額請求

2022年10月22日 
 日本学生支援機構の奨学金制度で学生の保証人になった親族二人が、半額しか返済義務がないのに全額を請求されたとして、過払い分の返還を求めた訴訟は十三日、東京地裁で和解が成立した。機構が利息を含む計六百二十一万円を支払う。経済低迷で取り立てに苦しむ社会人が少なくない中、支援者は全国的な被害の掘り起こしに乗り出す。
 和解したのは、姪(めい)の保証人になった山梨県のパート男性(75)と、弟の保証人になった埼玉県の介護職男性(40)が二〇一九年に東京地裁で起こした訴訟。
 大学生らが機構から奨学金を借りるには、連帯保証人(親)と保証人(四親等内の親戚)を付ける必要がある。卒業後、何らかの事情で返済が困難になった場合、機構はまず親に返済を求め、親も払えなければ保証人になった親戚に督促する。
 この際、本来保証人には連帯保証人を含む人数分、つまり半分しか返済義務がない民法の「分別の利益」が適用されるが、機構は保証人が言い出さない限り全額を請求。このため、原告の二人はいずれも全額を返済していた。
 和解成立後の十三日の記者会見で、原告のパート男性は「機構がもっと早く対応してくれたら良かったのに」と話した。介護職男性は「収入が多くない中で返済した。保証人制度は廃止すべきだ」と訴えた。
 和解の背景には、同様の訴訟で札幌高裁が今年五月、機構の超過請求分を「不当利得」と認定し、返還を命じた判決が確定したことがある。機構はその後、一七年四月以降の対象者約二千人について過払い分を返す方針を示し、八月から返還を始めている。担当者は取材に対し「札幌高裁判決を受けて、原告の方と和解に至った。真摯(しんし)に受け止め、今後も法令を順守していく」とコメントした。
 原告代理人を務めた岩重佳治弁護士(奨学金問題対策全国会議事務局長)は、機構が和解の際の文書で、個別に過払い分の返還通知をすることや、返金申請の期限について柔軟対応することを示した点を評価。「訴訟で奨学金制度の問題点が明らかになった。無理なく返済、回収できる制度にしていくため、保証人制度をなくし、今もある保証機関の活用に一本化していくことを目標としたい」と話す。
 若者の貧困問題に取り組むNPO法人POSSEの渡辺寛人事務局長も「取り立てを最優先に考える体質が明らかになった」と和解を評価。そのうえで「こちらにも『急に請求が来て困った』という保証人や、『保証人に迷惑をかけるので自殺を考えている』と追い詰められた返済者など、保証人制度にからむ相談が多い。親族を巻き込んで苦しめる仕組みになっている」と指摘する。
 同会議は全国に埋もれている被害者がいるとみて、二十一日に続き、二十二日(午前十時〜午後七時)も、弁護士らが無料で相談に応じる「奨学金問題ホットライン」を開設する。電話番号は050(3188)5022。通話料は相談者負担。
 岩重氏は「過払い分の返還を求めたいという人のほか、奨学金の利用に不安を感じる人、返済に苦しんでいる人など、遠慮なく相談してほしい」と話している。
 (大杉はるか)
 
 

 


 週のはじめに考える かくも不可解なロシア (中日新聞 22年10月23日)

2022-10-24 00:16:24 | 桜ヶ丘9条の会

週のはじめに考える かくも不可解なロシア

2022年10月23日 
 文学や音楽に高い芸術性を発揮するロシアと、ウクライナでの野蛮な振る舞い。その落差に驚く人は多いでしょう。両極性を内包するその国民性を取り上げます。
 ロシアにも「古事記」に相当する書物があります。スラブ民族の成り立ちや、ロシアの建国から十二世紀初めまでのロシア史を描いた「原初年代記」です。

寄らば強権指導者の陰

 現在のサンクトペテルブルクの南方のノブゴロド周辺に暮らしていたスラブ人は、ワリャーグ人に貢ぎ物を納めていましたが、これを海のかなたへ追い払って自治を始めました。
 ところがすぐに仲間割れを起こして内紛が絶えません。そこで、いったんは追い払ったワリャーグ人の元に出向きこう頼みました。
 「われらの土地は広大で豊かだ。しかし、秩序がない。来たりてわれらを治め、支配してほしい」
 これに応じてワリャーグ人が到来しノブゴロドから今のウクライナのキーウ(キエフ)に至るキエフ・ルーシ公国を建国しました。時代は九世紀。ちなみにワリャーグ人とはバイキングのことです。
 ソ連解体後の一九九〇年代にモスクワで暮らし、身をもって味わった社会秩序の崩壊、それにロシア軍のウクライナでの蛮行や混乱を報道で知るにつけ、原初年代記を思い出します。ロシア人の希薄な規範意識は民族の歴史の始まりからなのだ、と。
 もっとも、戦争という極限状況での非人道的な行為は、残念ながらこのウクライナ戦争に限った出来事ではありませんが。
 原初年代記はロシア人の別の特徴も示しています。ワリャーグ人に統治と支配を任せたように、受け身の精神性です。
 無秩序ぶりと受動性が相まって、ロシア人はスターリンやプーチン大統領のように、自分たちをがっちりと統率する独裁者を受け入れます。そうしないと社会がバラバラになって収拾がつかなくなる。ロシアの指導者に求められているのは、第一に強いということ。強くて外敵から自分たちを守ってくれるリーダーです。
 ウクライナ戦争が起きてもロシア国内で反対運動は広がらず、人ごとのような雰囲気がありました。歴史的にも民族的にも結び付きの強いウクライナとの戦争。親類、友人にウクライナ人がいる人はたくさんいます。そんな隣国との戦争なのに無関心、あるいは無関心を装う。何も起きていないかのようなふりをする。現実逃避によって安心を得ようとしたのでしょう。

身近になった侵略戦争

 それがプーチン氏が出した動員令によって、戦争が突然身近な現実として突きつけられた。たくさんの若者が徴兵逃れのために海外に脱出し、反戦に立ち上がる母親も現れました。
 いまだプーチン氏が「特別軍事作戦」と言い続けているウクライナ戦争が、大義のない侵略戦争だ、と実は分かっていたからでしょう。しかも戦況が思わしくないことも。
 政権が嘘(うそ)で塗り固めたプロパガンダを垂れ流しても多くの国民はだまされなかった。元軍高官の政治家も「軍は嘘をつくのをやめよ。国民はばかではない」と苦言を呈しました。
 前線のロシア兵士もロシア社会も、大義のない無益な戦争にどれほど耐えられるか、というストレステストを課せられているに等しい。残酷なことです。ストレスに耐えきれなくなれば、我慢強いロシア人でも怒りを爆発させるでしょう。
 ロシアでは過去百年余りの間に、民衆の反乱によって二度体制が転覆しました。帝政が倒れた一九一七年の革命と、九一年のソ連消滅につながった共産党独裁体制の崩壊です。
 ベルリンの壁が崩れた八九年、プーチン氏は国家保安委員会(KGB)の情報部員として東独・ドレスデンに赴任していました。そこでKGBの協力機関の秘密警察の支部に、民主化を求めるデモ隊が押し寄せる場面に遭遇。プーチン氏が東独駐留のソ連軍に助けを求めても無駄でした。これが民衆蜂起に関するプーチン氏の原体験でしょう。
 プーチン氏もロシアで動乱が起きるのは望まないでしょう。侵略戦争を打ち切るべきです。ウクライナで悲劇を積み重ね、ロシアの若者も死地に追いやる。そんな不条理は一刻も早く終わりにしなくてはなりません。
 
 

 


旧統一教会調査 解散の当否、速やかに 中日新聞

2022-10-18 23:39:24 | 桜ヶ丘9条の会

旧統一教会調査 解散の当否、速やかに

2022年10月18日 
岸田文雄首相=写真=が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)について、宗教法人法が定める「質問権」に基づく調査を担当閣僚に指示した。同法には解散命令に関する規定もある。教団が公共の福祉を害し、宗教団体の目的を逸脱する行為をしていないか、迅速、徹底的に調査すべきだ。
 首相はきのうの衆院予算委員会で、調査を指示した理由に、組織的な不法行為責任を認めた民事裁判や、九月末までに政府の窓口に千七百件以上の電話相談があったことを挙げた。
 質問権はオウム真理教事件を受けた一九九五年の同法改正で導入された。これまで行使した例はなく、初めての適用となる。
 教団による「霊感商法」被害は長年指摘されながら、政治が数十年にわたって見過ごしてきた問題だ。今回、調査に踏み切るのも、安倍晋三元首相の銃撃事件を機に自民党と教団との不透明な関係に批判が強まり、政権が追い詰められたからにほかならない。
 調査指示は前進だとしても遅きに失した。猛省を促したい。
 文化庁は二十五日にも質問権行使の基準や基本方針をまとめるための専門家会議を開く。
 その後、文部科学相の諮問機関「宗教法人審議会」の意見を聴取した上で年内に調査を始め、解散命令に該当する事実関係を把握すれば、調査の途中でも裁判所に解散命令を請求する、という。
 ただ、同法に基づく調査の権限は強くない。文科省や文化庁にできるのは質問だけで、教団施設の立ち入りには教団の同意が必要になる。被害者や全国霊感商法対策弁護士連絡会の協力も得て、実態を明らかにすることが必要だ。
 首相は教団との関わりが「政治への信頼を傷つけた」と重ねて陳謝した。萩生田光一党政調会長も質問で、自身を含む自民党議員の関与が教団の信用を高めたとの批判を「真摯(しんし)に受け止め、猛省しなくてはならない」と述べた。
 ならば二〇一五年の教団の名称変更など、政府や自民党の政策決定に教団の影響がなかった否かについても調査対象に含めなければ国民の理解は得られまい。
 
 

 


旧統一教会と自民の関係、攻める立民 代表質問、首相は防戦一方 (2022年10月6日 中日新聞)

2022-10-06 23:55:43 | 桜ヶ丘9条の会

旧統一教会と自民の関係、攻める立民 代表質問、首相は防戦一方

2022年10月6日 
 五日の衆院本会議で始まった代表質問では、立憲民主党の泉健太代表と西村智奈美代表代行が登壇し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党の関係を巡る問題に照準を合わせた。岸田文雄首相は三日の所信表明演説で「説明責任を果たす」「厳しい意見を聞く」と述べたが、この日は積極的に発信しようという姿勢は見えず、防戦の答弁が目立った。 (我那覇圭、佐藤裕介)

答弁歯切れ悪く 泉氏「ゼロ回答」

■丸投げ
 「党内の特定のグループが、教会とどんな関係を有したかを一概に答えるのは困難だ」
 泉氏から安倍晋三元首相や細田博之議長が会長を務めた自民党安倍派と教団との結び付きを問われた首相はこう答えた。泉氏は、背後の議長席に座る細田氏にも教団との関係を問いかけた。
 安倍派は党内でも教団との距離が近いとされ、安倍氏が関連団体の会合にビデオメッセージを送ったり、細田氏が関連の会合に参加したりしたことが判明している。だが、安倍氏は本人が死去し、細田氏は議長のため自民党会派を離脱中という理由から、党が実施した接点に関する自主点検の対象外だ。
 点検そのものも不十分と指摘される中、首相から踏み込んだ説明や追加調査を指示する発言はなく、「点検や公表の方法は党で検討を続けている」と答えただけだった。
 山際大志郎経済再生担当相に関しても同様だ。点検結果の公表後、教団との新たな接点が次々と発覚し、そのたびに山際氏は追認しているが、首相は「政治家として自らの責任で説明を尽くす必要がある」と説明責任を丸投げ。泉氏からの更迭要求も拒否した。
■疑問視
 泉氏を継いだ西村氏は、個別の疑問点を質問。政府が把握する教団関連の被害総額、教団の反社会性への認識、選択的夫婦別姓反対といった教団の主張が自民党の政策に与えた影響などをただした。首相は「旧統一教会は社会的に問題が指摘されている団体」などと応じたが、被害総額は明言せず、自民党の政策への影響は「ご指摘は当たらない」とかわした。
 泉氏は代表質問後、記者団に「首相は教団との関係を明らかにしようとしていない。『ゼロ回答』だった」と批判。首相が所信表明で「国民の厳しい声にも真摯(しんし)に、謙虚に、丁寧に向き合う」と強調したことを踏まえ「向き合うというのは、ただ聞くだけなのだと再認識した」と断じ、今後の国会論戦で追及を続ける考えを示した。
 旧統一教会を巡る問題は、内閣支持率の下落要因となり、政権の体力は低下。自民党内でも首相の姿勢を疑問視する声が上がり始めており、代表質問の質疑を聞いた中堅議員は「首相はポーズだけでも安倍氏の事務所に聞き取りをしたり、細田議長に『説明』をお願いしたりしない限り収まりがつかない」と指摘。別の中堅議員は「山際氏は次から次へと接点が発覚している。辞任すべきではないか」と漏らした。