中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

「母の友」創刊50周年

2006年03月31日 | 紹介
 福音館の月刊誌「母の友」は、今年でもう五〇年! 
 3代にわたって読み続けているファンも多く、いかに愛されてきたかがわかる。

 「幼い子を育てる人、子どもにかかわる全ての人」のための雑誌というコンセプトだけれど、このうすい小さな雑誌には他にもぎっしり情報がつまり、憲法をめぐる論議や折々の社会問題なども積極的にとりあげられているので、愛読者に独身の人や子どものいない人もたくさんいるのもうなずけよう。

 実はわたしも七年前からこの雑誌の「ビデオ・DVD 評」欄で映画紹介をしている関係上、当時者側なので書きにくいし、ご本人も嫌がるのは承知で、でもどうしても知ってほしくて書くのだが、この編集長というのが驚くべきスーパーウーマンなのだ。ところが微塵も凄さをひけらかすことなく、おだやかな語り口、物静かなたたずまいの、とにかく雑誌記者のイメージとはぜんぜん違う人で、テレビに登場するような「いかにも」のばりばりキャリアウーマン・タイプは虚構であるということの好例ではないかと常々思っている。「美しく生きる」という雑誌の芯は、彼女の存在によるところ大きいのではないだろうか。

 さて5月号だが、特集の「左利きと右利き」、絵本作家、梶山俊夫氏宅訪問、そして長期連載の山田真先生(小児科医)「子育てフリースタイル」のいつもながらの面白さ、などいろいろあるが、今回とりあげるのは、青木悦さん巻頭インタビューの「幼稚園に行きたくない貴女(あなた)へ」。子どもの送り迎えを非常な負担と考えて萎縮している若いお母さんへ向けて、「幻の母親像」にとらわれないようにと、わかりやすく説得力あるエールを送っていて読み応えがあった。一読、力づけられる人が多いのではないか。「親ぐらい子どものことを分からない存在はいない」という言葉にも、眼を見開かされた。是非、読んでみてください。

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
☆☆アマゾンの読者評で、この本のグリューネヴァルトの章を読んで「泣いてしまいました」というのがありました。著者としては嬉しいことです♪

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
⑳ラ・トゥール「いかさま師」

☆ツヴァイク『マリー・アントワネット』、なかなか重版分が書店に入らずご迷惑をおかけしました。今週からは大丈夫のはずです。「ベルばら」アントワネットの帯がかわゆいですよ♪
☆☆画像をクリックすると、アマゾンへ飛べます。

マリー・アントワネット 上 (1) マリー・アントワネット 下 (3)
「マリー・アントワネット」(上)(下)
 シュテファン・ツヴァイク
 中野京子=訳
 定価 上下各590円(税込620円)
 角川文庫より1月17日発売
 ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8








           
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「チャーリーとチョコレート工場」のベッド

2006年03月29日 | 映画
 ロアルド・ダールの原作は皮肉たっぷりでなかなか面白かった。ジョニー・デップ主演のこの映画は、さて、面白いような大して面白くないような・・・面白い理由の大部分は原作の魅力によるものかな、という感じ。

 それはさておき、ベッドだけれど、とっても貧乏なチャーリーの家族は今にも倒壊しそうな家に住み、毎日キャベツのスープばかり食べていて、両親のそれぞれの親(おじいさんふたり&おばあさんふたりの計4人)は、たったひとつのベッド、たぶんシングルベッドに寝ているのだった。

 ベッドに家族で雑魚寝は、ヨーロッパ中世ではそう珍しくなかったらしい。ものの本によれば、「ジューンブライド」がなぜ良しとされたかというと、そんな寝室事情では落ち着いて?子作りができなかったので必然的に青空のもとでの愛のいとなみとなり、そのためには初夏の結婚が万事つごうよかったということらしい。

 で、また話しは飛んで、かつてのベストセラーでありヒット映画「マディソン郡の橋」のベッド。アメリカの片田舎で鬱屈していた主婦が、夫の留守に、ふらりと流れてきたカメラマンと束の間の恋をするという、あの中年不倫ストーリーだが、わたしがぎょっとしたのは、この女性がそのカメラマンを、夫婦の寝室の、他ならぬ夫婦のベッドへ引き入れたこと。

 中世ではあるまいし、広い邸にはソファもあるし、客用ベッドもあるでしょう。なのにどうして・・・

 この女性は夫がドアをばたんと音たてて閉めることに神経を苛立たせられるほど繊細である、というように描かれており、それだけになお、この無神経ぶりにあっけにとられてしまったのだが、これは寝具に対する彼我の違いなのか?少なくともわたしにとってはこの一点において、彼女も彼女の情事も、ずいぶん薄汚いものに感じられたものだった。

☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
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怖い絵
怖い絵
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中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
②ティントレット「受胎告知」
③ムンク「思春期」
④クノップフ「見捨てられた街」
⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
⑥ブリューゲル「絞首台の上のかささぎ」
⑦ルドン「キュクロプス」
⑧ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
⑨ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
⑩アルテミジア・ジェンティレスキ「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」
⑪ホルバイン「ヘンリー8世像」
⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
⑬ホガース「グラハム家の子どもたち」
⑭ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
⑮グリューネヴァルト「イーゼンハイムの祭壇画」
⑯ジョルジョーネ「老婆の肖像」
⑰レーピン「イワン雷帝とその息子」
⑱コレッジョ「ガニュメデスの誘拐」
⑲ジェリコー「メデュース号の筏」
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 中野京子=訳
 定価 上下各590円(税込620円)
 角川文庫より1月17日発売
 ISBN(上)978-4-04-208207-1 (下)978-4-04-208708-8


 







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若林千鶴さん新訳絵本「バラ咲くじゅうたんのあるところ」

2006年03月28日 | 紹介
 大阪の公立中学校で、国語と図書館を担当し、児童・生徒に読書の喜びを教えるべく精力的に取り組んでいる若林千鶴さんが、また新しい本を翻訳しました。
 
 今回は絵本「バラ咲くじゅうたんのあるところ」(ルクサナ・カーン作、ロナルド・ハイムラー絵。草炎社刊)。コルチャック賞受賞作家の、静かな感動を呼ぶ作品です。

 ーーアフガニスタン難民キャンプに住む主人公の少年は、父を戦争で失い、遊びたい盛りなのに、母と小さな妹の精神的支えとなって懸命に生きている。彼のささやかな夢は、じゅうたん織りの職人になることで、今その訓練を受けている。ひんぱんに爆撃があり、食べるものに事欠く毎日の中で、じゅうたんを織っているときだけが幸せを感じるときだった--

 少年の、色に対する感性が興味深い。
 ふつうの子どもなら好まないはずの「黒」を「敵から守ってくれる、夜の闇の色」と見なすし、「茶」は決してじゅうたんの糸には使わない、なぜなら難民キャンプはどこも「汚い茶色」であふれていて嫌だからと・・・

 一番好きな色は「赤」だと言う。美しいバラの花の色というだけではない。赤は「正義を守るために、戦争で死んでいった人たちの血の色」だからと・・・

 平和な社会を当たり前と思って育つ子どもたちは、この少年の、色彩への感性をどう思うだろう。





 







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ナポレオン余波(「世界史レッスン」第7回)

2006年03月27日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkids ぷらざ」に連載中の「世界史レッスン」。
 今週は「ナポレオンの兵隊さん」
 ナポレオン旋風はヨーロッパの弱小国をなぎ倒していった。
 北欧の小さな国デンマークもまきこまれ、オーデンセの町に暮らす貧乏な靴職人の運命は枯葉のように踏みにじられる・・・
 
http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/cat5408445/index.html

「ナポレオンとヴェルサイユ展」が4/8から6/18まで、江戸東京博物館で催される。絵画にはそれほど見るべきものはないが、工芸品や宝飾品などはおもしろいし、宮殿内の部屋が再現されるというので歴史愛好家は必見。

 「隣国どうし仲良く」は、どこもなかなか難しいようだ。
 フランスは今もドイツに対して「ヒトラーが攻めてきたおかげで、国が荒れた」と憤り、ドイツもフランスに「ナポレオンが攻めてきたおかげで、国が荒れた」と言い返す。


 マリア・ルイサを含むさまざまな女性たちの恋を描いた「恋に死す」(清流出版)についてのインタビュー記事は、こちら。

http://www.book-times.net/200312/14.htm (朝日新聞ブックタイムズ)

http://www5.hokkaido-np.co.jp/books/20040111/visit.html(北海道新聞)

「恋に死す」目次
  --歴史に残る女性たちの、10代から60代にわたるさまざまな恋のかたち。

<14歳>大納言久我雅忠の女(むすめ)二条
  ・・・恋する者たちに誰が掟を課せよう?愛それ自体が掟だというのに。

<15歳>アルテミジア・ジェンテシレスキ
  ・・・恋はギターと歌ではじまり、苦しみと涙で終わる。

<18歳>マリー・キュリー
  ・・・この世に生を受ける。それは居心地悪い環境に身をおくこと。だからこそロマンスも生まれる。

<18歳>ヴィルヘルミーネ・フォン・ツェンゲ
  ・・・女がほんとうに困るのは、今も昔も、男が作った理論に自分を合わせなければならないことだ。

<19歳>ザビーナ・シュピールライン
  ・・・愛のなかには常にいくぶんかの狂気がある。だがまた狂気のなかには常にいくぶんかの理性がある。

<20歳>アン・ブーリン
  ・・・結婚の約束をしてからでないと恋をしないというなら、それは小説を終わりから読むのと同じだ。

<25歳>松井須磨子
  ・・・恋とは、死んでもいいとすら思う生命への賛歌である。

<25歳>ホーエンベルク公爵夫人ゾフィ
  ・・・愛されているという驚きほど、神秘なものはない。それはいわば肩に触れる神の指だ。

<26歳>ポッパエア・サビナ
  ・・・美の威力たるや、はかりしれない。美を感じない者にまで影響を及ぼす。

<27歳>コージマ・ヴァーグナー
  ・・・ふたりがどんな悪いことをしたというのだ。春が愛をこめて結びつけたふたりなのに。

<30歳>マリリン・モンロー
  ・・・恋愛とは美しき誤解である。結婚とはその惨憺たる理解である。

<30歳>マリア・モンテッソーリ
  ・・・恋愛はとてつもなく短く、忘却はとてつもなく長い。

<31歳>ディアーヌ・ド・ポワチエ
  ・・・人は常にその初恋へともどってゆく。

<33歳>絵島
  ・・・男の一生に女は災い、と言っては言いすぎだろう。だが災いが女の姿をとってあらわれることは、たしかに多くある。

<34歳>マリア・ルイサ
  ・・・恋と復讐においては、女の方が男より野蛮である。

<34歳>クララ・シューマン
  ・・・妻に最初の愛人ができるのは、まちがいなく夫の責任だ。

<39歳>アガサ・クリスティ
  ・・・ほどほどに愛しなさい。長続きするのはそんな恋です。

<41歳>イザベラ・バード
  ・・・続けばいいのか。いっとき燃焼が、なぜ持続に劣るのか。

<42歳>マリー・ローランサン
  ・・・人生最大の幸福は愛されること。それも自分が自分であるがゆえに愛される、いや、むしろ、こんな自分にもかかわらず愛される、そう信じられることである。

<44歳>アネッテ・フォン・ドロステ=ヒュルスホフ
  ・・・恋愛は人生の花であります。いかに退屈であろうとも、このほかに花はない。

<45歳>エカテリーナ2世
  ・・・恋は遅くくるほど烈しい。

<66歳>マルグリット・デュラス
  ・・・純粋な愛というのは、お互いの隔たりを受け入れること。






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あまり近づかないでね!

2006年03月27日 | 雑記
 国によって人種によって、人の距離感というのはずいぶん違う。居心地よいテリトリーの範囲がまちまちだからだ。

 このことは少しでも外国人と接した人なら誰でも気づくことだろう。しかし面白いのは、語学の教員も、長くやっているうち次第に専門言語のメンタリティに近づいてゆくらしいこと。

 ドイツ人と日本人は微妙な離れぐあいが似ているので、わたしとしては助かる。ラテン系はやはりくっついてくるんですね、これが。

 知人のスペイン語教員。彼女のばあいはとりわけ南米に長くいたせいもあってか、お化粧やファッションもなかなか日本人離れしているのだが、身振り手振りは完全にラテン。そしてどんどん近づいてくるのです。

 初対面はペンクラブのパーティ。飲みものの載った小テーブルのそばで、最初は歓談していたのです。ところがしゃべっているうちわたしはどうにも居心地が悪くなり、彼女から少し離れる、すると今度は彼女が不安になるらしくて、また距離を縮めてくる。離れる、くっつく、離れる、くっつく・・・とやっているうちに、とうとうわたしは壁際に追い込まれてしまったではありませんか。

 これってもともとラテン気質だから専攻もそうなるのか、専攻言語ゆえにラテン的になってしまったのか、どちらが先かわからないという意見もありますが。





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どこまでもまっすぐな運命線の人

2006年03月26日 | 雑記
 手相がどのくらい当たるのかはわからない。

 だいたい人は顔だけでもかなりの情報を発信しているし、着ているもの、話し方、話しの内容、ふるまいで、自分のおおかたをさらけだしてしまう。でも逆にそのあたりを繕えば、違った自分を演出できる。そのとき手相を見てみれば・・・

 仕事先でたまたま短い交流のあった女性の例。無口で目立たず、ちょっと何を考えているかわからないタイプ。たぶん学生時代は優等生できて、研究生活に入ったのだろうな、と思った。周りからも、学問に没頭していて、世間知らずの(ちょっと歳をくった)お嬢さん、と見なされていた。

 こちらからは興味を惹かれなかったのだけれど、数人でランチのとき友人の手相を見てあげていると、彼女が自分のも見てほしいと手をだした。

 女性では珍しく、手首から中指までどこまでもまっすぐな運命線で驚いた。こういう特徴の女性は、運が強いことは強いのだけれど、「仕事をしなければいけない」運を背負っている、ともいえるのだ。この人は見かけとずいぶん違うのかもしれないと、つい顔を見直してしまった。

 「ずっと働き続けてきたとでていますが」と婉曲に言うと、またもや意外なことに、彼女は正直にこう答えてくれた、「わたしは母ひとり娘ひとりで暮らしてきて、実は高校生のころからバイトしたり奨学金をもらったりして、今に至るまで専業主婦の母を養っているのです」。
 
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やさしき人の偏見

2006年03月23日 | 雑記
 「クラッシュ」で偏見について書いたところ反響が大きかったので、再び同じテーマで--

 わたしがこれまでに一番印象が強烈だった例は、15,6年前になるだろうか、テレビのマラソン中継だった。黒人選手を紹介するアナウンサー(男)が、こう言ったのだ、「この選手はOO(アフリカの国名)ではインテリということになっています」。

 聞きまちがえたかと思った。
 「では何かい、アフリカのインテリは世界基準と違う、と言いたいんかい?」と、突っ込みたくなるではないか。一流大学を出て、大手放送局に勤めるこのアナウンサーは、自らのエリート意識と人種偏見を無意識のうちに全国へたれながしてしまったのだ。

 それはさておき、友人が体験した泣き笑いしたくなる偏見は、これ。

 仕事帰りに古書店へふらりと立ち寄った、占い大好きの彼女。占星術だの卜占だのおもしろそうなのを3冊ほどみつくろい、カウンターへ持っていった。やさしそうな丸顔の老店主は、ていねいに本を包装しながら曰く、

 「だいじょうぶだよ、あんた。今にきっといいことがあるから」

 「w ... w h a t ??!! 」
 彼女は心の中で叫んだ由。もしかして憐れまれているの、わたし?
人生にくたびれきった中年女性が、我が身の来し方行く末を占おうとしている、とそんなふうに見えるわけ?

 仕事ばりばりで、恋人ともうまくゆき、乗りに乗っている彼女なのに・・・偏見、恐るべし。













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鈴木涼子さん、受賞おめでとう!

2006年03月20日 | 紹介
 先日、札幌在住の新進気鋭の美術家・鈴木涼子さんが、<道銀芸術文化奨励賞(道銀文化財団)>を受賞しました(音楽部門では上杉春雄氏)。おめでとうございます!!

 鈴木さんとは以前、北海道新聞発行の月刊誌「道新Today」 で、わたしが「恋の潮どき」というエッセーを連載した際、イラストを担当してくださったご縁です。毎回、驚くほどエロティックなイラストを描いてくださって、「おお!」と感動の連続でした。

 一昨年は東京でも個展を開き、そのときのテーマは「母と娘」。母親の写真と娘の写真を合成した、不思議な、まるで輪廻転生を思わせる、血の絆の妖しさが見る者に迫ってくる展覧会でした。

 今年は4月・北京、5月・ドイツと、個展が決まっており、今後の日本の美術界を背負うホープのひとりです。みなさん、応援してあげてくださいね。
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「日本怪奇小説傑作集」(1)、(2)から

2006年03月19日 | 
 泉鏡花「海異記」
  --「妖しき海の神の、人を漁るべく海からあらわれた」という設定がすばらしい。漁師である夫が海で魚を釣っている間、陸では海の化け物が人間の子を食おうとやってくる。膳をけとばして「児(こ)を呉(く)れい」という、クライマックスの凄さたるや・・・。ゲーテの「魔王」に匹敵。

 漱石「蛇」
  ーー漱石は人がどこに恐怖を覚えるかを熟知しており、この短編でもとりたてて何が起こるというわけでもないのに、まさに背筋が凍る。

 山本周五郎「その木戸を通って」
  --記憶喪失の女性がどこからともなくあらわれ、主人公である武士の妻となり子を産んで、またどこかへ去ってしまうというだけの話しで、いわば民話「鶴女房」など異類婚の系列といえる。ありふれた物語なのに側側と胸をうつのは、この女性の包み込むようなやさしさによって、最初は嫌な男だった主人公が愛を知り、愛に生き、愛を失うからだろう。
 
 するとこの小説は、もしかしたら「失恋」というものを象徴的に描いているのかもしれない。愛というものを知らなかった男は、最初、相手の女性をいずこから突然やってきて、自分の生活を侵害する迷惑な存在と見なす。やがて彼女がかけがえのない人となると、今度はいつまた元のところへ帰ってしまうのではないかと不安でならなくなる。そして愛が終わったとき、男にとって彼女は手の届かない遠い世界へ消えてしまったと同じなのだ。
 
 結論ーー恋こそが怪奇である。(ン?)


☆新著「怖い絵」(朝日出版社)
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怖い絵
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①ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
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⑤ブロンツィーノ「愛の寓意」
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⑫ベーコン「ベラスケス<教皇インノケンティウス10世像>による習作」
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まごいずみさんのスプーン曲げ

2006年03月18日 | 紹介
 こすっただけでスプーンが曲がるというのを、テレビで見たことがある。別に何の感銘も受けなかった。たぶん信用していなかったのだろう。ところが実際に目の前でそれを見せられると・・・

 まごさんは大学で英語を教える教員であり、芝居の脚本の翻訳家であり、舞台女優でもある。スピリチュアル方面にも造詣が深い。

 我が家に遊びに来て、「わたし、スプーン曲げられるのよ。おうちの貸してみて」と言った。

 これは面白いことになったと思ったわたしは、手持ちの中で一番柄が太くて重くて高価なのを手渡した。もちろん半信半疑で。

 「ずいぶん大きいわねえ。ちょっと時間がかかるかもしれない」、彼女はそう言って、片手でやわらかく揉むようにした。2,3分しただろうか、くにゃっと曲がったのだ! わお!!

 元どおりにもどすこともできると言うので、その前にまずわたしが力まかせにグイグイやってみた。ぜんぜん歯が立たない。とにかくものすごく頑丈なスプーンなのだ。まごさんは、「もどす方が難しいから、時間は倍くらいかかるかな」と言いながら、さっきと同じように揉みはじめ、その間わたしと気楽な雑談をかわした。そして・・・ピッと、もどしたのです。

 うーむ。こればかりは目の前で見ない人にはわからない驚きでしょう。

 で、こんなすごい彼女が、今月ひとり芝居をおこないます。

 出しものは、平塚らいてうの半生を描いた「わたしは永遠に失望しない」。今年はちょうど、らいてう生誕120年に当たり、まさに時宜を得た作品です。是非見てねー!

 日程;3/24(金),3/25(土)、3/26(日)
 場所;たまプラーザ駅前、画廊DIVAにて。

 詳しくは ⇒ http://www.magoizumi.com
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