原発事故強制起訴へ(2016年2月27日中日新聞)

2016-02-27 10:13:47 | 桜ヶ丘9条の会
原発事故起訴へ やはり「人災」でないのか 

2016/2/27 紙面から
 福島第一原発事故は東京電力が津波対策を怠ったためだ-。検察官役の弁護士が元会長らを近く強制起訴する。想定外の事故ではなく、「人災」ではないか、公の裁判で真相に迫ってほしい。

 大地震と大津波という自然現象に伴う原発事故ではあった。自然現象に不確実性はあるものの、原発事故という大災害が起こり得るケースに対しては、「万が一」という細心の注意が必要で、できる限りの十分な措置も事前に講じておかねばならない。

 検察庁が東電元会長ら三人の幹部に対して、「不起訴」という立場をとったため、市民による検察審査会が検討した。その結論が「強制起訴」であり、それに基づき検察官役の指定弁護士が二十九日に起訴すると明らかにした。

 確かに大地震の可能性は発信されていた。政府の地震調査研究推進本部の長期評価では二〇〇二年段階で、マグニチュード(M)8・2クラスの津波地震が発生する可能性があるとされた。〇八年の段階では、長期評価を用い、東電側で明治三陸地震をモデルに試算すると、一五・七メートルもの大津波が押し寄せる-。そんな結果も出していた。巨大津波が来れば、原発は水に覆われてしまう。

 そんな重大な指摘があったのに、東電側はまるで時間稼ぎをするかのように土木学会に検討を委ね、対策を先送りしていた。国側に試算の報告をしたのは、東日本大震災の直前になってからだ。

 〇六年段階でも、津波によって非常用海水ポンプが機能を失い、炉心損傷に至る危険性があることや、全電源喪失の危険性があることも分かっていた。なぜ必要な対策をとらなかったのか。

 国際原子力機関(IAEA)の報告書では「『日本の原発は安全』との思い込みにより、関係機関には、安全レベル(向上)に挑もうとしない傾向があった」と明確に記している。

 原発運転では核分裂を伴う以上、機器の故障や運転ミスだけではなく、あらゆる過酷な状況を想定しておくべきなのだ。IAEAの報告書はそのような観点にたっている。東電はまさに「安全だ」という思い込みに陥っていたのか。それとも組織的怠慢だったか。

 刑事裁判が開かれることで当時の幹部らが原発事故とどう向き合っていたのか、肉声を聞くことができる。「レベル7」の最悪事態を招いた根本原因を突き止める裁判でありたい。

丸山氏発言 議員辞職に値する方言だ(2016年2月20日琉球新報)

2016-02-20 11:38:43 | 桜ヶ丘9条の会
<社説>丸山氏発言 議員辞職に値する放言だ
2016年2月20日 琉球新報

 にわかには信じ難い発言だ。国会議員としての資質も疑わざるを得ない。辞職に値する放言だ。

 自民党法務部会長の丸山和也参院議員がオバマ米大統領について「今、米国は黒人が大統領になっている。黒人の血を引くね。これは奴隷ですよ」と述べた。発言後に「誤解を与えるような発言で大変申し訳ない」と陳謝したが、それで許される問題ではない。
 丸山氏は「米国は人種に関係なく大統領になれる国だと言いたかった」と釈明した。19世紀までの米国の奴隷制が念頭にあったようだが、オバマ氏の父はケニアから米国に留学した黒人で、母は米カンザス州出身の白人だ。奴隷の子孫ではなく、丸山氏は事実をはき違えている。
 何より黒人という事実と奴隷を結び付けている考え方自体が由々しき問題だ。根底に人種差別意識が潜んでいると言わざるを得ない。他国の民族に対する敬意を全く感じさせない言葉に憤りを覚える。
 丸山氏はさらに問題発言をしている。「日本が米国の51番目の州になることに、憲法上どのような問題があるのか」と質問、日本が米国に組み込まれたとしたら「集団的自衛権は全く問題ない。拉致問題すら起こっていないだろう。『日本州』出身が米大統領になる可能性が出てくる」と語った。

 この発言を「売国的」と言わずして何と言えばいいのか。立法府にいる人間が独立を否定するかのような発言をしたのは看過できない。
 丸山氏は発言をした参院憲法調査会の幹事と委員を辞任したが、議員辞職は否定した。「問題を引き起こしやすい発言をしたと反省している」と発言は撤回したが、「良心に恥じるところは何もない」などと開き直る姿勢も示している。
 丸山氏の発言に関して質問した野党議員に対し、自民党の長坂康正衆院議員は「言論統制するのか」とやじを飛ばした。今国会では閣僚の不祥事や失言も相次いでいる。不倫を認めて辞職した若手衆院議員の騒動もあったばかりだ。自民党議員らの「劣化」が目に余る。
 安倍晋三首相は丸山氏発言について国会で答弁し、謝罪は避ける一方、民主党議員による「首相の睡眠障害を勝ち取ろう」との発言を取り上げ、同党に反論した。与野党ともに身を正すべきは当然だが、党首としてまずは身内議員の放言に厳正に対処すべきだ。

廃止法案きょう提出 安保の根幹 正さねば(2016年2月19日東京新聞)

2016-02-19 09:04:42 | 桜ヶ丘9条の会
廃止法案きょう提出 安保の根幹 正さねば

2016年2月19日東京新聞


 いくら積み重ねたとしても土台が揺らいでいれば、いつかは崩れてしまう。憲法違反と指摘される安全保障関連法。今こそ根幹を正さなければならない。
 昨年九月十九日未明、安倍政権が「平和安全法制」と呼び、採決を強行した安全保障関連法が参院本会議で可決、成立した。
 あれからちょうど五カ月。政権のおごりか、ほころびか、閣僚や議員の相次ぐスキャンダルで、国会はすっかり政府・自民党の釈明の場と化し、安保法をめぐる議論は隅に追いやられた感がある。
 しかし、安倍政権の安保関連法をこのまま放置し、既成事実化させるわけにはいかない。他国同士の戦争に参加する「集団的自衛権の行使」を可能にし、多くの憲法学者ら専門家が「憲法違反」と指摘する法律だからである。
 民主、共産、維新、社民、生活の野党五党はきょう安保関連法を廃止するための法案を提出する。
 野党側には安倍政権による安保政策の是非を、夏の参院選で争点化したい狙いもあるのだろうが、あえてその意義を認めたい。
 廃止法案に先立ち、衆院で統一会派を組む民主、維新両党はきのう、安保関連法の対案となる領域警備法案など三法案を提出した。
 安倍晋三首相が「全体像を一括して示してほしい」と野党側に求めていた対案の提出である。与党側は、廃止法案と合わせて、真摯(しんし)に法案審議に応じるのが筋だ。
 安倍政権が成立を強行した安保関連法の最大の問題点は、主に自民党が担ってきた歴代内閣が踏襲してきた、集団的自衛権の行使をめぐる政府の憲法解釈を、安倍内閣が一内閣の判断で変更してしまったことにある。
◆専守防衛、本来の姿に
 おさらいしよう。
 戦後制定された日本国憲法は九条で、国際紛争を解決するための戦争や武力の行使、武力による威嚇は行わないと定めた。
 日本国民だけで三百十万人の犠牲を出し、交戦国にとどまらず、近隣諸国にも多大な犠牲を強いた先の大戦に対する痛切な反省に基づく、国際的な宣言でもある。
 その後、日米安全保障条約によって米軍の日本駐留を認め、実力組織である自衛隊を持つには至ったが、自衛権の行使は、日本防衛のための必要最小限の範囲にとどめる「専守防衛」を貫いてきた。
 一方、集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力で阻止する、国連憲章で認められた国際法上の権利だ。
 歴代内閣は、日本が集団的自衛権を有していることは主権国家である以上、当然だが、その行使は専守防衛の範囲を超え、許されない、との見解を貫いてきた。
 国際法との整合に挑んだこの憲法解釈は、国権の最高機関である国会や政府部内での議論の積み重ねの結果、導き出された英知の結集でもある。
 自国に対する武力攻撃は実力で排除しても、海外で武力を行使することはない。日本国民の血肉と化した憲法の平和主義は、戦後日本の「国のかたち」であり、安全保障政策の根幹である。
 安倍内閣が二〇一四年七月に行った、集団的自衛権の行使を一転認める閣議決定は、憲法の法的安定性を損ない、安保政策の根幹をゆがめるものだ。この閣議決定に基づく安保関連法に対して、多くの憲法学者が「憲法違反」と断じるのは当然だろう。
 日本の安保政策を、専守防衛という本来の在り方に戻すには、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を撤回し、安保関連法を廃止する必要がある。

 野党側による安保関連法廃止法案の提出を、専守防衛を逸脱しつつある安保政策の根幹を正す第一歩としたい。与党側も逃げずに、堂々と論戦に応じるべきだ。安保関連法は三月末までに施行されるが、とりあえず施行の延期を検討してはどうだろうか。
◆無関心が暴走を許す
 憲法を逸脱しつつある安保政策を根幹から正すには、世論の後押しが必要だ。国会周辺をはじめ全国各地できょうも行われる路上の訴えに、安倍政権はあらためて耳を傾けるべきだろう。
 そして何よりも、専守防衛という戦後日本の国是を守り抜く決意を、国民が自ら選挙で示すことが重要だ。諦めや無関心は、政権の暴走を許すだけだ。
 私たちの新聞が、平和主義を貫こうとする国民の側に立つのは当然だ。政府の言い分をうのみにせず、自らの判断力で問題提起を続ける。新聞として当然の役割を、この機にあらためて自任したい。


高市総務相発言 放送局の自律と公正が基本だ(2016年2月14日読売新聞)

2016-02-14 10:14:42 | 桜ヶ丘9条の会
高市総務相発言 放送局の自律と公正が基本だ
2016年02月14日 読売新聞
 放送局を巡る高市総務相の発言が、国会内外に波紋を広げている。

 高市氏は、衆院予算委員会で、放送局が政治的に公平性を欠く報道を繰り返した場合、電波法に基づく電波停止を命じる可能性があるとの認識を示した。

 民主党議員に「憲法9条改正に反対する見解を相当の時間にわたって放送しても停止になるのか」などと質問された際の答弁だ。

 高市氏は「1回の番組ではあり得ないが、ずっと繰り返される時に、罰則規定を適用しないとまでは担保できない」と述べた。

 野党からは「放送局の萎縮を招く」といった批判が相次いだ。与党内でも、「政府が統制を強めることには基本的に慎重であるべきだ」との声が上がっている。

 総務相は放送免許の許認可権を持つなど、放送局に直接、権限を行使できる立場にある。

 高市氏は「再発防止が十分でないなど極端な場合」と限定はしている。だが、今、放送局側に特段の動きがないのに、電波停止にまで踏み込んだのは、言わずもがなではないか。

 福田内閣や菅内閣でも、電波停止命令の可能性に言及した国会答弁はあったが、これまで、放送番組の内容を巡り、停止命令が適用されたケースはない。

 放送番組を制作する上で、憲法が保障する表現の自由は最大限、尊重されなければならない。

 放送法は1条で「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保する」とうたっている。

 4条は、政治的に公平で、事実を曲げない報道を求めている。放送局は自律的に、公正かつ正確な番組作りに努める必要がある。

 政府は、選挙中に特定の候補者を紹介したり、国論を二分する問題で一方の見解のみを取り上げたりする番組は、政治的な公平性を欠くとする統一見解を出した。

 放送は公共財の電波を利用していることも忘れてはなるまい。

 個々の番組の内容に問題がある場合には、NHKと日本民間放送連盟によって設立された第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」が調査し、放送局に対する意見や勧告を公表している。

 こうした自浄作用は、有効に機能していると言えよう。

 政府関係者は放送内容に関し、安易な口出しを慎む。放送局も多角的な論点を視聴者に提供する。そうした取り組みを重ね、視聴者がニュースへの理解を深める番組を制作してもらいたい。