武器使用、一気に拡大 安保法施行
2016/3/29中日新聞
◆秋にも「駆け付け警護」
安全保障関連法が二十九日に施行され、自衛隊の活動範囲は飛躍的に広がった。正当防衛に限られていた海外での武器使用も拡大。防衛省は秋にも南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)で、「駆け付け警護」を任務に加える準備を進めている。
■緩和
施行によって自衛隊の活動を目に見える形で変えそうなのは、武器使用の制限の大幅な緩和だ。
政府は自衛隊の武器使用に関し「生命や身体を守る必要最小限の武器の使用は、憲法の禁じる武力行使に当たらない」との統一見解を取ってきた。これを根拠に海外でも正当防衛や緊急避難的な場合に限り、武器の使用を認めてきた。
今回はPKOで、自衛隊とは離れた場所で武装集団に襲われた民間人らを守る「駆け付け警護」や、現地での「治安維持活動」などの新任務を認めた。正当防衛でなくても武器使用ができるようになった。
だが駆け付け警護は、武装集団との本格的な戦闘に発展する懸念がある。派遣中の南スーダンPKOで、政府が新任務の追加を秋以降に先送りしたのは、夏の参院選への影響を避けるためだ。
他国軍の軍事行動を支援する自衛隊の派遣も、いつでも可能になった。イラク派遣などこれまではそのたびに特別措置法を制定していた。活動場所も「非戦闘地域」が撤廃され、次に派遣される自衛隊の活動はより戦闘現場に近づく。
発進準備中の航空機への給油活動や弾薬提供も可能になったが、憲法が禁じる他国の武力行使との一体化の疑念は残ったままだ。
過激派組織「イスラム国」(IS)に対する米国などの軍事作戦への支援も、安倍晋三首相は「政策判断として参加しない」と強調するが法的には可能だ。
首相は昨年十一月のオバマ米大統領との会談で、警戒監視活動を念頭に、中国が海洋進出を図る南シナ海への自衛隊派遣も「日本の安全保障に与える影響を注視しつつ検討する」と表明している。
■合憲性
「合憲性」が最大の論点となった集団的自衛権の行使を容認したことで、自衛隊は日本が攻撃されていなくても、米国などを守るための武力行使が可能になる。
その例として、首相は二十五日の参院予算委員会で、北朝鮮問題を挙げ「ミサイルを落とすために展開をしている米国のイージス艦が攻撃された際、何もできなくていいのか。(助けられないと)同盟は極めて危うくなる」と述べた。「世界最強の米軍に防護が必要か」との指摘が専門家からもあり、現実味は疑問視されている例だ。なぜ行使容認が必要なのかという疑問は今も残る。
合憲性をめぐる論議は、中谷元・防衛相でさえ法成立後「一番欠けていた」と認めた。
(政治部・横山大輔)
2016/3/29中日新聞
◆秋にも「駆け付け警護」
安全保障関連法が二十九日に施行され、自衛隊の活動範囲は飛躍的に広がった。正当防衛に限られていた海外での武器使用も拡大。防衛省は秋にも南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)で、「駆け付け警護」を任務に加える準備を進めている。
■緩和
施行によって自衛隊の活動を目に見える形で変えそうなのは、武器使用の制限の大幅な緩和だ。
政府は自衛隊の武器使用に関し「生命や身体を守る必要最小限の武器の使用は、憲法の禁じる武力行使に当たらない」との統一見解を取ってきた。これを根拠に海外でも正当防衛や緊急避難的な場合に限り、武器の使用を認めてきた。
今回はPKOで、自衛隊とは離れた場所で武装集団に襲われた民間人らを守る「駆け付け警護」や、現地での「治安維持活動」などの新任務を認めた。正当防衛でなくても武器使用ができるようになった。
だが駆け付け警護は、武装集団との本格的な戦闘に発展する懸念がある。派遣中の南スーダンPKOで、政府が新任務の追加を秋以降に先送りしたのは、夏の参院選への影響を避けるためだ。
他国軍の軍事行動を支援する自衛隊の派遣も、いつでも可能になった。イラク派遣などこれまではそのたびに特別措置法を制定していた。活動場所も「非戦闘地域」が撤廃され、次に派遣される自衛隊の活動はより戦闘現場に近づく。
発進準備中の航空機への給油活動や弾薬提供も可能になったが、憲法が禁じる他国の武力行使との一体化の疑念は残ったままだ。
過激派組織「イスラム国」(IS)に対する米国などの軍事作戦への支援も、安倍晋三首相は「政策判断として参加しない」と強調するが法的には可能だ。
首相は昨年十一月のオバマ米大統領との会談で、警戒監視活動を念頭に、中国が海洋進出を図る南シナ海への自衛隊派遣も「日本の安全保障に与える影響を注視しつつ検討する」と表明している。
■合憲性
「合憲性」が最大の論点となった集団的自衛権の行使を容認したことで、自衛隊は日本が攻撃されていなくても、米国などを守るための武力行使が可能になる。
その例として、首相は二十五日の参院予算委員会で、北朝鮮問題を挙げ「ミサイルを落とすために展開をしている米国のイージス艦が攻撃された際、何もできなくていいのか。(助けられないと)同盟は極めて危うくなる」と述べた。「世界最強の米軍に防護が必要か」との指摘が専門家からもあり、現実味は疑問視されている例だ。なぜ行使容認が必要なのかという疑問は今も残る。
合憲性をめぐる論議は、中谷元・防衛相でさえ法成立後「一番欠けていた」と認めた。
(政治部・横山大輔)