韓国特集で謝罪 批判にも節度が必要だ
2019/9/4 中日新聞
日本と韓国の関係が悪化している中、韓国への批判はあって当然だ。しかし、韓国人全体への差別を助長し、憎しみを煽(あお)るような記事は、「報道」とは程遠い。深刻な反省と再発防止を求めたい。
法務省は、特定の国や地域の出身である人を著しく見下したり、排除する発言を、「ヘイトスピーチ」と規定し、解消に向けた取り組みを進めている。
二日発売の週刊ポストの記事は、まさにこれに該当するのではないか。「韓国なんて要らない」「厄介な隣人にサヨウナラ」との特集記事を展開した。
中でも「怒りを抑えられない『韓国人という病理』」という記事では、韓国人の多くが怒りを調節できないとし、精神障害の診断名まであげた。
これに対し、作家の深沢潮さんが、「差別扇動」を見過ごせないと同誌での連載中止を表明した。さらに発行元の小学館には、同社と関係のある作家や読者から多数の抗議が寄せられているという。
小学館は、優れた朝鮮語辞典の出版など日韓交流に寄与してきた実績のある大手出版社だ。雑誌業界の厳しさが背景にあるにせよ、何をやってもいいわけではない。
この特集を受け、ネット上に韓国への過激な書き込みが広がっている。ポスト誌は謝罪談話を出したが、真の謝罪とするためには、当該号の回収も検討すべきだ。
韓国に対しては、テレビでもあきれる発言が相次いでいる。CBCテレビ・TBS系のワイドショー番組では、コメンテーターが、韓国人女性への暴行を容認するかのような発言をした。この番組は視聴者への謝罪に踏み切った。
韓国の国会議員が上陸した島根県・竹島については、丸山穂高衆院議員(NHKから国民を守る党)が、「戦争で取り返すしかないんじゃないですか?」とツイッターに投稿した。「嫌韓」のレベルを超えた常識外の発言だが、韓国では大きく報道された。
日韓間には元徴用工をめぐる問題があり、経済、安全保障にも対立が拡大している。韓国側にも、日本に対する一方的とも思える言動があるのは事実だ。
しかし、まずは相手の言い分を聞き、納得できないのなら冷静に反論すればいい。民族差別や戦争をけしかける言動まで許されるものではなく、節度が必要だ。
このような発言や記事が横行すれば、東京五輪を控える日本のイメージダウンにつながり、日韓関係も、複雑化してしまうだろう。