7月。この日,ベニシジミの羽化場面を二つ続けて見逃すことになりました。まったく同じパターンで,10分足らず目を離した隙に羽化済みというわけです。「なんとまあ,不運な!」と嘆いても始まらず,結局次回を期すほかありません。
もうすぐ羽化するだろうということは,蛹の殻をとおして見える翅の色,黒っぽくなった体色でわかりました。目が離せなくなったのです。
それで大急ぎでトイレに。これは止む無しです。ところが,ところが。数分後に帰ってみると,出終わったばかりの成虫が近くの葉に付いていました。なんと呆気ない話でしょうか。
成虫は羽化後,速やかに翅を伸ばし広げるのに最適な場所を見つけなくてはなりません。それができないと機能しない翅を持つことになります。一刻の猶予もなく望ましい場所を選び,静かに翅を垂らすのです。
直前まで入っていた殻を見ました。殻には割れ目がちゃんと付いていました。そしてすぐ脇に,体液が一滴付着していました。ここで進行する誕生ドラマを記録したかったのに!
こうしていのちの誕生物語が瞬時にして終わりました。無事でよかったなあと思う反面,じっと待っていたのに悔しいなあという思いがじわっと募ってきました。