『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY      第6章  クレタ  69

2013-04-06 12:43:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 人が旨いものを口にする、心が和む、人と人がつながる、日常の晴の場であり、快の行事であった。
 旨い魚、クレタの魚の旬である、酒はすすむ、見ず知らずがアイアイの和気でフツフツと場の雰囲気を醸成していった。
 スダヌス浜頭の声がけで集まった浜頭連中が酒を酌み交わしながら自己紹介に及んでいった。二人はSOUDAの浜の頭である。もう二人は半島の西のキドニアの街の浜頭であった。
 浜頭はギアスの持ってきたパンを連中に配った。見た目には何の変哲もない、どこにでもあるパンである。スダヌス浜頭は口を閉じていた。連中はパンを何気ない風で口に運んだ。
 彼らは、目からウロコをはぎ落した。彼らは口をそろえて声をあげた。
 『うっう~ん、これは旨いっ!素晴らしく旨い。初めて口にする旨いパンだ』『このパンは酒にも合う。あうあう、感動、感動!』
 言葉をだぶらせて感動の表現に及んだ。浜頭はその感動風景をじいっ~と見つめた。彼は、この昼食光景を見て満足げであった。
 遠来の客とともに昼食の時を過ごした浜頭連中も久しぶりの感動に浸ったようであった。
 『おい!旨かったな』『今日の昼めしはうまかった』
 『おう、スダヌス、旨かったぞ、こんな昼めしチョイチョイ頼むわ』
 表現語彙の少ないこの時代、彼らは、その少ない語彙を連ねて感動を身体で表した。