中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

メル・ブルックス「珍説世界史part 1」(映画で学ぶ世界史①)

2006年04月30日 | 映画
 メル・ブルックスの「プロデューサーズ」を見てきた。実は昨年は来日公演ミュージカルも見たし、68年度の同名映画もたまたまテレビで放映されたのを録画して見た。

 そんなに好きなの、と問われれば、でも答えに窮する。ブルックスの泥臭さやしつこさには、ときどき閉口してしまうから。とはいえユダヤ人である彼が皮肉たっぷりに描くナチスは、やはり面白い。大学でヒトラーについて取り上げたとき、旧作の一部を学生に見せたら大いに受けていた。

 さて、わたしが見た舞台版だが、ベストメンバーでないため不発だった。役者の生身のオーラに左右される舞台は、人を得ないと実につまらなくなる。今回の改訂映画は、その点、初演のオリジナルキャストなので、なかなかはじけていた。監督もブルックス自身ではなく、スーザン・ストローマンのせいか、下品さはぎりぎりに抑えられ、かなり垢抜けていて楽しめた。

 このメル・ブルックスの、あまり知られていない映画が「珍説世界史part 1」(1981年制作)である。紀元前3000年からルイ16世の時代までの5000年間を一気に、それもコメディ風あり、50年代ミュージカル風あり、「ベンハー」風ありと、何もかもてんこ盛りのうえ、脱力するような性的ギャグをこれでもかと混ぜ合わせて、いやあ、面白いんだか何だかわからない作品に仕上がっていた。

 ラストに<氷上のヒトラー>など、part2の予告編があったのに出来ていないのは、1がヒットしなかったせい?

 そんな変な映画ではあるものの、ところどころ忘れがたいシーンがあって、

 その1 -- 史上初の漫画家登場の場。原始時代に洞窟の壁へ漫画を描き、みんなを大いに笑わせている。そこへ恐竜が顔を出し、漫画家をがぶっと噛んで連れ去るのだが、そのあわてた様子の方が漫画よりおかしいと、みんなはますます大笑い。つまり史上初のコメディアンと誤解された?

 その2 -- モーゼ(ブルックス本人が演じた)がシナイ山で神の啓示を受け、3つの岩に5個づつ戒律を彫る。仕上がった岩を両腕に持ち、「十五戒だぞ!」と宣言しようとしかけた瞬間、あまりに重くてひとつ落っことしてしまう。 粉々に崩れた岩を恨めしそうに見つめたモーゼは、しかしすぐ立ち直り、残った2つを両手で高々と掲げ、おごそかに曰く、「これがモーゼの十戒だ!」。
 戒律は少ないほどありがたいから、減って良かったね、という次第。

 改作すれば「ヤングフランケンシュタイン」なみの傑作になり得ると思うのだけど・・・

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
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中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

☆ツヴァイク『マリー・アントワネット』、なかなか重版分が書店に入らずご迷惑をおかけしました。今週からは大丈夫のはずです。「ベルばら」アントワネットの帯がかわゆいですよ♪
☆☆画像をクリックすると、アマゾンへ飛べます。

マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)
「マリー・アントワネット」(上)(下)
 シュテファン・ツヴァイク
 中野京子=訳
 定価 上下各590円(税込620円)
 角川文庫より1月17日発売
 ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8



♪♪♪ アサヒコムに紹介されているわたしの著作一覧です。見てね!⇒ 
http://book.asahi.com/special/TKY200602280388.html




 































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メンデルスゾーン協会コンサート

2006年04月29日 | 紹介
 昨夕は赤坂OAG ホールにて、日本メンデルスゾーン協会第10回定例コンサートを聴いた。読売日本交響楽団メンバー(井上雅美さんたち8人)の弦楽アンサンブルのすばらしい演奏に、仕事疲れの身体も頭もやわらかくほぐれてゆくのを実感。

 演目はまず生誕250年ということで、モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」で明るく。それからメンデルスゾーン「弦楽4重奏曲変ホ長調」と「弦楽8重奏曲変ホ長調」。

 合い間に星野宏美・立教大助教授のレクチャーが楽しかった。曰く、

 「モーツァルトもメンデルスゾーンも、絵に描いたような早熟の天才であった。ともに4歳年上のやはり天才級の姉がいて大きな影響を受けた。だが35歳、38歳とあまりに早世だった」
 
「アイネ・クライネ~」 出版が1827年と大幅に遅れたため、おそらくメンデルスゾーンはこの作品を知らなかったであろう」

 「弦楽4重奏変ホ長調に関してメンデルスゾーン自身が、「音楽にはある種のミステリが必要だ」と意味深な言葉を残している」

 「弦楽8重奏曲変ホ長調第3楽章は、広大な自宅の森のような庭で聞いた自然の音の描写であるとともに、ゲーテ「ファウスト」からの<ヴァルキルギスの夜>を音楽化したいという試みでもあった」etc,etc....

 ユーモアをまじえた彼女のこうした解説は、その後の音楽鑑賞のたいへん良い指針となり、コンサートの楽しさを倍加させてくれた。

 わたしにはとりわけ弦楽4重奏曲の複雑さと陰影が魅力的だった。とても弱冠16歳の手になるとは思えない(あの「真夏の夜の夢」序曲も17歳の作品だ!)。

 それにしてもメンデルスゾーンを考えるとき、彼が呼ばれるとおりの「幸せな音楽家」だったかどうかに疑問を持ってしまう。

 当時の作曲家たちのほとんどが貧しさに喘ぎ、家庭崩壊に悩み、著作権や職場の確保のために戦い続けたのに比べれば、確かに彼は金のスプーンをくわえて生まれてきたと言えよう。祖父は有名な哲学者モーゼスだったし、父親はメンデルスゾーン銀行の頭取だから、彼にはうなるほどのお金と名声が一生ついてきた。

 おまけにハンサムで多才。上流市民階級の子弟が受ける教育を全て受けた彼は、数ヶ国語をあやつり、名文家で、チェスの名手、ピアニストとしても指揮者としても一流、水泳もコーチより早く泳げたし、絵はセミプロ級の腕前だった。なろうと思えば祖父のような学者にもなれただろうし、父の跡をついで銀行家としても成功しただろう。

 愛情に包まれて育ったので、性格的にも円満だった。彼を心から愛し慕う、おおぜいの友人たちに常に囲まれていた。またフランクフルト一の美女と言われた女性と恋愛結婚し、4人の子どもに恵まれ、平穏な家庭を築いた。
 
 これらのうちのひとつでも持てればもう幸せと呼べる、と言いたくなる人もいるだろう。しかし彼は、19世紀ドイツに住むユダヤ人だった。排斥運動が悪化する中、ユダヤ人殺戮事件が起きていた時代のユダヤ人だった。彼自身、少年時代には道を歩いていて唾を吐きかけられたことがある。

 個人の責任とは別の、人種という、どうにもならない点をあげつらわれて排斥された人間を、いったい幸せと呼べるだろうか?

 メンデルスゾーン作品の、ロマンティックな優雅さの裏にある深い苦悩と静かな諦念はそんなところからきていると思わざるをえない。


♪彼とアンデルセン、そしてスウェーデンのソプラノ歌手リンドをめぐる3角関係の物語「メンデルスゾーンとアンデルセン」をお読みください ⇒ http://www.bk1.co.jp/product/2661441













 













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バッハ「マタイ受難曲」復活

2006年04月27日 | 音楽&美術
 ヨハン・セバスチャン・バッハは、今でこそ音楽史上最大の作曲家のひとりとされているが、19世紀前半には半ば忘れられた存在だった。それを再評価するきっかけを作ったのは、弱冠20歳のメンデルスゾーンである。

 当時バッハは干からびた音楽と見なされ、全く人気がなかった。一般の人々は、バッハ、イコール、単なる練習曲とさえ思っていた。

 まして彼のオラトリオ(聖譚曲=聖書を題材に、独唱・合唱・管弦楽で物語風に構成した作品)はほとんど忘れ去られ、「マタイ受難曲」も1727年にライプツィヒの聖トーマス教会でバッハ本人の指揮によって初演されて以来、ごくたまに合唱曲の一部がとりあげられるていどで、全曲演奏は一度もされていない。ヘンデルのオラトリオが長く愛され続けてきたのに比べ、著しく低い評価しかされていなかった。

 メンデルスゾーンが古典を勉強するうちバッハに触れ、その端正さに惹かれたのは自然のなりゆきだったとしても、カビが生えていると見なされていたバッハの真価を見抜いたのは、やはりすばらしい慧眼と言わざるを得ない。

 彼の尽力により、「マタイ」は再演されることとなった。1829年、ベルリンのウンター・デン・リンデンにあるジングアカデミー・ホールにおいて、メンデルスゾーン指揮のもと、大規模なオーケストラと150人もの合唱団で、100年ぶりにバッハは蘇ったのだ。

 圧倒的な成功だった。「マタイ」は10日後(ちょうどバッハの誕生日にあたる)に第2回目が、さらに日をおかず3回目も続けて上演された。収益金は全て、恵まれない少女のための裁縫学校設立にあてられた。

 人々のバッハへの熱狂は、やがてベルリンからフランクフルト、ケーニヒスベルク、ドレスデン、そして国外へと、漣のごとくひろがっていゆく。

 メンデルスゾーンはこうして、バッハ再評価の道を拓くという、音楽史に残る偉業を成し遂げた。まさに彼なくして、今へ続くバッハ受容はなかったといっていい。ブラボー、メンデルスゾーン!

☆「メンデルスゾーンとアンデルセン」⇒ http://www.bk1.co.jp/product/2661441

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
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中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」






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「ギョエテとは吾のことかとゲーテ言い」--表記の混乱

2006年04月26日 | 音楽&美術
 大学ドイツ語中級の最初の授業では、70年代ポップス「ジンギスカン」のCDを聞かせて訳させている。何度かリバイバル・ヒットしているし、「ジン、ジン、ジンギスカーン!」のリフレインが印象的なので、この歌を知らない学生はいないが、ドイツ人(<ジンギスカン>という男4人、女2人のグループ)によるドイツ語のヒット曲とまでは知らなかったらしく、みんな驚く。

 さて、次はわたしが驚く番。彼らはジンギスカンを知らないのだ。「焼肉と思った」などと言う。ウッソー。世界史、学ばないのか、と思ったら、そうではなくて、「ジンギスカン」ではなく「チンギス・ハーン」で習ったので、同じ人物とは知らなかった由。

  なるほど。こういう表記の混乱は困るんですよね。画家のボッシュはいつの間にかボスになっていたり、ルーベンスはリュベンスと書く人も多い。音楽家では、ドボルザークがドボルジャークになってしまうし、ワーグナーなんか、ワグナー、ヴァグナー、ヴァーグナーと、勝手放題。ヴェルディをベルディはすごく困るけど。

 だいぶ前、共訳の相手が「ベニスに死す」を「ヴェネチアに死す」にすべきと主張して参った。もう決定訳のタイトルなのに・・・「ビルマの竪琴」を「ミャンマーの竪琴」にはしないでしょ?

 とはいえ、明らかにまちがっているのに今さら変更しにくい例もある。ハプスブルク家のエリザベートだが、これだとどうしても「べ」にアクセントを置いて読まざるを得ない。本来は「エリーザベト」で「り」にアクセントだから、ずいぶんおさまりが悪いのだ。
 
 アルファベットを無理やり片仮名にするのだから、無理が出るのはしようがないのかも。

 
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平均寿命15歳!

2006年04月25日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkids ぷらざ」で連載している<世界史レッスン>第11回は、「どこに生まれるかによって」。産業革命期イギリスの暗黒面について書きました。⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2006/04/post_3453_1.html#more

 当時の平均寿命は全体にもちろん、今の日本とは比較にならないほど短いのだが、それにしても農村地帯の労働者階級に生まれれば38歳までは生きられるのに、新興工業都市リヴァプールに生まれたら、たったの15歳。

 常に餓えと渇きに苦しみ、亜硫酸ガスや煤煙で汚れた空気を吸い、幼いころから過酷な肉体労働にあけくれる、そんな短い一生・・・

 目の前でそういう人生を送る人間を見るとき、人はやはり平気ではいられない。
そこで階級性が免罪符のひとつとなったのだろう。彼らは自分と同じ人間ではない、そう生きるべく神によって定められたのだ、弱肉強食のこの世界に、餌として投げ与えられたにすぎない、というように。

 ある意味、因果応報思想もこれに似て残酷かも。苦しんでいる人に対して、それはあなたの前世が悪いのだ、と糾弾するのだから。



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二大結婚行進曲--メンデルスゾーンとワーグナー

2006年04月23日 | 音楽&美術
 一昔前、不動産のテレビCMにアニマルズのヒット曲「朝日のあたる家」が流れ、<楽しい我が家>風のイメージを出そうとしていたのに、驚いてしまった。

 だってあの曲はたしか、ニューオーリンズの娼館を歌った悲しい物語のはず。窓から朝日がたっぷり射しこみ、家族みんな幸せ、というのとは全然ちがう。制作者は歌詞など知らず、タイトルだけでこの曲を選んだのね、きっと。

 で、結婚行進曲。
 現在、式場で使われているのは、ほとんど全てといっていいくらい、メンデルスゾーン「真夏の夜の夢」からのと、ワーグナー「ローエングリン」からのだろう。

 メンデルスゾーンのは<チャーン、チャチャ、チャチャチャチャ、チャーンチャーチャチャー>という(片仮名にすると何だかなあ・・・)華やかで明るく祝祭気分に満ちたもの。なんといってもシェークスピア喜劇の、あのみんなハッピー、めでたしめでたしの場面をあらわす曲なので、新婚さんにはふさわしい。

 一方、ワーグナーのは<チャンチャチャチャーン、チャンチャチャチャーン>という、厳かでもったいぶった重々しい音楽。なかなかよろしい・・・と思うかもしれないけれど、ちょっと待って。それでは「朝日のあたる家」の二の舞です。

 オペラ「ローエングリン」のストーリーは、
 --この世ならぬ存在のローエングリンは、人間の乙女エルザに、「決して自分の名前と出自を訊ねないと約束するなら」と言って結婚する。ところがエルザは新婚初夜に「愛する人の名前を呼びたい」からと、約束を破って質問してしまう。
 結果、彼は別世界へ去り、エルザはショック死。

 とんでもなく縁起の悪い行進曲なんですわん。

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
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怖い絵
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①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
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夢占いはあなどれない

2006年04月22日 | 
 以前、こういうことがあった。妹と旅行へ行き、同じ部屋で隣り合って寝た。その晩、わたしは2匹の魚が海の底でじっとしている夢をみた。スズキという魚だった。

 目覚めて不思議な気がした。2匹の魚自体の解釈は、当時直面していた問題に関係していたので別として、この魚が「スズキ」ということがなぜわかったのかが、さっぱりわからなかった。なぜというに、わたしは魚の名前はちっとも知らなくて、今もってスズキがどんな魚か知らないくらいなのだ。

 「変な夢をみたわ」
 妹に言うと、彼女も、
 「わたしも。高校時代の鈴木さんがでてきたの。親しくもなかったのに・・・」

 スズキ=鈴木、だったのだ!
 同床同夢って、やっぱりあるんだ、と思った。なんとならば14世紀の王朝日記「とはずがたり」に、似た例があるから。

 作者の二条は、大納言久我雅忠の女(むすめ)で、後深草院の側室。御子もさずかっている。しかし彼女は、雪の曙という他の男性を愛し、命がけで不倫する。

 ふたりが添い寝して、全く同じ夢をみるのだが、それは、
 
 --雪の曙が、うるし塗りの扇子の上に、銀の壷を載せてさしだす。二条はこれを人に見られないよう、そっと懐へかくす--

 夢占いはあなどれない。
 しかもこれはまた、フロイトの夢分析に取り上げられるお手本のような夢である。言わずとしれた、扇子は男性の、壷は女性のシンボルで、両方がいっしょになる、即ち性的結合をあらわし、それを女の方が人目を避けて懐へかくすのだから、まぎれもなく<望まぬ妊娠>そのもの。

 事実、二条はまもなく懐妊し、ふたりとも漠然と予想していただけに、すぐこの夢を思い出したのだった。

 けっきょく院の子を孕んだと偽り、死産だったと嘘をいって、ふたりの若い恋人たち(二条はこのとき15歳!)は、赤子を捨ててしまうのだ。

 それにしても「とはずがたり」を読むと、フロイトを待つまでもなく、人々は漠然とではあっても夢が語ることの真実を感じていたのがわかる。

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
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怖い絵
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マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)
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 中野京子=訳
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 角川文庫より1月17日発売
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*二条については拙著「恋に死す」をお読みくだされ⇒
http://www.book-times.net/200312/14.htm













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アンドレはシェークスピアを読んでいたか?

2006年04月21日 | 紹介
 宝塚雪組公演「ベルサイユのバラ」を見てきた。
 昔むか~し、ヅカ・ファンに連れられて見に行ったのが、やはりこの「ベルばら」だったので、何かとご縁があったのでしょう。

 で、今回見ていてちょっと驚いた台詞。
 貴族オスカルをひそかに愛する平民アンドレが、どうせ結ばれない自分たち、他の男に取られてしまうくらいなら、彼女を殺して自分も死のうと決意。ワインに毒を入れて飲ませようとする直前に、こう訊く、

 「オスカル、今夜の祈りはすませたか」

 愛していなくては言えない台詞だ。死後、ちゃんと天国へ旅立ってほしいので、祈りをすませていてほしかったのである。

 実は同じ台詞は「オセロ」にある。
 嫉妬に狂って、もう妻デズデモーナを殺すしかないとまで追いつめられたオセロが、ベッドで彼女の首を絞める前に、こう訊いたのだった。
 
 だからアンドレは、もしやシェークスピアを読んでいたのかなあ、と・・・

 キリスト教徒はきちんと最後の祈りを終えてあの世へ旅立ちたいわけだが、それで思い出したこと。

 我が友人A子さんが、かつて不倫をしていた。キリスト者のB子さんに相談して、「早く別れなさい」と言われ続けていた。ある日、A子さんは体調不良で「癌かもしれない」と、半分ふざけてB子さんに言うと、彼女はまじめな顔で、

 「絶対にいま死んではいけない。いま死んだら天国へ行けない。彼と別れてから死になさい」

 と言われてしまった由。
 そうかあ、不倫て地獄行きなんだ。怖いですね・・・
 その忠告のおかげでは全然ないのだが、A子さんの恋はもう終わっています。めでたし、めでたし???

 
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「25歳の老嬢」だなんて・・・

2006年04月20日 | 
 みずほ銀行が「新社会人応援キャンペーン」なるものをはじめた由。親へのパラサイト?が終わり、いよいよひとりで世間とわたりあう「新社会人」のその年齢はといえば、29歳だという。

 うーむ、29歳でようやく一人前かあ・・・

 かと思えばJR が熟年向けに出している「フルムーンパス」は、夫婦の年齢合算が88歳の由。つまり44歳で熟年なのね。

 ということは29歳で自立して、44歳で熟年。あいだは15年しかないとは、これいかに?

 同じことは、法律にも言えて、女性は16歳で結婚オーケーなのに、18歳以下の女性とセクシャルな関係を結んだ男性は、未成年に対する性的法律違反を犯したということで逮捕されるのも、なんだかなあ、と疑問符が頭に浮かぶ。

 三島由紀夫が1954年に書いた「復讐」という短編には「25歳の老嬢」という言葉が出てきてギョッとした。老嬢にはわざわざ「オールドミス」とルビまでふってある。半世紀前はまだこういう感覚だったのね。

 70年代の松本清張の小説にも、「50歳の老刑事」という言葉が出てくる。60半ばの女性は完全に「老婆」だった。

 確かにハリウッドのヒロイン年齢を考えると、一昔前は20歳そこそこ(相手の男は40代なのに)、今や30代半ばがふつうで、50代のヒロインだっている(「恋愛適齢期」etc. )。

人生120年の時代になったら、70代のヒロインも出るかも。そしてそのころにはみんな美容整形しているので、今の30代くらいにしか見えないのだ。いいんだか悪いんだか・・・






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アントワネット没後6年

2006年04月18日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkids ぷらざ」で連載中の<世界史レッスン>第10回は、「ピョートル大帝の黒人奴隷」を書きました。ピョートルが可愛がったエチオピア奴隷が、ロシア文学の祖となるプーシキンの曽祖父であったというエピソードです。⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2006/04/post_d729.html#more
 
 プーシキンの作品はオペラ化されているものが多く、有名なところでは以下。

 「エウゲニ・オネーギン」(チャイコフスキー作曲)
 「スペードの女王」(チャイコフスキー)
 「マゼッパ」(チャイコフスキー)
 「ボリス・ゴドノフ」(ムソルグスキー)
 「ルスランとリュドミラ」(グリンカ)

 とりわけチャイコフスキーの「オネーギン」はわたしの大のお気に入りオペラ。開幕、乙女の恋の夢をうたう2人姉妹のかたわらで、その母親が乳母に、自らのかなわなかった恋、そして諦念をうたう、女声4重奏の切ないメロディときたら・・・この母の歎きはオペラ全体を貫き、登場人物たちの誰ひとりとして愛する人とは結ばれずに終わるのです。

 プーシキンへもどりましょう。
 彼は妻の不倫相手と目したフランス人の近衛将校に決闘を挑み、38歳の若さで死んでしまいます。

 決闘へ行く前に彼は、ペテルブルクの喫茶店<文学カフェ>で友人と最後のひとときをすごした。現在このカフェは観光地になっており、わたしも行ったけれど、プーシキンの等身大人形が飾ってあるのには、感心しなかったなあ・・・


*「メンデルスゾーンとアンデルセン」
    ⇒ http://www.bk1.co.jp/product/2661441

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