中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

「早く東京脱出を!」

2011年03月29日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「世界史レッスン<映画篇>」第59回の今日は「女はつらいよ」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2011/03/post-970b.html#more
 デミ・ムーアが熱演した「スカーレット・レター」(=「緋文字」)について書きました。

 この映画は信仰と姦通の問題よりあまりにフェミニズム色が強かったせいか、ラジー賞を受賞してしまいました(そこまでひどくはないのになあ)

 さて、大震災の余波ですが、とどまるところを知りません。毎日、今日こそは原発に関する安心なニュースが聞けるかとテレビをつけるのですが、期待は裏切られてばかりで気が揉めます。

 そんな中、海外メディアがまるで日本沈没みたいな報道をくり返すので、向こうに住む日本人のほうがパニックのようです。日本と違い、被災者の遺体の写真をセンセーショナルに流すのですから無理もありません。

 友人の娘さんはイギリス在住ですが、連日電話をよこし、「早く東京脱出を!」と泣きながら訴えるのだそうです。死の灰が降っているかのごとき騒ぎなので嫌になるとか。また別の友人の友人は、すでに早々と田舎へ疎開(?)してしまいました。

 わたしもなぜ関西へ逃げないのかとドイツに住む友人から言われています。ドイツはそもそも地震がないし、原発廃止の方向に進んでいますから、報道も日本を原始人みたいに見做していて腹立たしいですねえ。。。


☆新刊『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(文藝春秋)

 中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇
(画像をクリックするとアマゾンへゆきます)

目次

Chapter 1 ゼウスをめぐる物語
☆官能のダナエ(レンブラント『ダナエ』/クリムト『ダナエ』)
☆「英雄」誕生(ティントレット『天の川の起源』)
☆卵から生まれた双子(セスト(ダ・ヴィンチ模写)『レダと白鳥』)
☆みんな女のせい?(クーザン『エヴァ・プリマ・パンドラ』)

Chapter 2 ヴィーナスをめぐる物語
☆ヴィーナスのあっけらかん(ティントレット『ウルカヌスに見つかったヴィーナスとマルス』)
☆男のピグマリオン幻想(ジェローム『ピグマリオンとガラテア』)
☆合体欲求(スプランゲル『ヘルマプロディトスとサルマキス』)
☆女性アスリート(レーニ『アタランテとヒッポメネス』)
☆女の第六感(ルーベンス『ヴィーナスとアドニス』
☆春がいっぱい(ボッティチェリ『春(プリマヴェーラ)』)

Chapter 3 アポロンをめぐる物語
☆恋人を死なせて(ブロック『ヒュアキントスの死』/ティエポロ『ヒュアキントスの死』)
☆「時の翁」の伴奏で(プッサン『人生の踊り』)
☆親の心、子知らず(ルーベンス『パエトンの墜落』/伝ブリューゲル『イカロス墜落のある風景』)
☆冥界からの帰り道(コロー『冥界からエウリディケを連れ出すオルフェウス』/モロー『オルフェウス』)

Chapter 4 神々をめぐる物語
☆母の執念(レイトン『ペルセポネの帰還』)
☆勝ち目のない闘い(ベラスケス『織り女たち』)
☆乙女の怒り(ブーシェ『水浴のディアナ』)
☆我に溺れて花となる(カラヴァッジョ『ナルシス』)
☆紡いで、測って、ちょんぎる(ゴヤ『運命の女神たち』)
☆電撃的!(ティツィアーノ『バッカスとアリアドネ』)


☆「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社) 2刷中。
 レンザブローで本書についてインタビューが載っています。お読みくださいね!⇒ http://renzaburo.jp/(「特設サイト」をクリックしてください)

残酷な王と悲しみの王妃

 
☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 7刷中。

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」3刷中。

名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書 463) 


☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書)14刷中。

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

☆「怖い絵」16刷中。

怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。

怖い絵2

☆「怖い絵3」 6刷中。

怖い絵3


☆「危険な世界史」(角川書店) 5刷中。
危険な世界史


「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫)
おとなのための「オペラ」入門 (講談社プラスアルファ文庫)

☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
 
 恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

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「運命の車輪の激しい回転」

2011年03月22日 | 
 この途轍もない大震災で、近親者や友人を心配して連日テレビばかり見ています。
誰もが多かれ少なかれ、そういう状態にあるのではないかと思います。

 そんななか、次第に被災者の声が直接聞こえてくるようになりましたが、皆さん一様に、自分は大丈夫だ、心配しないで、と、真っ先に相手を思いやる言葉を発するのに、胸がぎゅっとなってしまいます。

 戦国時代、フロイスと同時代人のイエズス会士ヴァリニャーノ(イタリア人)が、日本人とはどういう人間か、ということをローマへ報告しています。

「強大だった領主が自国を追放され、はなはだしい窮乏と貧困を耐え忍びながら、まるで何も失わなかったかのように平静な態度で安らかに暮らしているのをたびたび見かける」

「日本人は、心の中にある感情を抱いてもそれを外に表さず、怒りや憤りを抑えている。平然と立派な態度で運命を甘受する」

「不平不満を並べない。相手に不快の念を起こさせるようなことは言うべきでないと思っている」

「逆境にさいして大いなる勇気を示し、苦悩を胸にたたんでおく。そして人と接するときはいつも明るい表情をし、自分の苦労については一言も触れないか、あるいは何も感じないか、少しも気にしていないかのような態度をとる」

「貧困は日本人を罪悪や賤しさに駆り立てない」

「他の国民に見られるような、節度を越えた憎悪や貪欲をもたない」

「しかし運命の車輪がこの国ほど激しく回転するところを見たことはありません。いったい将来を誰が予見できるでしょうか?」

  -----
 
~お知らせ~
1) 3月31日に予定していた高島屋セミナーでの講演は、会場側が安全を考慮して、今回は中止ということになりました。予約してくださっていた方々にお詫びいたします。またの機会にぜひ!

2)「オール讀物」4月号から新連載が始まりました。「絵画で読みとく聖書」です。第一回はミケランジェロ。


☆新刊『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(文藝春秋)

 中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇
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目次

Chapter 1 ゼウスをめぐる物語
☆官能のダナエ(レンブラント『ダナエ』/クリムト『ダナエ』)
☆「英雄」誕生(ティントレット『天の川の起源』)
☆卵から生まれた双子(セスト(ダ・ヴィンチ模写)『レダと白鳥』)
☆みんな女のせい?(クーザン『エヴァ・プリマ・パンドラ』)

Chapter 2 ヴィーナスをめぐる物語
☆ヴィーナスのあっけらかん(ティントレット『ウルカヌスに見つかったヴィーナスとマルス』)
☆男のピグマリオン幻想(ジェローム『ピグマリオンとガラテア』)
☆合体欲求(スプランゲル『ヘルマプロディトスとサルマキス』)
☆女性アスリート(レーニ『アタランテとヒッポメネス』)
☆女の第六感(ルーベンス『ヴィーナスとアドニス』
☆春がいっぱい(ボッティチェリ『春(プリマヴェーラ)』)

Chapter 3 アポロンをめぐる物語
☆恋人を死なせて(ブロック『ヒュアキントスの死』/ティエポロ『ヒュアキントスの死』)
☆「時の翁」の伴奏で(プッサン『人生の踊り』)
☆親の心、子知らず(ルーベンス『パエトンの墜落』/伝ブリューゲル『イカロス墜落のある風景』)
☆冥界からの帰り道(コロー『冥界からエウリディケを連れ出すオルフェウス』/モロー『オルフェウス』)

Chapter 4 神々をめぐる物語
☆母の執念(レイトン『ペルセポネの帰還』)
☆勝ち目のない闘い(ベラスケス『織り女たち』)
☆乙女の怒り(ブーシェ『水浴のディアナ』)
☆我に溺れて花となる(カラヴァッジョ『ナルシス』)
☆紡いで、測って、ちょんぎる(ゴヤ『運命の女神たち』)
☆電撃的!(ティツィアーノ『バッカスとアリアドネ』)


☆「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社) 2刷中。
 レンザブローで本書についてインタビューが載っています。お読みくださいね!⇒ http://renzaburo.jp/(「特設サイト」をクリックしてください)

残酷な王と悲しみの王妃

 
☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 7刷中。

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」3刷中。

名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書 463) 


☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書)14刷中。

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

☆「怖い絵」16刷中。

怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。

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☆「怖い絵3」 6刷中。

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☆「危険な世界史」(角川書店) 5刷中。
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「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫)
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☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
 
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☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

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ヴィドックのパリ

2011年03月15日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ『世界史レッスン<映画篇>」58回目の今日は、「ジャン・バルジャンのモデル」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2011/03/post-6cd0.html#more 奇妙なフランス映画「ヴィドック」について書きました。

 ちょっと可笑しかったのは、美と若さを求めて処女を集めていたのが、どこからどうみても冴えない初老の男たちグループだった点。禿げていたり肥満だったり、若いころだってとうてい美男だったとは思えない彼らが。。。フランス風ユーモア?

 実在のヴィドックは、マリー・アントワネットの処刑も見たと思われるのだけれど、それについては「回想録」に何も書かれていなくて、その当時、パリでは異常なまでに決闘が増えたということが記されていて、不思議なものだなあと思った。

 失恋した男装の令嬢が決闘し、女と気づかなかった相手に殺された例もあった由。

 --中途半端ですが、これから停電するかもしれないとの連絡がありまして、今日はここまで。


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Chapter 1 ゼウスをめぐる物語
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☆みんな女のせい?(クーザン『エヴァ・プリマ・パンドラ』)

Chapter 2 ヴィーナスをめぐる物語
☆ヴィーナスのあっけらかん(ティントレット『ウルカヌスに見つかったヴィーナスとマルス』)
☆男のピグマリオン幻想(ジェローム『ピグマリオンとガラテア』)
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☆女性アスリート(レーニ『アタランテとヒッポメネス』)
☆女の第六感(ルーベンス『ヴィーナスとアドニス』
☆春がいっぱい(ボッティチェリ『春(プリマヴェーラ)』)

Chapter 3 アポロンをめぐる物語
☆恋人を死なせて(ブロック『ヒュアキントスの死』/ティエポロ『ヒュアキントスの死』)
☆「時の翁」の伴奏で(プッサン『人生の踊り』)
☆親の心、子知らず(ルーベンス『パエトンの墜落』/伝ブリューゲル『イカロス墜落のある風景』)
☆冥界からの帰り道(コロー『冥界からエウリディケを連れ出すオルフェウス』/モロー『オルフェウス』)

Chapter 4 神々をめぐる物語
☆母の執念(レイトン『ペルセポネの帰還』)
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最新刊「名画の謎 ギリシャ神話篇」が出ます♪

2011年03月08日 | 
 3月9日に、文藝春秋社から単行本の新刊が出ます♪

 月刊誌『オール讀物』に1年8ヶ月にわたって連載した「絵で読む神話」をまとめたものです。タイトルはーー

『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』

 中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇
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 絵がきれいに見えるように、紙は白いのを使いました。かなりクリアに色が出て嬉しいです。表紙はインパクト大の「ピグマリオンとガラテア」。完璧なスタイルですね!

 連載中も感じましたが、つくづく神話は物語の宝庫。ありとあらゆる個性とストーリーがつまっています。きっとあなたに似た人も登場しているはず。

 どうぞ楽しんでいただけますように!

 目次はーー

Chapter 1 ゼウスをめぐる物語
☆官能のダナエ(レンブラント『ダナエ』/クリムト『ダナエ』)
☆「英雄」誕生(ティントレット『天の川の起源』)
☆卵から生まれた双子(セスト(ダ・ヴィンチ模写)『レダと白鳥』)
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Chapter 2 ヴィーナスをめぐる物語
☆ヴィーナスのあっけらかん(ティントレット『ウルカヌスに見つかったヴィーナスとマルス』)
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Chapter 4 神々をめぐる物語
☆母の執念(レイトン『ペルセポネの帰還』)
☆勝ち目のない闘い(ベラスケス『織り女たち』)
☆乙女の怒り(ブーシェ『水浴のディアナ』)
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花をもたせる--大相撲八百長問題

2011年03月01日 | 雑記
 スポーツ音痴のわたしでも、連日報道される大相撲八百長問題には全く無関心ではいられない。たまたま「Number773」号の、奥田英朗氏エッセー「どちらとも言えません」を読み、とても面白かった。

 彼は「相撲ファンでもなんでもない」のだそうだが、今回の件は「適当なところで許してやっちゃくれないか」と書く。「日本古来の伝統芸能として、なくすにはあまりに惜しい」。

 そして話は野球へと転じ、1988年のドラゴンズ・リーグ優勝の思い出を辿る。

 最後の試合、ドラゴンズは序盤からヤクルトに大差をつけ、ほぼ優勝は確定的となった。郭源治投手は相手の秦選手からツーアウトを取り、あとアウトひとつ取ればいい、というところで早くも泣いてしまう(シーズン中に愛弟を亡くすなどセンチメンタルになっていたらしい)

 以下、奥田氏の文章を引用しよう、

「中日ファンは、ストライクはとれるのかいなとハラハラしながら観ていたのだが、最後のバッター、秦選手が実にナイスな男であった。ボール球をうまく空振りして、三振に倒れてくれたのである。かくして感動のフィナーレ。わたしの頭の中には「秦はいい奴」とインプットされている」
「結局のところ、「花をもたせる」ということがわからない人間は、スポーツ界ではやっていけないということなのである」

 スポーツ界だけではないな、とわたしは思った。
 もうだいぶ昔だが、オペラ界のスーパースターが世界を引退ツアーしていたころの話を思い出したのだ。

 日本での「アイーダ」公演のとき、タイトルロールを歌う彼女の声は見る影もなく衰えていたという。一方、伸び盛りのメゾソプラノははるかに彼女を凌駕し、二重唱では完膚なきまでに叩きのめす、という感じだったらしい。

 しかしオペラを実際に観た人の多くが、なんとなくこのメゾソプラノに反感を持ったことは評を読んで感じられた。

 かつての輝けるスターが老いを自覚して引退を決め、それでも最後にもう一度彼女の声を聴きたいという多くの観客の前に立つ。以前は軽々と出ていた高音をもはや出せないことに、一番口惜しがっているのは本人であろう。しかしファンは、彼女の今の声の向こうに、かつての彼女の声を重ねて聴いているから、それを許す。いや、それを半ば忘れる。

 そこへ「花をもたせる」ことを知らない若きメゾソプラノが、彼女より高い声を出し、彼女がもう伸ばすことのできないところからさらにさらに声を伸ばして圧倒する……

 新しいスターが登場したことはアリアを聴けばじゅうぶんわかることなのだから、二重唱の場ではせめて少しセーブすれば「いい奴」とおもわれたのになあ、と。



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