中日春秋 (2019年9月16日 中日新聞

2019-09-16 08:37:46 | 桜ヶ丘9条の会
中日春秋 
2019/9/16 中日新聞
 <村の渡しの船頭さんは/今年六十のおじいさん>-。童謡の「船頭さん」は一九四一(昭和十六)年の発表。おじいさんだが、船を漕(こ)ぐときばかりは、<元気いっぱい櫓(ろ)がしなる>。そんな歌である。今の六十歳前後が聞けば、ちょっとひっかかる歌詞だろう

▼<六十のおじいさん>。昭和十六年ではそれがおじいさんと見られる年齢であったか。現在なら前期高齢者にも届かない。その年が定年という人もいるが、さて第二の人生に向けて腕まくりというころである

▼敬老の日である。いつからがおじいさん、おばあさんか。時代はもちろん地域によっても異なるらしい。米カリフォルニアでの生活が長い詩人の伊藤比呂美さんがおもしろいことを『女の一生』(岩波新書)に書いていた。「(カリフォルニアで)六十の女を年寄り扱いしたら生きて日本に戻れないと覚悟してください」

▼それではいつがその年齢か。「五十の女は中年で六十の女も中年」だそうだ。七十でも「健康な女は年長の中年」。健康で元気ならば、八十でも九十でもただの「元気な女」

▼その説でいけば自称「おばあさん」はいなくなる。伊藤さんの印象によると日本人は「もう年」だと自分で観念する傾向が強く、だから年を取るのも早くなる

▼一生、「元気な女」「元気な男」として生活を楽しむ。そのためには欠かせぬ健康の維持。心掛けたい。