メル・ブルックスの「プロデューサーズ」を見てきた。実は昨年は来日公演ミュージカルも見たし、68年度の同名映画もたまたまテレビで放映されたのを録画して見た。
そんなに好きなの、と問われれば、でも答えに窮する。ブルックスの泥臭さやしつこさには、ときどき閉口してしまうから。とはいえユダヤ人である彼が皮肉たっぷりに描くナチスは、やはり面白い。大学でヒトラーについて取り上げたとき、旧作の一部を学生に見せたら大いに受けていた。
さて、わたしが見た舞台版だが、ベストメンバーでないため不発だった。役者の生身のオーラに左右される舞台は、人を得ないと実につまらなくなる。今回の改訂映画は、その点、初演のオリジナルキャストなので、なかなかはじけていた。監督もブルックス自身ではなく、スーザン・ストローマンのせいか、下品さはぎりぎりに抑えられ、かなり垢抜けていて楽しめた。
このメル・ブルックスの、あまり知られていない映画が「珍説世界史part 1」(1981年制作)である。紀元前3000年からルイ16世の時代までの5000年間を一気に、それもコメディ風あり、50年代ミュージカル風あり、「ベンハー」風ありと、何もかもてんこ盛りのうえ、脱力するような性的ギャグをこれでもかと混ぜ合わせて、いやあ、面白いんだか何だかわからない作品に仕上がっていた。
ラストに<氷上のヒトラー>など、part2の予告編があったのに出来ていないのは、1がヒットしなかったせい?
そんな変な映画ではあるものの、ところどころ忘れがたいシーンがあって、
その1 -- 史上初の漫画家登場の場。原始時代に洞窟の壁へ漫画を描き、みんなを大いに笑わせている。そこへ恐竜が顔を出し、漫画家をがぶっと噛んで連れ去るのだが、そのあわてた様子の方が漫画よりおかしいと、みんなはますます大笑い。つまり史上初のコメディアンと誤解された?
その2 -- モーゼ(ブルックス本人が演じた)がシナイ山で神の啓示を受け、3つの岩に5個づつ戒律を彫る。仕上がった岩を両腕に持ち、「十五戒だぞ!」と宣言しようとしかけた瞬間、あまりに重くてひとつ落っことしてしまう。 粉々に崩れた岩を恨めしそうに見つめたモーゼは、しかしすぐ立ち直り、残った2つを両手で高々と掲げ、おごそかに曰く、「これがモーゼの十戒だ!」。
戒律は少ないほどありがたいから、減って良かったね、という次第。
改作すれば「ヤングフランケンシュタイン」なみの傑作になり得ると思うのだけど・・・
☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪
①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」
☆ツヴァイク『マリー・アントワネット』、なかなか重版分が書店に入らずご迷惑をおかけしました。今週からは大丈夫のはずです。「ベルばら」アントワネットの帯がかわゆいですよ♪
☆☆画像をクリックすると、アマゾンへ飛べます。
![マリー・アントワネット 下 (3)](http://images-jp.amazon.com/images/P/4042082084.09.MZZZZZZZ.jpg)
「マリー・アントワネット」(上)(下)
シュテファン・ツヴァイク
中野京子=訳
定価 上下各590円(税込620円)
角川文庫より1月17日発売
ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8
♪♪♪ アサヒコムに紹介されているわたしの著作一覧です。見てね!⇒ http://book.asahi.com/special/TKY200602280388.html
そんなに好きなの、と問われれば、でも答えに窮する。ブルックスの泥臭さやしつこさには、ときどき閉口してしまうから。とはいえユダヤ人である彼が皮肉たっぷりに描くナチスは、やはり面白い。大学でヒトラーについて取り上げたとき、旧作の一部を学生に見せたら大いに受けていた。
さて、わたしが見た舞台版だが、ベストメンバーでないため不発だった。役者の生身のオーラに左右される舞台は、人を得ないと実につまらなくなる。今回の改訂映画は、その点、初演のオリジナルキャストなので、なかなかはじけていた。監督もブルックス自身ではなく、スーザン・ストローマンのせいか、下品さはぎりぎりに抑えられ、かなり垢抜けていて楽しめた。
このメル・ブルックスの、あまり知られていない映画が「珍説世界史part 1」(1981年制作)である。紀元前3000年からルイ16世の時代までの5000年間を一気に、それもコメディ風あり、50年代ミュージカル風あり、「ベンハー」風ありと、何もかもてんこ盛りのうえ、脱力するような性的ギャグをこれでもかと混ぜ合わせて、いやあ、面白いんだか何だかわからない作品に仕上がっていた。
ラストに<氷上のヒトラー>など、part2の予告編があったのに出来ていないのは、1がヒットしなかったせい?
そんな変な映画ではあるものの、ところどころ忘れがたいシーンがあって、
その1 -- 史上初の漫画家登場の場。原始時代に洞窟の壁へ漫画を描き、みんなを大いに笑わせている。そこへ恐竜が顔を出し、漫画家をがぶっと噛んで連れ去るのだが、そのあわてた様子の方が漫画よりおかしいと、みんなはますます大笑い。つまり史上初のコメディアンと誤解された?
その2 -- モーゼ(ブルックス本人が演じた)がシナイ山で神の啓示を受け、3つの岩に5個づつ戒律を彫る。仕上がった岩を両腕に持ち、「十五戒だぞ!」と宣言しようとしかけた瞬間、あまりに重くてひとつ落っことしてしまう。 粉々に崩れた岩を恨めしそうに見つめたモーゼは、しかしすぐ立ち直り、残った2つを両手で高々と掲げ、おごそかに曰く、「これがモーゼの十戒だ!」。
戒律は少ないほどありがたいから、減って良かったね、という次第。
改作すれば「ヤングフランケンシュタイン」なみの傑作になり得ると思うのだけど・・・
☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪
①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」
☆ツヴァイク『マリー・アントワネット』、なかなか重版分が書店に入らずご迷惑をおかけしました。今週からは大丈夫のはずです。「ベルばら」アントワネットの帯がかわゆいですよ♪
☆☆画像をクリックすると、アマゾンへ飛べます。
![マリー・アントワネット 上 (1)](http://images-jp.amazon.com/images/P/4042082076.09.MZZZZZZZ.jpg)
![マリー・アントワネット 下 (3)](http://images-jp.amazon.com/images/P/4042082084.09.MZZZZZZZ.jpg)
「マリー・アントワネット」(上)(下)
シュテファン・ツヴァイク
中野京子=訳
定価 上下各590円(税込620円)
角川文庫より1月17日発売
ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8
♪♪♪ アサヒコムに紹介されているわたしの著作一覧です。見てね!⇒ http://book.asahi.com/special/TKY200602280388.html