まだ夜が明けていない、早朝の冷気が彼らを引きしめていた。
アレテスは、月の光で全員を確かめている。そして、静かに指示を出した。
『船を海へ出せ!掛け声はだすな!』
一同が船に取りつく、しずしずと船を運び海に浮かべた。アレテスは、両手を海につけ、濡れたまま頭上にかざして風を探った。風だ、微風だ、西からきている。身体を西に向けて、風向きと強さを確かめた。
広場の方から人影が浜へと来る。月の光で探った。
イリオネスにパリヌルス、オキテス、そして、オロンテスとセレストスと数人の者たち、彼らは荷物を手にしている一群である。浜の張り番の者たちも寄ってくる。ドックスと改造班の者たちも群れて浜に居並んだ。
遅れて姿を見せたのは統領のアヱネアスであった。
アレテスはセレストスから食料を受け取り船積みを終えた。船積みの武具を改め、用意してきた丸太ん棒を積んだ。次いで、総員の風体に目を配り、すべてに遺漏のないことを確かめ、隊長に報告した。
『判った。アレテス、もう出航は出来るな』
『はい、何時でも』
イリオネスはアヱネアスに歩み寄り、出航の旨を伝えた。
『行ってきます』
『おう、行って来い』
二人は固く手を握り合った。パリヌルス、オキテス、オロンテスと続いた。
彼ら一行は船上の人となった。アレテスは隊長に告げた。
『西風、追い風ですが微風です。風に船を押す力はありません。展帆漕走で進みます』
『了解!出航しろ!』
アレテスは指示を発した。
『漕ぎかたいいな、展帆!漕ぎかた始め!』
船は、泡立つ白い航跡をひいて浜を離れていく。居並ぶ者たちは声は出さず、手を振って一行を送り出した。
アヱネアスは、一行の無事帰着を念じた。パリヌルスらも無事に帰ってくることを祈った。
空の星が光を失う時には至っていない。船は、洋上を照らす淡い月の光の中を北東方向に黒く目に映るアクロテイリ半島岬の突端に向かって波を割って進んだ。
アレテスは、月の光で全員を確かめている。そして、静かに指示を出した。
『船を海へ出せ!掛け声はだすな!』
一同が船に取りつく、しずしずと船を運び海に浮かべた。アレテスは、両手を海につけ、濡れたまま頭上にかざして風を探った。風だ、微風だ、西からきている。身体を西に向けて、風向きと強さを確かめた。
広場の方から人影が浜へと来る。月の光で探った。
イリオネスにパリヌルス、オキテス、そして、オロンテスとセレストスと数人の者たち、彼らは荷物を手にしている一群である。浜の張り番の者たちも寄ってくる。ドックスと改造班の者たちも群れて浜に居並んだ。
遅れて姿を見せたのは統領のアヱネアスであった。
アレテスはセレストスから食料を受け取り船積みを終えた。船積みの武具を改め、用意してきた丸太ん棒を積んだ。次いで、総員の風体に目を配り、すべてに遺漏のないことを確かめ、隊長に報告した。
『判った。アレテス、もう出航は出来るな』
『はい、何時でも』
イリオネスはアヱネアスに歩み寄り、出航の旨を伝えた。
『行ってきます』
『おう、行って来い』
二人は固く手を握り合った。パリヌルス、オキテス、オロンテスと続いた。
彼ら一行は船上の人となった。アレテスは隊長に告げた。
『西風、追い風ですが微風です。風に船を押す力はありません。展帆漕走で進みます』
『了解!出航しろ!』
アレテスは指示を発した。
『漕ぎかたいいな、展帆!漕ぎかた始め!』
船は、泡立つ白い航跡をひいて浜を離れていく。居並ぶ者たちは声は出さず、手を振って一行を送り出した。
アヱネアスは、一行の無事帰着を念じた。パリヌルスらも無事に帰ってくることを祈った。
空の星が光を失う時には至っていない。船は、洋上を照らす淡い月の光の中を北東方向に黒く目に映るアクロテイリ半島岬の突端に向かって波を割って進んだ。