『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第6章  クレタ  75

2013-04-15 08:54:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ほう、テカリオンが来る?何でまた。クレタに何用なのだ』
 『それは判りません。明日ここに来ると言っていたそうです。四人で対応を話し合っておきます。それについて、明朝、打ち合わせ会を持とうと思っていますが、統領も一考していただければと思っています』
 『おう、判った。何でもいい。いずれにしてもいい機会だ。如何なることもこちらの思い通りにすることだ。我々総勢の意思はそれだ』
 『判りました。言われた通りです。対応についてしっかり話し合っておきます』
 アヱネアスは、話し合いながらの夕食であった。考えながら食べ物を噛み砕き、結論とは言えないまでも考えを食べ物とともに胃の中へ落とし込んで腹中案とした。
 イリオネスは、明日、浜へ来るテカリオン、スダヌスらとの面談、対応の段取りを頭の中に組み立てた。今晩の四者の話し合いで、それらの事についての考えをまとめておこうと意志を決めた。彼は座を立った。
 『ごちそうさまでした。統領、私はこれで』
 『おう、今日の事、三人に伝えといてくれ、いいな。イリオネス、何事にもひるむことはない、うまくいく。自信をもって事に当たっていこう。今の我々には、その力がある。以上だ』
 直観思考で意思を決める時代である。アヱネアスの対応姿勢は決まっていた。まわりくどい考えや理屈は必要ない。要は力である、それが彼の思考の根拠であった。
 一族の長としての力強い言葉であった。イリオネスは、アヱネアスの統領としての言葉に勇気づけられた。彼は宵闇の空を見上げた。月はない、星が降るように瞬いていた。