中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

天使ガブリエルの大活躍

2008年05月27日 | 雑記
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第113回目の今日は、「ひとりでは死にたくない」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/05/post_8c42.html
 ドイツの戯曲家クライストの心中事件について書きました。もうずいぶん昔になりますが、ベルリン郊外ヴァン湖のほとりにある彼の墓を訪れたことがあります。道がわかりにくく、地元の人もあまり知らないようで、やっとたどりついたそこは何だかものすごく荒れ果てていたのが印象的でした。

 それとは別の話。
 日曜のテレビでキアヌ・リーブスの「コンスタンティン」を見ました。さほど出来の良い映画じゃないのですが、キアヌ・ファンなので公開時にも見たし、これで二度目。

 ここに天使ガブリエルが出てくるのです。「オルランドー」でも両性具有的な魅力をふりまいたティルダ・スウィントンが大きな翼をつけて演じており、なかなか良かったんですが、この映画ではなぜか悪役。神の処罰者なのに、最後は悪魔によって人間の身分へ落とされてしまうという・・・どうも釈然としない話でした。

 ガブリエルといえばーー『怖い絵』のティントレット「受胎告知」に書きましたがーー、何といってもマリアにイエス誕生を告げる「お仕事」が有名でしょう。しかしこの天使は他にもものすごく活躍しているのです。

 モーゼを埋葬。
 洗礼者ヨハネの誕生告知。
 最後の審判の際、トランペットを吹く。
 天の財産を守る。
 火と雷を支配。

 しかも、ですよ。

 メッカ郊外ヒラー山の洞窟で、40歳のマホメッド(=ムハンマド)が瞑想しているところへもあらわれて、神の啓示を与えたのだそうです!


☆☆「怖い絵2」。「ヴォーグ」と「Job aidem」に書評が載りました。後者の評は以下⇒
「大好評を得た前作「怖い絵」に続く第二弾である。書名どおり「怖い絵」を解説するという分かりやすいコンセプトは変わらない。
 本作でも、見るからに恐ろしい絵から、その背景や物語を知ることでゾッとさせられる絵など、著者の巧緻な文章と自在な表現で、読者はグイグイとその「怖さ」に引きこまれていく。
 ピカソの「泣く女」やベラスケスの「ラス・メニーナス」といった王道をゆく名作から、エッシャーやブレイク、ビアズリーといった、この本のコンセプトにぴったりな「クセモノ作家」の作品まで、紹介される絵画は多岐に渡る。
 厳選されたであろう20作品もあっという間に読み終えてしまうので要注意。「3」が待ち遠しいと思うのは筆者だけではないはずだ」。
    ・・・嬉しい紹介ですね~♪
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☆『怖い絵』、韓国語に翻訳、出版されることになりました♪
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☆マリーもお忘れなく!(ツヴァイク「マリー・アントワネット」(角川文庫、中野京子訳)

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ジェーン・オースティンの読書

2008年05月22日 | 雑記
 大阪のテレビに出るため、神戸に一泊してきました。
 行きの新幹線から見た富士山が(嵐の直後だったせいか)、とってもきれいで、「ああ、やっぱり日本一の山だなあ」と感動。

 さて神戸ですが、ポートピアホテルでバルコニーがついていたので、椅子をだして港の夜景を見ながらワインでも飲もうと、ひとりなのに勝手にロマンティック気分になって出てみると・・・

 これまた嵐の影響でしょうか、異様に赤く大きな満月がぽっかり眼の前に(12階なのでまさに眼の前に)浮かんでいるではありませんか!!うわあ、怖い・・・月ってこんなに怖いんだ・・・

 慌ててカーテンを閉め、部屋の中でずっと読書。
 今ちょうど「ジェーン・オースティンの読書会」という映画がきているので(まだ未見)、わたしもこの機会に「説得」を再読しようと持参していたのです。

 「説得」はオースティン晩年の作で、確かにいろいろ欠点はあるのですが、それを補ってあまりある面白さです。ヒロインは28歳の地味でぱっとしない次女。若いころ、周囲から「説得」されて身分の低い恋人と別れた経緯がありました。その彼が、軍人として出世し、男盛りの魅力にあふれ、再び眼の前にあらわれます。そして彼が自分のことを「以前の面影がまるでなく、別人かと思った」と言ったというのを妹から聞かされるのです。

 8年ものブランクを、いったいどうやって埋められるのか?この絶望的な状況が少しずつ少しずつ変わってゆく過程が面白く、そしてまたヒロインの隠された美質がやはり少しずつ少しずつあらわれてゆくものですから、読者は応援せずにはいられません。

 読み終えて幸せな気分になるのは、他のオースティン作品と同じです。そういえばこの小説は、「イルマーレ」という映画の中の主人公も読んでいましたっけ。


☆☆「怖い絵2」。今週の「週刊ポスト」「北海道新聞」で紹介されました♪
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王妃はつらいよ(「世界史レッスン」第111回)

2008年05月13日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」、第111回目の今日は、「王妃は娼婦に憧れた?」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/05/post_e71f.html#more
 ルイ15世妃マリ・レチンスカの退屈な日々について書きました。

 夫に全く顧みられないということでいえば、先代ルイ14世妃マリー・テレーズも全く同じで、彼女はココアに情熱を注いでいたのだった。それについては「ココアだけでは癒されず」もお読みください。⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/01/post_e813.html

 では夫に大事にされればいいのかというと、次の代ルイ16世妃マリー・アントワネットを見れば、そうとは限らないのがわかる。16世がさっぱり魅力的でなかった、ということとは別に、何か事が起こったとき、憤懣が王や王妃へ直接ゆかず、寵姫へと向かう構造(政治的にも心理的にも)になっているからだ。

 フランス王の「寵姫」というのは、愛妾たちの中から選ばれたたったひとりの女性で、特別行事をのぞいては、宮廷内の華やかな部分を一手に引き受けた「陰の」というよりむしろ「表の」もうひとりの王妃であった。15世の寵姫ポンパドゥール夫人に至っては、王の代わりに政務までこなしていた(おかげで過労死してしまった)。

 ということは逆に言えば、政治の失策や国庫の赤字は、全てこれ「寵姫が政策に口を出したからだ」「寵姫が贅沢三昧しているからだ」ということになり、憎悪も一手に引き受けるということだ。おかげで14世の妃も15世の妃も、誰からも何の批難も受けなかった。

 一方、16世は生涯寵姫を持たなかった。アントワネット一筋だったわけで(もともと女性にさほど興味がなかったのではないだろうか)、そうなると彼女は寵姫が受けるはずの批難や憎悪までも浴びることになる。

 というわけで、いずれにしても王妃はつらいんである。

☆☆NHKのBSテレビで放送している「週刊ブックレビュー」はご存知でしょうか?(わたしも以前何度か出演したことがあります)
今週末5月17日(土)の朝8時半から、及び再放送で5月18日(日)夜23時45分からの放送で、井上章一氏が「怖い絵2」の紹介をしてくださるそうです(楽しみ♪)⇒ http://www.nhk.or.jp/book/prog/index.html。ぜひごらんください。

☆☆「怖い絵2」。4日(日)の日経新聞で紹介されました♪
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後宮からの「誘拐」or「逃走」?(世界史レッスン第110回)

2008年05月06日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第110回目の今日は「「チンギス・ハーン=義経」説&「マフムート2世の母=ジョゼフィーヌの従姉」説」⇒  http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2008/05/post_4368.html#more
 トルコ第30代スルタンの母は、海賊に誘拐されてハーレムに連れ去られたジョゼフィーヌの従姉エイメではないか、という説について書きました。

 まずその前に「チンギス・ハーン=義経」説。これを知っているモンゴル人はどのくらいいるのでしょう?知れば怒るかな、それとも笑うかな?でも公開中の映画「モンゴル」でチンギス・ハーン役をやっているのは、日本人俳優だけど。

 この説をうまく使った高木彬光のミステリ「成吉思汗(ジンギスカン)の秘密」はけっこう面白かった(リチャード3世は実は悪人ではなかった、というイギリスの歴史ミステリ「時の娘」より出来がいいと思う)

 ついでながら今の学生は、チンギス・ハーンという表記でしか習わないので、成吉思汗やジンギスカンとイコールとは夢思っておらず、ジンギスカンとは羊肉料理でしかない。いかがなものか。

 さて、トルコのハーレムといえば、モーツァルトのオペラだが、これもタイトルが未だ統一されていなくて、あるときは「後宮からの誘拐」、あるときは「後宮からの逃走」。
 
 原題には「Entfuehrung」という単語が使われており、まあ、「駆け落ち」と訳すと近いかな。

 ストーリーは、海賊にさらわれハーレムに閉じ込められた恋人を救う、というもの。ということは、誘拐された女性を助けて「誘拐」とは変ですよね!だから「逃走」でなくっちゃ!

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