朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第52回目の今日は、「チャイコフスキーの身に起こったシンクロニシティ」⇒http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/02/post_285b.html#more
チャイコフスキーが『エウゲニ・オネーギン』作曲中に遭遇した、不思議なシンクロニシティについて書きました。
タイミングよく昨日、ル・テアトル銀座で『オネーギン』を見てきたばかり。
これはニューヨーク・メトロポリタン歌劇場が世界中に発信する、ライブ上演の映像である。ただしライブとはいっても同時上映ではなく、2,3日前の公演。
ナマではないので音響に難があるのは承知で、でもいま現在のメット作品を見られるということで客席は満杯だった。
そして・・・素晴らしかった!!
もともとオネーギンはわたしの偏愛オペラ(何度見たことか)。いろいろ欠点が多いのはわかるが、それでもどうしようもなく好きな作品だから点は甘くなるにしても、このプロダクションで改めてチャイコフスキー&プーシキンの魅力を再確認させられた。ラストなど、こんなに凄かったっけ?と思うほどの迫力なのだ。
つまり歌い手の力が圧倒的!
オネーギン役は、今やこの人しかいないでしょうというホロストフスキー。登場した瞬間に目が釘づけになる(声も深々としている)。彼の舞台は以前ナマで見ているが、そのときはこれほどまでとは感じなかった。それは相手役があまりよろしくなかったから。今回はロシアオペラ初挑戦のフレミングが、まさにタチアーナになりきっていて、実力ある者同士がぶつかるとこれほど火花が散るのか、という好例となった。
ラストの別れの場では、ふたりの演技力も光る。人妻となったタチアーナは、オネーギンの求愛を口ではきつくしりぞけながら思わず抱きつき、あれほど傲慢だったオネーギンが愛を乞うてすがりつく・・・
「過去は決してとりもどせません」と叫んで走り去るタチアーナを、もはや追いかける力も残っていないホロストフスキー(じゃなかった、オネーギン)が可哀そう・・・
直後のカーテンコールで、ホロストフスキーが魂の抜けたような顔をしているのが印象的だった。
このオペラ最大の欠点は、タイトルロールでありながらオネーギンに聴かせどころのアリアがないこと。そのため凡庸な上演になると、オネーギンはまるで脇役みたいに見えてしまう。今回はそれを補うため、各幕の最初に必ずオネーギンが登場して、彼の心象風景を描いた。これが成功。
特に2幕最後の決闘の場。通常は、友人のレンスキーを心ならずも撃ち殺したあと幕が下りるが、今回はそのまま3幕へ引き継いだのがうまい演出だった。茫然とするオネーギンのまわりを侍従たちが取り囲み、ゆっくり服を着替えさせることで、数年という月日がたったこと、ペテルブルクの大夜会の場へ転換したことを観客に納得させるのである。
もちろんゲルギエフ指揮の演奏も言うことなし。雄大にして繊細。ロシアだなあ、と。
あ~あ、ナマで見たかった!でもきっとDVDになるから我慢しよう。
☆ 革命時を描いたオペラといえば『アンドレア・シェニエ』。最後は恋人たちがギロチンの露と消えるのです。アントワネットもオペラになってもよさそうなものだけど・・・
(画像をクリックするとアマゾンへゆけます)
☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪
①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」
チャイコフスキーが『エウゲニ・オネーギン』作曲中に遭遇した、不思議なシンクロニシティについて書きました。
タイミングよく昨日、ル・テアトル銀座で『オネーギン』を見てきたばかり。
これはニューヨーク・メトロポリタン歌劇場が世界中に発信する、ライブ上演の映像である。ただしライブとはいっても同時上映ではなく、2,3日前の公演。
ナマではないので音響に難があるのは承知で、でもいま現在のメット作品を見られるということで客席は満杯だった。
そして・・・素晴らしかった!!
もともとオネーギンはわたしの偏愛オペラ(何度見たことか)。いろいろ欠点が多いのはわかるが、それでもどうしようもなく好きな作品だから点は甘くなるにしても、このプロダクションで改めてチャイコフスキー&プーシキンの魅力を再確認させられた。ラストなど、こんなに凄かったっけ?と思うほどの迫力なのだ。
つまり歌い手の力が圧倒的!
オネーギン役は、今やこの人しかいないでしょうというホロストフスキー。登場した瞬間に目が釘づけになる(声も深々としている)。彼の舞台は以前ナマで見ているが、そのときはこれほどまでとは感じなかった。それは相手役があまりよろしくなかったから。今回はロシアオペラ初挑戦のフレミングが、まさにタチアーナになりきっていて、実力ある者同士がぶつかるとこれほど火花が散るのか、という好例となった。
ラストの別れの場では、ふたりの演技力も光る。人妻となったタチアーナは、オネーギンの求愛を口ではきつくしりぞけながら思わず抱きつき、あれほど傲慢だったオネーギンが愛を乞うてすがりつく・・・
「過去は決してとりもどせません」と叫んで走り去るタチアーナを、もはや追いかける力も残っていないホロストフスキー(じゃなかった、オネーギン)が可哀そう・・・
直後のカーテンコールで、ホロストフスキーが魂の抜けたような顔をしているのが印象的だった。
このオペラ最大の欠点は、タイトルロールでありながらオネーギンに聴かせどころのアリアがないこと。そのため凡庸な上演になると、オネーギンはまるで脇役みたいに見えてしまう。今回はそれを補うため、各幕の最初に必ずオネーギンが登場して、彼の心象風景を描いた。これが成功。
特に2幕最後の決闘の場。通常は、友人のレンスキーを心ならずも撃ち殺したあと幕が下りるが、今回はそのまま3幕へ引き継いだのがうまい演出だった。茫然とするオネーギンのまわりを侍従たちが取り囲み、ゆっくり服を着替えさせることで、数年という月日がたったこと、ペテルブルクの大夜会の場へ転換したことを観客に納得させるのである。
もちろんゲルギエフ指揮の演奏も言うことなし。雄大にして繊細。ロシアだなあ、と。
あ~あ、ナマで見たかった!でもきっとDVDになるから我慢しよう。
☆ 革命時を描いたオペラといえば『アンドレア・シェニエ』。最後は恋人たちがギロチンの露と消えるのです。アントワネットもオペラになってもよさそうなものだけど・・・
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☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪
①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」