『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  316

2014-07-15 06:36:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、調査隊の打ち合わせを終えて、一行を引き連れて浜に降りてきた。彼らは改造作業の進む船の傍らに立った。船体はこうこうと燃える焚き火の明るさに映えていた。
彼らはタールを塗り立てた黒々とした船体に見とれた。イリオネスが口を開いた。
 『君らを目的地に運ぶ船だ。まだ帆柱がたってはいない。船の全体像が見えないが、この船で目的地に向かう、いいな。明後日未明、夜が明けないうちに出航する。ガイドは、クリテスが責任担当する。明日、昼めし前に最終の打ち合わせを行う。以上だ。尚、打ち合わせには、漕ぎかたの6人、操舵を担当する1人が加わる、では解散する』
 彼らは改めて、進んでいる船の改造作業を見つめた。
 調査隊の中にあって副長役を担当するアレテスは、三人に向かって声をかけた。
 『君たち、ご苦労であったな。明日、太陽がこのくらいの位置にあるころ、軍団長の宿舎前に集合してくれ。解散!』
 彼は、宵闇の迫りくる空の一郭を手で指し示していた。次いで船の改造作業を指揮しているドックスに声をかけ、パリヌルスの所在を尋ねた。
 『あ~あ、隊長ね。隊長は、いま舟艇の方にいると思いますが』
 アレテスは、ドックスの指さす方へと歩を向けた。パリヌルスはギアスと話し合っていた。
 『おう、アレテス、調査隊の打合せ終わったのか』
 『終わりました。小島へ戻りたいのですが、、、』
 『おっ、そうか。ハシケでいいか』
 『はい。それでよろしいです』
 パリヌルスは、アレテスとともにハシケの場所へと歩を運んだ。
 『そうか、調査隊の副長役か。道中、気を付けていって来いよ』と励ましの口調で言葉をかけた。
 彼は、『お~いっ!』と声をあげた。ハシケの漕ぎかたの一人が小走りでやってくる。
 『おう、頼む。アレテス隊長を小島へ送ってくれ』
 『判りました』
 パリヌルスは、ドックスのいる作業現場へと歩を向けた。作業現場では、ドックスを真ん中に作業員たちが集まっている。
 『おう、ドックス、打ち合わせ中か』
 彼は話しかけを控えた。
 『諸君。今日は大変にご苦労であった。明日の段取りを伝える。帆柱担当、舵担当は、早朝から仕事にかかること。タール塗り担当は、今日やった作業の仕上がりをチエックしたあと、修正箇所があれば、これを修正して作業を完了する。以上だ、いいな』
 『ドックス、どんな具合だ?』
 『はい、報告します。順調に仕事が進行しています。予定どおりです。タールの乾き具合もいいようです』