岐阜県環境影響審議会でウラン鉱床対策不備の指摘など(中日新聞2014年1月31日)

2014-01-31 10:43:57 | 桜ヶ丘9条の会

岐阜県の環境影響審査会が、30日開かれたが、委員からは、岐阜県の瑞浪市、土岐市、可児市などルート周辺に散在するウラン鉱床への対策が不十分だなどの批判が続出した。


また、JRは、可児市長や可児市議会が提出した久々利大萱地区の地上高架橋部分を地下トンネル化すべきという意見も相変らず、確たる根拠も示さず変更しないと強弁している。




なお参考までに、岐阜県環境影響評価審議会の委員名簿を載せておこう。(任期は3年間 平成25年10月1日~28年9月30日まで)


岐阜県環境影響評価審査会 委員名簿
任期:平成25年10月1日から平成28年9月30日まで 委員21名 (50音順・敬称略)

1 岐阜大学応用生物科学部准教授          浅野  玄
2 美濃加茂自然史研究会事務局長          安堂 志郎
3 元岐阜市立女子短期大学准教授          伊藤 陽子
4 名城大学理工学部准教授             岡田 恭明 
5 金城学院大学薬学部准教授            奥村 典子         
6 岐阜大学工学部准教授              神谷 浩二
7 岐阜工業高等専門学校校長            北田 敏廣
8 日本野鳥の会岐阜 西濃ブロック代表        窪田 一仁
9一級建築士                   河内 美代子
10 名古屋女子大学家政学部教授          駒田 格知
11 岐阜大学応用生物科学部非常勤講師       鹿野 勘次
12 一般財団法人自然学総合研究所主任研究員     清水 政美
13 岐阜聖徳学園大学非常勤講師          高木 洋
14 岐阜県昆虫同好会副会長            高田 清
15 名古屋大学大学院生命農学研究科教授      竹中 千里
16 岐阜薬科大学教                永瀬 久光
17 岐阜大学工学部教授              中村 隆
18 岐阜大学流域圏科学研究センター准教授     廣岡 佳弥子
19 名古屋市立大学大学院芸術工学研究科准教授   森 旬子
20 名古屋大学大学院工学研究科教授        山澤 弘実
21 有限会社TAE設計室              山田 妙子


山梨公聴会でも「ずさんな準備書だ」。静岡でも「水源枯渇心配」。可児市では「地下化」

2014-01-30 23:36:41 | 桜ヶ丘9条の会
[リニア]「県境越え、生態調査を」 県公聴会(甲府市)

 リニア中央新幹線の建設工事や開業による環境への影響を予測したJR東海の「環境影響評価準備書」に対する意見を聞く県の公聴会が26日、甲府市下向山町の市健康の杜センターで開かれ、県民ら10人が南アルプスの県境を越えた生態調査の実施を求めたり、リニアによる騒音や磁界への懸念を指摘したりした。県はこの日の意見を踏まえ、知事意見をまとめ、3月25日までに同社に提出する。

 県は公聴会の開催にあたって発表者を募集、県内外の13人から申し込みがあり、このうち10人が公聴会に出席。住民ら約40人が傍聴した。

 南アルプス市の公務員の女性(51)は、山梨、長野、静岡3県にまたがる南アルプスについて、「JR東海は各県ごとに分割評価しており、調査方法も統一性を欠く」と述べ、一体的に調査すべきだと主張。防音フードを設けないとした同市と中央市の間を流れる釜無川にかかる橋については、鳥との衝突や河原に生息する生物へ影響が出る恐れがあると指摘し、疑問を呈した。

 甲府市の元大学教授、川村晃生さん(67)は、トンネル掘削などで大量の残土発生を見込みながら、処理方法が決まっていない点や、磁界の健康への影響について専門家の間でも様々な意見がある中、国際的な基準を採用し、それ以上に厳しい意見を取り入れなかった点などを挙げ、「準備書は杜撰(ずさん)。知事は(JR東海に)書き直しするよう意見を形成してほしい」と訴えた。

 このほか、沿線住民への騒音や振動を低減させるため、路線の用地幅を拡大し緑化することや、全体像や景観への影響をイメージしやすいよう、模型を作るよう求める意見もあった。

 議長を務めた県森林環境総務課の芹沢正吾課長は「これまで実施してきたリニア以外の公聴会に比べ、参加者は多く、県民の関心の高さが伺える。様々な意見が出たので、知事意見に生かしたい」と話している。

(2014年1月27日 読売新聞)


湧き水枯れた苦い経験、リニア工事が心配な住民(掛川市)


 南アルプスを貫くJR東海のリニア中央新幹線計画。大井川の流量が毎秒2トン減少するとの予測がある計画の行方を、下流域の静岡県掛川市東山の一部住民が複雑な思いで見守っている。

 過去のトンネル工事が原因で、生活水に利用してきた湧き水が枯れてしまった苦い経験があるからだ。「大井川で同じ失敗を繰り返さなければいいが……」。住民らは、渇水の二重被害を心配する。

 山肌にヒノキ約1000本を並べて巨大な「茶」の文字を描く粟ヶ岳(標高532メートル)。文字の少し下の斜面で、枯れた水源を案内してくれた地元の富士東製茶農協の萩原健次組合長(55)が指し示した。「ここがそうですよ」。茶色の枝やツタがはう薄暗い雑木林で、清流が注いだかつての姿はなかった。

 萩原さんらによると、粟ヶ岳の中腹には地下水が湧き出る水源がいくつもあり、1954年頃に約35世帯で簡易水道組合を発足して生活水を調達していた。毎分200リットル以上の豊富な水が湧き出るため、他の地区にも供給したほどだ。

 水源が枯れたのは2000年5月。原因は約500メートル北側で1999年から始まった新東名高速道路金谷トンネル(4・6キロ)の掘削工事だった。事業者の中日本高速道路が止水工事などを試みたが、湧き水が戻ることはなかった。

 同社東京支社広報によると、金谷トンネル工事で渇水した場所は同市では東山を含めて2か所あり、「補償については誠実に対応させていただく」と説明する。しかし、生活水の補償は国土交通省の通達で最長30年間と期限があり、住民からは「地下水ならいつまでも無料で使えた。これで補償といえるのか」と不満の声も上がる。

 萩原さんは「自然を相手に失敗すれば取り返しがつかないことになる。JR東海には、リニア計画を慎重に進めてほしい」と切実に訴える。

(2014年1月22日12時20分 読売新聞)

リニア「地下通過に変更を」JR東海に意見書(可児市)


 リニア中央新幹線の建設計画を巡り、岐阜県可児市や住民が美濃焼関連史跡の保全を求めている問題で、同市議会の川上文浩議長ら5人が17日、県庁を訪ね、県環境生活部の秦康之部長に、地上ではなく、地下を通過するように県がJR東海に変更を求めるよう意見書を提出した。

 提出した意見書は、リニアが地上を走行する計画となっている同市の県史跡「大萱古窯跡群」周辺について計画変更を求めたもので、同市議会で今月5日に可決した。

 提出した川上議長はリニア建設計画には賛成としながらも、「大部分がトンネルで通過すると聞いていたが、地上の部分があって驚いた」と話した。

 JR東海は先月25日、リニア計画の「環境影響評価準備書」に対する住民意見と、それに対する同社の見解を同市や県など沿線自治体の首長に送付している。

 環境影響評価法により、古田肇知事は環境保全の見地から意見を集約し、来年3月25日までに意見を示すこととなっている。

(2013年12月18日 読売新聞)


リニアを考える坂本住民の会発足

2014-01-30 14:29:29 | 桜ヶ丘9条の会
2014年1月26日、中央線美乃坂本駅に近接した千旦林にリニア駅が予定されていることに地元中津川市坂本地区の住民が自然環境や生活をどうしたら守れるかと、「リニアを考える坂本住民の会」を発足させました。これを報じる、岐阜新聞(1月27日付)としんぶん赤旗(1月30日付)の記事を転載します。





可児市長 桜ヶ丘地区では、ルート・騒音・振動の心配はないものと判断していると回答

2014-01-29 23:27:52 | 桜ヶ丘9条の会
リニア問題と桜ヶ丘ハイツを考える住民の会が、先に可児市長に提出した意見は、可児市長や可児市議会が県知事に提出した意見には、リニアルートが大住宅団地である桜ヶ丘ハイツのど真ん中(欅が丘地区)を通過することにまったく触れていないこと、可児市や可児市議会が県知事に要望した久々利大萱地区の地上高架橋部分を地下トンネルにという意見に、桜ヶ丘ハイツ内欅が丘地区をトンネルで通過する計画を変更すべきであるという桜ヶ丘ハイツ住民の意見を追加すべきであるということだった。
この桜ヶ丘住民の意見に対し、可児市長は、2014年1月24日付で、要旨次のように回答してきた。
① 平成23年9月27日に公表されたJRの「方法書」にはルート幅が約3キロという広い範囲で示されており、東の桜ヶ丘から西の桂ヶ
 丘の一部までもがルートの対象となっていたので、約1万人の住民が居住している地区を通過することになった場合の影響を懸念し、詳
 細な調査を求める意見を提出し、平成25年6月の市議会でも同様の答弁をした。
② その後(平成25年9月)に公表された「準備書」のルートでは、皐ヶ丘と桂ヶ丘の間の住宅地化されていない場所(住民の会注 欅
 ヶ丘地区で、ここは桜ヶ丘ハイツ内であり、可児市の都市計画でも住宅地として位置づけられている)を地下50~100メートルのト
 ンネルで通過することになっている。この桜ヶ丘地区周辺のルートについては、一定の評価ができるものであると考えており、同「準備
 書」の内容から、桜ヶ丘地区では、騒音・振動等の心配はないと判断しています。
③ 可児市議会が2013年12月に可決した意見書、同「準備書」に対する住民等から提出された意見、可児市環境審議会での意見、平
 成26年1月に県が開催した公聴会での意見等に配慮し、1月17日付で岐阜県知事に対して可児市としての意見書を提出した。

この可児市長からの回答に対し、
リニア問題を考える桜ヶ丘ハイツ住民の会(ハイツ住民の会と略称)では、2014年1月26日に、要旨次のように返事をした。

① 本件の宛先について、個人に宛てられてものですが、間違いとは申しませんが。憲法の趣旨から申し上げれば小生一個人として、市長
 への意見書を提出した訳ではありません。市民運動の組織(憲法容認)の代表として提出したものです。「リニアと桜ヶ丘ハイツ住民の
 会」を併記されることを、ご一考して戴きたいと思います。
② 市長殿からの回答中、「桜ヶ丘地区周辺のルートについては、一定の評価ができるものと考えており、同準備書の内容から、桜ヶ丘地
 区では騒音・振動の心配はないものと判断しています」
 と、回答を頂きましたがこの項には、私どもは全く同意できないことを申し上げておきます。
  理由
 桜ヶ丘周辺地区は住民居住地区で当然のルート排除地区と考えます。
 この中に「欅ヶ丘地区」桜ヶ丘周辺地区と同一視するのか、しないのかの見解が分かれており、住民の中でも混乱が生じていました。
  この点での市長の見解が明確ではありません。
  蛇足ですが、その混乱の結果として、市長への意見書になった経緯があります。
③ 以上について、ご検討の結果をご回答方よろしくお願い申し上げます。
       
          リニア問題を考える桜ヶ丘住民の会 代表 加藤正吉






リニア公聴会での公述人の意見(可児市で行われた公聴会 2014年1月9日)岐阜県ホームページより

2014-01-25 22:50:54 | 桜ヶ丘9条の会
公聴会の結果(可児市会場)<公表用>
※本書は公表用のため、公述人の氏名は記載していません。
1 日時及び場所
平成26年1月9日(木) 午後6時30分~7時45分
可児市総合会館 5階 大ホール(可児市広見1-5)
2 対象事業の名称
中央新幹線(東京都・名古屋市間)
3 公述人の陳述の要旨

(1)公述人A氏(可児市)<プロジェクター使用>
JRが大森地区に計画している非常口につきまして、公述人として意見を述べさせていた
だきます。JRがリニア中央新幹線の非常口を、計画予定地の一つとして大森地区に建設し
ようとしていることに対して、私は建設反対の意見を述べ、非常口は住民の生活に悪影響が
及ばない場所に移動するよう強く要望します。
この反対の理由は二つあります。まず、今地図に出ていますけれど、非常口周辺の地図と、 後程出ますけれどもJRが作った建屋のイメージ写真がございます。まず地図の方を見てく ださい。反対の理由の一つとしまして、非常口に建設される換気施設の位置、ここが非常口 でございます。ついでに言っておきますが、ここが長洞ため池、ここが星見が丘でございま す。この距離を今から言いますが、ここに民間の家が2軒ほどございます。非常口に建設さ れる換気施設の位置と民家や住宅団地とが非常に近接していること。二つ目の理由は同じ場 所にある長洞ため池は、工事の進行によってそれぞれ入り口が互いに輻湊していることにな り、ため池の機能が損なわれる恐れがあるということが主な理由であります。ため池の件は 後で話をさせていただきます。
まず非常口の計画予定地と住宅とが非常に近接していることについて、JRはこの距離を 200 メートルと言っておりますが、そんなに離れてはいません。実際は 150 メートル前後と思 われます。そしてこの中間にある民家とは 50、60 メートルしか離れていないのでございます。 イメージ写真にある建物でございますが、下がイメージ写真、この白い建物があくまでJR が計画している大きさのものでございます。上が現在の風景でございます。JRはまだ発表 していませんけれど、この建物の大きさにつきましては、推定で高さ 20 数メートル、幅は 40 メートルと大きな建物が予測されます。JRは正確な建設場所も示していませんけれど、工 事施工ヤードの面積は1ヘクタールを基準としておりますが、そのような土地はここで確保 することができません。狭い所です。当然ながら、不足分は山を削ることになってくること になります。こういう場所で実際工事が始まれば、それはもう景観どころではないと思いま す。遮蔽壁や建物から来る圧迫感と通気性の問題、そして今後建設機械の稼働による騒音と 振動、さらにトンネルの掘削土の運搬車両の騒音と粉じんの問題など。これに対してJRは いずれもデータも基準値を下回っており、実行可能な目標範囲の中で低減が図られていると して問題はないと評価しています。果たしてそれで良いのでしょうか。何よりも5年、6年 という長期にわたる工事の間、疑念を持たざるをえない環境の中で住民は置かれているので あります。本線の掘削の発生土も行き先がなければ野積みされることになります。私どもは リニア中央新幹線について反対しているのではありません。このような環境破壊につながる ような状況下に住民を置くこと自体が到底理解されないと言っているのであります。
-1-
次に近接する長洞ため池について意見を述べます。非常口は計画どおりの場所でやってい くことになりますと、JRはため池の周辺の工事施工ヤードの設置のため、土地の切土や盛 土などの造成、そして作業坑道の設置などに取り掛かることになりますが、先ほど言いまし たように常識的に言えば、このような狭い場所でため池の管理入口と非常口の出入口が相互 に入り込むことになって、ため池の機能を損ない管理業務を非常に難しくすることになりま す。大森土地改良管理組合では、ため池の底抜けの心配を含め、今後の維持管理と運用面で 大きな問題だと指摘しています。もう一つ非常に心配する点は、本線のトンネルから、掘削 土が非常口から大量に運び出されるわけでありますが、その掘削土の中に、黄鉄鉱が混ざっ ているような懸念はないかどうか。もしその中に黄鉄鉱等の物が混ざっているということに なれば、それらが野積みされれば雨によって流出する危険性もあり、ため池はもちろん、大 森川まで汚染されることになります。このような事態になれば大変なことになります。この 先々の禍根を残さないためにもしっかりとした調査も必要であります。
以上、縷々申し上げましたが、JRがなぜこのような問題ある狭い土地を非常口、換気施 設の設置場所として選んだかについては、標高が低く、比較的平地な場所にすることによっ て、トンネル本線まで斜坑が短くでき、結論的には建設コストが低く抑えられるという第一 の効果があると考えられます。私どもは計画予定地の立地条件や住民の方々の将来への懸念 材料を考え合わせると、他にも有効な場所があるにも関わらず、ここでなければならないと いう必然性はどうしても確認できないのであります。近接する星見台団地は近年、名古屋近 郊を始めとする各地域から豊かな緑と平穏な土地を求めて、若い人が住み着いた、いわば新 興住宅地であります。ようやくつかんだ彼らの夢をこういう計画によって壊さないでほしい。 私どもはただ今申し上げた諸々の理由により、JRのリニア非常口の現計画予定地を見直す べきであり、非常口はもう少し多治見寄りにずらすよう要求します。JRは地域の環境アセ スに最大限考慮するなど、地域の特性に応じた検討がさらに必要であると考えます。
最後になりますが、可児市の住宅地における地下トンネルの土被りについて意見を申し上 げます。可児市の丘陵地域では地形や地盤の起伏の差が大きくなっているところがあります が、こういう場所にも民家が点在しています。地下トンネルの土被りはトンネル上部の地表 が最も標高の低い、こうした場所においても最低 45 メートル以上の土被りを確保するよう要 望いたします。以上をもちまして、公聴会の私の公述を終わります。

(2)公述人B氏(可児市)
今回、私は、このリニア計画路線の地上部分に予定されております、まさに大萱の中心部 の村落に住む住民でございます。地下化を希望する意見を述べさせていただきます。
ちょっと話は長くなるんですが、久々利大萱の村落というのは、わずか戸数が十数軒しか ございませんが、古くから、桃山時代の昔から焼き物の地として知られております。そして この風土を慕って、何十年も前からこの地に移り住み、作陶生活などをつづけている人たち が今現在でもここで生活を営んでおります。かくいう私もまた結婚してから、東京からこの 大萱の地に移り住み、夫の陶芸生活を支えながらかれこれ 50 年近くになります。その頃の大 萱というのは、都会にはない宝物がたくさんありました。四季折々の美しい自然や、きれい な水、そしておいしい空気、夜ともなれば満天の星でした。これらの自然が与えてくれる様々 な恩恵は、便利な都会生活と引き換えに不便な山里で暮らすご褒美だと今でも思っておりま す。だからこそ不便な生活をも耐え忍んで来れたんじゃないかと自負しております。まだ子 供が小さい子育ての頃は、ずいぶんと不便なことも多々ありました。病院も遠いですし、保 育園も学校も遠い、買い物に行くにも遠くて不自由でしたが、それでもこの里山で暮らす生 活は、この不便さをしのぐほどのすばらしい自然との共生があったのです。子供たちが裸で
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遊んだ久々利川の水もまだまだ透明で美しかったし、カッコウの鳴き声が聞こえ、そんなと ころで子育てをできる幸せを感じたものです。しかし、バブル期のゴルフ場開発によってこ の川が汚れてしまい、タガメや水生生物もいなくなりました。決定的なダメージを受けたの は、10 年前に起こった東海環状自動車道路工事による黄鉄鉱による汚染水問題でした。これ 以降、大萱の農家はコメづくりさえできなくなってしまいました。山間部を自動車道が通過 したことにより生態系が変化し、キツネやタヌキの姿も見えなくなりました。この十数年を 振り返ってみても、いつもこの村は開発の波に翻弄され、犠牲になってきたのだと思います。 たった十数軒にしか満たないこの村落は、開発事業者から見れば数の内に入らないという論 理なのでしょうが、しかしここには、先祖から受け継ぎ、次の世代へと営々として営み続け る人々の生活が存在しています。私たち大萱の住民が不便さを忍び様々な困難を耐えて守っ てきた里山の自然が、今またリニア新幹線という巨大な開発事業のために、村の真ん中に 20 メートルにも及ぶコンクリートの橋脚が立つ予定です。これでは村が分断されてしまう、ひ どすぎます。必ずまた生態系に影響を及ぼすと思っております。公共の利益か、はたまた個 人の生活権かという永遠のテーマもあるのでしょうけれども、自然破壊はいったん壊された からには、100 年でも再生は難しいといわれております。今私がかすかに将来に希望を持つこ とができるのは、この村落にはここで生まれ育ち、この土地の文化伝統を守り続けていこう とする若い世代の人たちが育っているということです。
今現在でも幸いにしてこうした次世代の若い人たちがいるのです。JR東海には、どうぞ お願いですからもうこれ以上静かで文化遺産的価値のある村落を荒らすようなことはやめて いただきたいと願っております。そのために、県としても現場で生活している我々の、地元 住民の意をくみ取っていただいて、せめて大萱のルートは地下を通す、このようなご支援を くださるように切に切にお願いするものであります。以上です。

(3)公述人C氏(可児市)<プロジェクター使用、資料配布>
リニア中央新幹線の大萱地区を地上区間とする件で、岐阜県に対して環境保全の観点から
意見を述べさせていただきます。
では最初にJRが発表した大萱地区の地上区間のルート図です。この部分は高架橋になっ ております。この部分が地表式又は掘割となっている箇所です。それで、正確ではございま せんが、私が大体想定した高架橋の通る場所を色で説明させていただきます。この写真は荒 川豊蔵資料館の前から墓地の方向を撮った写真です。墓地から 15 メートル地点の高架橋の想 定される位置が大体この位置にあたります。ですから豊蔵資料館から見るともろにこの部分 が見えるということです。続いて御嵩町側からの写真です。ここに県道土岐線がございます が、その間を高架橋がこういう形で横断します。JRの文書では高さが約 20 メートルとなっ ています。続いて県道付近から多治見側の想定される高架橋の真下から向こうに向かって撮 った写真です。この線は、ここに墓地がありましたけれども、こちらへ地表式又は掘割とな っている箇所を線で示したものです。この部分は一体どのように改変されるのであろうか、 大変心配しているところです。続いて御嵩町からトンネルの出口になったところですが、地 表式又は掘割となっている箇所で工事ヤードがここに作られる可能性がある場所です。
JRは地上区間とした理由を、準備書の説明会と事業者の見解でこのように述べています。 一つには、ウラン鉱床や住宅地化が進展している所を回避した。また、大萱地区が窪んだ地 形となっていること。二つ目には、大萱地区を地上区間とすることから、この付近のトンネ ル区間において自然流下の排水が可能だと言っています。それからもう一つは、ため池を回 避する。それから防災上、長大トンネルの前後には列車長 400 メートル程度以上の地上区間 を設置する必要がある。五つ目に、名古屋駅からの距離が 20 キロメートル延びて 55 キロメ
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ートルとなることから万が一の際に様々な問題が生じる。それから、六つ目に、重金属が流出しやすい美濃帯の削岩残土の量を少なくする。
高架にしなければならない理由は絶対なのか。変更できないのか。私は、地上区間にでき ないJRの見解には絶対に同意できません。地上区間にしなければならない理由はJRの身 勝手な言い分だと、私は思っています。トンネル区間が 55 キロメートルになるとか、防災上 400 メートル程度以上の地上区間が必要だと述べているけれど、青函トンネルはご承知のよう に 53.8 キロメートルがトンネル、海底トンネルはそのうち約 22 キロメートルです。リニア の場合は約5km に1か所、非常口、斜坑などが作られることから、問題は生じないと思って おります。続いて美濃帯に含まれる重金属の処理方法は確立されていることから、地上区間 とする理由にはならないと、私は思っております。最後ですが、トンネルから自然流下の方 法でなくても、非常口などからの排水が可能であると、私は思っております。
続いて、文化財に関するJRの言い方は、「大萱古窯跡群といった埋蔵文化財をできる限り 回避するとともに改変区域や造成土量をできる限り小さくする。高架橋は有識者による景観 検討会を設置し、景観の創出と地域景観との調和の両立を目指した構造形式等の検討を行っ た。高架橋は、埋蔵文化財をまたぐようにすることから文化財に与える影響を配慮した。」。
私は、JRに対して地上区間を地下区間に変更を求める理由をこれから述べたいと思いま す。まず最初に、岐阜県の文化財になっている大萱古窯跡群を取り巻く環境が大きく改変さ れる恐れがある。これは現在の大萱地域の状況です。先ほどもお話がございましたが、この 画面にある古窯跡群、ここに牟田洞という古窯跡。ここに4つの窯跡があります。ここに窯 下窯。これも4つあるそうです。ここに弥七田という窯跡がございます。この古窯群と、か つてここに窯があったと思われるところが3か所あります。画面全体で、先ほどもお話があ りましたように 13 軒の方がお住まいになっています。そのうちこの色で示された部分が、実 は陶芸家の皆さんが住んでおられる場所です。大萱地区を地上区間とした場合、限られた地 域に陶芸家が居住する自然豊かな里山集落で、県の指定史跡の大萱古窯跡群がある。このよ うな地域は全国的にも極めて珍しく、この集落の環境、景観が大きく改変されます。それか ら美濃焼の発祥の地で、安土桃山時代から志野焼に代表される国宝「卯花墻」は牟田洞窯で 焼かれた場所です。また、古窯本体や灰原だけでなく、住居や工房、作業場、搬出路などが 一体として構成されていることから、この付近の環境、景観が損なわれる。それから、もう 一つ大事なことは、牟田洞窯と窯下窯付近の景観が高架橋で分断されます。現在、可児市は、 牟田洞古窯の発掘と窯下古窯の発掘計画など大萱古窯跡群の国の史跡指定を目指して、国に 働きかけることにしていますが、これができることによって大きなマイナスの要因となる。 以上の理由から地上区間をとりやめて地下区間にすることを望むものです。
第二の理由は、高架橋などが建設されたら橋台の基礎工事、地表部分の切土による造成、 工事ヤード、久々利川に架けられる仮橋、工事用道路敷などによって現在の自然環境が破壊 され自然が回復するのに長い年月を要すると思います。地上区間とすることによる環境・景 観に与える影響は、高架橋の橋台の数、地表式又は掘割箇所への侵入ルート、工事ヤードの 説明がないため、準備書に記載されているものを参考にしてこれは試算したものです。ここ に工事車両運行ルートがございます。この林道とここの県道を使ったルートになっています。 全体として、この部分とこの部分が大きく改変される恐れがあるということです。続いて大 萱地区を地上区間とすることによって自然環境が破壊されると先ほども言いましたように、 戻るまでに長い時間を要すると思います。景観検討会で構造形式等の検討を行って建設して も約4ヘクタールの土地が改変されることに全く変わりはありません。高架橋や地表式又は 掘割箇所の詳細説明がないのに大萱地区を地上区間にする案を絶対認めることはできません。
発言の最後になりますが、大萱地区を地上区間とした場合、工事及び高架橋に伴う自然環
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境の破壊、農業用水の水源である久々利川の汚濁、土砂堆積など大萱地区はもとより久々利 の住民にとってもマイナスの要因だけだと、私は思っています。最後になりますけれども、
この計画が発表されたときにJRの社長が大萱地区の高架橋は仕方がない、地下へ潜ること は大変難しいとの表現を記者会見で発表されました。もしそのようなことを言って通ってい
くのならば、私はこの計画に断固反対するものです。これをもって発言を終わらせていただ きます。

(4)公述人D氏(可児市)<プロジェクター使用>
私は久々利地内で先祖の代から農業しながら生活をしている者です。よろしくお願いいた します。一連のリニア説明会や意見書に対するJRの見解は通り一辺倒で、トンネル方式にしてほしいという要望に対して真摯に受け止めているという姿勢が感じられません。再度この場をお借りして、リニアの久々利大萱地区高架計画に対し、トンネル方式に変更してほし
いという立場からお話させていただきます。
久々利は歴史のある町でございます。泳宮(くくりのみや)という所に「ももきね 美濃 の 国の 高北の」という万葉歌碑があります。「泳の宮に 日向ひに 行靡闕矣(ゆきなびか くを) ありと聞きて 我が通ふ道の 奥十山(おきそやま) 美濃の山」というふうに、ちょ っと見ていただくとわかると思いますが。これは今から 1700 年ほど前、大和の国から偉い方 がこの地にいた豪族「八坂入彦命」の娘、八坂入媛に恋い焦がれ、この地を訪れたときの心 情を詠んだ歌と言われています。ここに出てくる「ももきね」という始めの言葉ですが、こ れは稲がよく分けつをしてお米がよく採れるという意味だそうです。また、「奥十山 美濃の 山」とありますが、久々利の浅間山の一帯を地元では今でも奥十山と呼んでいます。大萱地 区もその奥十山に含まれています。日本書紀に書いてあるということですが、偉い人が大萱 を訪れて、八坂入媛を娶られて帰られたということです。これが八坂入彦命の塚であります。
このようなことから久々利は大変歴史の深いところであります。そのすぐ側をリニアが通るというふうに計画されています。このような看板もあります。この看板からリニアが通る
方向を見たところでありますが、向こうに見える山のところからトンネルを抜け出て左の方 へ走っていくというわけであります。
そして、時代は下り、安土桃山から江戸時代にかけて大萱、大平地区は陶器が盛んに作ら れました。国宝「卯花墻」に代表される志野、現在、牟田洞古窯跡の発掘を可児市にやって いただいています。あるいは織部、黄瀬戸、古瀬戸などと称する陶器が焼かれたわけです。 その古窯跡群が点在しており、まさに美濃焼の聖地であります。故人間国宝の荒川豊蔵先生、 あるいは加藤十右衛門先生はじめ多くの陶芸家がこの地を慕われ、この地で創作活動をして こられました。現在も7、8名の方が創作活動を続けておられます。この久々利の大萱はそ のようなことから、久々利、可児市の人々の心の拠りどころ、癒しの地となっていると言っ ても過言ではありません。そんな素晴らしい歴史、文化をこの地に残していただいた先代の 方々に感謝しております。現在、陶芸作家も二世、三世の時代に入ってきております。これ は古窯跡群の「えんごろ」という陶器を焼いた跡が今でも見られるわけです。これは荒川豊 蔵資料館への入口でありますが、このすぐ上をリニアが右から左へ走っていくという計画が あります。これはリニアが中津川の方に走っていくという計画をされている、向こうの谷へ 向かって走っていくというふうに計画されております。そのような場所にリニアが高架橋と して通過する。景観が損なわれるばかりか、近隣で生活する人々の不安は計り知れません。 陶芸作家の創作活動にも意欲が湧かないのも当然であります。可児市行政もこの芸術活動や 文化の継承に一生懸命後押ししていただいています。そのような地域にリニアは似合いませ ん。走らせて欲しくありません。新旧融合の模索と言われていますが、この地のこの組み合
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わせによるメリットは特に感じられません。
次に汚染水に関してありますが、久々利一帯は美濃帯と呼ばれる砂岩、チャートを主とした堆積岩の地盤があります。その中の黄鉄鉱成分が水と反応し酸性水を作り出し、さらに酸 性水は他の鉱物と反応して重金属などの有害物質を溶出し汚染水となって河川に流出し下流 域に被害を及ぼすということになります。現に約 10 年前に東海環状線の工事に伴う残土が 久々利川上流域に埋められたため、このような事故が勃発し、下流域の水田はその被害を受 けました。先祖代々受け継いできた大切な水田、久々利の誇りである稲作に悪影響を及ぼし ました。現在もその対策として中和プラントを稼働させ水処理をして下流に流しています。 中和プラントを維持管理していくのにも毎年多額の経費がかかっています。こんなことは懲 り懲りです。薬品で中和をすれば水は良しというものではありません。元の水にはなかなか 戻りません。岩石や地表面は何千何万年とかかって風雨にさらされ、地表面が安定した安全 な状態になり、人を含めた生き物が生息できるのです。何千何万年とかけて自然が作り上げ てきた安全な地表が、表皮を削ることで一瞬にして振り出しに戻ります。封印されている物 を表にさらす。まさに毒水の入った容器に穴を空けるようなものではないでしょうか。見解 書には、トンネル化すると残土が余分に出るから高架が良いとか、たまたま窪地であったか ら地表に顔を出した、とありますが、何か子どもだましのように受け取れます。そんな回答 しかできないJR東海さんに本当に安全で環境に配慮したリニアができるのか不安です。こ れが美濃帯と呼ばれるものです。
次に移ります。大萱地域は氷河時代を生き抜いたと言われるギフチョウの宝庫であります。 そのギフチョウの一大生息地をリニアは通るように計画されています。ギフチョウが生息す るためには餌であるカンアオイの存在が不可欠であります。それを支える自然林が必要です。 順調な生態系があってこその存在で、それが一度崩れるとなかなか元には戻らないと言われ ます。これは久々利のダムであります。これがギフチョウであります。こんな久々利大萱を なぜ地上で通そうとするのか。何の事前の相談もなく線引きをして、ここを通りますから了 解をしてほしい。全く理に適っていません。地上に顔を出すことになれば、工事の大拠点と なることは避けられません。約 10 年の工事期間、そして事後処理にかかる時間を合わせると 余りにも長い歳月、地元住民は耐え難いです。こういった久々利区民、可児市民の声に真摯 に耳を傾け、誠意を持って受け止めて対応してほしいと思います。JRはこれらのことをよ く理解しルートをトンネル化に方向転換されることが、これからのJRに大きな力と大きな 利益をもたらすことになると考えます。今からルートを変更することは、お金も時間もかか ることになるから今更潜れないということだと思いますが、お金を使うということはこうい うところで使うことに価値があると思います。このリニア計画に携わるJRの方々、また行 政関係者の方々、皆さん頭脳明晰の方ばかり。知恵を絞って出し合って、何とかこの地区の ルートを地上を通らないトンネル方式に変更していただきたい。そういうことで久々利地区 の問題は全て解決されると思います。是非ともよろしくお願いいたします。これで私の公述 は終わります。ご静聴ありがとうございます。

(5)公述人E氏(可児市)
私の公述の目的は、中央新幹線の計画そのものに反対するものではなく、私が暮らしてい る場所、可児市久々利の大萱地区において発表されている地上路線を地下路線に変更される よう働きかけることです。これは私個人の思いのみならず、また現代のみならず、過去より 今に至るまで地域住民の、この地をあるがままの姿で残したいという思いが込められていま す。これより、この地をあるがままの姿で残したい理由を述べさせていただきます。
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まずはこの地における歴史について簡単に説明させていただきます。大萱地区は今から 400 年以上前の桃山時代に美濃焼の名品を数多く作っていた場所です。今でこそその史実は揺る がぬものとなっていますが、それが改めて世に知られるようになったのは、今から約 80 年ほ ど前のことです。それまで数百年の長きにわたって、この地が志野の産地であることは忘れ 去られていたのです。この地が志野の生産地であったことを発見し、この地で志野の再現に 努め、ついにはその功績によって、重要無形文化財保持者いわゆる人間国宝までになった人 物がいます。その人物の名は荒川豊蔵、私の曽祖父にあたります。荒川豊蔵は昭和初期に大 萱において志野のかけらを発掘し、志野の再現を目指してこの地に移り住み、長い年月を経 て志野の再現に成功したとされています。この一連の事業の中において極めて重要な役割を 果たしたのが、大萱古窯跡群の存在でした。古い窯跡より志野の焼成に最適な窯の構造を見 出し、発掘された陶器のかけらを参考にして、材料とする粘土をこの地より掘り出して使い ました。
このように大萱古窯跡群という場所は、桃山時代の古い陶器を焼いたというだけではなく、 その痕跡をもとに昭和の志野の再現に結びつけたという志野の出現と再現とを担った重要な 意味合いを持った場所なのです。それは窯跡のみならず地形その他全ての環境が桃山時代の 姿を残していたからこそできた再現であったのです。しかし、大萱地区はその後急速に開発 によって従来の環境を失ってきました。荒川豊蔵は、その開発を時代の流れと諦観しつつも、 少しでも貴重な環境を残そうと、私財を投じて窯跡とその周辺の土地を守ってきました。
そして時は下り、その弟子であった父がその技法を受け継ぎ、この地において陶芸活動を 行っています。路線計画地となっている土地は当家が苦労の末に開拓した場所です。原料と なる土とそれを精製するための水をたたえ、燃料となる木材を産出するなど、陶芸活動を続 けていくためには欠かせない場所です。それのみならず、森の恵みを享受できる里山でもあ ります。これは何物にも代えがたい我々の貴重な財産であり、これを失うことは曽祖父から 父へそして私へと、我々が長年かけて守り、築き上げてきた全てを失うに等しいことです。
中央新幹線が地上を通過するにあたって、我々が失うであろう文化は二つあります。一つ は桃山時代と変わらない伝統的な陶芸活動の文化、そしてもう一つは自然と人とが共存する 里山生活の文化です。これらの自然と密接した生活様式は、かつては日本各地において普遍 的に存在する文化ではあったものの、今では各地で失われています。我々の生活は、この文 化を実践するものであり、これを破壊することは一つの文化の終焉を加速させることに他な りません。また現代の社会において当たり前な便利さを選ばず、豊かな自然と静謐な環境に 囲まれた風土の中で、文化を守って一生を過ごすことを常に選んできた我々にとって、この 環境が乱されることは人生の目的を失うものであり、全くもって耐えがたい事態です。古来 より続く大萱古窯跡群の景観を乱すことについても、国内はもとより海外からも懸念や反対 の声が寄せられています。これまで残されていた景観を、今この環境を重んじる時代に破壊 する計画は信じがたい暴挙です。遺構そのものだけではなく景観も含めて史跡です。先ごろ 世界遺産となった富士山では、山だけではなく、そこから離れた三保の松原からの風景も含 めて世界遺産とされた、そんな事例があったことも思い出してください。400 年以上もその 概容を残し、今なお多くの人間がそこに密接した文化を持った場所は、世界的にも貴重なも のではないかと思います。昨年になって古窯跡群の再調査が始まりましたが、それによって これまで知られていなかった事実が判明しつつあります。大萱古窯跡群は枯れつくした遺構 なのではなく、失われた文化を再発見する可能性を秘めています。文化の継承とは何でしょ うか。文化とは記録があれば何時でも再現できるものではありません。そこに密接に関わる 人間が多様な形でいてこそ継承できるものではないでしょうか。東京から名古屋まで 286 キ ロメートルの路線計画において、大萱地区の地上部はわずか 1.5 キロメートル程度です。で
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すが、たった 1.5 キロメートルを地上にすることによって、永遠に失われる文化がいくつも あるのです。
JR東海側によれば当地区への環境への影響はほとんどない、と公表されています。「ほと んどない」とはどういうことでしょうか。何を基準にした「ほとんど」でしょうか。静かな 山里に高架や掘割を作り、これが環境に影響を与えないという説明を、あるいは環境基準ぎ りぎりの騒音だから影響がないという説明を、あるいは意見書によって我々の持つ生活と文 化を守りたいと願った要望を全く省みない見解を、我々はどう受け入れればよいのでしょう か。美濃帯その他地質的な理由も挙げられてはいますが、他に方法がないのであればともか く、技術的に可能な選択肢がある以上は、今現在この地で暮らす我々住民の生活と文化を乱 すことは疑いようもない計画を取り止め、影響が最小限となる地下路線への計画変更を強く 要望します。JR東海の経営理念に「健全な経営による世の中への貢献」という文言があり ます。計画変更によって我々の生活と文化を未来に残すことは、まさしく「健全な経営によ る世の中への貢献」に相違ないはずです。
最後に繰り返しますが、この地における生活と文化を守りたい、それが我々の願いです。 我々はこの環境で生活する文化を次世代に残す使命を帯び、生きていると信じて疑っていま せん。私自身のみならず地域住民一同、あるいは岐阜県民の皆さん、さらにはもっと多くの 国内外の方々にとっても、この文化や環境、景観の継承は大切なものであると思っています。 それを継承する人がいなくなって消えていくのならともかく、継承の意思を持つ人がいるに もかかわらず、その基盤である環境を破壊されることによって消えてしまうというのは、あ ってはならないことではないでしょうか。今から 80 年前に始まった志野の再現は大事なこと を示唆しています。忘れられていたものは蘇るかもしれません。しかし、破壊されたものは 二度と戻らない。過去より続く文化と環境を未来に残すのは、今の時代に生きる我々の義務 ではないでしょうか。以上をもちまして私の公述を終わらせていただきます。残念ながら時 間がなかったので写真とかを準備できませんでした。機会があれば一度見ていただきたいと 思います。見た上で残す価値があるものなのかどうか、判断していただきたいと思います。 ありがとうございました。

(6)公述人F氏(可児市)
リニアが大萱地区を約 1.2 キロメートルにわたり高架上を走行することについて、文化面 と環境面から述べさせていただきます。
大萱には桃山時代に作られた牟田洞窯、窯下窯などの古窯群跡があります。そこでは日本 で初めて白い薬に絵のある陶器が焼かれ、その代表的なものが今日国宝となっている志野の 茶碗の「卯花墻」です。この茶碗の素晴らしさは、造形的に技のかけ方、焼き方全てにおい て優れています。どのような作り手だったのか、どんなふうにこんな面白い物を作ったのか、 想像力をかき立てられます。窯下窯では、黄瀬戸や瀬戸黒の名品が焼かれたことが陶片によ って証明されています。その志野や黄瀬戸の描かれた大らかな筆使いの山々や草木、鳥獣は そのまま大萱の自然であります。その自然が当時と変わらぬ姿で存在していることに、私た ちは桃山の陶工の眼差しを感じ、表現の仕方を考えたりします。鑑賞者としましても志野に 描かれた愛らしい鳥は、桃山の陶工の近くで鳴いていたかもしれないと想像できて楽しめま す。
その大切な想像をかき立ててくれる大萱の風景が、リニアの高架によって分断されること は、歴史的、文化的背景の損失になります。桃山の焼き物に感動された方が、そのものがど
のような所で生まれたのか知りたくて大萱に訪ねてこられたとき、その風景が分断されていたらどんなに失望されるかと思います。桃山文化の伝承のため発祥の地のため、風景を壊さ
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ないでください。この考えは、JRのリニアと山里の風景の対比が良いとする見解と相反するものです。何とぞご考慮をお願いいたします。
また、自然環境面について、11 月にJR東海が作成された、環境影響評価準備書に対する 意見の概要及び事業者の見解の中の鳥類に絞って意見を述べさせていただきます。事業者の 見解として、「1、繁殖環境への影響は特に大きいものではない。2、消失する環境に類似し た環境に代替巣を設置する。3、徐々に工事に伴う騒音に慣れさせる。」という言葉が並んで いますが、今日までこの里山の環境を守り続けるために努力を重ね、ときには声を上げてき た大萱にとりましては、それらの言葉は机上の空論にしか受け取れません。「1、リニアの高 架上に営巣地がなければ特に影響はない。」と書かれていますが、繁殖環境への配慮に欠くも のです。リニアの走行によって餌をとる場所が狭められれば雛は育ちません。特に大萱地区 は、ゴルフ場に囲まれているとはいえ、雑木の山が残っているところであり野鳥の餌場です。 年間 50 種以上の野鳥を見かけます。また、大萱の山は春の芽吹き、秋の紅葉を見てもわかる ように、色々な色の芽吹き、色々な色の紅葉が見られます。これはそれだけ草木の種類が豊 富ということです。日本の南限、北限の植物に加え、太平洋側、日本海側の植物があると知 られています。種類が多いということは、それだけ多くの花が咲き、鳥や虫の蜜源になり、 また果実が付けば鳥獣の餌になります。2の「代替巣」の件ですが、どれほど成功例がある のでしょうか。ヤマガラやシジュウカラが巣箱に入りますが、それに入らない鳥もいます。 都会に馴染んでいる猛禽類もいるようですが、それは代替巣とは違います。住処を奪われる ことは大変なことと思います。小手先のことより環境を守っていただきたいと思います。3 の「徐々に工事に伴う騒音に慣れさせる。」という表現には一方的な見解を感じます。縄張り が重なったり、環境が異なれば、結局個体数は減るのではないでしょうか。
今まで野鳥の弁を話してきましたが、段々とJRの見解書を読んでいるうちに、これは大 萱住民に対しても同じことを言っているのではないかという気がしてきました。先にも述べ ましたが、大萱住民は事ある毎に環境を守る努力を重ねてきました。規定の範囲内という判 断の上でも川は徐々に汚れ、魚は減ってきました。少しぐらいなら良いだろう、代わりにこ うすればよいと思うほど、自然は強くないような気がします。何故なら、鳥や虫たちは今の 環境を精一杯生きているので、急な変化には付いてはいけないのではないでしょうか。こう いう現実を知っている住民は、徐々に慣れさせるという急な変化に恐ろしさを感じますので、 JRの見解の甘さは放っておけません。あの鳥がいなくなったと嘆いても遅いのです。今度 また国レベルの工事が始まれば、この土地はかつてないほどの損害を受けます。何とぞこの ことをご理解ください。以上です。

(7)公述人G氏(土岐市)
このリニア中央新幹線には問題が山積しております。しかし、今日は時間も無いことです ので、ウラン鉱床についてのみ問題を提起したいと思います。
岐阜県の東濃地域というのは、多くのウラン鉱床が点在をしております。JRはリニアの路線はウラン鉱床を回避して設定したということが、準備書には書いてありますが、しかし
これはJR自身がウランの有無を調査して回避したものではなく、既存の文献を参考にして作り上げた手抜きの路線計画です。その文献というのは、独立行政法人日本原子力研究開発
機構、旧動燃のものであります。JRは事業者として独自にウラン鉱床の有無を調べる責任 があると考えます。
私は、近々瑞浪市に転居する予定でいます。その転居先、瑞浪市日吉町宿のすぐ北をリニアの中央新幹線が走り、西側には非常口が出来るということがわかりました。近くには、宿
洞ウラン鉱床があるということで、いろいろと調べてみました。宿とか宿洞の地区は花崗岩
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が多くて露出しております。放射線量を測定器で測ったところ、花崗岩そのものは毎時平均 で 0.5 マイクロシーベルトもありました。また、地上から1メートルのところでも毎時 0.2 マイクロシーベルトもあり、これをわかりやすく1年間に換算してみますと、国が定めてい る年間許容量の1ミリシーベルトを超えてしまうということがわかりました。これはこの地 区の花崗岩の影響だと考えます。つまりそれはウランが地下に眠っている可能性が高い地域 だということです。それで、もちろん原子力開発機構の文献にも宿洞のウラン鉱床は記載さ れており、それをJRが回避したと言うとおりに、路線からは外れております。しかし、宿 洞区という場所を路線が通るということも確実であります。宿洞は名前のとおりに洞がいく つかありまして、ウランが路線近くにも眠っている可能性があります。ですから実際に現地 をしっかり調査しなければいけないと考えております。文献はあくまで文献であり、実際と 必ずしも一致するとは限りません。あるジャーナリストが原子力開発機構に取材した折に、 職員にウランの有無を確認したところ、実際には掘ってみないとわからないと答えられたそ うです。そのような不正確な文献をもとにウランを回避した、と言われても信用ができませ ん。まだ他にもウラン鉱床が点在している可能性があります。JRは、「放射線量が高い掘削 土が確認された場合は、法令等を参考に適切に対処します。」との見解を述べていますが、と んでもないことです。ウランは決して掘削してはならないものです。ウランは簡単に処理で きる物ではありません。一度掘削してしまえば、ラドンガスが発生し続けます。現に、月吉 地区の正馬様という所では 10 年以上前に旧動燃がかつてボーリング調査した以後、ラドンガ スが発生し続けており、現在も月吉公民館では日常的に計測器で測っている状況です。ラド ンガスは肺がんの要因ともなります。もうこれ以上のラドンガスはお断りでございます。J Rは、法令で適切に処理します、と言っていますが、これはまるでウランの害が無くなるよ うな言い方ですが、これも問題があります。何だか住民を誤魔化しているような感も否めま せん。岐阜県はJRに対して、ウランの有無を事前にきちんと調べて、もしウランが確認さ れたなら路線を変更するように強く求めてください。絶対にウランを掘削しないことが地元 民への責任であり、義務であります。
もう一つ、ウランに関してですが、JRは岐阜県内の路線の5つの地点でカドミウムやヒ 素などの重金属の調査をしていますが、その調査項目の中にはウランは何故か入っていませ ん。ウランも重金属の一つです。何故ウラン鉱床が点在する地域とわかっていながら調査し ていないのか不思議です。それと、もう一つお願いしたいのは、岐阜県内の中津川から可児 市までの長い距離ですが、その長い距離の中でわずか5つの地点でしか調査をしていません。 路線上の調査地点をもっと増やして時間をかけて、ウランを始め有害物質の有無を調べ、環 境汚染を食い止めるように、強くJRに言っていただきたいと思います。地権者は岐阜県民 です。県民のために一歩も譲らずに交渉していただきたいとお願いします。
リニアの推進派は経済効果を挙げていますが、これは本当に豊かになれるのかなと思って います。自然環境を残していくことこそが、真の豊かさであるのではないかと私は確信をし ています。今多くの国民が求めているのは、自然回帰とスローな生き方です。もう私はこれ 以上の便利さはいらないと考えます。そして、自然を守るためにも反対の意志をこれからも ずっと持ち続けていきたいと思います。以上です。ありがとうございました。

4 その他公述会の経過に関する事項 (1)公述人の代理人が出席した場合の代理人の氏名及び住所
該当なし
(2)傍聴人の人数
76人
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