アカタテハの生態については,かなり記事にできているように思います。今季は卵との劇的な出合いがあったものですから,一層熱中してあれこれ考える機会が得られました。ついでに,飼育箱で幼虫を複数飼っているので,さまざまな事象が見えてきて,ついつい書き綴っています。
今回もそのあれこれの一つです。飼育箱ではやはり上部蓋からぶら下がって蛹化する例が多いです。ぶら下がるという自然なすがたにピッタリ合うのは,ここだからでしょう。糸をプラスチックにくっ付ける労力はいかほどのものでしょう。 落下を防ぐためですから,入念に行われています。
前蛹を観察していると,蛹化前に兆候が見えかけます。皮が脱ぎやすいように,ギュッと力を入れたり抜いたりを繰り返すのです。いわゆる,筋肉の弛緩運動です。この動きは蛹と皮との間に空気層をつくるためになされると思われます。態勢が整って,頭部から皮が脱がれ始めます。
皮が大きく裂け,頭部がはっきり見えてきます。
からだの動きで,皮が上部に送られていきます。送られながら縮まります。
おしまいまで送られると,皮はじつに小ぢんまりしてしまいます。頭を覆っていた殻は固いので,それだけが原型をとどめています。
脱ぎ終わった皮(脱皮殻)を,蛹はなんとか振り落とそうとして,ピンコピンコとからだをくねらせます。そのうちに,うまくいけば皮は落ちていきます。なかには,結局落ちないで残る場合もあります。落ちたかどうかを,蛹はどうやって感知するのでしょうか。
大変身を遂げた蛹の動きは,すこしずつ穏やかになっていきます。まるで安らぎを得たいのちのように。蛹化前後の動きは,まったく大事件だなと感じます。幼虫期から蛹期への変化は,からだのしくみを劇的に変える驚異の事件なのですから。