リニア問題自由討論会  欅ヶ丘地内の稀少植物群生湿地見学会(リニアを考える可児の会)

2015-02-28 09:11:35 | 桜ヶ丘9条の会
リニアを考える可児の会 (代表者 桑山賢二 63ー3967)

    リニア問題 自由討論会
ー電磁波、自然環境、法律問題、重金属汚染問題などを中心としてー

リニア問題を考える可児の会では、JR東海に対し、リニアによる可児市民への影響につい て、質問状を出し、文書で回答するように求めましたが、無視されました。

「説明会」と称する一方的なJRの主張には、地域住民は納得できません。!

電磁波の人体に対する影響は! 景観を破壊し、静かな里山を振動や騒音で改変し、皐ヶ丘地区の直 近をトンネルで時速500キロという速度で走り抜け、地元には何 のメリットもない(久々利大萱地区の古窯群跡や景観、大森地区の農 業用ため池)!
地権者の法的対応は!

東海環状線工事の際、黄鉄鉱を大量に含む地層(美濃帯)のトンネル残 土が汚染事件(新滝が洞池)を起こした!

欅ヶ丘の稀少植物群生地の地下をリニアトンネルが走るが大丈夫か!

東濃地方には、ウラン鉱床が散在! 可児市と多治見市の境界は、華立断層(活断層)が存在するが、予想される南海、東 南海、東海三連動地震のよる地層の破断によるリニアトンネルの破壊は 大丈夫か!


日にち          2015年 3月 15日(日)
時間          午後2時~4時
場所          桜ヶ丘公民館
内容           参加者のリニアに対する問題意識、質問、意見、各自が学ん だ知識など、結論を出すのではなく、知識を出し合って、リ ニアの問題を共有する場所としたいので、自由に発言し
            てく ださい。 発言者が、参加者に配りたい資料は、各自プリントして準備 してください。

   DVDの貸出 (無料) 前回可児の会の学習会(古賀哲夫さんと高木輝雄さんの話) を録画したDVDが3組ほどありますので、ご希望の方に貸し出します。








リニアを考える可児の会(代表 桑山賢二 63-3967)

   リニアが通過する桜ヶ丘ハイツ欅ヶ丘地区の貴重植物湿地  見学会

 リニアのトンネルが通過するという欅ヶ丘地内には、尾根を挟んで柿下側 と大森側に2カ所の湿地があります。 この湿地には、カタクリの群生、市指定天然記念物である貴重植物、ミカ ワバイケイソウ・シデコブシを初め、ショウジョウバカマ、ハルリンドウ、 ササユリ、ヒカゲツツジなどが群生しています。
絶滅危惧種に指定されてい るギフチョウも柿下入会地で発見されています。

可児市は、これらの自然環境を守るために条例を制定して貴重な動植物の 生育・生育地の保護、保全を図っています。
欅ヶ丘の二つの貴重植物群生地の地下にリニアのトンネルが掘られること になっています。
トンネル掘削によって、湿地を作っている雨水や地下水の 流れが変わってしまうと、湿地が失われ、貴重植物の群生も失われる恐れが あります。 可児市の貴重な植物やギフチョウを守るために可児市として、どのような 持続可能な保全措置を講じているのか小川議員も市議会で質問していますが、 リニアを考える可児の会としても、貴重な場所の現地を知る必要がありま す。  小川富貴可児市議が、群生地の状況に詳しく、現地を見ながら説明をして もいいと、快諾していただきましたので、下記のような企画を計画しました。

   ● 欅ヶ丘湿地見学と小川富貴可児市議の説明を聞く会

  ● 日時      2015年4月4日(土)予備日(翌日5日(日)午後 1時30分
 ● 集合場所    桜ヶ丘公民館 駐車場
  ● 案内と説明   小川富貴可児市議
 ● 予定      桜ヶ丘公民館→柿下側の湿地→大森側の湿地→公民館の 玄関ロビーで補充説明

 なお、可児の会では、4月19日(日)午後2時~4時 桜ヶ丘公民館で、 電磁波問題の学習会(講師 医師の中川さん)を予定しています。(詳細は追って)

9条改憲への布石 強大権限の「緊急事態」新設に意欲(2015年2月25日中日新聞)

2015-02-28 08:08:11 | 桜ヶ丘9条の会
9条改憲への布石? 強大権限の「緊急事態」新設に意欲  

2015/2/25 朝刊中日新聞

武装工作員のテロ攻撃に備えた陸上自衛隊と警察の合同訓練。現場へ急行するという想定の自衛隊車両を白バイが先導した=2013年12月、神奈川県横須賀市の陸自武山駐屯地で
 安倍晋三首相が、改憲に並々ならぬ意欲をみせている。最初の改憲候補として自民党内で優先度が高まっているのが、緊急事態条項の新設だ。大規模災害や有事の際、首相・内閣に権限を集中し、個人の権利を制限することなどを定めた内容。だが、「現行法でも対処できる」「不当な人権の制限につながる」として反対意見も強い。首相が悲願とする「九条改憲」に向けた突破口にしたいのでは、と指摘する声も出ている。

 自民党が二〇一二年四月にまとめた改憲草案では、第九章として「緊急事態」の項目を新設。九八条と九九条で、有事や大規模災害の発生時には、首相が緊急事態の宣言を行い、首相や内閣に一時的に緊急事態対処のための権限を付与することができるなどと定めた。

 その権限は強力で、宣言が発せられると、内閣は法律と同一の効力を持つ緊急政令を制定し、首相は緊急の財政支出を行い、地方自治体の長に対して指示できると規定した。

 国民に対しても、国民の生命、身体、財産を守るための措置に関しては、国や他の公の機関の指示に従わなければならないと義務付けている。例えば災害時に対応がスムーズに進むよう、国民に移動しないよう命じたり、特定の業務に従事させたりといったケースが考えられる。

 国政が滞らないようにするため、衆参両院議員の任期や選挙期日を一定期間延長できるようにもする。首相が独断で判断しないよう宣言を出す前に閣議にかけることや、事前または事後に国会の承認を得ることも定めている。

 戦前の大日本帝国憲法には、緊急事態時の非常措置を定めた条項があった。八条に「緊急勅令制定権」、一四条に「戒厳宣告の大権」、三一条に「非常大権」、七〇条に「緊急財政措置権」が設けられていた。国民の権利を著しく制限する条項だ。

 これを意識したのか、自民党が作成した「草案に関するQ&A」では「よく『戒厳令ではないか』などと言う人がいますが、決してそのようなことではありません」と強調。「具体的な内容は法律で規定することになっており、総理大臣が何でもできるようになるわけではない」と説明している。

 その必要性については、四年前に起きた東日本大震災の政府対応の反省を踏まえて、緊急事態対処の仕組みを憲法上明確に規定すると記している。

 自民党は昨年十一月の衆院憲法審査会で改憲テーマとして、緊急事態条項に加え、良好な自然環境を享受する権利である環境権や、次世代への負担の先送りを制限する財政規律条項を挙げた。連立与党の公明党は環境権の新設に前向きだ。緊急事態条項に関しては、共産党以外の七党からは強い反対意見が出ていない。

 安倍首相は、一六年夏の参院選で、改憲賛成派が全体の三分の二以上を占めれば、秋の臨時国会で改憲を発議。同年末か一七年前半に国民投票を実施するシナリオを描いているとされる。緊急事態条項などを呼び水に、本丸の九条改憲を実現する戦略とみられる。

◆不当な人権制限の恐れも

 自民党改憲草案の緊急事態条項には、問題になりそうな内容が多い。

 「草案の最大目標は九条を改め、平和憲法の理念を変えること。その意味から考えると、草案で想定される緊急事態も軍事面に主眼が置かれているはずだ」

 専修大の石村修教授(憲法学)はそう指摘する。

 九八条では、緊急事態の例として、(1)外部からの武力攻撃(2)内乱などによる社会秩序の混乱(3)地震などによる大規模な自然災害-を挙げる一方、「その他の法律で定める緊急事態」とも定めている。

 「法律次第で緊急事態の範囲が際限なく広がりかねない。軍事的な面で言えば、防衛の場面だけではなく、日本の脅威となる相手に先んじて攻撃する場合なども含まれる可能性もある。緊急事態の内容を細かく規定しているドイツとは大きく異なる」(石村氏)

 首相が緊急事態を宣言すれば、首相や内閣に権限が集中する。乱用の防止が重要なはずだが、緊急政令の制定でも、事後に国会の承認を得ればよく、歯止めにならない可能性が高い。

 東海大法科大学院の永山茂樹教授(憲法学)は「表現の自由を制限するケースが怖い。戦争をしようとする国の動きに対して批判が封じ込められることになると、暴走を食い止められなくなる」と訴える。

 九九条では「第一四条(法の下の平等)、第一八条(奴隷的拘束・苦役からの自由)、第一九条(思想・良心の自由)、第二一条(集会・結社・表現の自由)を最大限尊重」と定める。他の基本的人権に関する規定も同様に位置づけた。

 しかし、草案のQ&Aでは「国民の生命、身体、財産という大きな人権を守るため、必要な範囲でより小さな人権がやむなく制限されることもあり得る」とする。状況によっては不当に人権が制限される恐れがある。

 緊急事態には現行法でも対処できるため、あえて緊急事態条項を設ける必要はないという意見も根強い。

 例えば、災害対策基本法。東日本大震災時のがれき処理や、大雪などの除雪作業で、放置車両の撤去が財産権との兼ね合いで問題となったことがあった。昨年十一月の同法改正で、緊急時には強制撤去することが可能になっている。

 有事の際にも、武力攻撃事態法や国民保護法などで既に、広範囲にわたって国民などに協力を求める規定が設けられている。

 草案のQ&Aでもそのことは認めていて、緊急政令について「必ずしも憲法上の根拠が必要ではない」、地方自治体の長に対する指示についても「念のために置いた規定」と記している。

 慶応大の小林節名誉教授(憲法学)は「国民の反発の少ない部分でまず改憲を進め、『改憲慣れ』とでも言える状況をつくろうとしているのだろう。その先に見据えているのは九条改憲だ」と指摘する。

 「首相の頭にあるのは『戦争のできる国』にすること。九条改憲に向けた突破口を何としてでもつくりたいはず。そんな不純な動機に基づく改憲論議を許していいわけがない」

 (上田千秋、榊原崇仁)

閣議決定を次々逸脱 安保法制の与党協議(中日新聞 核心 2015年2月26日)

2015-02-26 19:10:32 | 桜ヶ丘9条の会
閣議決定を次々逸脱 安保法制の与党協議 

2015/2/26 中日新聞

 安全保障法制の新たな方針を定めた昨年7月の閣議決定に基づく与党協議で、米軍など他国軍の戦闘支援の範囲を可能な限り広げようとする政府・自民党の姿勢が鮮明になっている。閣議決定は自衛隊の活動地域を拡大する内容だが、それを超えるような案を次々と提示しているのだ。慎重な議論を求める公明党は懸念を強めている。

■変更

 安保法制の閣議決定のうち、自衛隊による海外での戦闘支援に関する最大の変更点は「非戦闘地域」の考え方をなくしたことだ。

 政府は従来、憲法九条が紛争を解決する手段としての武力行使を禁じていることを踏まえ、可能な支援は他国軍の戦闘行為と「一体化しないこと」と定義。「非戦闘地域」「後方地域支援」との表現を使って自衛隊の活動内容を決めてきた。インド洋の公海上での給油や、激戦地から離れたイラクの地方都市での人道復興支援が実例だ。

 だが、閣議決定で「非戦闘地域」でなくても「現に戦闘を行っている現場」以外なら支援できると転換。激戦地の近くで他国軍の支援が可能になる。例えば、街が破壊されていても、直接の戦闘が行われていなければ活動できるという政府側の見解もある。安倍晋三首相は「戦闘を行っている現場になる場合は、直ちに活動を中断する」と説明するが、これまでと比べものにならないほど自衛隊が危険な任務に従事する可能性が出ている。

■拡大

 実際に自衛隊を派遣できるようにするには法整備が必要。法案づくりに向け、自民、公明両党が中身を議論しているが、政府・自民党の主張は閣議決定の内容をはみ出している。閣議決定には「必要な支援活動を実施できるようにするための法整備を進める」と書いてあるだけだが、政府・自民党はあいまいな表現を根拠に、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法の制定を主張している。

 これまで政府は、朝鮮半島有事などを想定した周辺事態法以外は、目的と期間を絞った特別措置法で対応してきた。対する恒久法に目的や期間の限定はなく、政権の裁量で自衛隊派遣を判断できる。

 「閣議決定で示された新たな考え方の実例がないのに、いきなり一般法(恒久法)なのか」。公明党の北側一雄副代表は二十日の与党協議で、政府・自民党をけん制。公明党側には、事態のたびに特措法で対応すべきだとの意見がある。

■記載なし

 ほかにもある。閣議決定は戦闘支援が必要になる場面を「国際社会が国連決議に基づき一致団結して対応するようなとき」と指摘し、国連安全保障理事会の決議を唯一の具体例に挙げた。だが、政府は与党協議で「国連決議がある場合に限定すべきではない」と明言。閣議決定に記載のない他国軍への弾薬の提供や、発進準備中の航空機への給油も解禁したい考えだ。

 さらに、政府は周辺事態法の改正も提案。同法は日本周辺で「わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」が起きた際の米軍支援が目的だが「周辺事態」の概念をなくして範囲を広げ、対象を米軍以外の他国軍に広げることも求めた。いずれも閣議決定では一切触れていない。

 与党協議座長の高村正彦自民党副総裁は一月に「閣議決定の中身に過不足ない法案にしてもらいたい」と述べていたが、政府・自民党の提案は明らかに閣議決定の内容を超えている。公明党幹部は「いつでもどこでも自衛隊を派遣できるような法律は通らない。しっかり議論しなければならない」と強調する。

◆「PKO以上の厳格な要件必要」 海外派遣で公明・北側副代表 

 公明党の北側一雄副代表は二十五日、安全保障法制をめぐる党検討委員会で、国連平和維持活動(PKO)以外の国際的な平和協力活動や、他国軍の後方支援のため自衛隊を派遣する際、PKO参加五原則以上の厳格な要件が必要と政府側に求めた。

 北側氏は要件について「日本が参加したいのであればPKO参加五原則以上の原則があって初めて容認される」と強調した。検討する際の観点として「派遣の正当性」「憲法が禁じる『他国の武力行使との一体化』回避」「隊員の安全確保」を例示した。

 PKO協力法は参加要件として(1)紛争当事者間の停戦合意(2)当事者による日本のPKO参加への同意(3)中立的立場の厳守(4)以上のいずれかが満たされなくなった場合の即時撤退(5)要員の生命保護など必要最小限の武器使用-の五原則を掲げている。

 会合で政府側は恒久法の必要性について「普段から各国と連携した情報収集や訓練が可能で、派遣のための調査や、迅速な準備が可能だ」と説明した。これに対し公明党側から「(恒久法の方が)迅速に対応できるとは言い切れない」と反発する意見が出た。

(政治部・中根政人、金杉貴雄)

大飯原発差し止め判決要旨(再掲)

2015-02-06 21:47:05 | 桜ヶ丘9条の会
大飯原発の再稼働を認めないとする福井地裁の判決要旨全文を再掲する。

2014年5月21日
大飯原発3、4号機運転差止請求事件判決要旨

主文

1 被告は、別紙原告目録1記載の、各原告(大飯原発から250キロメートル圏内に居住する166名)に対する関係で、
福井県大飯郡おおい町大島1字吉見1-1において、大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない。

2 別紙原告目録2記載の各原告(大飯原発から250キロメートル圏外に居住する23名)の請求を、いずれも棄却する。

3 訴訟費用は、第2項の各原告について生じたものを、同原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

理由

1 はじめに

ひとたび深刻な事故が起これば、多くの人の生命、身体やその生活基盤に、重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、
その被害の大きさ、程度に応じた安全性と、高度の信頼性が求められて然るべきである。
このことは、当然の社会的要請であるとともに、生存を基礎とする人格権が公法、私法を間わず、
すべての法分野において、最高の価値を持つとされている以上、本件訴訟においても、よって立つべき解釈上の指針である。

個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益は、各人の人格に本質的なものであって、その総体が人格権であるということができる。
人格権は、憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、
我が国の法制下においては、これを超える価値を、他に見出すことはできない。
したがって、この人格権、とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の、根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは、
人格権そのものに基づいて、侵害行為の差止めを請求できることになる。
人格権は、各個人に由来するものであるが、その侵害形態が、多数人の人格権を同時に侵害する性質を有するとき、
その差止めの要請が、強く働くのは理の当然である。


2 福島原発事故について

福島原発事故においては、15万人もの住民が、避難生活を余儀なくされ、この避難の過程で、少なくとも入院患者等60名が、その命を失っている。
家族の離散という状況や、劣悪な避難生活の中で、この人数を遥かに超える人が命を縮めたことは、想像に難くない。
さらに、原子力委員会委員長が、福島第一原発から250キロメートル圏内に居住する住民に、避難を勧告する可能性を検討したのであって、
チェルノブイリ事故の場合の住民の避難区域も、同様の規模に及んでいる。

年間何ミリシーベルト以上の放射線が、どの程度の健康被害を及ぼすかについては、さまざまな見解があり、
どの見解に立つかによって、あるべき避難区域の広さも変わってくることになるが、
既に、20年以上にわたり、この問題に直面し続けてきたウクライナ共和国、ベラルーシ共和国は、今なお、広範囲にわたって避難区域を定めている。
両共和国の政府とも、住民の早期の帰還を図ろうと考え、住民においても、帰還の強い願いを持つことにおいて、我が国となんら変わりはないはずである。
それにもかかわらず、両共和国が、上記の対応をとらざるを得ないという事実は、
放射性物質のもたらす健康被害について、楽観的な見方をした上で、避難区域は最小限のもので足りるとする見解の正当性に、重大な疑問を投げかけるものである。
上記250キロメートルという数字は、緊急時に想定された数字にしかすぎないが、だからといってこの数字が、直ちに過大であると判断することはできないというべきである。


3 本件原発に求められるべき安全性

(1) 原子力発電所に求められるべき安全性

1、2に摘示したところによれば、原子力発電所に求められるべき安全性、信頼性は、極めて高度なものでなければならず、
万一の場合にも、放射性物質の危険から国民を守るべく、万全の措置がとられなければならない。

原子力発電所は、電気の生産という、社会的には重要な機能を営むものではあるが、原子力の利用は、平和目的に限られているから(原子力基本法2条)、
原子力発電所の稼動は、法的には、電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、
憲法上は、人格権の中核部分よりも、劣位に置かれるべきものである。
しかるところ、大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が、極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは、原子力発電所の事故のほかは想定し難い。
かような危険を、抽象的にでもはらむ経済活動は、その存在自体が憲法上容認できないというのが、極論にすぎるとしても、
少なくとも、かような事態を招く具体的危険性が万が一でもあれば、その差止めが認められるのは当然である。
このことは、土地所有権に基づく、妨害排除請求権や妨害予防請求権においてすら、
侵害の事実や侵害の具体的危険性が認められれば、侵害者の過失の有無や請求が認容されることによって受ける侵害者の不利益の大きさという、侵害者側の事情を問うことなく請求が認められていることと対比しても明らかである。


新しい技術が、潜在的に有する危険性を許さないとすれば、社会の発展はなくなるから、
新しい技術の有する危険性の性質や、もたらす被害の大きさが明確でない場合には、その技術の実施の差止めの可否を、裁判所において判断することは困難を極める。
しかし、技術の危険性の性質や、そのもたらす被害の大きさが判明している場合には、
技術の実施に当たっては、危険の性質と被害の大きさに応じた安全性が求められることになるから、この安全性が保持されているかの判断をすればよいだけであり、
危険性を一定程度容認しないと社会の発展が妨げられるのではないかといった、葛藤が生じることはない。
原子力発電技術の危険性の本質、及びそのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる。
本件訴訟においては、本件原発において、かような事態を招く具体的危険性が、万が一でもあるのかが、判断の対象とされるべきであり、
福島原発事故の後において、この判断を避けることは、裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる。

(2) 原子炉規制法に基づく審査との関係

(1)の理は、上記のように、人格権の我が国の法制における地位や、条理等によって導かれるものであって、
原子炉規制法をはじめとする行政法規の在り方、内容によって、左右されるものではない。
したがって、改正原子炉規制法に基づく新規制基準が、原子力発電所の安全性に関わる問題のうちいくつかを、電力会社の自主的判断に委ねていたとしても、その事項についても、裁判所の判断が及ぼされるべきであるし、
新規制基準の対象となっている事項に関しても、新規制基準への適合性や、原子力規制委員会による新規制基準への適合性の審査の適否という観点からではなく、
(1)の理に基づく裁判所の判断が、及ぼされるべきこととなる。


4 原子力発電所の特性

原子力発電技術は、次のような特性を持つ。
すなわち、原子力発電においては、そこで発出されるエネルギーは、極めて膨大であるため、
運転停止後においても、電気と水で原子炉の冷却を継続しなければならず、その間に何時間か電源が失われるだけで、事故につながり、
いったん発生した事故は、時の経過に従って拡大して行く、という性質を持つ。
このことは、他の技術の多くが、運転の停止という単純な操作によって、その被害の拡大の要因の多くが除去されるのとは異なる、原子力発電に内在する本質的な危険である。

したがって、施設の損傷に結びつき得る地震が起きた場合、速やかに運転を停止し、運転停止後も、電気を利用して、水によって核燃料を冷却し続け、
万が一に異常が発生したときも、放射性物質が、発電所敷地外部に漏れ出すことのないようにしなければならず、
この止める、冷やす、閉じ込めるという要請は、この3つがそろって初めて、原子力発電所の安全性が保たれることとなる。
仮に、止めることに失敗すると、わずかな地震による損傷や故障でも、破滅的な事故を招く可能性がある。
福島原発事故では、止めることには成功したが、冷やすことができなかったために、放射性物質が外部に放出されることになった。
また、我が国においては、核燃料は、五重の壁に閉じ込められているという構造によって、初めてその安全性が担保されているとされ、
その中でも重要な壁が、堅固な構造を持つ原子炉格納容器であるとされている。
しかるに、本件原発には、地震の際の冷やすという機能と、閉じ込めるという構造において、次のような欠陥がある。


5 冷却機能の維持について4 原子力発電所の特性

(1) 1260ガルを超える地震について

原子力発電所は、地震による緊急停止後の冷却機能について、外部からの交流電流によって水を循環させる、という基本的なシステムをとっている。
1260ガルを超える地震によって、このシステムは崩壊し、非常用設備ないし予備的手段による補完も、ほぼ不可能となり、メルトダウンに結びつく。
この規模の地震が起きた場合には、打つべき有効な手段がほとんどないことは、被告において自認しているところである。

しかるに、我が国の地震学会において、このような規模の地震の発生を、一度も予知できていないことは、公知の事実である。
地震は、地下深くで起こる現象であるから、その発生の機序の分析は、仮説や推測に依拠せざるを得ないのであって、
仮説の立論や検証も、実験という手法がとれない以上、過去のデータに頼らざるを得ない。
確かに、地震は太古の昔から存在し、繰り返し発生している現象ではあるが、その発生頻度は必ずしも高いものではない上に、
正確な記録は近時のものに限られることからすると、頼るべき過去のデータは、極めて限られたものにならざるをえない。
したがって、大飯原発には、1260ガルを超える地震は来ないとの、確実な科学的根拠に基づく想定は、本来的に不可能である。
むしろ、
① 我が国において記録された既往最大の震度は、岩手宮城内陸地震における4022ガルであり、1260ガルという数値は、これをはるかに下回るものであること、
② 岩手宮城内陸地震は、大飯でも発生する可能性があるとされる、内陸地殻内地震であること、
③ この地震が起きた東北地方と、大飯原発の位置する北陸地方、ないし隣接する近畿地方とでは、地震の発生頻度において有意的な違いは認められず、若狭地方の既知の活断層に限っても、陸海を問わず多数存在すること、
④ この既往最大という概念自体が、有史以来世界最大というものではなく、近時の、我が国において最大というものにすぎないことからすると、1260ガルを超える地震は、大飯原発に到来する危険がある。

(2) 700ガルを超えるが、1260ガルに至らない地震について

ア 被告の主張するイベントツリーについて
被告は、700ガルを超える地震が到来した場合の事象を想定し、それに応じた対応策があると主張し、
これらの事象と対策を記載したイベントツリーを策定し、これらに記載された対策を順次とっていけば、
1260ガルを超える地震が来ない限り、炉心損傷には至らず、大事故に至ることはないと主張する。

しかし、これらのイベントツリー記載の対策が、真に有効な対策であるためには、
第1に、地震や津波のもたらす事故原因につながる事象を、余すことなくとりあげること、
第2に、これらの事象に対して、技術的に有効な対策を講じること、
第3に、これらの技術的に有効な対策を、地震や津波の際に実施できるという、
3つがそろわなければならない。

イ イベントツリー記載の事象について
深刻な事故においては、発生した事象が新たな事象を招いたり、事象が重なって起きたりするものであるから、
第1の事故原因につながる事象のすべてを、取り上げること自体が、極めて困難であるといえる。

ウ イベントツリー記載の対策の実効性について
また、事象に対するイベントツリー記載の対策が、技術的に有効な措置であるかどうかはさておくとしても、
いったんことが起きれば、事態が深刻であればあるほど、それがもたらす混乱と焦燥の中で、適切かつ迅速にこれらの措置をとることを、
原子力発電所の従業員に求めることはできない。
特に、次の各事実に照らすと、その困難性は一層明らかである。

第1に、
地震はその性質上、従業員が少なくなる夜間も、昼間と同じ確率で起こる。
突発的な危機的状況に、直ちに対応できる人員がいかほどか、あるいは、現場において、指揮命令系統の中心となる所長が不在か否かは、
実際上は、大きな意味を持つことは明らかである。

第2に、
上記イベントツリーにおける対応策をとるためには、いかなる事象が起きているのかを把握できていることが前提になるが、
この把握自体が、極めて困難である。
福島原発事故の原因について、国会事故調査委員会は、地震の解析にカを注ぎ、
地震の到来時刻と津波の到来時刻の分析や、従業員への聴取調査等を経て、
津波の到来前に、外部電源の他にも、地震によって事故と直結する損傷が生じていた疑いがある旨指摘しているものの、
地震がいかなる箇所に、どのような損傷をもたらし、それがいかなる事象をもたらしたかの確定には至っていない。
一般的には、事故が起きれば、事故原因の解明、確定を行い、その結果を踏まえて技術の安全性を高めていくという側面があるが、
原子力発電技術においては、いったん大事故が起これば、その事故現場に立ち入ることができないため、事故原因を確定できないままになってしまう可能性が極めて高く、
福島原発事故においても、その原因を、将来確定できるという保証はない。
それと同様、又はそれ以上に、原子力発電所における事故の進行中に、いかなる箇所にどのような損傷が起きており、それがいかなる事象をもたらしているのかを、把握することは困難である。

第3に、
仮に、いかなる事象が起きているかを把握できたとしても、地震により外部電源が断たれると同時に、多数箇所に損傷が生じるなど、対処すべき事柄は極めて多いことが想定できるのに対し、
全交流電源喪失から炉心損傷開始までの時間は、5時間余であり、炉心損傷の開始からメルトダウンの開始に至るまでの時間も、2時間もないなど、残された時間は限られている。

第4に、
とるべきとされる手段のうち、いくつかはその性質上、緊急時にやむを得ずとる手段であって、普段からの訓練や試運転にはなじまない。
運転停止中の原子炉の冷却は、外部電源が担い、非常事態に備えて、水冷式非常用ディーゼル発電機のほか、空冷式非常用発電装置、電源車が備えられているとされるが、
たとえば、空冷式非常用発電装置だけで、実際に原子炉を冷却できるかどうかをテストするというようなことは、危険すぎてできようはずがない。

第5に、
とるべきとされる防御手段に係るシステム自体が、地震によって破損されることも予想できる。
大飯原発の、何百メートルにも及ぶ非常用取水路が、一部でも、700ガルを超える地震によって破損されれば、
非常用取水路にその機能を依存している、すべての水冷式の非常用ディーゼル発電機が、稼動できなくなることが想定できるといえる。
また、埋戻土部分において、地震によって段差ができ、最終の冷却手段ともいうべき電源車を、動かすことが不可能、又は著しく困難となることも想定できる。
上記に摘示したことを一例として、地震によって複数の設備が、同時にあるいは相前後して使えなくなったり故障したりすることは、機械というものの性質上当然考えられることであって、
防御のための設備が、複数備えられていることは、地震の際の安全性を大きく高めるものではないといえる。

第6に、
実際に放射性物質が一部でも漏れれば、その場所には近寄ることさえできなくなる。

第7に、
大飯原発に通ずる道路は限られており、施設外部からの支援も期待できない。

エ 基準地震動の信頼性について
被告は、大飯原発の周辺の活断層の調査結果に基づき、活断層の状況等を勘案した場合の、地震学の理論上導かれるガル数の最大数値が700であり、
そもそも、700ガルを超える地震が到来することはまず考えられない、と主張する。
しかし、この理論上の数値計算の正当性、正確性について論じるより、
現に、全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に、5回にわたり想定した地震動を超える地震が、平成17年以後、10年足らずの問到来しているという事実を、重視すべきは当然である。
地震の想定に関し、このような誤りが重ねられてしまった理由については、今後、学術的に解決すべきものであって、当裁判所が立ち入って判断する必要のない事柄である。
これらの事例は、いずれも、地震という自然の前における人間の能力の限界を示すもの、というしかない。
本件原発の地震想定が、基本的には、上記4つの原発におけるのと同様、過去における地震の記録と周辺の活断層の調査分析という手法に基づきなされたにもかかわらず、
被告の本件原発の地震想定だけが信頼に値する、という根拠は見い出せない。

オ 安全余裕について
被告は、本件5例の地震によって、原発の安全上重要な施設に、損傷が生じなかったことを前提に、原発の施設には安全余裕ないし安全裕度があり、
たとえ基準地震動を超える地震が到来しても、直ちに安全上重要な施設の損傷の危険性が生じることはない、と主張している。

弁論の全趣旨によると、一般的に設備の設計に当たって、様々な構造物の材質のばらつき、溶接や保守管理の良否等の不確定要素が絡むから、
求められるべき基準をぎりぎり満たすのではなく、同基準値の何倍かの余裕を持たせた設計が、なされることが認められる。
このように設計した場合でも、基準を超えれば、設備の安全は確保できない。
この、基準を超える負荷がかかっても、設備が損傷しないことも当然あるが、
それは単に、上記の不確定要素が、比較的安定していたことを意味するにすぎないのであって、安全が確保されていたからではない。
したがって、たとえ過去において、原発施設が基準地震動を超える地震に耐えられた、という事実が認められたとしても、
同事実は、今後、基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しても、施設が損傷しないということを、なんら根拠づけるものではない。

(3) 700ガルに至らない地震について

ア 施設損壊の危険
本件原発においては、基準地震動である700ガルを下回る地震によって外部電源が断たれ、かつ主給水ポンプが破損し、主給水が断たれるおそれがあると認められる。

イ 施設損壊の影響
外部電源は、緊急停止後の冷却機能を保持するための第1の砦であり、外部電源が断たれれば、非常用ディーゼル発電機に頼らざるを得なくなるのであり、
その名が示すとおり、これが非常事態であることは明らかである。
福島原発事故においても、外部電源が健全であれば、非常用ディーゼル発電機の津波による被害が事故に直結することはなかった、と考えられる。
主給水は、冷却機能維持のための命綱であり、これが断たれた場合には、その名が示すとおり、補助的な手段にすぎない補助給水設備に頼らざるを得ない。
前記のとおり、原子炉の冷却機能は、電気によって水を循環させることによって維持されるのであって、
電気と水のいずれかが一定時間断たれれば、大事故になるのは必至である。
原子炉の緊急停止の際、この冷却機能の主たる役割を担うべき外部電源と、主給水の双方が、ともに700ガルを下回る地震によっても同時に失われるおそれがある。
そして、その場合には、(2)で摘示したように、実際にはとるのが困難であろう、限られた手段が効を奏さない限り、大事故となる。

ウ 補助給水設備の限界
このことを、上記の補助給水設備についてみると、次の点が指摘できる。
緊急停止後において、非常用ディーゼル発電機が正常に機能し、補助給水設備による蒸気発生器への給水が行われたとしても、
① 主蒸気逃がし弁による熱放出、
② 充てん系によるほう酸の添加、
③ 余熱除去系による冷却のうち、いずれか一つに失敗しただけで、補助給水設備による蒸気発生器への給水ができないのと同様の事態に進展することが認められるのであって、
補助給水設備の実効性は、補助的手毅にすぎないことに伴う不安定なもの、といわざるを得ない。
また、上記事態の回避措置として、イベントツリーも用意されてはいるが、
各手順のいずれか一つに失敗しただけでも、加速度的に深刻な事態に進展し、未経験の手作業による手順が増えていき、不確実性も増していく。
事態の把握の困難性や、時間的な制約のなかで、その実現に困難が伴うことは、(2)において摘示したとおりである。

エ 被告の主張について
被告は、主給水ポンプは、安全上重要な設備ではないから、基準地震動に対する耐震安全性の確認は行われていない、と主張するが、
主給水ポンプの役割は、主給水の供給にあり、主給水によって冷却機能を維持するのが、原子炉の本来の姿であって、そのことは被告も認めているところである。
安全確保の上で不可欠な役割を、第1次的に担う設備は、これを安全上重要な設備であるとして、それにふさわしい耐震性を求めるのが健全な社会通念であると考えられる。
このような設備を安全上重要な設備ではないとするのは、理解に苦しむ主張である、といわざるを得ない。

(4) 小括

日本列島は、太平洋プレート、オホーツクプレート、ユーラシアプレート、及びフィリピンプレートの、4つのプレートの境目に位置しており、
全世界の地震の1割が、狭い我が国の国土で発生する。
この地震大国日本において、基準地震動を超える地震が、大飯原発に到来しないというのは、根拠のない楽観的見通しにしかすぎない上、
基準地震動に満たない地震によっても、冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、
そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える、現実的で切迫した危険と評価できる。
このような施設のあり方は、原子力発電所が有する、前記の本質的な危険性について、あまりにも楽観的といわざるを得ない。


6 閉じ込めるという構造について(使用済み核燃料の危険性)

(1) 使用済み核燃料の現在の保管状況

原子力発電所は、いったん内部で事故があったとしても、放射性物質が原子力発電所敷地外部に出ることのないようにする必要があることから、その構造は堅固なものでなければならない。

そのため、本件原発においても、核燃料部分は、堅固な構造をもつ原子炉格納容器の中に存する。
他方、使用済み核燃料は、本件原発においては、原子炉格納容器の外の建屋内の、使用済み核燃料プールと呼ばれる水槽内に置かれており、その本数は1000本を超えるが、
使用済み核燃料プールから放射性物質が漏れたとき、これが原子力発電所敷地外部に放出されることを防御する、原子炉格納容器のような堅固な設備は存在しない。

(2) 使用済み核燃料の危険性

福島原発事故においては、4号機の使用済み核燃料プールに納められた使用済み核燃料が、危機的状況に陥り、この危険性ゆえに、前記の避難計画が検討された。
原子力委員会委員長が想定した被害想定のうち、最も重大な被害を及ぼすと想定されたのは、使用済み核燃料プールからの放射能汚染であり、
他の号機の使用済み核燃料プールからの汚染も考えると、強制移転を求めるべき地域が、170キロメートル以遠にも生じる可能性や、
住民が移転を希望する場合に、これを認めるべき地域が、東京都のほぼ全域や、横浜市の一部を含む250キロメートル以遠にも発生する可能性があり、
これらの範囲は、自然に任せておくならば、数十年は続くとされた。

(3) 被告の主張について

被告は、使用済み核燃料は通常40度以下に保たれた水により冠水状態で貯蔵されているので冠水状態を保てばよいだけであるから堅固な施設で囲い込む必要はないとするが、以下のとおり失当である。

ア 冷却水喪失事故について
使用済み核燃料においても、破損により冷却水が失われれば、被告のいう冠水状態が保てなくなるのであり、
その場合の危険性は、原子炉格納容器の一次冷却水の配管破断の場合と、大きな違いはない。
福島原発事故において、原子炉格納容器のような堅固な施設に甲まれていなかったにもかかわらず、
4号機の使用済み核燃料プールが、建屋内の水素爆発に耐えて、破断等による冷却水喪失に至らなかったこと、
あるいは、瓦礫がなだれ込むなどによって、使用済み核燃料が大きな損傷を被ることがなかったことは、誠に幸運と言うしかない。
使用済み核燃料も、原子炉格納容器の中の炉心部分と同様に、外部からの不測の事態に対して、堅固な施設によって防御を固められてこそ初めて、万全の措置をとられているということができる。

イ 電源喪失事故について
本件使用済み核燃料プールにおいては、全交流電源喪失から3日を経ずして、冠水状態が維持できなくなる。
我が国の存続に関わるほどの被害を及ぼすにもかかわらず、全交流電源喪失から3日を経ずして、危機的状態に陥いる。
そのようなものが、堅固な設備によって閉じ込められていないまま、いわばむき出しに近い状態になっているのである。

(4) 小括

使用済み核燃料は、本件原発の稼動によって、日々生み出されていくものであるところ、
使用済み核燃料を閉じ込めておくための堅固な設備を設けるためには、膨大な費用を要するということに加え、
国民の安全が、何よりも優先されるべきであるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろう、という見通しのもとにかような対応が成り立っている、といわざるを得ない。


7 本件原発の現在の安全性

以上にみたように、国民の生存を基礎とする人格権を、放射性物質の危険から守るという観点からみると、
本件原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、
むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに、初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない。


8 原告らのその余の主張について

原告らは、地震が起きた場合において止めるという機能においても、本件原発には欠陥があると主張する等、さまざまな要因による危険性を主張している。
しかし、これらの危険性の主張は、選択的な主張と解されるので、その判断の必要はないし、環境権に基づく請求も選択的なものであるから、同請求の可否についても判断する必要はない。

原告らは、上記各諸点に加え、高レベル核廃棄物の処分先が決まっておらず、同廃棄物の危険性が極めて高い上、その危険性が消えるまでに数万年もの年月を要することからすると、
この処分の問題が、将来の世代に重いつけを負わせることを、差止めの理由としている。
幾世代にもわたる、後の人々に対する我々世代の責任という、道義的にはこれ以上ない重い問題について、
現在の国民の法的権利に基づく差止訴訟を担当する裁判所に、この問題を判断する資格が与えられているかについては疑問があるが、
7に説示したところによると、この判断の必要もないこととなる。


9 被告のその余の主張について

他方、被告は、本件原発の稼動が、電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、
当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題等とを、並べて論じるような議論に加わったり、
その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことである、と考えている。
このコストの問題に関連して、国富の流出や喪失の議論があるが、
たとえ本件原発の運転停止によって、多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、
豊かな国土と、そこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、
これを取り戻すことができなくなることが、国富の喪失であると、当裁判所は考えている。

また、被告は、原子力発電所の稼動が、CO2排出削減に資するもので、環境面で優れている旨主張するが、
原子力発電所で、ひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染は、すさまじいものであって、
福島原発事故は、我が国始まって以来、最大の公害、環境汚染であることに照らすと、
環境問題を、原子力発電所の運転継続の根拠とすることは、甚だしい筋違いである。


10 結論

以上の次第であり、原告らのうち、大飯原発から250キロメートル圏内に居住する者(別紙原告目録1記載の各原告)は、
本件原発の運転によって、直接的に、その人格権が侵害される具体的な危険があると認められるから、
これらの原告らの請求を認容すべきである。

福井地方裁判所民事第2部

裁判長裁判官 樋口英明

裁判官 石田明彦
裁判官 三宅由子