わたしが訪ねた京都府ではハッチョウトンボは準絶滅危惧種に指定されて保護対象となっています。
たしかに,ハッチョウトンボは行動範囲が狭くて,生息環境が変化すると生存が危ういなあという感じがします。そうした昆虫が生き続けられるかどうかというのは,環境を見つめるたいせつな指標になります。本来なら,なにもしなくてもごくふつうに生存し続けるのが自然なすがたなのですが,ヒトという生きものが身勝手な方法で自然に手を付けたために,昨今のような状態になっているわけです。この例を取り上げるまでもなく,わたしの身近な自然から消えて行った生きものはたくさん。自然への手の付け方はよほど慎重で,思慮深くなくてはなりません。そのためにもまず,ヒトも自然を構成する一員だという考えに立たなくては。
ハッチョウトンボを撮影していて,つくづくそのことを感じました。
これはメスです。オスとは色がまったく異なっています。
メスがオスの縄張りに入って来たら,オスは猛然と追いかけるのだそうです。交尾は飛びながら,それも数秒だとか。それだったら,到底目撃できないという話になります。産卵はメスがオスと離れて水面で行い,オスはその様子をじっと見守っていると聞きました。
この小ささはとにかく印象的です。
左の個体は未成熟なオスです。複眼の色を見るとよくわかります。オスはやがて真っ赤に変色していくのです。
手を抜くと絶滅する恐れのあるハッチョウトンボ。これとの出会いはとても刺激的でした。