長引く停電 まさかの備えより強く (2019年9月13日 中日新聞)

2019-09-13 08:56:34 | 桜ヶ丘9条の会
長引く停電 まさかの備えより強く 
2019/9/13 中日新聞
 電気や水をライフライン(命綱)と呼ぶことの重みをあらためて感じる。台風15号による大規模停電が続く千葉県では熱中症による死者も出ている。激甚化する自然災害への備えを急ぎたい。
 厳しい残暑の中、クーラーも使えず、場所によっては水も出ない。停電が続く地域では人々がつらい生活を強いられている。
 台風通過から三日たった十二日朝の時点でも、千葉県の三十三万戸以上で停電が続いた。停電で浄水施設や送水ポンプなどが稼働できない影響で、断水も二万戸以上に上った。
 停電が広範囲に及んでいるのは強風で送電鉄塔二基が根元から折れ、電柱も多数損傷していることなどが原因だ。倒木を除去するなど復旧以前の作業にも想定より時間がかかっている。
 東京電力の見通しの甘さは当然反省すべきだ。それとともに、温暖化で脅威を増す自然災害に負けない街をつくるための多面的な検証が求められる。
 昨秋の台風21号では関西圏を中心に電柱が千本以上倒れ、約二百四十万戸が停電した。日本列島を縦断した24号では百八十万戸が停電。静岡県などでは電柱や電線に吹き付けられた海水が乾燥して火花が出る塩害も発生した。
 電柱や送電鉄塔などの耐風性の基準は現状のままで良いのか。風対策では、地中に埋設するなど無電柱化が一番の方策だが、日本では進んでいない実情にも目を向けるべきだ。
 世界の主要都市をみると、ロンドンやパリ、香港、シンガポールは無電柱化を完了しているが東京二十三区は8%にとどまる。
 電線などを入れる管路を従来よりも浅い場所に埋設するなど、コストを抑える工法も考案されている。道路を管理する国や地方自治体も費用を負担することになるが、地域の実情に合わせた実現の道筋を探れないか。
 各電力会社の送配電施設などの仕様を共通化する取り組みも始まっている。災害発生時に会社の枠を超えて部材を融通しやすくするためだ。今回、他社から二千人以上の応援が入って復旧作業に当たっているが、より機動的に対処できる仕組みがないか、業界は知恵を絞ってほしい。
 電気が止まれば、水も止まり、携帯電話という通信手段も使えなくなる。非常時における現代のインフラの弱さを肝に銘じ、飲料水の備蓄など、一人ひとりの備えも手厚くする必要がある。