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『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  175

2010-03-24 07:56:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、船倉に歩を運んでいく、彼には、考える余裕が出てきていた。彼は、周囲の者たちのことを考えてみた。統領のアエネアスは、頂点に立つ者としての人格もそうであるが、事に挑むときの周到さ、パリヌルスの抜けのない立案能力、イリオネスの落ち着いた仕事運び、そして、若いゆえのアレテスの時折の失策が思い起こされ、その者たちの姿が目に浮かんだ。
 オキテスは、船倉を見廻し、船倉の状態を把握した。ルドンが降りてきた。
 『隊長、来ました。お待たせしました。』
 『おう、来たか。ルドン、こっちへよれ、早速、打ち合わせよう。パリヌルスからの伝言と作戦案を聞かせてほしい。我々の作戦に抜かりがあっては全員の命にかかわる、大切な命だ。一人の命といっても失ってはならんのだ。君が、このような闘いの経験のあることをパリヌルスから聞いている。頼むぞ、ルドン。いま、この船は、サモトラケまでの全行程のどれくらいのところまで来ているかな。俺は、いま、作戦立案にかける時間のことを気にしている。』
 『今ですか、サモトラケまでの中間地点を過ぎたところです。』
 『よし判った。ルドン、君から話してくれ。その上で主だった者たちを呼んで要務の説明と作戦の打ち合わせをやる。始めてくれ。』
 『判りました。』
 ルドンは、要領よく要点を説明して、パリヌルスの作戦実行案について話した。彼の話しぶりには、無駄がなく、その指摘は正確であった。