『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第6章  クレタ  80

2013-04-22 08:15:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お~お、来た来た、どっちの組かな?』
 『あの歩き方は、アレテスではないな。この方角から帰ってくるのは、リナウスの組だ。二人とも無事らしい、まずひとつ、安堵だ』
 近づいてくる二人に焚き火の炎のほのかな光がとどき始めた。二人の歩足が速くなる、イリオネスの前に立った。イリオネスがリナウスの肩に手を伸ばしその肩をしっかと抱いた。
 『お~っ!リナウス、ご苦労であった。まあ~休め』
 次いでもう一人、リナウスに同行したランタの肩を抱いて無事を確かめた。
 オロンテスは気が利いていた。彼は酒杯と酒を準備していたのである。二人に向けて杯を差し出した。
 『お~お、お二人さん、杯を持て!』
 彼は酒壺を持ち上げ、二人の杯に酒をこぼれんばかりに注いだ。すかさず杯を口に運ぶ二人、一気に飲み干した。酒は胃の腑にしみた、二人は『帰った』を実感した。リナウスが口を開いた。
 『軍団長、ただいま帰りました。このように出迎えていただいてありがとうございます。報告はどのようにしましょうか』
 『急ぎの報告はあるか。無いようであれば、明朝朝一に聞く。今日は休め』
 会話を交わしているとき、オキテスが言葉を投げてきた。
 『おい、皆!見てみろ、三人が来る』
 今度は西の方角に、波打ち際を歩を進めて来る三つの人影を目にした。アレテスとテクタン、もうひとりは?彼らは三つの人影が到着するのを心をせかせて待った。