チョウの大好きな知人がオオムラサキを飼育中です。自宅庭に食樹のエノキを植え,ネットで覆ってその中で飼っているのです。幼虫は春先に公的施設で譲り受け,持ち帰ったものです。
それが羽化して,飼育舎の中で育っているというわけです。連絡をいただいて,さっそく撮影に向かいました。
そこでは,羽化直前の蛹や,幼虫,それに成虫が生き生きと生きているように思えました。羽化した成虫がさっそく交尾をしている場面に出会いました。
こうして生きているオオムラサキは果たして幸せなのか,気にはなります。なにしろ,里山に生えるクヌギ類から滲み出る樹液をエネルギー源にして生きるのが本来の姿。本来の姿からかけ離れてヒトの保護の元で細々と生きているって,まことに頼りなげです。ここにもヒトの手で破壊されてきた自然の大変化という,決定的な不始末が横たわっているのです。野生動物は野生で生きるのがいちばんですが。
知人の保護活動は貴重な行為なのですが,オオムラサキが自立して生きる環境はもう取り戻せないのでしょうか。
このペアはこの飼育舎で産卵します。栄養源は知人が与える人工の蜜源です。複雑な思いを抱きながら撮影しました。