イリオネスは磁石鉄棒を吊り下げた。鉄棒は揺れながらも水平を保って、南北を指し示した。アレテスが鉄棒の真下に時板をあてがう、鉄棒の方向に時板の南北線を合わせる。時板の中心棒が板上に影をおとす。イリオネスは、太陽を見上げて、目線を板上の影に落とした。太陽はまだ中天に至っていない、板上の南北線上に影が来るまでに、まだ、少々の間がある。イリオネスは頃合いを察知した。
(航海を今様時間で測ると、ニューキドニアの出航が午前5時頃であり、レテムノンまでの航走距離が約60キロと想定される、船速は、追い風、順風、帆走で時速10キロ前後であり、レテムノン着が午前11時頃と考えられる)
『お~い、クリテス、太陽はまだ中天にかかっていない。昼までにまだ少々間がある』
『アレテス、ニケをレテムノンの浜に近づけてくれ。レテムノンを海上から眺めてみる』
『はいっ!判りました』
彼はホーカスに声をかけた。
『ニケをレテムノンの浜に近づけてくれ』
『はいっ、判りました』
アレテスは指示を終えて、浜方向に目線を向けた。遠くの海上にに大型の漁船がいる、彼は目にとめただけで注意を払わなかった。だが、漁船に気が付いたイリオネスは注意を怠らずに、この漁船をじい~っと見つめた。まだニケとはかなりの距離がある。船上にいる者たちを判別できる距離ではなかった。イリオネスは、遠くに見える浜の風景にも目を凝らした。再び漁船に目を移した、遠くではあるが船上の男と目があったような気がした。相手が俺を見て笑ったように思えた。
『アレテス、あの漁船がちょっと気になる。近づけてくれ』
『判りました。いいのですか?』
『危険はなさそうだ。安心していい』
アレテスはいぶかりながらホーカスに指示を出した。次いで、ピッタスとテトスに小声でささやいた。
『ピッタス、テトス、お前ら、この丸太ん棒を持て、何かあったら打ち掛かるのだ、いいな。合図を俺がする、ぬかるでないぞ』
船上を緊張が走った。
(航海を今様時間で測ると、ニューキドニアの出航が午前5時頃であり、レテムノンまでの航走距離が約60キロと想定される、船速は、追い風、順風、帆走で時速10キロ前後であり、レテムノン着が午前11時頃と考えられる)
『お~い、クリテス、太陽はまだ中天にかかっていない。昼までにまだ少々間がある』
『アレテス、ニケをレテムノンの浜に近づけてくれ。レテムノンを海上から眺めてみる』
『はいっ!判りました』
彼はホーカスに声をかけた。
『ニケをレテムノンの浜に近づけてくれ』
『はいっ、判りました』
アレテスは指示を終えて、浜方向に目線を向けた。遠くの海上にに大型の漁船がいる、彼は目にとめただけで注意を払わなかった。だが、漁船に気が付いたイリオネスは注意を怠らずに、この漁船をじい~っと見つめた。まだニケとはかなりの距離がある。船上にいる者たちを判別できる距離ではなかった。イリオネスは、遠くに見える浜の風景にも目を凝らした。再び漁船に目を移した、遠くではあるが船上の男と目があったような気がした。相手が俺を見て笑ったように思えた。
『アレテス、あの漁船がちょっと気になる。近づけてくれ』
『判りました。いいのですか?』
『危険はなさそうだ。安心していい』
アレテスはいぶかりながらホーカスに指示を出した。次いで、ピッタスとテトスに小声でささやいた。
『ピッタス、テトス、お前ら、この丸太ん棒を持て、何かあったら打ち掛かるのだ、いいな。合図を俺がする、ぬかるでないぞ』
船上を緊張が走った。