『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  326

2014-07-29 07:15:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おっ!これはいけるな。うまい。生もうまいが、この魚、身がしまっていてうまい、口当たりがいい!船の上で焼いた魚が食えるとは、、、』イリオネスがほめた。
 船上の者たちも顔をほころばせている。
 ほどいい風が船を押した。アクロテイリ半島岬の東端にさしかかって、クリテスはアレテスに声をかけた。 
 『副長、この方向に船を進めてください。レテムノンへの最短距離です』
 『判った』
 アレテスは、操舵のホーカスに指示を出した。
 『ホーカス、目標は見えんがこの方角だ。方向を誤るな、いいな』と言い終えて、風向、風力の具合を確かめた。半島岬を廻って帆に当たる風は、南東方向を目指す船を押した。
 イリオネスが指示した船の改造が効を奏している。彼は、『もし帆柱構造をしていなかったら』と回想した。イリオネスは、アレテスに話しかけた。
 『アレテス、この船を呼ぶのに、船、船ではおかしい。船に名前を付けよう、お前どう思う』
 『いいですね。それはいいと思います。大賛成です』
 『よしっ!命名といくか。『ニケ』がどうだ。ドックスの表現そのままでいこう』
 『判りました。いい名前です』
 『では、皆に伝える』
 イリオネスは、声をあげた。
 『おう、諸君!聞いてくれ。この船に名前を付けた。只今から、この船を『ニケ』と呼ぶ、いいな、『ニケ』だ』
 『おう、『ニケ』かいい名前だ』
 船上の者たちは『ニケ』『ニケ』と口々に叫んだ。
 このあたりの海は、アクロテイリ半島岬の東側にあたりおだやかな海である。洋上を走る『ニケ』は、申し分のない航海条件で、レテムノンに向けて順調に波を割って進んだ。
 『ニケ』は快調といえる帆走で進んでいる。はるか遠くにレテムノンの浜が見えてきた。
 『おう、アレテス。ここまで順調に来たな。確かな頃合いは何時かな?』
 『太陽の位置からすると、まだ昼前であることは確かです』
 『方角時板を使ってみる。手を貸せ!』
 彼は袋から方角時板を取り出した。
 『アレテス、お前は時板を持て、俺は鉄棒を操作する』
 『判りました』
 手こずるかと考えたイリオネスではあったが、うまく事が運べそうであった。