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自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ヒガンバナで吸蜜するクロアゲハ

2014-09-21 | クロアゲハ

辺りはもうヒガンバナの真っ盛り。その群落にでもなると,とんでもないほどの風景です。でもわたしは,もっとすくなくても林間のささやかな空間でポッ,ポッと咲いている風景の方が,趣きが感じられて好きです。

 


ウォーキングをしているときのこと。わたしがこの時期気にかけていることの一つに,ヒガンバナにアゲハチョウが飛来している風景が見られたら申し分ないのだが,というのがあります。そういう風景を目にすることはそうそうあるものではないからです。

ところがこの日は,この偶然に恵まれました。

路傍の斜面にヒガンバナが並んで咲いているところにさしかかりました。その前方の花に何やら黒いものが付いているように感じました。そっと近づいて行きました。クロアゲハです。慌ててポケットからコンデジを取り出して,被写体にレンズを向け,シャッターを切りながら近寄りました。幸いアゲハは吸蜜に夢中らしく,気づかれませんでした。 


途中モードを接写にし直して,撮りました。「どうか去らないで」と願いながらの,どきどきする撮影でした。

 


しきりに翅を動かし,からだを震わせながら吸蜜するので,写真はシャープな画像にはなっていません。しかし,その動きが伝わってくるのではないでしょうか。口吻もぼんやりとではありますが,伸びているのが確認できます。

赤い花と黒いチョウ,このコントラストは最高です。すてきなウォーキングになりました。 

 


今,クロアゲハの幼虫(また)

2014-01-22 | クロアゲハ

1月11日(土)。残った終齢幼虫は2個体でしたが,ついこの間,このうちの一つが死にました。自然死です。やはり,寒さが身に応えたのだと思われます。

残りは1個体。アゲハの幼虫と時期を同じくして,飼育箱の蓋裏側に移動してきました。この幼虫もまた,前蛹期を迎えたのだろうと思われます。


ただ,他の蛹や,羽化後の殻があって,糸を出しているのかどうか,よくわかりません。

1月12日(日)。わたしが蓋を動かしたためかわかりませんが,朝,幼虫が横に移動していました。そして,夜見ると,飼育箱の底にいました。もしかすると,落下したのかもしれません。そこにいるものの,まだからだは立つ元気さがありました。

1月14日(火)。朝見ると,同じところで弱々しくからだを横たえていました。尾端からは絹糸がモサモサッと伸びていました。夜もまた色,様子ともに変化は感じられません(下写真)。

 


ところが,部屋を暖かくして写真を撮っていると,なんと歩き始めたのです。じつに頼りなげですが。やはり寒さが動きを鈍らせていたようです。これでは,今の段階がどの辺りなのかちょっとわからなくなりそうです。

そんなことを思いながら,拡大写真を撮りました。頭部矢印のところに,アンテナとそこから生えている機械感覚毛が見えます。これは触覚刺激を感じる器官です。なお,頭部に付いている粉は埃です。

 
これをトリミングしてみましょう。機械感覚毛の根元には感覚細胞がたくさん集まっています。感覚毛はソケット形式のアンテナから生えていて,それが縦横に動くようになっています。その動きが感覚細胞でキャッチされ,神経回路を通して信号が脳に伝達されるのです。


接写の世界は,次々に新たな知見を届けてくれます。 

 


今,クロアゲハの幼虫(続々々)

2013-12-31 | クロアゲハ

12月28日(土)午後11時34分。脱皮近しと予感してから,なんと12時間が経ってようやく脱皮が始まりました。皮が尾端方向に送られていきます。どんな仕掛けが備わっていて,こうなるのか,ほんとうにふしぎな程です。

 

午後11時47分。からだが伸びて,胸脚が後ろに移動していきます。体節間には空気の層ができて,皮が白く見えます。表皮の薄さが感じられます。 

 

午後11時54分。頭部が現れました。胸脚と胸脚の間がこんなに広がっています。スゴイ,スゴイ。 

 

12月29日(日)午前0時01分。触覚,口吻,翅がはっきり見えてきました。皮はからだの中央付近まで脱がれています。

 

午前0時04分。ほぼ脱皮を終えました。

 

午前0時08分。しばらく動いて,皮を完全に脱ぎ終えようとしていました。

 

午前0時15分。皮がからだから離れました。無事に脱皮が完了! 

 

12月29日(日)午前7時04分。 翅が大きくなっています。腹部が引き締まってきました。

 

触覚のうち片方がからだから離れています。トラブルが生じたようです。結局この触覚は,この位置のままで固まっていきました。 

 

夏だと3分程度で脱皮を終えるのですが,今回は15分はかかりました。変化の遅さは5倍程度でしょうか。すべての変化が,寒さの影響で遅めです。気候の影響は成長にとって大きな要因であることが理解できます。 

 


今,クロアゲハの幼虫(続々)

2013-12-29 | クロアゲハ

12月28日(土)。朝のこと。体色が薄くなってきました。蛹化が近づいてきたと思われます。飼育箱から出して,鉢皿に置いて撮影しました。体表には皺がたくさんできています。写真では白い線がたくさん見えますが,それがそうです。皮を脱ぐ準備がゆっくり進んでいるようです。ただ,通常の蛹化直前に見られる動きはまったく確認できません。

 

夕刻になって,動きがすこし見えます。全身を絞るような,見慣れた動きです。頭部から,からだの後ろに向かって筋肉の弛緩運動がかすかに伝わっていきます。これで果たして脱皮できるのだろうかと疑いたくなる程の頼りなさです。

からだの表面には,皺がずいぶん増えました。まるでヒビ割れしているような感じです。

 

夜遅くなって,動きがそれなりに激しくなり始めました。いよいよ脱皮だなと思われる動きです。目が離せません。

近くにいた妻がいいました。「こんなに寒い冬に,脱皮なんてするの?」と。たしかに,そんなふしぎが浮かびます。でも,これが事実なのです。いのちのドラマが展開していきます。

 


今,クロアゲハの幼虫(続)

2013-12-26 | クロアゲハ

12月24日(月)。幼虫は三匹とも, 水入り容器に差したスダチの葉で元気そうです。葉を食べる音が,バリバリと聞こえていました。

三匹のうちの一個体が,葉の裏面で前蛹になりました。尾端はふつうにしっかり固定されているようです。帯糸はなんだか頼りなさそうで,口の辺りで目視できるだけです。

 

 

頭部を下向きにして前蛹になっているのは珍しい光景です。変化はゆっくり進みますから,蛹になるのに2,3日はかかるでしょう。

 

12月26日(木)。どうしたのか,前蛹の個体が飼育箱の底に落下しています。尾端と帯糸の双方になにか負荷がかかったのでしょう。ここでも蛹化はできますが,問題はスムーズにいくかどうかです。

 

前蛹期間はこれで3日が経過しました。暖かい季節なら丸1日で蛹になります。冬季は成長具合が鈍るというものの,じつに遅々としています。

 


今,クロアゲハの幼虫

2013-12-19 | クロアゲハ

12月16日(月)。

我が家の車庫の前に,大きなスダチの木があります。そこを通りかかったとき,たまたま枝を見ると,目の高さぐらいのところにクロアゲハの幼虫が一つ,じっとしていました。アゲハの幼虫に続く目撃です。こんな寒い中で,よくいるものだなあと感じ入りました。

 

ところが,ふしぎなもので,「ほかにはもういないだろうな」と否定的な思いを持ちながらとりあえず探すと,なんと次々と見つかったのです。ほんの1分も経たないうちに! これで,クロアゲハの幼虫が一気に三匹見つかったことになります。つまむと,クロアゲハらしく赤紫色の臭角を出しました。

 

このままだったら,たぶん蛹化までには至らないだろうと思い,飼育箱で飼ってみることにしました。これは余計なお節介なのですが……。

今頃生きているということでふと思ったことがあります。たとえば,一頭の成虫が200個の卵を産むとします。このうち少なくとも何個分が無事に成虫にまで生育するかという話です。正解は2個なのですが,個体数を現状維持しようと思えば,それで足るのです。すべての生きものが個体数で現状維持すると考えれば,たった2個でも,それで十分な2個です。

それでは今の時期の幼虫は,このうちの2個に入るのかどうか。気になるところです。わたしは,たぶん入らないだろうと思います。今の時期自然界では厳しいなあ,と思うのです。

こんなことを考えていると,3億個の卵を産むマンボウの例が浮かびます。マンボウの卵はいったい何個が親になれるか,です。それも正解は2個! “3億分の2”は,「たったそれだけ!」なのではなく,「2個を残すための3億個」と考えれば納得できるでしょう。

マンボウの場合二匹が無事に成長するには,3億個もの数を必要としているのです。それだけ海洋の環境が厳しいことを物語っています。それに比べれば,アゲハで2個のための200個だなんて,地上はじつにやさしい環境だともいえます。卵の生存率を比べると,マンボウは0.000000666……%,アゲハは1%!

それぞれの生きものは子孫を残すことに全霊をかけているわけですし,個体数で現状が維持できている結果がまさに産卵数となって現れているのです。さらにいえば,産卵数が多い生きものはそれだけ弱い立場にあるのだし,少ない生きものは強者とみなすことができます。

というわけで,今の時期の幼虫が成虫になりうるのか,つまり2個のうちに入れるのかつきとめたいと思っています。しかし,室内の飼育では自然環境とかけ離れているので,参考資料を得られるのに過ぎませんが。 

 


クロアゲハの幼虫の天敵

2013-10-23 | クロアゲハ

クロアゲハの食樹は柑橘類です。我が家には,スダチ,レモン,キンカンの木が植わっていて,クロアゲハとアゲハが産卵に訪れます。それで,驚くほどに幼虫が出現することがあります。

今秋はクロアゲハの幼虫がほんとうにびっくりするほど生まれました。それを見つけて,数個体飼育箱に入れ飼っています。

さて,この幼虫を探しているときに,天敵がクロアゲハの幼虫を食べている場面を目撃しました。強力な武器で,獲物をがっちりつかみ放さないという感じでした。高いところだったので,惜しくも写真には撮れませんでした。その天敵とはカマキリです。その後はそういう場面を見かけたことはありません。

先日たまたまカマキリを見かけ,撮ったのが下の写真です。やはり,幼虫を探していたのではないでしょうか。

クロアゲハの幼虫は,4齢までは鳥の糞に似た色とかたちをしています。カマキリの目をときどきは欺けても,いつもそうそううまくいくとは考えられません。

アゲハの幼虫の動きの緩慢さと体色,カマキリの動きの俊敏さと体色,これら二つを比べると明らかにアゲハは劣勢に立っています。ある生きものにとって棲みよい場所では,別の生きものがそれを標的にしてチャンスを覗っているというのは自然の理です。襲う知恵・襲われない工夫,追う目・逃れる手,考えてみれば“生きとし生けるもの”共通のありのままのドラマです。 

 


クロアゲハの幼虫の脱皮,その瞬間

2013-10-13 | クロアゲハ

アゲハの幼虫は4回脱皮を繰り返して,成長していきます。

脱皮する時期が来ると,幼虫はからだを休めるようにして静止状態に入ります。その間に,皮が脱げる準備が静かに進行しているのです。幼虫が大きくなれば,それだけ準備時間がかかるように見えます。なにしろ大仕事で,無事に脱げなくてはなりません。

話は飛びますが,以前に動物園に出かけてニシキヘビの飼育担当の方から,脱皮の様子を伺ったことがあります。それによると,健康なヘビはなんらトラブルなく脱皮する,しかし元気でなかったり健康状態を崩したりしている場合は,人間が手伝わなくてはならない,という話でした。手伝うって,温かくて湿ったタオルで包んで皮が脱ぎやすくなるようにするらしいのです。場合によっては,飼育係が皮を取る手伝いをするとか。そのときは,皮はひとつながりでなく,ばらばらに千切れることが多いのだそうです。

おみやげにニシキヘビの皮の一部をいただきました。これ,今もたいせつに保管しています。

話を元に戻しましょう。要するに,うまく脱皮することはいのちの存続にとって欠かせないことなのです。

クロアゲハの4齢幼虫が葉で静止していました。その状態が続いているので,「これは脱皮が近づいたな」と予感。これまでに脱皮の瞬間前後を追ったことがないので,じっくり観察しようと思いました。それで,カメラの位置を決めて経過を見ていくことにしました。 

カメラを設置して30時間が経ちました。脱皮が近づくと,からだをゆっくり,ときには激しく動かして表皮が脱げるように懸命になりました。色合いは透き通った青色という感じです。神秘な色に見え,いよいよ脱皮の瞬間が迫ってきたなと思えるほどです。

すると,動きがほんとうに激しくなり,瞬間がやって来たと思わず呟いていました。5齢幼虫はからだを伸ばして,頭部を出しました。そして,頭をぐっと上げると……。脱げた皮が後ろに送られていきます。

からだをぐうっと前方に出しました。すこしずつ幼虫のからだが出てきて,それにつれ,きれいな黄緑の体色が現れました。  

なんのトラブルもなく,無事に皮を脱ぎ終えようとしています。送られた皮は,小さく縮んだようになりました。 

皮を脱ぎ終わって,尾先をピクンと持ち上げました。脱皮開始からここまで5分。 

こうして初々しい黄緑をした幼虫が誕生しました。脱皮は大仕事なのだと,つくづく思う風景が続きました。 粘り強く,この瞬間を待ってよかったー! 

 


クロアゲハの幼虫,天敵からの受難(続)

2013-10-10 | クロアゲハ

クロアゲハの幼虫に口を食い込ませていた,あの幼虫の正体がわかりました。そして,口器を体内に入れていた訳も氷解しました。これは,ネット検索をとおしてたまたま出合った情報のお蔭です。

ヌカカという昆虫でした。漢字で“糠蚊” 。糠粒のように小さな蚊という意味で命名されたようです。ウィキペディア・フリー百科事典にこう書かれています。

「体長が1mmー数mmほどの小型昆虫で、一部の種類のメスはカと同様に吸血動物となる」「毎秒1046回羽ばたいている。これは全ての生物の中で最速の羽ばたきである」「体が小さいため網戸等を抜けてヒトの住居に侵入することもある。蚊と異なり、刺咬された直後は刺された感触もなくほとんど痒みはないが、翌日以降に腫れと痒みが起こり、小さな水ぶくれができることもある」

と。

羽ばたきが毎秒1046回だなんて,すごいのはすごいけど,よくもマア数えようとした人がいたものです。これも徹底していて,立派。

「こんな昆虫がいたなんて,知らなかったー!」 

ということは,あのとき,ヌカカはクロアゲハの体内から血を吸っていたということです。よくよく考えてみると,あの腹は大きく膨らんでいたー! 一瞬,からだのかたちから「蚊の腹みたい!}と思ったものの,蚊がアゲハから血を吸うなんてまず想像がつきません。「まさか,そんなことはあるまい」なんて先入観を持ったのが軽率でした。

わたしだってこれまでにヌカカに刺されたことがあったとしても,気づいていないのかもしれません。なにしろ体長がミリ単位なのですから。

ともかく,「こんな正体の昆虫がいるんだよ」という視点から,なかなかすてきな“内容知”を仕入れることができました。頭が固くなりかけている時期に,「こんなふうに考えてみたらいいね」という視点で,なかなかすてきな“方法知”を得ることができました。感謝。 

 


クロアゲハの幼虫,天敵からの受難

2013-10-05 | クロアゲハ

スダチにいるクロアゲハの幼虫を見ると,妙に小さなハエかハチのようなものが一匹付いていました。そこにもう一つ現れましたが,間もなく去っていきました。腹が異様に膨らんだからだつきをしていました。

はじめからいた個体は,アゲハのからだに異常に関心を示して,去る様子がありませんでした。どうもからだの表面に眼と口が向いています。それで撮ったのが下の写真です。

明らかにこれは天敵のとる行動です。大きな顎が体表を狙っています。 

たしかに口を体表に入れました。からだが前のめりになっています。体液でも舐めとっているのでしょうか。あるいは,筋肉の一部を食いちぎっているのでしょうか。なにしろ体長が2.3mmの昆虫の為す行動なので,口を突き刺したといってもまず跡形はわかりません。 

ふしぎなのは,肛門から風船のような状態で液体か,気体かが排出し続けたことです。7,8秒に1回,きっちり出てくるのです。写真では写せませんでした。上写真に写ったものは単なる排泄物だと思われます。

名前不明のこの昆虫の行動が時に違和感を伴なうのか,アゲハの幼虫はすこしからだをピクッとさせました。タマゴバチでもなし,ヤドリバエでもなし,アオムシコバチでもなし,アゲハヒメバチでもなし。ではいったい,何虫なのでしょう。まことにふしぎな光景でした。