『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY     第6章  クレタ  66

2013-04-03 07:21:36 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 陸にあげてある小型漁船の間げきを見つけて、ギアスは慣れた感覚で舟艇を浜に乗り入れた。漕ぎかたも要領を心得ていてギアスと息の合った櫂さばきをしていた。
 『ギアス、お前も舟艇の操作に慣れてきているな。なかなかだ。この調子であれば、いかなる襲撃もやれる、充分な技量だ。急襲実行に備えて、兵を練らなければならんな。判ったか、帰ったらやろう』
 彼はアヱネアスに声をかけた。
 『統領、軍団長、着きました。私が案内いたします』
 彼らは舟艇から浜に降り立った。パリヌルスに案内されるまま数ある浜小屋の一つの向けて歩を運んだ。彼にとって一度訪れた勝手知ったる浜である。
 彼は目指した浜小屋の戸口立って、中の気配を探った。人の気配がする。うちに向かって声をかけた。
 『浜頭、浜頭いますか。パリヌルスです』
 『ええっ!パリヌルス』彼は語尾をあげて、声を出し腰を上げた。
 浜小屋の戸は引き戸になっている。浜頭は姿を現した。戸口の前に立っている数人の男たちに目を奪われた。
 『お、お~っ!統領に軍団長、これはこれは、ようこそ』
 浜頭は緊張しながら親しみを込めた声出しで一同を迎えた。
 『統領、ようこそSOUDAの浜へ、遠いところをようこそ、おいでくださいました。大歓迎です』
 彼は向きなおり、炉に向かって座をとっている者たちに声をかけた。
 『お前たち、そこを詰めてくれ。さ~さ、皆さん、どうぞ、こちらへ』と一同を誘った。
 『どうぞ掛けてください。突然おいでいただき、私、このとおり驚いています。全くしどろもどろですわ。昼めしはまだでしょう、私どもと一緒にいかがですか』
 『浜頭、それにしてもいい匂いですな。そちらさえよろしければ、馳走になろう。軍団長、都合はどうだ、いいだろう』
 アヱネアスは、イリオネスに気軽に声をかけた。