『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  173

2010-03-22 08:35:55 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼は霧の正体をつかんだ。
 霧は、航海にとって恐怖である。彼は考えた。身体を船のゆれに任せて考えた。自分の思考を包んでいる霧の恐怖について考えた。
 『この俺がおののく恐怖は何なのだ。俺が感じたことのない怖さだ。俺は、このような臆病ではなかったはずだ。これまで幾多の敵と対峙して、怖さなど感じたことはなかった。だがおかしい。とにかく怖い、怖い、怖いといったら怖い。』
 彼は、得体の知れないこの恐怖について懸命に考えた。
 船は、帆に風をはらんで順調に航走している。背に当たる風が、船を押している、彼をも押していた。船は進む、俺も進む、進む前方には敵がいる。それを思い考えたとき、オキテスの頭中、心中、胸中の霧が風に吹き飛んでいた。
 『よしっ!これでいい。恐怖が消えた。』
 彼には、霧が覆い隠していた、恐れおののいた恐怖の正体が見えた。それが何であるか理解した。
 『俺の心、俺の智、俺の技、俺のこの身体で解決できないわけがない。よし行くのだ、オキテス!』 自分で自分を押した。
 恐怖は、単純なものであった。突き詰めて言えば『それは見えないことだ。未来が見えないことだ。何のことはない。未来が見えれば何の恐怖もない。恐怖が消える。』
 彼は。モチベーションのスイッチを力強く押した。