ジャガイモの果実について,わたしは殊のほか関心があります。これまで,本ブログ記事でも「ジャガイモ」カテゴリーを設けてたくさんの記事を書いてきました。まだ完結していない記事があって気になっているのですが,それはいずれ書くとして,これから新たなジャガイモ栽培シリーズを始めることにします。名付けて『ジャガイモのプランター栽培』です。もちろん,栽培経過を同時進行で記事にしていきます。もしよろしければ,わたしと同じように試みられてはいかがでしょうか。お子さん,お孫さんとご一緒にされるのもこころに残る体験になるかもしれません。そのお誘いから,このシリーズ記事を始めます。
「ジャガイモにミニトマトの実が生(な)った?」という話題が新聞紙上で紹介されたり,「ジャガイモの種子を蒔くとほんとうにジャガイモができるのか」という質問に出合ったり,とにかくジャガイモについては“ふしぎ”を欠きません。そんなふしぎを自分で解き明かしたくて,栽培実験にずいぶんのめり込んできました。
今回は,プランターでの栽培を通して花後に実が膨らむ様子を直に観察しようという点が栽培の柱になります。これはベランダでの栽培も想定しています。プランターで栽培するのですから,いたって容易です。世話も簡単。ただ一つ注意しなくてはならないのは底の深いプランターを準備することです。その他,プランター代わりにポリバケツや用土用ビニル袋を使っても栽培できます。しかし,ここではそれらについは取り上げません。
実を必ず生らせるには,実がほぼ確実にできる品種を植え付けることが最大のポイントになります。メークインや男爵といったお馴染みの品種ではまったくダメです。それらは,品種改良によって実が生らない性質を獲得してしまっているのです。それで,わたしがお奨めしたいのはホッカイコガネです。これだと,気象条件や土壌といった環境とは関係なく,まず100%結実します。品種改良を繰り返されてきたものの,実が生りやすいという性質は消えていない品種なのです。
しかし,たったひとつだけ大きな壁があります。それは,ジャガイモが自家不和合性という性質をもっていることに関係あります。この性質は同じ品種のジャガイモの花粉がメシベに付いても,実ができないというものです。ホッカイコガネの花粉がホッカイコガネのメシベの先に付いても実はできません。これは植物が基本的に近親交配を避ける性質をもっていることによります。したがって,たとえばプランターを複数準備してホッカイコガネをたくさん植えても結実しないのです。この壁をいかに乗り越えるかが栽培ポイントになります。そうならないようにするには,別の品種の花粉が昆虫によって運ばれてくるような環境を準備しなくてはなりません。
壁を乗り越えるには,2つの手があります。1つは比較的近くにでも他品種を植えたジャガイモ畑がある環境かどうかチェックする,ということです。あれば,訪花昆虫が受粉を手伝ってくれるでしょう。なければ,開花する頃に条件のよいジャガイモ栽培畑を探してプランターを置かせていただけばいいでしょう。もう1つは,多品種の花を栽培者からもらって来て昆虫に代わって自分で受粉を試みること,つまり人工授粉することです。花はいくらでももらえます。無駄花なのですから。ただ,栽培種は花粉ができにくいように改良されているので,花粉がありそうかどうか確認してみなくてはなりません。
いずれにしろ,もし結実しかけたら,これは相当に刺激的な話題になるでしょう。逆に万一結実しなかっても,がっかりしないでください。ジャガイモがしっかり収穫できますから。大きなイモがたくさんできるので栽培のし甲斐があります。というわけで,誘いにのられる方は,どうぞホームセンターあたりでホッカイコガネのタネイモをお買い求めください。今,いろんなタネイモが販売されている真っ只中です。
畑で露地栽培される方も,実を生らせたいと思われる場合はホッカイコガネを入手してください。味は大丈夫。メークインに劣りません。実が生ったからといって,「イモが小さめになるのでは?」「収量が減るのでは?」という心配もまったくご無用です。生っても,イモが目に見えて小さくなるなどということはまったくありませんから。収量にも大きく影響することはありません。実もイモもたのしめます。
植え付け前の作業については,次回のシリーズ記事でご紹介します。