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武器輸出へ産官蜜月 資金援助を検討、支援法人新設も
2014/12/28 中日新聞核心より
武器輸出を原則認める防衛装備移転三原則を閣議決定した安倍政権が、武器輸出促進に向けた議論を進めている。「日本の安全保障のために」として、防衛省では日本企業向けの資金援助制度や相手国への訓練、整備支援制度の創設などを検討。官民一体となって推し進めようとしているが、「日本は戦争を必要とする国になる」との懸念も出ている。
■協力
「日本の武器が海外で求められている」「国が主体的に関与できる制度が必要だ」。衆院選の余韻が残る十八日。防衛省で始まった武器輸出支援策を議論する検討会では、参加した有識者から、防衛産業の海外展開を支援する体制整備を求める声が相次いだ。
世界第二の経済大国となった中国が軍事的にも台頭し、南シナ海ではベトナムやフィリピンと領有権を争うなど、周辺国との摩擦も激しくなっている。
防衛省ではこうした状況を念頭に「武器輸出によって相手国との軍事上の協力関係も強化される。最終的には、日本の安全保障に役立つ」と強調する。
検討会で、防衛省は東南アジア諸国連合(ASEAN)などへの国際協力などを課題として挙げたが、官の積極関与には検討会メンバーからも「日本が国家としてのリスクを背負うことにならないのか」といった意見があった。
■後押し
武器輸出支援策の一つとして検討されているのが、企業向けの資金援助だ。国が新たに設立した特殊法人や官民ファンドを通して、武器輸出する大企業に巨額の資金を低利で融資したり、補助金を出すことなどを検討している。こうした支援によって「大企業が武器輸出に積極的になるようにしたい」と防衛省。
しかし、企業の動きは既に積極的だ。六月にパリで開催された武器の国際展示会には、多くの日本企業が初参加。最大手の三菱重工業は、国際価格の三~八倍とされる武器の価格を引き下げるため、戦闘車両の車体を共通化しようとするなど低コスト化に向けた取り組みを始めている。
一方、支援に向けて特殊法人などを新設することについて、特殊法人問題の専門家からは「官僚の新たな出向先や天下り先をつくることにもなりかねない。支援は輸出企業だけの利益になるのか、それとも本当に国民のためになるのか、チェックが必要だ」といった指摘も出ている。
■加速
武器輸出を原則認めるという安保政策の大転換をした日本。今後、武器輸出を国が支援する制度を整えていくと、日本はどうなっていくのか。
検討会のメンバーでもある拓殖大の佐藤丙午(へいご)教授は「サイバー(電脳)やロボットなどの分野で防衛技術の発展が期待される。これらは、民生技術への転用も期待できる」と指摘。武器輸出が日本の産業界に新たな技術革新をもたらし、さらなる経済発展が期待できるとする。
一方、元経済産業官僚の古賀茂明氏は「防衛産業への経済的支援によって官民一体となった産軍複合体の流れは一気に加速する」と語る。「このままでは米国のように防衛産業が重要な経済の柱となり、日本が戦争をしなければ生きていけない国になってしまいかねない」としている。
(東京経済部・望月衣塑子)