軍属事件抗議県民大会 海兵隊と新基地ノーだ 限界超えた怒り受け止めよ 琉球新報社説(2016年6月20日)

2016-06-20 08:10:57 | 桜ヶ丘9条の会
基地がある限り、女性の人権を蹂躙(じゅうりん)し、命を危険にさらす米兵・軍属事件は起き続ける。
 県民の怒りと苦痛は字義通り、限界を超えている。県民の尊厳と名誉に懸けて、在沖米海兵隊の撤退が急務であると決議した意義は極めて大きい。
 まさに、自己決定権が発揮されたのである。

 米軍属女性暴行殺人事件に抗議する県民大会は、古謝美佐子さんが歌う「童神(わらびがみ)」で始まった。子を思う母親の慈愛にあふれる歌だ。
 3番の一節はこう響く。「風かたかなとぅてぃ、産子花咲(なしぐゎはなさ)かさ(風よけになって、愛児の花を咲かせたい)」
 だが、沖縄社会は、彼女の命を守る風よけになれなかった。涙を拭う女性の姿が目立ち、大半の参加者が下を向き、哀切を帯びた歌声に聴き入っていた。

 若者の訴えに大きな力

 35度近い暑さの中、哀悼の意を表す黒っぽい着衣に身を包んだ6万5千人(主催者発表)が駆け付けた。居ても立ってもいられないという思いに駆られたのだろう。幼い子の手を引いた家族連れも目立った。
 静けさが支配する中、登壇者に向けられる拍手もためらいがちだった。過去にあった基地関連の県民大会と異なり、会場は痛恨、自責の念に満ちていた。
 被害者と遺族の無念に思いをはせ、深い怒りと彼女の命を守れなかった悔いが覆った。
 さらに、71年前の沖縄戦を起点とする米軍基地の重圧が、必然的に生み出してきた数多くの犠牲者への追悼の意と、「二度と犠牲者を出さない」という誓いが交錯する場ともなった。
 大会決議は、差別的な沖縄への基地押し付けにあらがう不退転の決意を示し、日米両政府に突き付けた。近未来の沖縄を担う若い世代から、女性や子どもが安心して暮らせる平和な社会を実現させたいという、ひときわ力強いメッセージが発せられたことが今回の特徴だ。
 共同代表の玉城愛さん(21)=名桜大4年=は喪服に身を包み、安倍晋三首相と本土に住む国民を名指しし、涙ながらに「『第二の加害者』はあなたたちだ」「再発防止や綱紀粛正などという幼稚な提案は意味を持たない」と訴えた。
 民主主義の手だてを尽くして示されてきた沖縄の民意に無視を決め込み、安倍政権は過重負担を放置した揚げ句、米軍属による凶行を防げなかった。
 地方自治を脅かす強権を発動して辺野古新基地建設をごり押しする安倍政権と、沖縄の苦衷を「人ごと」のように傍観する本土の国民に向けた痛切な叫びでもある。シールズ琉球などの4人の大学生のしまくとぅばを交えた、真摯(しんし)なアピールも参加者の胸を打った。
 この日は沖縄に呼応し、41都道府県69カ所で集会が開かれた。こうしたうねりが広がり、沖縄を支える世論が高まることを望むしかない。

 遺族の痛切な要望

 「次の被害者を出さないためにも『全基地撤去』『辺野古新基地に反対』。県民が一つになれば、可能だと思っています」
 最愛の娘を奪われた父親が寄せたメッセージは大会決議よりも踏み込み、新基地ノーに加えて「全基地撤去」を望んだ。あらん限りの思いを込めた渾身(こんしん)の願いであろう。
 事件の紛れもない当事者である日米両政府は遺族の悲痛な要望にどう応えるのか。「基地の島・オキナワ」の民の悲憤と血がにじむような訴えを無視することは許されない。
 日米地位協定の運用改善など、小手先の再発防止策はもういらない。「真摯に受け止める」(岸田文雄外相)といううわべだけの対応から脱し、海兵隊撤退を模索し、地位協定改定に向けた協議に入るべきだ。
 大会は政権与党の自民、公明の両党が参加を見送り、完全な超党派にならなかったが、党派に属さない一般市民の参加が多く、決議の重みは変わらない。
 「県民の犠牲は許さない」と強調した翁長雄志知事は「辺野古新基地は断固阻止する」と誓った。県民は等しく、未来の犠牲者を出さない責任を背負っている。その自覚を深め、行動に移したい。

ヤメ検、舛添氏調査の「第三者役」(2016年6月15日中日新聞)

2016-06-15 08:25:04 | 桜ヶ丘9条の会
ヤメ検、なぜ人気 舛添氏調査の「第三者役」 

2016/6/15 中日新聞

 東京都の舛添要一知事による政治資金の私的流用疑惑で、舛添知事が自身の疑惑を調べてもらったという「第三者」は、元東京地検特捜部副部長の佐々木善三氏ら検事OBの弁護士二人だった。政治家や企業の醜聞が発覚した際、「ヤメ検」と呼ばれる検事OBがしばしば登場するが、なぜ重用されるのか。

 佐々木、森本哲也の両弁護士は六日、舛添氏とともに記者会見に臨んだ。

 佐々木氏は調査報告書を公表して「不適切な部分がかなりある」と強調したが、「違法性はない」と繰り返した。ヒアリングした関係者は誰かと問われると、「関係者は関係者だ」と気色ばんでみせた。

◆依頼人から報酬「調査甘くなる」

 佐々木氏らは舛添知事が選任した弁護士だ。第三者の調査を検事OBに頼んだと明かした際、舛添氏は事務所関係者などを通じて推薦してもらったと説明し、「一度の面識もない方々。元検事さんなので、非常に厳しい目で見てくれると判断した」と話した。

 佐々木氏は東京、大阪両地検の特捜部経験が長く、鈴木宗男元衆院議員のあっせん収賄事件の捜査を手掛けたこともある。

 特捜部時代、佐々木氏の下で働いたことのある現役検事は「『マムシの善三』『サイボーグ』の異名を取った。いったん事件に食らいついたら離さないしつこさと、表情を変えずに淡々と仕事をする姿が印象的だった」と振り返る。

 京都地検検事正を最後に二〇一二年に退官し、弁護士に転身。小渕優子元経済産業相の関連政治団体を巡る政治資金規正法違反事件では、小渕氏が依頼した第三者委の委員長を務めた。福島原発事故では、東電が設置した第三者検証委の委員になった。公選法違反で略式起訴された猪瀬直樹前都知事の弁護も担った。

 舛添氏の疑惑では「マムシ」らしい追及ができたのか。佐々木氏の事務所は「取材はお断りしている」としている。

 前出の検事は「追及にはほど遠い。舛添氏本人から報酬をもらう以上、甘い調査になってしまうのは目に見えていたはずで、引き受けてほしくなかった」と残念がる。

 政治家の「第三者」だけでなく、くい打ちデータ改ざん問題で旭化成が設置した外部調査委、不正会計問題で東芝が設けた第三者委などでも、検事OB、とりわけ元特捜検事が委員長を務めるケースが目立つ。

◆「元検事は厳格、幻想にすぎず」

 自身も元特捜検事の堀田力弁護士は、検事OBが重用される理由について「特に特捜部は、政治家や企業の不祥事を調べる部門。依頼者側としたら、世間に『しっかり調査したはずだ』という印象を抱かせる狙いも込めて、元特捜検事に頼むのだろう」とみる。

 だが、「検事時代とは違い、弁護士になると強制的な捜査権限がなくなり、調査には限界が出てくる。元検事だから、きちんと調べられるというのは幻想にすぎない」と指摘する。

 第三者委経験が豊富な久保利英明弁護士は「上場企業の第三者委は、社外取締役や監査役など外部のチェックを受けた上、株主の理解を得られるような形で設置されるのが通例。舛添氏は自分のポケットマネーで依頼しており、今回の弁護士は代理人そのものだ。第三者としての中立性は全くない」と批判する。

 さらに「検事は検察事務官や警察などが押収した証拠資料を分析するのが主な仕事であって、現場に出向いて捜査することは少ない。検事OBが『第三者としての調査』に向くとは限らない」と評した。

 (池田悌一)

<いま読む日本国憲法>(15)第23条 学問への侵害、許さぬ

2016-06-12 08:10:44 | 桜ヶ丘9条の会
<いま読む日本国憲法>(15) 第23条 学問への侵害、許さぬ 

2016/6/12 中日新聞

 この条文が保障する学問の自由は、学問研究の自由のほか、研究した成果を発表する自由なども含まれると考えられています。このため思想及び良心の自由を定めた一九条や、表現の自由を保障した二一条に、学問の自由を含めてもよかったように感じますが、あえて独立した条文にしたのは、学問の自由の定めがなかった旧憲法下で、学問への侵害があったためです。

 有名な例が「天皇機関説」事件。美濃部達吉という憲法学者が「天皇は、国家という法人の意思を最終決定する機関」という学説を唱えて猛反発を受け、著書が発禁処分となった上に銃撃にまで遭ったのです。

 学問は、本質的に物事の道理を根本から問い直す性格を持ち、権力者にとって都合のいい研究ばかりにはなりません。だからこそ、学問の自由をわざわざ憲法で保障したわけです。

 また、この条文は、大学の自治も保障していると解釈されています。

 自民党の改憲草案も、ほぼ現行条文通り学問の自由を認めています。一方で今の政府は、学問の自由を侵害していると批判されることが少なくありません。

 安倍晋三首相や閣僚が、全国の国立大学に卒業式・入学式での国旗掲揚や国歌斉唱を求めてきたことが代表例。昨年施行された改正学校教育法も、国立大学の自治で重要な役割を担ってきた教授会の影響力を弱め、産業界の望む研究を増やす狙いがあるのではないかという声が出ています。

「私たちの」思い、丁寧に届け 憲法を見つめるドキュメンタリー映画(2016年6月10日中日新聞)

2016-06-10 08:04:46 | 桜ヶ丘9条の会
「私たちの」思い、丁寧に届け 憲法を見つめるドキュメンタリー映画 

2016/6/10 中日新聞

 介護や女性をテーマに撮り続けてきた松井久子監督が、憲法を見つめるドキュメンタリー映画「不思議なクニの憲法」をつくった。

 松井監督は、昨年の安保法案反対のデモなどを見ていく中、憲法に深い関心や知識を持つ人がいる一方で、全く無関心な人たちの世界もあることを痛感。二つの間をつなぎたいと、映画で行動を起こした。

 映画は20人以上のインタビューなどで構成。憲法学者の長谷部恭男さんや中部大教授の三浦陽一さん、作家の瀬戸内寂聴さん、自民党の憲法改正推進本部長代行の船田元さんらが出演。一方で愛知県高校生フェスティバル実行委員長だった日比野和真さんやアイドルグループ「制服向上委員会」の斎藤優里彩さん、若手弁護士、戦中派など若者、女性といった「私たちの」思いを丁寧に届ける。

 歴史や条文も詳しく紹介し、憲法改正については出演者が議論するかのような緊迫感も。「国の未来を決めるのは、憲法に保障された私たちの権利」と投げかける。「私は憲法と同じ年。やはり黙っていられない。参院選後に完成版を作りたい」と松井監督。11日から24日まで名古屋駅西のシネマスコーレで上映され、11日には松井監督も来場する。

(野村由美子)

政治とカネ 穴をふさぐには!(2016年6月9日中日新聞)

2016-06-09 08:28:06 | 桜ヶ丘9条の会
政治とカネ 穴をふさぐには 

2016/6/9中日新聞

 舛添要一東京都知事の政治資金の不適切な使い方は私的流用にほかならないが、違法ではないという。甘利明前経済再生担当相の秘書が都市再生機構(UR)の補償交渉に関与した疑惑も、法的にはおとがめなしだった。政治家が自ら襟を正すための政治資金規正法とあっせん利得処罰法だが、抜け穴があって政治家に甘いのではないか。どうすればこの二つの法律が機能するか考えてみた。

◆規正法 支出を律せよ 舛添氏違法性なし

 全国各地を家族で旅行して時には高級ホテルに泊まり、子供向けの漫画「クレヨンしんちゃん」や書籍「大人にはないしょだよ 超スペシャル版ひっかけクイズ」を購入した。

 舛添氏本人から依頼を受けてその政治資金の使い方を調査したという元東京地検特捜部副部長の佐々木善三弁護士は六日、「不適切な部分がかなりある」と説明してみせた。そして「違法性はない」と繰り返し、「きちんと不適切なものも(政治資金収支報告書に)書いており、虚偽記載ではないと思う」と述べた。

 詭弁(きべん)のようだが、法的には正しい。舛添氏の使った政治資金の多くは政党交付金が原資だった。つまり、国民が納めた税金だ。なのに違法にならないのは、政治資金規正法が「ザル法」とやゆされるほど緩い規制であることが影響している。

 この法律は戦後間もない一九四八年、政治資金の流れをガラス張りにして有権者の判断を仰ぐためにつくられ、改正を繰り返してきた。

 基本理念は「政治資金の収受は公明正大に行わなければならない」。これは政治家への金の「入り」、つまり賄賂を戒めたものだ。

 一方、金の「出」に関しては、収支報告書への「虚偽記載」「不記載」の罪はあるが、支出の中身については不動産取得などを除き、ほとんど縛りがない。「漫画を読み、最近の子どもの言葉遣いを検証」するのを「政治活動」としても法には反しないわけだ。

 一昨年に発覚した小渕優子元経済産業相の関連政治団体を巡る政治資金規正法違反事件でも、ベビー用品や下仁田ネギ購入などが明らかになったが、支出の違法性は問われなかった。

 日本大の岩井奉信教授(政治学)は「金権政治が横行していた時代にできた法で、金の『授受』にばかり目が行っていたからか、『支出』がすっぽり抜け落ちた。国民の目は厳しくなっている。まずは基本理念に『支出も公明正大に』を加えるべきだ」と訴える。

 その上で、「企業のように外部監査で使途の適否を判断する仕組みが必要。政治活動に使われていないことが判明すれば、返還を求めるような法改正を検討すべきだ」と提案する。

 お笑い芸人集団「大川興業」の大川豊総裁は「うちも江頭2:50がバレエ用の黒タイツ代を経費申請したとき、本当に舞台用に買ったか審査している。個人的な防寒着の可能性もありますからね」と話した。

 「客の笑いを取るための経費。政治家は有権者のために働くわけでしょ。そのための経費は、堂々と一円以上から領収書を全部公開する法律に変えなきゃ。会議なら、参加した人の名前、どんな打ち合わせをしたか明記を。経費が成果につながっているかは、有権者が判断すればいい」

 領収書の写しをネット上で公開することは、そう手間ではない。税金が政治活動に使われる限り、全てを公開することを有権者は求めている。

◆あっせん利得 立件に壁 甘利氏不起訴

 一方、甘利氏が問われたあっせん利得処罰法はどうか。

 千葉県内の道路工事を巡ってURと補償交渉でもめた建設会社の担当者が、現金計六百万円を甘利氏側に渡した。担当者は「甘利氏の当時の公設秘書に依頼し、秘書が介入した後、(URとの)交渉が進展し、補償金二億二千万円で合意できた」と話した。

 この問題によって甘利氏は一月に大臣を辞任。現金の受け取りを認めたが、補償交渉への関与は否定した。そして、あっせん利得処罰法違反の疑いで捜査した東京地検特捜部は、最終的に不起訴とした。

 当時の公設秘書によるURへの働きかけを示す音声データが存在する。「うちが納得するのは、ある程度お金がつり上がることだよ」とUR側に働きかけた内容だった。それでも、特捜部は「構成要件に該当する十分な証拠がなかった」と判断した。

 甘利氏らを刑事告発した政治資金オンブズマン共同代表の上脇博之・神戸学院大教授(憲法)は「政治家の立件に腰が引けている検察の姿勢が問題だ」と指摘する。現行法でも十分に罪に問えるという見方だ。

 ただ、岩渕美克(よしかづ)・日本大教授(政治学)は、あっせん利得処罰法の条文の文言を問題視する。政治家やその秘書が業者から報酬をもらうなどした上で公務員に口利きをして仕事をさせた際、その政治家や秘書が自分の「権限に基づく影響力を行使」した場合のみ罪に問う、という内容の文言だ。

 「『権限に基づく』という文言のせいで、法が機能していない」と岩渕教授は立件の壁を指摘する。「文言を削って、議員が影響力を行使したら全てをアウトにするぐらい厳しくしてよい」

 弁護士団体「社会文化法律センター」の宮里邦雄代表も、この文言の削除に賛成だ。「代わりに、国会議員は業者と公的な契約の間に入ってはいけないと明記するのがよい」。さらに、将来的には「国会議員は一切の営利事業者から政治活動に関連し、報酬を受け取ってはならない」と定めた「腐敗防止法」の制定を提唱する。「併せて企業による政治献金も規制すべきだ」

 そもそもあっせん利得処罰法ができたのは、二〇〇〇年に当時の中尾栄一建設相が建設省発注工事への業者参入を巡り、口利きの見返りに業者から金を受け取った事件がきっかけだった。

 「刑法にも賄賂を取り締まる条文はあるが、クリーンな政治のために口利きも法規制の対象にすべきだ、という声が高まった」と園田寿・甲南大法科大学院教授(刑事法)。政治家がみなし公務員を含めた公務員に伝えた要望の全てを記録する必要性を訴える。「不正な口利きを抑制できる。自治体レベルでは〇二年ごろから導入が始まっており、国政でも実施すべきだ」

 社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」の福本ヒデ氏は「道交法違反が続くと免停や免許取り消しになる運転免許の制度のように、国会議員に点数制を導入したらよい」と提言する。問題行為の点数がたまったら議員活動を禁じるというアイデアだ。

 「甘利氏のレベルの問題は有罪でなくても、一発免停ではないか。これぐらい分かりやすいペナルティーがないと、不祥事の連続で国民が疑惑自体を忘れてしまう。法律名の変更も一つの手。あっせんはマイルドに見える。『税金悪用法』など、なるべく悪そうな呼び方にした方がよい」

 (池田悌一、白名正和)