中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

本物のカストラートの歌声(世界史レッスン第117回)

2008年06月24日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の世界史レッスン第117回目の今日は、「鬱病の音楽療法」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/06/post_6e73.html
 カストラートの代名詞のようなファリネッリが、その美声でフェリペ5世の鬱治療をしていたエピソードについて書きました。

 ファリネッリが日本でも知られるようになったのは、1994年フランス・イタリア・ベルギー合作映画「カストラート」からだろう。

 この映画は、監督(ジェラール・コルビオ)の好みが(いつもながら)何とも怪しすぎて「いかがなものか」と言いたい箇所が多々あるにもかかわらず、やはり面白い! バロックのキンキラキンは日本の歌舞伎に通じますね!

 画面中のファリネッリの声は、ソプラノとテノールを合成した人工音だそうだ。肉声でこうだったら、確かに観客は熱狂するでしょうね。

 ところで本物のカストラートの声がCDで聴けるのをご存知ですか?

 実は「最後のカストラート」と呼ばれたアレッサンドロ・モレスキが、晩年、レコードに歌声を吹き込み、それがCD化されているのだ。

 『カストラートの時代』(EMI Classics)という輸入版で、コワルスキー、ヴィス、ヤーコプスといった現代のカウンターテナーたちの最後に、その録音が入っている。歌はロッシーニの「小荘厳ミサ曲~クルチフィクスス)。

 なんというか、「地獄の底から響いてくる、か細い震え声」といった感じかな。以前、音大の学生にカストラートの説明をしてからこれを聞かせると、「こわ~い!!」と教室中大騒ぎ。

 モレスキはオペラ歌手ではなく、教会の専属歌手だったし、とっくに最盛期を過ぎてあまり声もでなくなってからの録音なので、確かにこれではあまり参考にはならないかも。

☆「怖い絵2」、出版2ヶ月でもう4刷で嬉しいです。読者のみなさまに感謝♪

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不倫相手との再会(世界史レッスン第116回)

2008年06月17日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第116回の今日は「王妃との不倫は命がけ」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/06/post_36f7.html#more
 ピョートル大帝の二度目の妻で、後にロシア初の女帝となったエカテリーナ1世の不倫について書きました。それにしても彼女はめちゃくちゃ運がいいと言えるのでは?

 さて不倫といえば、最近読んだルース・レンデルの短編「苦い黄昏」が、まさにほろ苦かった。というよりイギリス人作家の意地悪な視点が面白い、というべきか。こんなお話ーー

 死病にとりつかれ寝たきりの中年男が、死ぬ前にどうしてもかつての不倫相手に再会したいと思う。もう20年近く会っていないから変わっているだろうが、それでもかまわない、一目だけでいいから会いたいと思う。

 それを知った妻は、もし彼女がこの家に入ってきたら絶対殺してやる、と怒り狂う。それでも男は友人に頼んで、かつての恋人に連絡を取り、来てもらうのだ。

 ーーそれでどうなったと思います?

 彼女が来る日時を知っている彼は、チャイムの音が鳴るとどきどきして待った。妻が出迎えたようだ(ふたりはそれが初対面である)。なかなか病室に来てくれない。口ではああ言っていても、まさか妻がおかしなことをするはずはない。それにしても長い・・・

 ようやく入ってきた。妻もいっしょだ。彼女はなんと・・・妻と双子みたいにそっくりだった。そしてふたりの女は、それこそ姉妹のように意気投合し、彼そっちのけでおしゃべりをし始める。

 それ以来、彼女は毎日やってくる。彼に会うためではない。新しい親友と楽しい時を過ごすためだ。或る時なぞ、病室に寄るのさえ忘れていた。いや、それどころか終いに彼は、ふたりの女から遺棄されたも同然となり、ホスピスに放り込まれてしまう・・・

 ロマンティストの男、現実主義で逞しい女たちの対比が鮮やかだ。ちょっぴり哀しい。

 さて、ここからはお知らせ。前に書きましたが、いよいよ「世界史レッスン」が書籍化されます。タイトルはーー

 『危険な世界史』

 角川書店から7月の発売です。ぜひお読みくださいね!


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へんないきもの

2008年06月10日 | 
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第115回目の今日は、「フォンタンジュは長く、人生は短い」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/06/1680_f461.html#more
 フォンタンジュという巨大なヘアスタイルが、ルイ太陽王の愛妾フォンタンジュ公爵夫人の名を冠したものだった、というエピソードについて書きました。

 話は180度変わり、先週、暖かい日でしたが、授業中に空いた窓から雀が教室に飛び込んできてびっくりしました。天井や電燈や壁にガンガンぶつかり、ばさっと床に落ちて動かなくなったのです。

 でもまだ生きていたので、学生(全員理工学部の男子学生)に「外へ放してあげて」と言ったのですが、誰も怖がって?近づきません。「男のくせに!」と、とんだセクハラ発言をするわたし。するとひとりが意を決して手をのばすと、今度は雀が怖がったのか、またぱあっと飛んで窓から逃げてゆきました。めでたし、めでたし。

 春のこの椿事で思い出し、その晩はまた就寝前に「へんないきもの」(早川いくを、バジリコ社)を読みました。この本、サイコーに面白くて、もう3回くらい読んでいます。いろんな変な動物やら魚やら昆虫やらの、変な姿、変な生態を、笑える文章、笑えるイラストで紹介しています。

 中にこんな怖い寄生虫が・・・
 「レウコクロリディウム」という舌を噛みそうな名前ですが、この寄生虫はカタツムリの腸内で増殖、やがて頭部に移動してきて、眼球をまるで芋虫みたいに肥大化させてしまいます。しかもどうやるのか知りませんが、カタツムリの動きまでコントロールしてしまう!

 で、哀れなカタツムリは、わざわざ葉の表の目立つところまで自分でのこのこ歩んでゆき、あげくにその肥大化した芋虫状の目玉をぐるぐる動かして鳥の注意をひきます。とうぜん鳥はそれを見てぱくっと食べるわけですね。レウコクロリディウムは、無事、その鳥の胃におさまるわけです。

 つまりこの寄生虫のほんとうの目的は鳥に寄生することにあった、それが難しいので、まずカタツムリに侵入し、鳥に喰わせた、というわけ。

 きゃあ、こんなホラーはないですね。カタツムリにしてみれば、何より恐れる天敵の鳥。それをわざわざ自分から呼んで食べられるんですもん。食べられる時、どう感じているのかなあ・・・

 寄生虫とか昆虫というのは、いろんなSFの源流ですわね。


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「ビーバップハイヒール」出演記

2008年06月03日 | 雑記
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の世界史レッスン第114回目の今日は「皇妃の死因はDV(ドメスティック・バイオレンス)か?」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/06/dv_76d1.html
 ハプスブル家皇女レオポルディーネは、ブラジル初代皇帝ペドロ1世の妃となりましたが、彼のDVによって命を落としたのではないかと言われています。そのエピソードについて。

 ところで先日テレビに出るため神戸へ行ったことはちらっと書きましたが、無事先週放映が終わり、ホッとしています。大阪朝日放送(ABC)なので、放映は近畿圏と九州のみ。自分では見られなかったのですけど、週末ビデオをいただき、ようやく見ることができました。

 いやあ、とっても面白かったです!!自分が出たから言うのではなく、ほんとうにすごく巧く作っていました。深夜番組なのに視聴率が13,2%もあったというのですから、見てくださる方も満足してくださったのでは。

 番組名は『ビーバップ!ハイヒール』。司会はハイヒール(りんごさんとももこさん)で、かしこチーム(筒井康隆氏&江川達也氏)と凡人チーム(たむらけんじ氏&ブラックマヨネーズ&磯山さやか嬢)に分かれ、毎回ゲストブレーン(今回はわたし)が出て専門分野について話をし、それをチームの皆さんがいろいろ感想を述べるというスタイルです。

 今回のテーマは、「名作絵画に秘められた<恐怖の物語>」--そうです。まさに『怖い絵』の世界を、という依頼でした。最初このお話があったとき、さすがに尻込みしましたね。だって大阪の方々は道産子のわたしから見ればラテン人ですもん。NHKしか出たことがなかったし、どんなことになるのか、全く想像を絶しました。

 でもまあ、どうにかなるもので、スタジオでは笑いっぱなし。まず絵を見て「これはどんな絵だと思いますか?」というのに対し、ブラックマヨネーズさんの答えが、ほんと、すご~く笑えます(カットされていましたが、江川氏の発想もユニークでしたねえ)。

 とはいえ、お笑いがメインではなく、多くの名画がきちんと紹介されました。ディレクターに美術の大好きな方がいらっしゃるとかで、芸術への敬意がはっきり感じられる作りになっていました。また作品のアップあり、ミニ・ドラマあり、アニメありと、飽きさせない工夫も随所にありました。

 それに筒井氏はご存知のとおり美学出身。たいへんな博識ですから、要所要所で的確な解説を入れてくださり、初心者ばかりでなく絵に詳しい方にも興味を持ってもらえたのではないかと思います。全国放送でないのが残念!


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