[リニア]「県境越え、生態調査を」 県公聴会(甲府市)
リニア中央新幹線の建設工事や開業による環境への影響を予測したJR東海の「環境影響評価準備書」に対する意見を聞く県の公聴会が26日、甲府市下向山町の市健康の杜センターで開かれ、県民ら10人が南アルプスの県境を越えた生態調査の実施を求めたり、リニアによる騒音や磁界への懸念を指摘したりした。県はこの日の意見を踏まえ、知事意見をまとめ、3月25日までに同社に提出する。
県は公聴会の開催にあたって発表者を募集、県内外の13人から申し込みがあり、このうち10人が公聴会に出席。住民ら約40人が傍聴した。
南アルプス市の公務員の女性(51)は、山梨、長野、静岡3県にまたがる南アルプスについて、「JR東海は各県ごとに分割評価しており、調査方法も統一性を欠く」と述べ、一体的に調査すべきだと主張。防音フードを設けないとした同市と中央市の間を流れる釜無川にかかる橋については、鳥との衝突や河原に生息する生物へ影響が出る恐れがあると指摘し、疑問を呈した。
甲府市の元大学教授、川村晃生さん(67)は、トンネル掘削などで大量の残土発生を見込みながら、処理方法が決まっていない点や、磁界の健康への影響について専門家の間でも様々な意見がある中、国際的な基準を採用し、それ以上に厳しい意見を取り入れなかった点などを挙げ、「準備書は杜撰(ずさん)。知事は(JR東海に)書き直しするよう意見を形成してほしい」と訴えた。
このほか、沿線住民への騒音や振動を低減させるため、路線の用地幅を拡大し緑化することや、全体像や景観への影響をイメージしやすいよう、模型を作るよう求める意見もあった。
議長を務めた県森林環境総務課の芹沢正吾課長は「これまで実施してきたリニア以外の公聴会に比べ、参加者は多く、県民の関心の高さが伺える。様々な意見が出たので、知事意見に生かしたい」と話している。
(2014年1月27日 読売新聞)
湧き水枯れた苦い経験、リニア工事が心配な住民(掛川市)
南アルプスを貫くJR東海のリニア中央新幹線計画。大井川の流量が毎秒2トン減少するとの予測がある計画の行方を、下流域の静岡県掛川市東山の一部住民が複雑な思いで見守っている。
過去のトンネル工事が原因で、生活水に利用してきた湧き水が枯れてしまった苦い経験があるからだ。「大井川で同じ失敗を繰り返さなければいいが……」。住民らは、渇水の二重被害を心配する。
山肌にヒノキ約1000本を並べて巨大な「茶」の文字を描く粟ヶ岳(標高532メートル)。文字の少し下の斜面で、枯れた水源を案内してくれた地元の富士東製茶農協の萩原健次組合長(55)が指し示した。「ここがそうですよ」。茶色の枝やツタがはう薄暗い雑木林で、清流が注いだかつての姿はなかった。
萩原さんらによると、粟ヶ岳の中腹には地下水が湧き出る水源がいくつもあり、1954年頃に約35世帯で簡易水道組合を発足して生活水を調達していた。毎分200リットル以上の豊富な水が湧き出るため、他の地区にも供給したほどだ。
水源が枯れたのは2000年5月。原因は約500メートル北側で1999年から始まった新東名高速道路金谷トンネル(4・6キロ)の掘削工事だった。事業者の中日本高速道路が止水工事などを試みたが、湧き水が戻ることはなかった。
同社東京支社広報によると、金谷トンネル工事で渇水した場所は同市では東山を含めて2か所あり、「補償については誠実に対応させていただく」と説明する。しかし、生活水の補償は国土交通省の通達で最長30年間と期限があり、住民からは「地下水ならいつまでも無料で使えた。これで補償といえるのか」と不満の声も上がる。
萩原さんは「自然を相手に失敗すれば取り返しがつかないことになる。JR東海には、リニア計画を慎重に進めてほしい」と切実に訴える。
(2014年1月22日12時20分 読売新聞)
リニア「地下通過に変更を」JR東海に意見書(可児市)
リニア中央新幹線の建設計画を巡り、岐阜県可児市や住民が美濃焼関連史跡の保全を求めている問題で、同市議会の川上文浩議長ら5人が17日、県庁を訪ね、県環境生活部の秦康之部長に、地上ではなく、地下を通過するように県がJR東海に変更を求めるよう意見書を提出した。
提出した意見書は、リニアが地上を走行する計画となっている同市の県史跡「大萱古窯跡群」周辺について計画変更を求めたもので、同市議会で今月5日に可決した。
提出した川上議長はリニア建設計画には賛成としながらも、「大部分がトンネルで通過すると聞いていたが、地上の部分があって驚いた」と話した。
JR東海は先月25日、リニア計画の「環境影響評価準備書」に対する住民意見と、それに対する同社の見解を同市や県など沿線自治体の首長に送付している。
環境影響評価法により、古田肇知事は環境保全の見地から意見を集約し、来年3月25日までに意見を示すこととなっている。
(2013年12月18日 読売新聞)