中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

「夫人」とはこれいかに?

2011年01月25日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「世界史レッスン<映画篇>」、第55回の今日は「西部劇時代の理系女子」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2011/01/post-3053.html#more
 大ヒットSFシリーズ、「バック・トゥ・ザ・フューチャーpart3」について書きました。

 産業革命の時代であり、数少ないとはいえ、こうして大学で理系の勉強をして教職に就く女性もいたのだな、と、当時の彼女たちの奮戦ぶりがまぶしいです(この映画の彼女のバックボーンは何も語られませんが)

 理系女子でもっとも有名なのは、なんといってもマリー・キュリーでしょう。刻苦勉励して2度もノーベル賞を取っているのですから。

 ところが長らく日本では、彼女は「キュリー夫人」と呼ばれていました。少年少女伝記もので、そのタイトルで読んだことがあります。当時はそんなもんかなあ、とさして疑問にも思っていなかったのですが、今なら、なんじゃ、こりゃ?ですよね。
 
 女は結婚したら夫に属し、個人とみなされないという歴史が長く続いていたからでしょう。ひどい話です。もし未婚だったら、ちゃんとマリー・キュリーと表記したのかな?

 さて、これとは少々違いますが、混乱のもととなるのが「男爵夫人」「侯爵夫人」の類です。ポンパドゥール侯爵夫人と聞くと、たいていの人は、ポンパドゥール侯爵なる男性がいてその奥さんだろうと思うわけですが、拙著『ブルボン王朝 12の物語』に書いたように、全然違うのです。

 ルイ十五世の寵姫となった彼女は、箔付けと財産のためポンパドゥールの領地と侯爵の地位を国からもらったわけです。ですので正確には、「ポンパドゥール女侯爵」と言わねばならないわけですね。


☆最新刊「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社) 2刷になりました♪
 レンザブローで本書についてインタビューが載っています。お読みくださいね!⇒ http://renzaburo.jp/

残酷な王と悲しみの王妃

 
☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 7刷になりました♪

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」3刷中。

名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書 463) 


☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書)14刷中。

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

☆「怖い絵」16刷中。

怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。

怖い絵2

☆「怖い絵3」 6刷中。

怖い絵3


☆「危険な世界史」(角川書店) 5刷中。
危険な世界史


「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫)
おとなのための「オペラ」入門 (講談社プラスアルファ文庫)

☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
 
 恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

幸福への意志

2011年01月18日 | 
 先日、アルゼンチンタンゴのダンス選手権をテレビを見た(以前、社交ダンスを習っていたので、この種の番組はつい見てしまう)

 あるカップルが、自分たちのダンスは「純愛」を表現したものだ、と言って踊った。草食系日本人には、それは「エロス」の行為そのものに見えた。「これで純愛かあ、かなわないな」という気分になる。「純愛」の意味するところが違うのだ。

 ツヴァイクは『マリー・アントワネット』で、フェルゼンと王妃の関係について、わざわざ一章をさき(「彼はそうだったのか、そうでなかったのかーー幕間の問い」)、ベッドインしたかしなかったかを論考している。恋愛がほんものであるためには、身も心も一体になることが必要だとするのだ。

 『恐怖と愛の映画102』にも書いたが、これに関してはトーマス・マンの短編『幸福への意志』が思い出される。

 余命いくばくもなしと宣告された青年が、それでも恋人と結婚しようとして周囲に阻まれる。彼は幽鬼のごとくなりながら、それでも医者の見立てより長生きし、ついに結婚は許される。初夜が明け、彼は死ぬ。しかし葬儀にあらわれた彼の一夜だけの若妻は、いかにも満ち足りた幸福そうな表情をしていた……
 
 
☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
 
 恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

☆最新刊「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社) 2刷になりました♪
 レンザブローで本書についてインタビューが載っています。お読みくださいね!⇒ http://renzaburo.jp/

残酷な王と悲しみの王妃

 
☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 7刷になりました♪

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」3刷中。

名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書 463) 


☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書)14刷中。

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

☆「怖い絵」16刷中。

怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。

怖い絵2

☆「怖い絵3」 6刷中。

怖い絵3


☆「危険な世界史」(角川書店) 5刷中。
危険な世界史


「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫)
おとなのための「オペラ」入門 (講談社プラスアルファ文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2011年、明けましておめでとうございます♪

2011年01月11日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 あけましておめでとうございます。
 今年も「花つむひとの部屋」をどうぞよろしく♪

 朝日新聞「ベルばらkidsぷらざ」で連載の「世界史レッスン<映画篇>」第54回の今日は、「エルミタージュで幻想をみる」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2011/01/post-5969.html#more
実験映画『エルミタージュ幻想』について書きました。

 『ダ・ヴィンチ・コード』がルーヴル美術館の一部を借り切って撮影した時より、本作はもっと大規模にエルミタージュ美術館を使っています。歴史の迷路のようなエルミタージュ自体が主役といっていいでしょう。

 個人的には、レンブラントの部屋のシーンが印象的でした。『ダナエ』の前でバレリーナ(ないし天使)が、夢みるように絵を感じて身体を揺すっていたのです。『ダナエ』には確かにそうしたくなる強烈な魅力がありました。

 わたしがエルミタージュでこれを見たのは、修復後のことです。同行の友人が、硫酸をかけられる前のものは、もっともっと色彩が素晴らしかった、と言うので、胸が痛くなったのを思い出します。

 そんな思い出があったため、「オール読物」での神話の連載の第一回にはこの「ダナエ」を選んだのでした(書籍化のときもトップバッターはこれです♪)。

 さてさて、今年もたくさんの絵画が来日しそうです。
 ヴェネチア展、ワシントン・ナショナルギャラりー展、ゴヤ展etc. どれも見応えたっぷりのはずですので、今から楽しみ!
 


☆最新刊「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社) 2刷になりました♪
 レンザブローで本書についてインタビューが載っています。お読みくださいね!⇒ http://renzaburo.jp/

残酷な王と悲しみの王妃

 
☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 7刷になりました♪

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」3刷中。

名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書 463) 


☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書)14刷中。

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

☆「怖い絵」16刷中。

怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。

怖い絵2

☆「怖い絵3」 6刷中。

怖い絵3


☆「危険な世界史」(角川書店) 5刷中。
危険な世界史

☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
 
 恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫)
おとなのための「オペラ」入門 (講談社プラスアルファ文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする