中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

ムンク展(世界史レッスン第65回)

2007年05月29日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第65回目の今日は、「ムンクが叫んだ赤い空」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/05/1883_ee54.html
 ムンクの『叫び』は、火山噴火の影響による異様な赤い空を現実に見て描いたものではないか、とする新説について書きました。

 5年前、スウェーデンのイエテボリに行ったとき、たまたまムンク展にいあわせてラッキーだった。『病める少女』『吸血鬼』『マドンナ』『思春期』といった名作を一挙に見られて感動した。ムンクはずうっとピカソの青の時代にいたようなものなのだな、とつくづく思った。

 彼は5歳で母親を結核で亡くし、次いで14歳のとき同じ病気で姉を失う。以来、父親は狂気に近い信仰心の虜となり、妹は精神病院に入れられた。

 「病と狂気と死が、わたしの揺りかごの上を漂い、生涯にわたってわたしにつきまとう黒い天使となった」

 この彼の言葉は、誇張でも何でもない。本人も子ども時代は虚弱で、長じては不安神経症や被害妄想に苛まれ、過度の飲酒、いくつもの女性問題も抱えた(影のある美青年だったのでやたらもてたのは事実)。一度など愛人との別れ話のもつれからピストルで撃たれ、左手の指の一部を吹き飛ばされている。

 このように常に不安に捉えられていたため、45歳の時とうとうで自ら進んで精神病院へ入院する。この決断が奏功して心身の健康を取りもどすのだが、皮肉なことに、それ以降、81歳の高齢で亡くなるまで、もはや見るべき作品を残すことができなくなってしまう。病める魂が鎮まるとともに、ムンクの中の天才も消えてしまったのだ。

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☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
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中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

☆『マリー・アントワネット』新訳です(角川文庫)
☆☆『叫び』のあの顔を、マリーに入れ替えてパロディにしたら面白いかも・・・?!

マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)

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ハプスブルク家の底意地悪さ(世界史レッスン第64回)

2007年05月22日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」に連載中の「世界史レッスン」第64回目の今日は、「山内一豊の妻ーー西洋男性版」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/05/post_ced0.html#more
 マリア・テレジアの夫フランツ・シュテファンの、意外な能力の一端について書きました。

 フランツ・シュテファンは家柄が格下だったので、入り婿になってずいぶんたってからも「フランス野郎」(領地がロレーヌだったため)と陰口を叩かれたり、公式行事でも無視されたりと、針のむしろ状態にされている。何しろ家柄自慢のハプスブルク家の面々は底意地が悪いのだ。

 だが彼よりもっと辛い目にあわされた女性がいる。ほぼ150年後の、ハプスブル家末期、フランツ・ヨーゼフ皇帝時代だ。皇帝は甥のフランツ・フェルディナンド大公を帝位継承者に指名していた。そしてフェルディナンドが熱烈に恋した女性の身分が・・・女官だった。

 ハプスブルク家には家訓があり、帝位継承者の妻たる女性は、外国人ならカトリック国の王女か、自国なら最高位貴族出身でなければならない。ところがこの女官、ゾフィは、ボヘミアの伯爵令嬢にすぎなかった。論外というわけだ。

 たいへんな苦労の末、ふたりは結婚するのだが、ゾフィに加えられた意地悪の数々は陰険だった。彼女が園遊会を開けば、ハプスブルクの誰かが同日同時間に必ず同じパーティをぶつけてきて、出席者を根こそぎ持ってゆく。彼女が静養地へ行けば、城には誰かが居座っていて追い返す。

 一度などベルヴェデーレ宮殿で夫妻が外交使節を謁見したあと、フェルディナンド大公が席を立った瞬間、近衛兵たちもその場を去り、ゾフィを守護する必要はないのだということをあからさまにした。さすがに大公も怒り、皇帝に食ってかかったと言われている。

 身分によって相手を差別する心とは、浅ましいものだと思うが、どんな時代のどんな国、どんな場においても必ずあるのは、人間性に染みついたものだからだろうか・・・

☆新訳「マリー・アントワネット」(角川文庫)
☆☆ツヴァイクはフランツ・シュテファンを全く評価していなかったらしく、本書では、単なる遊び人で享楽的なところがアントワネットに遺伝した、というような書きぶりである。

マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)
     
☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
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中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」









 






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ゴヤの『サラゴーサ精神病院』(世界史レッスン第63回)

2007年05月15日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第63回目の今日は、「観光名所だった精神病院」⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/05/post_7b89.html#more
 17,18世紀ヨーロッパでは、精神病院が一種の観光施設として見物料を取って公開していたエピソードを書きました。

 ゴヤにも『サラゴーサ精神病院』という作品があるが、ホガースのイギリス的な皮肉な目とは違い、いかにも彼らしい一種異様な凄まじいエネルギーの放出される場として描いているのが面白い。

 ところで5年ほど前、新聞に『まなざしの瞬間(とき)』という美術エッセーを20回連載しましたが、そのときゴヤの自画像についても書きました。以下はその再録ーー

 ゴヤ『おれはまだ学ぶぞ』(1824年、黒コンテ、プラド美術館蔵)

 フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)最晩年のデッサンで、一種の自画像と考えられている。右上に「おれはまだ学ぶぞ」。このタイトルの意外性が驚きと感銘を呼ぶ。

 ただし現実のゴヤがこういう姿(背を丸め、2本の杖をついてようやく立っている白髪白ヒゲの老人)だったわけではない。生身の彼がこれよりはるかに若々しく精悍だったことは、同時期の肖像画が証拠立てている。同僚の宮廷画家ロペースに描かれた80歳のゴヤは、ヒゲを生やしてもいないし、背をまるめてもいない。杖ならぬ絵筆とパレットを持ち、押し出しのよい頑健そうな肉体と、老いを拒否した倣岸そのものの面構えで、こちらを睨みつけている。

 このころ彼は、我が子より年下の愛人を連れ、フランスに亡命中だった。相変わらず好奇心の塊で、見るもの全てを咀嚼せずにはおかないとばかり、多くの石版画、静物画、肖像、細密画、そして2冊のデッサン帳を残している。眼鏡をかけた上に拡大鏡を使っての制作だった。

 3度の大病を耐え抜いてきたゴヤは、自分が死ぬとは思えなくなっていたらしく、「ティツィアーノみたいに99歳まで生きるかもしれない」と息子宛てに書いている。本デッサンは、したがって遠い未来の自分の姿を描いたのだろう。彼なら間違いなく、どれほど高齢になろうとも眼の光だけは失わず、「まだ学ぶ」に違いない。

 ゴヤがゲーテと同時代人なのは不思議な気がする。優雅で恵まれた宮廷生活を送った文豪ゲーテには、ゴヤより後世の人間というイメージがある。実際には3歳年下なだけなのに。

 つまりそれだけゴヤの生きたスペインが荒々しかったし、ゴヤ自身もまた死ぬまで洗練とは程遠かったということだろう。

 彼は片時も女性なしではいられず、妻に20人も子を産ませたばかりか何度も激しい恋をした。貧しい出自にもかかわらず宮廷画家に成り上がり、王が何人代わろうと巧みに世渡りして地位と財産を守った。

 その一方で、描きたい絵(反戦画や異端審問告発画、裸体画)なら、命の危険を冒しても描いた。決して妥協しなかった。火の球のごときエネルギッシュなゴヤは、枯れた老人になる前に、雄牛がどうと倒れて死ぬように死んだのだ。

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

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中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

☆新訳『マリー・アントワネット』(画像をクリックするとアマゾンへとびます)
☆☆アントワネットとも同時代のゴヤが、彼女の肖像画を描いていたらどうなっていただろう?ただきれいきれいのルブランのような絵ではなく、アントワネットの本質に迫る作品が残されたに違いない。見てみたかった!

マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)

◆マリー・アントワネット(上)(下)
 シュテファン・ツヴァイク
 中野京子=訳
 定価 上下各590円(税込620円)
 角川文庫より1月17日発売
 ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8




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ペローのシンデレラ(世界史レッスン第62回)

2007年05月08日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第62回目の今日は、「ルイ14世に仕えたペロー兄弟」⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/05/post_80ed.html#more
 兄弟ともに官僚として大いに出世したことについて書きました。
 
 とはいえ300年が経ってみれば、残ったのはペローの童話だけ。
 そしてペロー童話といえば、サンドリヨン(=アッシェンプッテル=シンデレラ)だろう。以前書いたものですが、またここに再録するとーー

 --驚くなかれ、シンデレラの類話は、世界中に500以上ある。
 もっとも古いのは9世紀の中国といわれ、もし彼の地がこの民話の発生源であるならば、シンデレラは纏足だったことになる。なぜなら彼女の足は誰よりも小さく、彼女の靴をはくことは誰にもできなかったからだ。そして纏足のシンデラレラは、もともとは働く必要のない階級、姉たちより上の階級に属していたことを意味する。

 それはさておき、夥しい類話に共通するのは2つ。まず、主人公の身分がもとは高く、次いで低く、さいごはもっとも高く、と烈しく変化すること。もう1つは彼女の持ちもの(ほとんどが履物)によって本人と確認されること。

 このふたつに、それぞれ土地柄や文化や時代の影響が加わり、少しずつ違うヴァージョンのお話になっている。中でもっともよく知られているのがペローとグリムによるもの。

 シャルル・ペローは、ルイ14世に仕えた宮廷人。詩才があったため、乳母から寝物語に聞かされた民話を巧みに換骨奪胎し、独自の作品へ仕上げた(「ペロー童話集」)。シンデレラの姉たちが舞踏会へ着てゆくドレスは、17世紀フランス宮廷の最新ファッションであるなど、当時の<現代性>がうかがえる。

 一方、グリムは学者として民話を採集したので、勝手な改変は極力避けた(ただし7改訂もしているので、次第に手を入れるようにはなった)。

 そこで2つのシンデレラには、いくつか目立った違いが生じることになる。どちらが良い悪いの問題ではないが、ペローのには物語自体がもつ華やかさがあり、グリムのには民話本来の残酷さと精神性がある。

 たとえば、最後に地悪な姉たちは、ペローではやさしく許されているのに、グリムでは小鳥につつかれて眼をつぶされてしまう。落とした靴もペローのはガラス、グリムのは金だ。王子の行動力にも差があり、ペローでは家来まかせ、グリムでは自らがさがしにゆく。

 もっとも大きな違いは、シンデレラがどうやって舞踏会へ行けたか、の描写にある。グリムのは小鳥がドレスをくれるという地味な展開なのだが、ペローのは魔法使いが派手に登場し、畑のカボチャを4輪馬車に、ネズミを馬に、トカゲを従者に変えてくれる。しかも夜中の12時までに帰らなければ魔法がとける、というハリウッド映画ばりのサスペンスが加わり、読者をはらはらさせてくれる。

 
☆拙訳「マリー・アントワネット」(角川文庫)。画像をクリックするとアマゾンへいけます。
☆☆アントワネットはコンシェルジュリで初めて読書の面白さに目覚めるが、もっぱらノンフィクションの冒険ものばかり読んでいたようなので、ペロー童話には関心がなかっただろう。

マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
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中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」



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レオナルド・ダ・ヴィンチとフランソワ1世(世界史レッスン第61回)

2007年05月01日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」に連載中の「世界史レッスン」第61回目の今日は、「クイズーーこの芸術家と関わった王は?」を書きました⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/05/post_1c1a.html#more
 ちょうど今レオナルドの「受胎告知」が日本公開中なので、フランソワ1世を正解した人は多かったのでは。

 フィレンツェ生まれのレオナルドが故国を捨て、フランスへやって来たのは65歳のとき。実年齢より老けて見えたらしく、迎えた貴族のひとりが、「現代でもっとも優れた画家レオナルド・ダ・ヴィンチは灰色の髭をはやし、70歳を超えている」などと書き残している。

 この時すでに脳卒中の発作で右手が麻痺していたらしい。とはいえ彼は左利きだったので、仕事にはさしつかえなかったようだ。

 そして早くも2年後には世を去った。言い伝えでは、偉大なる画家の死の床にはフランソワ1世が立会ったとか、王の腕の中で息を引き取ったとまで言われるが、あまり信じられない。何しろ墓さえどこにあるかわからない状況なのだ。

 閑話休題。
 ドリュー・バリモアが最高にキュートな映画『エバーアフター』は、シンデレラのルネサンス版。この中で、シンデレラがたまたま風変わりな老人と出会うシーンがある。老人が大事に持っていた絵が、なんと、『モナリザ』!つまりフランソワ1世のもとへ行く途中のレオナルドだったという次第。

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

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①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

☆☆ツヴァイク『マリー・アントワネット』。そういえば、アントワネットは見ようと思えば『モナリザ』を見ることはできたはずなのだけれど・・・きっと興味がなかったのね。(画像をクリックするとアマゾンへいけます)
☆☆☆友人の音楽評論家、加藤浩子さんがご自身のブログで紹介してくださいました。是非お読みください!⇒ http://plaza.rakuten.co.jp/casahiroko/diary/200704300000

マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)

◆マリー・アントワネット(上)(下)
 シュテファン・ツヴァイク
 中野京子=訳
 定価 上下各590円(税込620円)
 角川文庫より1月17日発売
 ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8

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