総務官僚の接待 虚偽答弁は許さない

2021-02-21 11:51:19 | 桜ヶ丘9条の会

総務官僚の接待 虚偽答弁は許さない

2021年2月20日 中日新聞

 菅義偉首相の長男らによる総務省幹部四人の接待問題で、政府側による国会での虚偽答弁がまたもや明らかになった。議会制民主主義を愚弄(ぐろう)する振る舞いだ。私たちは虚偽答弁を絶対に許さない。
 国会も随分なめられたものだ。総務省の秋本芳徳情報流通行政局長は、放送事業会社「東北新社」に勤める首相の長男らの会食接待を受けた際、「放送業界全般の話題が出た記憶はない」と国会答弁していた。しかし、音声データが公開されると一転「今となっては発言があったのだろうと受け止めている」と認めた。最初の答弁は虚偽だったことになる。
 今回は週刊文春の報道や、野党の追及により虚偽答弁だったと分かったが、なぜこのようなことが繰り返されるのか。権力中枢に長く座る首相への忖度(そんたく)か、国会を甘く見ているのか。そのいずれだとしても許されざる行為である。
 国会は国権の最高機関であると同時に、唯一の立法機関だ。国民の命を守り、暮らしをより良くするためには、国会で審議を尽くして、法律をつくる必要がある。
 その前提は政府側が正しい情報を示し、議員の質問に真摯(しんし)に答えることだ。政府側が間違った情報を示したり質問に正しく答えなければ、議論の方向を誤らせ、国民に多大な不利益を与えかねない。
 振り返れば安倍前政権下では虚偽答弁が繰り返された。「森友学園」への国有地売却を巡り、事実と異なる政府答弁は百三十九回、「桜を見る会」前日の夕食会でも安倍晋三前首相による国会答弁のうち虚偽答弁は百十八回に上る。
 秋本氏らの国会対応の背景に、近年の国会での状況から、虚偽答弁でも乗り切れるとの誤った認識があるとしたら極めて深刻だ。
 東北新社の元社長らは、菅首相に計五百万円の個人献金を行っていた。首相自身と長男は別人格とはいえ、無関係とは言い難い。
 総務省幹部の接待時期は、同社の子会社が手掛ける衛星放送の認定更新の直前だ。政治献金や接待が放送行政を歪(ゆが)めることは絶対になかったと言い切れるのだろうか。
 武田良太総務相は秋本氏ら二人を大臣官房付に異動させた。事実上の更迭人事とされるが、これで幕引きとせず、法に基づいて厳正に対処すべきだ。
 国会は真相の徹底究明に向けて国政調査権を駆使すべきだ。もはや虚偽答弁を許してはならない。長男を含め総務省幹部を、虚偽の答弁をすれば偽証罪に問われる証人として喚問すべきである。

 


リコール不正 到底納得できぬ説明だ (2021年2月19日 中日新聞)

2021-02-19 09:51:43 | 桜ヶ丘9条の会

リコール不正 到底納得できぬ説明だ

2021年2月19日 中日新聞
 愛知県知事へのリコール運動で多数のアルバイトが署名を偽造していたことが明るみに出た。組織的不正も疑われる由々しき事態だが、運動を主導した三氏の説明は到底納得できるものではない。
 名古屋市の広告関連会社からリコール(解職請求)関連のはがき配布を請け負った下請け会社が、佐賀市内の貸会議室でアルバイトを動員し、愛知県民の名前や住所が掲載された名簿をリコール活動団体の署名簿に書き写す作業をさせたという。
 問題の署名は議会請願署名などと違い、地方自治法に基づき民意によって不適格な公職者を解職できるリコール成立の要件である。
 愛知県選管に提出された署名約四十三万五千筆のうち約83%に無効の疑いがある。同選管は、偽造の可能性がある署名提出について地方自治法違反の疑いで、同県警に容疑者不詳で刑事告発した。
 金銭を使ったリコール署名偽造事件となれば前代未聞である。他人になりすまして投票するのと同じくらい悪質であり、民主主義の根幹を揺るがす不正だ。捜査機関は断固として事実を究明し、違法行為の責任を追及してほしい。
 活動団体関係者から署名書き写しを依頼されたとする下請け会社と、関与を否定する団体事務局の言い分が食い違うなど、不可解な部分が多い。活動団体の田中孝博事務局長は記者会見で、佐賀での署名書き写しについて「(何者かが)妨害で紛れ込ませる意図があったと確信している」と述べたが、その根拠は示せなかった。
 運動を主導した美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長や田中氏がなすべきは、この異様な事態の迅速かつ完全な調査である。活動団体はクラウドファンディングで約四千万円を集めたともいう。アルバイトの報酬に使われていないかなど、その使途を含め、調査結果を透明性をもって公開することが社会的責任であろう。
 街頭活動などで運動を支援した河村たかし名古屋市長も説明責任を果たしているとは言い難い。十八日に開会した市議会二月定例会で新年度予算案などについて提案説明したが、リコール不正にひと言も触れず、議員から「極めて遺憾だ」と批判を浴びた。
 議会終了後、市長は記者団に「説明責任は尽くす。提案説明で言うのは場違いだと思った」と釈明した。影響力の大きい公職者だけに、市民の民主的権利を傷つけた不正の全容解明に向け、当事者意識をもって対応すべきである。

 


夜の酒場通い 議員を辞職すべきだ (2021年2月18日 中日新聞)

2021-02-18 10:32:27 | 桜ヶ丘9条の会

夜の酒場通い 議員を辞職すべきだ

2021年2月18日 中日新聞
 緊急事態宣言下の夜にまたも、自民党議員の高級酒場通いが発覚した。同様の行為で与党議員が議員辞職や離党した直後で、より悪質だ。国民代表という意識を欠く。即刻、議員辞職すべきだ。
 週刊文春の報道によると、自民党の白須賀貴樹衆院議員(45)=千葉13区=が二月十日午後八時半すぎ、東京都内の会員制高級ラウンジに入店し、一時間半近く滞在していた、という。
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言下であり、自民党の二階俊博幹事長は党所属国会議員に対し、飲食を伴う会合参加と午後八時以降の不要不急の外出自粛を要請中だ。
 国会議員による深夜の飲食店訪問を巡っては今月一日、松本純、大塚高司、田野瀬太道の各衆院議員が銀座の飲食店を訪れたとして自民党を離党し、公明党の遠山清彦氏は議員辞職したばかり。
 その直後の午後八時以降のラウンジ訪問だ。悪質としか言いようがない。国会議員としての自覚があまりにも希薄ではないか。
 自民党本部の外出自粛要請が、どこまで徹底されていたのかも疑問だ。党本部の責任も免れない。
 白須賀氏はこれまでにも議員の適格性を欠く行動があった。カジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡る汚職事件では、立件は見送られたが、東京地検特捜部が白須賀氏の地元事務所を家宅捜索し、贈賄側企業から百万円を受け取っていたことも分かった。
 文部科学政務官当時には、原子力災害など緊急事態に備える「在京当番日」にもかかわらず、会合に出席するため都内を離れ、その途中、白須賀氏を乗せて運転していた公設秘書が当て逃げ事故を起こし、書類送検された。
 たび重なる不祥事を憂慮し、選挙区内の党所属県議が「選挙応援はできない」などと対処を求める文書を党県連に提出している。
 白須賀氏は今回の報道を受けて自民党を離党した。次期衆院選には立候補しない意向だという。本人はけじめをつけたつもりだろうが、もはや議員の資格があるとは思えない。残り任期の八カ月間、歳費等の支払いが続く。白須賀氏は議員辞職し、補欠選挙で議員を選び直すべきではないか。
 国民がなぜ国会議員に民意を託しているのか。それは国権の最高機関、唯一の立法府として国民の命を守り、暮らしをより良くするための法律をつくり、行政を監視するためだ。深夜の高級クラブやラウンジ通いのためではない。

 


福島沖の地震 日ごろから備えてこそ (2021年2月16日 中日新聞)

2021-02-17 10:43:25 | 桜ヶ丘9条の会

福島沖の地震 日ごろから備えてこそ

2021年2月16日 中日新聞
 福島県沖で十三日深夜発生した地震は、十年前の東日本大震災の余震とみられる。地球的スケールでは十年は一瞬にすぎない。地震列島に生きていることを心に留め、常に備えを固めておきたい。
 ガタガタとした縦揺れに始まりグラグラと大きく長い揺れが続いた。その範囲は北海道から中国地方に広がり、特に東北や関東に住む人は東日本大震災を思い出したことだろう。ただしマグニチュード(M)は7・3。地震のエネルギーはM9・0だった大震災の数百分の一にとどまる。
 政府の地震調査委員会によると短期的には、今後一週間程度は震度6強程度の揺れに警戒する必要がある。長期的には今後十年くらいは同程度の余震が起こりうる、という。
 今回、一部地域で震度6強を記録し、崖崩れや落石が随所で起きたにもかかわらず、人命の被害はなかった。大震災後、家屋や土木構造物の耐震化が進んでいたことが被害の拡大を防いだのだろう。震源が地下五五キロと深く、被害を出すほどの津波が起きなかったことも幸いした。
 不十分だった点も明らかになった。東北新幹線では未補強の電柱が倒れたり、高架橋が損傷したりして、長期間の運休を余儀なくされている。補強の遅れや見落としがないか、再点検が必要だ。
 建築、土木の分野で耐震化が進んだ半面、地震学には画期的な進歩が見られない。観測網は充実してきたものの、時と場所を特定した地震予知の実現にはほど遠い。
 研究者たちは「いつ、どこに来るか分からない」という言い方に傾いている。およそ百年から百五十年おきに起きるといわれていた南海トラフ地震も、発生間隔をより幅広くとらえる考え方が有力になっている。明日かもしれないし二百年後かもしれない。直下型地震になると、さらに分からない。
 現状では、地震予知を当てにすることはできない。耐震補強を地道に進め、日ごろから防災対策や避難準備をしておくことが命を守る最善策である。
 十年前と異なるのは、スマートフォンと会員制交流サイト(SNS)の急速な普及だ。被災地の安否や防災情報の確認には有用だが、あふれる情報にはデマや有害なもの、例えば外国人差別的な内容や地震雲、人工地震説など疑似科学的なものまで、さまざま含まれる。
 命を守るためには、誤った情報をうのみにしたり、拡散することがあってはならない。 

 


ワクチン、情報公開必要では❓ 河野担当相ら、輸送の報道自粛求める

2021-02-16 10:34:26 | 桜ヶ丘9条の会

ワクチン、情報公開必要では? 河野担当相ら、輸送の報道自粛求める 

2021年2月12日 中日新聞
 新型コロナウイルスワクチンの国内への輸送に関する取材、報道の自粛を政府が求めている。「テロなどが起きないため」といった理由を挙げるものの、ワクチンの輸送でそうした事態が発生するとは考えにくい。コロナ収束の兆しが見えない中で、ワクチン接種は国民の最大の関心事。積極的な情報公開こそ必要では−。 (木原育子)
 「取材、報道は控えていただけるとありがたい。テロや妨害行為といった不測の事態を起こしたくない」。河野太郎行政改革担当相は二日、記者団にこう語った。加藤勝信官房長官も三日の会見で「輸送に関わる企業側からもいろんな意向が示されており、取材、報道は控えていただきたい」と続いた。
 閣僚二人が相次いで述べたとはいえ、政府内部で十分に議論した話ではなかったよう。河野氏の発言の場に同席していた内閣府政策評価広報課の猪口皓平氏は「会見での言葉以外、真意は分かりかねる。詳しい話の中身は知るところではない」と語るにとどまった。
 物資の輸送に関して政府が詳細な情報の公開を控えた例はある。東京五輪・パラリンピックを控え感染症の検査体制を強化しようと二〇一九年、エボラ出血熱などの感染症の原因ウイルスを輸入した際、具体的時期や相手国は伏せた。
 一九九二年には、プルトニウム輸送船「あかつき丸」がフランスから戻って来る際に強奪を防ぐためといった理由で船名などを公表しなかった。一方でフランスは輸送容器やコンテナの数、内部の構造まで詳しく明らかにし、日本の情報公開の在り方が問われた。
 ウイルスや核物質なら「テロの対象になる」という理屈は分からなくもないが、ワクチンに関してはそうした危険は少ないとみられる。
 日本大の河本志朗教授(危機管理学)は「輸送を妨害される可能性はある」としつつも、「報道自粛を求めるやり方がいいかは別問題」と首をかしげる。専修大の武田徹教授(メディア論)も「政府は、ワクチン購入の交渉経過などの詳細を明らかにしておらず、不信感を抱いている人も少なくないはず。そんな状況で報道の自粛だけ求めるのはおかしい」と批判する。
 マスコミが報道を控えるのは、誘拐事件などで人命が危険にさらされている恐れがある場合。捜査当局と報道協定を結び、一定期間、取材・報道はしない。
 元北海道新聞記者の高田昌幸・東京都市大教授(ジャーナリズム論)は「報道協定は当局と綿密に事前協議し、必ず情報を出すのが条件。今回はテロの情報が具体的に寄せられているわけでもないのに、民主主義の根幹となる自由な報道を軽々しく規制すべきではない」と指摘する。
 さらに高田氏は「一回認めれば、『テロの危険』を理由に何にでも自粛を求めるようになる。いつの時代も権力者は報道統制をしたがるとしても、最近は恥ずかしげもなく大っぴらに言うようになった」と警戒する。
 空港関係者への取材で、米ファイザー社の日本向けコロナワクチン第一号が今月十四日にも、ベルギーのブリュッセルから全日空便で成田空港に到着することが明らかになっている。それを受けて医療従事者への接種が始まり、四月から高齢者への接種が行われる見通し。武田氏は「皆が知りたがっていることなので、輸送についてもできる限り国民の知る権利に応えていくべきだ」と訴えた。